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| この「金剛」型戦艦4隻は、太平洋戦争に参加した12戦艦の中で最も古いものです。
| それでいながら、太平洋戦争で最も活躍した日本戦艦でもあるんですよ。
| では、今からこの「金剛」型戦艦について講義します。
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「金剛」型：「金剛」（1913年8月16日完成）、「比叡」（1914年8月4日完成）
「榛名」（1915年4月19日完成）、「霧島」（1915年4月19日完成）
「扶桑」型：「扶桑」（1915年11月8日完成）、「山城」（1917年3月31日完成）
「伊勢」型：「伊勢」（1917年12月15日完成）、「日向」（1918年4月30日完成）
「長門」型：「長門」（1920年11月15日完成）、「陸奥」（1921年10月24日完成）
「大和」型：「大和」（1941年12月16日完成）、「武蔵」（1942年8月5日完成）
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｜ なんで、そんな30年も前に建造された旧式艦が大活躍したんだ……？
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| その答えは、「金剛」型の高速性能にあったんだ……
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| 時代は、日露戦争終結から4年が経った1908年……
| イギリスにて、新種の艦種である巡洋戦艦「インヴィンシブル」級が登場します。
| 最先端を行っていた海軍国が生み出した、高い攻撃力と速力を併せ持った新艦種――
| 各国は大いに注目し、模倣を開始。そして日本も巡洋戦艦の建造計画に着手し始めます。
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・巡洋戦艦
戦艦並みの主砲（≒攻撃力）を備えた大型巡洋艦。
決して巡洋艦並みの速度を備えた戦艦ではなく、基本的に防御力は高くない。
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｜ ﾛｲﾔﾙﾈｲﾋﾞｰが産んだ新艦種…… 各国がマネしたんだな。
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| 実は、日本海軍は巡洋戦艦に近い着想を持っていた。
| しかし、ﾛｲﾔﾙﾈｲﾋﾞｰがそれに先駆けて巡洋戦艦を完成させたって感じだな。
| この辺の事情は、「筑波」型や「鞍馬」型の講義で。ﾊｧﾊｧ……
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| こうして1911年、日本でも巡洋戦艦を建造する事が決定しました。
| お手本としたのは、イギリスの「ライオン」級巡洋戦艦。これは「インヴィンシブル」級の次に登場した艦です。
| この「ライオン」級を参考に計画書を仕上げたんですが、一つ問題が。
| 当時の日本はまだまだ造船能力が低く、巨大かつ高速性能を持つ艦の建造経験がありませんでした。
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｜ 1911年だもんなぁ……
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| 戦艦ならいくつか建造したが、巡洋戦艦なんて未知だしな。
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| そういう訳で、1番艦「金剛」の建造をイギリスのヴィッカース社に依頼する事が決定。
| この頃は日英同盟も健在で、両国の仲も非常に良好。
| さらに、日本海軍はイギリス海軍の弟子のごとく可愛がられていたんですよ。
| こうして、日本はイギリスに最新巡洋戦艦「金剛」の建造を依頼しました。
| 日本海軍の方針を元にヴィッカース社は設計書を作製、「金剛」の建造に取り掛かります。
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｜ 「金剛」型の一番艦は、純国産じゃなかったんだな……
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| これは、イギリスからの建艦技術習得も兼ねていた。
| 建造過程は本来極秘なんだが、ヴィッカース社は日本側関係者に技術指導までしてくれたんだ。
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| こうして、イギリスにて「金剛」型巡洋戦艦1番艦の「金剛」が完成する事になるのですが……
| 日本ではイギリスから建造中の「金剛」の図面を取り寄せ、自国でも同型艦3隻を建造します。
| 日本の戦艦建造技術はまだまだ未成熟であった為、経験を積む必要があったんですよ。
| 結果として、この3隻建造の大仕事で、日本の建艦能力は欧米に匹敵するほどレベルアップ！
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「金剛」：イギリスのヴィッカース社によって建造。
「比叡」：横須賀工廠（国営）で建造。
「榛名」：神戸川崎造船所（民間）で建造。
「霧島」：長崎三菱造船（民間）で建造。
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｜ 民間の造船会社にも作らせたんだな。
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| 「榛名」の神戸川崎造船所と、「霧島」の長崎三菱造船はまるで競うように建艦を進めた。
| そして1914年、「榛名」の機関試運転が思わぬ故障で延期されるに及んで……
| 責任者の工作部長・篠田恒太郎が責任を感じて自刃するという悲劇も起きたんだ。
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| そして1番艦の「金剛」は1913年8月16日に完成、日本に引き渡されます。
| 残る「比叡」、「榛名」、「霧島」も1913〜15年にかけて次々に完成。
| 卓越した高速性能に、35.6cmという世界でも最大級の主砲。
| 「金剛」型4隻は、世界レベルを上回る性能を誇る傑作艦となりました。
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「金剛」型巡洋戦艦（完成直後のデータ）
・全長：214.6m ・全幅：28.0m ・吃水：8.38m ・常備排水量：20,823ｔ ・乗員：1221名
・最大出力：64,000hp ・最大速度：27.5kt ・航続距離：8000浬/14kt
・武装：45口径35.6cm連装砲4基、50口径15cm単装砲16基、40口径7.5cm単装砲12基、
53cm魚雷発射管8門
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｜ イギリス、よく自分とこのより強力な巡洋戦艦建造を許可してくれたな。
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| イギリスは、最新鋭の技術をまず輸出用の艦で試すんだよ。
| その技術の効果が実証されてから、自国向けの艦に取り入れるんだ。
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| この「金剛」型4隻、なんと30年に渡って現役であり続ける事になります。
| 当然ながら、その間に近代化改装が繰り返されましたが……
| ここで、完成当時の写真を見ておいてください。
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・巡洋戦艦「榛名」（Ver.1915）
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｜ なんか、殺気が漂ってないなぁ…
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| 改装を繰り返すにつれて、ナイフみたいに尖っては触る者みな傷つけるぞ。
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| そして1番艦の「金剛」が完成した翌年、ヨーロッパでは第一次世界大戦が発生。
| この時には、イギリスが「金剛」型を貸してくれないか、と言ってくる一幕も。
| 日本側が断ったために実現しませんでしたが、ちょっと惜しい気もしますね。
| 余談ですが、この際のジュットランド沖海戦によりイギリス巡洋戦艦三隻が沈没。
| 巡洋戦艦が抱える脆弱性があらわになります。
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｜ ﾛｲﾔﾙﾈｲﾋﾞｰに加わって、ドイツ艦隊と激突する「金剛」…… 超萌ゑる。
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| さて、第一次世界大戦も佳境に入った1917年……
| 世界大戦など対岸の火事であったアメリカが、「ダニエル計画」という建艦計画に着手し始めます。
| アメリカを明確に仮想敵国とみなしていた日本海軍も、これにただちに反応。
| 1920年には「八八艦隊計画」が国会で承認され、これに沿った建艦が開始されました。
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・八八艦隊計画
戦艦8隻と巡洋戦艦8隻の建艦からなる大艦隊整備計画。
かなり財政的に無理のある計画で、実行すれば国家の破綻は間違いない。
のちのワシントン条約により中止。
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｜ 無理しやがって……
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| なお「ダニエル計画」は、戦艦10隻＋巡洋戦艦6隻からなる艦隊整備計画。
| これもワシントン条約により中止となるぞ。
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| こうして巻き起こる、日本とアメリカの熾烈な建艦競争。
| 各国は、これが新たな戦争の火種となる事を問題視。
| 当のアメリカも大艦隊建艦費でアップアップしていたので、海軍軍縮会議を持ちかけます。
| 日本にも「八八艦隊ヤバくね？ 国が潰れるぜ？」と思ってる人達が腰を上げ、会議に出席。
| そんな1922年のワシントン条約で、日本および四大国は戦艦及び巡洋戦艦の新造が禁止されます。
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・ワシントン条約（1921年11月11日〜1922年2月6日）
アメリカのワシントンで行われた海軍軍縮条約。
この条約の存在が与えた影響は非常に大きい。
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｜ こうして、いわゆる「NAVAL HOLIDAY（海軍休日）」が訪れる訳だな。
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| しかし、どこの国ものんびりしていた訳じゃない。
| 新造戦艦のない世界で、少しでも自国海軍が有利になるよう模索し始めたんだ。
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| 戦艦の建造が禁じられた事により、日本の八八艦隊計画やアメリカのダニエル計画も消滅。
| もっとも、八八艦隊が完成すれば日本は財政破綻する事が確実なんで、結果的に良かったかもしれませんが。
| さて…… こういう事情で、海軍主力であった戦艦の建造が禁じられてしまいました。
| では敵国であるアメリカに対抗する為、あなたならどうしますか？
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ワシントン条約締結（1922年）までの日本の戦艦開発
「扶桑」型：「扶桑」（1915年11月8日完成）、「山城」（1917年3月31日完成）
「伊勢」型：「伊勢」（1917年12月15日完成）、「日向」（1918年4月30日完成）
「長門」型：「長門」（1920年11月15日完成）、「陸奥」（1921年10月24日完成）
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｜ え〜と…… 持ってる戦艦を改造する？
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| 戦艦に代わる兵器の開発だな…… 俺、答え知ってるんだけど。
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| 前ギコ・後ギコ、両方正解。しかし、「戦艦に代わる兵器開発」はここではおいておきます。
| 前ギコ君の言った通り、「金剛」型を始めとした日本戦艦は様々な改装が施されました。
| そして1931年には、「金剛」型は「巡洋戦艦」から「戦艦」に艦種変更されます。
| 防御力を強化した分、速力が落ちちゃったんですよ。
| ……とは言え、それでもかなりの高速艦だったんですがね。
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「金剛」型一次改装（1924〜1931年）
・主砲の仰角アップ（より上が向ける）。これにより射程距離が増加。
・高角砲（対空兵装）の増強。
・艦橋機能の強化。
・水上偵察機の搭載。
・防御力がアップ → その分、速力は若干ダウン。
・魚雷の撤去（異説あり）。
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｜ 1924〜1931年って、やけに時間がかかってるな。
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| 1隻の改装が3〜4年はかかるし、4隻同時に改装する訳にもいかないからな。
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| で、これが一次改装後の雄姿。
| なお「比叡」は一次改装の途中で練習戦艦にする事が決定、改装は中止されます。
| そして、「比叡」には練習戦艦としての改装が改めて実施されました。
| 軍縮条約のせいで、戦艦の保有数に問題が出たんですよ。
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・巡洋戦艦「金剛」（Ver.1929）
・巡洋戦艦「霧島」（Ver.1930）
・巡洋戦艦「霧島」（Ver.1930）
・巡洋戦艦「比叡」（Ver.1933）
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｜ なんか、艦橋が育ってきたような…
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| 改装を重ねるごとに、日本戦艦の艦橋は違法建築のごとくそびえ立っていくんだ。
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| 1934年には、「金剛」型の第二次改装が始まります。
| 条約の廃止に従って、練習戦艦「比叡」も正規戦艦として復帰。
| さらに「比叡」は、検討段階の戦艦「大和」に用いられる新型装備が試験的に搭載されました。
| だから「比叡」の艦橋は、姉妹艦3艦と違って「大和」型に面影が似てるんですね。
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「金剛」型二次改装（1934〜1940年）
・主砲がさらに仰角アップ。射程距離がさらに増加。
・艦橋機能をさらに強化。
・機関を変更し、速力が格段にアップ。
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｜ 1934年…… いよいよ戦争が近付いてきた時期か。
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| 速力が格段に増加したのは大きく、これが太平洋戦争で最も活躍した戦艦の要因となるんだ。
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| そして、この二次改装の状態で「金剛」型戦艦は太平洋戦争に突入します。
| いわば、「金剛」型の最終形態ですね。その性能は、もはや新造時とは別物でした。
| 攻撃力は同時代の戦艦に比べて劣るものの、その速力は破格です。
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「金剛」型戦艦（二次改装後のデータ）
・全長：222m ・全幅：31.01m ・吃水：9.60m ・基準排水量：32,200ｔ ・乗員：1,437名
・最大出力：136,000hp ・最大速度：30.3kt ・航続距離：10,000浬/18kt
・武装：45口径35.6cm連装砲4基、45口径15.2cm単装砲14基、40口径12.7cm連装高角砲4基、
25mm連装機銃10基、水上偵察機3機
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｜ ホントに、違う艦みたいだな…
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| それでも、防御力には若干の不安が合ったが。
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| これが、「金剛」型のラストスタイル（正確には、戦争中に僅かに改装）。
| 初期とは違い、近寄ったらひどい目に合いそうな殺気がムンムン出ていますね。
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・戦艦「霧島」（Ver.1938）
・戦艦「比叡」（Ver.1942）
・戦艦「霧島」（Ver.1938）
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｜ 日本戦艦の外観って、なんか独特だな…
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| とにかく、殺気が凄まじいんだ。
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| 1936年に「金剛」型戦艦は4隻セットで第三戦隊を編成し、そのまま太平洋戦争に突入。
| この第三戦隊の中で、第一小隊は「比叡」、「霧島」、第二小隊は「金剛」、「榛名」という風に2隻ペアに。
| このペアは、時期によってちょくちょく組み合わせが変わってます。
| また、この第三戦隊は戦艦が編成されていながら、重巡洋艦の部隊的な色合いもありましたね。
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・開戦時の編成
第一戦隊：戦艦「長門」、「陸奥」
第二戦隊：戦艦「伊勢」、「日向」、「扶桑」、「山城」
第三戦隊：戦艦「金剛」、「霧島」、「榛名」、「比叡」
以下略
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｜ やっぱり、格別の高速性能が特色だったのか。
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| だから他の戦艦部隊とは違った任務も割り当てられ、別行動も多かった。
| 太平洋戦争で大活躍した唯一の日本戦艦、ってのはこの辺に理由がある。
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| そして開戦にあたっては、第一小隊「比叡」、「霧島」と第二小隊「金剛」、「榛名」は、
| それぞれ真珠湾と南方作戦に割り振られます。
| 第一小隊「比叡」、「霧島」は、空母機動部隊に付随して真珠湾へ。
| 第二小隊「金剛」、「榛名」は、南方侵攻作戦を担当する第二艦隊に配属されました。
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｜ 真珠湾組と南方組に分かれたのか。
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| 第三戦隊、まっぷたつ。
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| そして1941年12月8日、真珠湾攻撃――
| 空母部隊の護衛として、第三戦隊第一小隊の「比叡」、「霧島」が三川軍一中将の指揮の元に同行。
| 単純な護衛以外にも、もしもの時の曳航（他の船を引っ張る）という目的もありました。
| 味方空母がダメージを追って自力航行が不可能になった場合、戦艦クラスでないと引っ張って帰れませんから。
| さらに空母部隊を指揮する南雲中将に何かあった場合、三川中将が全部隊を指揮するという役目も。
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｜ 三川軍一中将…… 以前に講義で聞いた名前だな。
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| 第一次ソロモン海戦で、重巡部隊を率いて暴れ回る名提督だ。
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| 結局のところ…… もしもの自体は起こらず、作戦は大成功。
| これは同時に、海軍の主役が航空母艦になった事を示唆していました。
| 離れたところで待機していた「比叡」、「霧島」にも、攻撃部隊の大戦果が報告されます。
| 「あいつらばっか活躍しやがって……」と、乗員達は微かなジェラシーを抱いたとか。
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｜ 結局、真珠湾攻撃において戦艦に出番はなかったんだな。
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| 出番ナシどころか、敵の姿すら見ちゃいない。
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| 一方、南方作戦の支援を担当する第二小隊「金剛」、「榛名」。
| イギリス本国から最新鋭戦艦「プリンス・オブ・ウェールズ」が襲来してくるという情報を聞き、ただちに出撃。
| しかし「プリンス・オブ・ウェールズ」は、日本の陸上攻撃機の餌食となってしまいます。
| 航空機が戦闘態勢の戦艦を葬るという快挙の影で、「金剛」、「榛名」は肩を落としていたかもしれません。
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｜ 切ない話だ。
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| 「プリンス・オブ・ウェールズ」と「金剛」、「榛名」、もう少しで会えるとこだったんだがな。
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| さて…… 翌年の1月には、南雲機動部隊はラバウルを攻撃。
| その際に第一小隊の「比叡」、「霧島」も同行しましたが、特に活躍はありません。
| また南方部隊の第二小隊「金剛」、「榛名」は1月18日にパラオへ到着。
| 2月8日には南雲機動部隊もパラオに戻り、開戦以来別離していた「金剛」型4戦艦が集結しました。
| こうして、南雲機動部隊も南方作戦に従事する事に。
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｜ あれ？ 空母も含めたみんなで南方に殴り込んだの？
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| 後に、この時期はもっと徹底的にアメリカを叩くべきだったとの批判を受ける事になるんだ。
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| そんな南方作戦の最中…… 3月1日、「比叡」と「霧島」はアメリカ駆逐艦「エドソール」と接触します。
| 「エドソール」は、航空機運搬艦「ラングレー」の護衛をしていたんですが……
| 2月27日に日本の航空機の攻撃を受け、「ラングレー」は撃沈。
| 「エドソール」は生存者を救助した後で、たった1艦でとぼとぼと帰路についていたんですよ。
| それを発見した「比叡」と「霧島」は、たちまち「エドソール」を葬ってしまいます。
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｜ おお、初撃沈！ なんか、露骨に弱いものイジメだった気も……
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| それが戦争ってもんだ。
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| さて、3月7日早朝。「金剛」と「榛名」は、旗艦の「赤城」に合流するために航行していました。
| そこで通りかかったのがクリスマス島、ここにはイギリス軍の無線局がありました。
| ちょっと驚かせてやろうという事で、「金剛」、「榛名」はクリスマス島を軽く砲撃。
| すると、なんと島に白旗がスルスルと上がってしまったんです。これには「金剛」も「榛名」もビックリ。
| さらに、降伏の使者がボートで接近してくるに及んで、二艦はすかさず逃走しました。
| 余りに想定していなかった事態に、ビックリしてしまったんですね。
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｜ おいおい……
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| 面倒な降伏・占領処理とか行ってたら、「赤城」との約束の時刻に間に合わないからな。
| さすが日本人、時間厳守の民族だ。
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| そして3月26日…… セイロン島攻撃に向かう空母5隻の護衛として、「金剛」型4隻が同行。
| 4月4日には、「比叡」が接近してくるカタリナ飛行艇に対空射撃を行っています。外れましたが。
| 翌日の5日、「比叡」と「霧島」から飛び立った水上機が敵帆船を爆撃、しかし外れます。
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｜ うわ、パッとしねぇ……
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| 活躍というには、ちょっとな。
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| しかし4月9日には、「榛名」から飛び立った水上機がイギリス貨物船にダメージを負わせます。
| さらにこの水上機は、イギリス空母「ハーミズ」を発見して位置を報告。
| このいち早い発見が、直後の日本空母部隊による「ハーミズ」撃沈に繋がりました。
| さらに、「榛名」の水上機はイギリス護送艦と給油艦を発見し、空母「蒼龍」からの航空機を誘導して撃沈。
| また「比叡」の水上機が海に落ちているのを発見、乗組員を救助しています。
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｜ 「榛名」水上機、縦横無尽の活躍じゃないか！ 地味だけど……
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| まあ、地味なれど確実な働きだ。
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| そして1942年5月27日、南雲機動部隊はミッドウェイ海戦に出撃……
| 「榛名」と「霧島」は攻撃の要である空母4隻の護衛、「比叡」と「金剛」は別働隊となります。
| その結果は、知っての通り痛恨の空母4隻沈没……
| 「榛名」と「霧島」も敵機や敵潜水艦に襲われましたが、命中弾はありませんでした。
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｜ もはや、完全に空母の戦いだよな……
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| 戦艦はひたすらに空母の護衛役…… それでも、役目があるだけマシなんだが。
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| ミッドウェイの敗北が色濃い1942年7月14日、少し編成が変わりました。
| これまで第三戦隊の「金剛」型4隻は、2隻ずつに分かれての別行動が多かったですよね。
| それならば、いっそ正式に別部隊にしてしまおう、って事になりました。
| こうして欠番となっていた第十一戦隊が復活し、第三戦隊から「比叡」、「霧島」の2隻が割り振られます。
| それまで第三戦隊の司令官だった三川中将は、新設された第八艦隊の司令長官に昇任。
| 第三戦隊の司令官には栗田健夫中将が、第十一戦隊の司令官には阿部弘毅中将が就きます。
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第三戦隊（栗田健夫中将）：「金剛」、「榛名」
第十一戦隊（阿部弘毅中将）：「比叡」、「霧島」
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｜ そして第八艦隊の司令長官になった三川中将は、第一次ソロモン海戦で大活躍する訳だな。
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| 栗田中将は、レイテ沖の戦いで大活躍……？
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| 8月には、「金剛」と「榛名」は日本戦艦で初めて（試験運用を除く）レーダーを搭載。
| 一方、「比叡」と「霧島」にはレーダーは載せてもらえませんでした。
| 第十一戦隊は空母艦隊に割り振られていたため、他にレーダーを持ってた艦があったからです。
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｜ 「比叡」と「霧島」、なんか切ないな。
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| そして、この後さらに悲惨な運命に……
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| そして1942年8月17日、アメリカ軍がガダルカナル島（以下、ガ島）に上陸。
| 陸海空を問わない激戦が、以後9ヶ月に渡って展開される事になります。
| 第一次ソロモン海戦において日本海軍はアメリカ海軍を叩きのめし、流れに乗っての島奪回作戦が本格化。
| 1942年8月16日には、南雲中将率いる第三艦隊が出撃。その目的は、ガ島奪還部隊の上陸支援です。
| この第三艦隊には、第十一戦隊の「比叡」、「霧島」も護衛として割り振られていました。
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第三艦隊（南雲忠一中将）
空母「翔鶴」、「瑞鶴」、「龍驤」
戦艦「比叡」、「霧島」
重巡洋艦「熊野」、「鈴谷」、「利根」、「筑摩」
軽巡洋艦「長良」
駆逐艦「秋雲」、「夕雲」「巻雲」、「風雲」、「時津風」、「天津風」、「初風」、「秋風」、「浦波」、「敷波」、「綾波」
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｜ 当然、ガ島を守るアメリカ海軍も黙っちゃいないんだな。
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| この激突が、第二次ソロモン海戦だ。
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| 第三艦隊の陣形で、中央にいたのは戦艦「比叡」。
| この偉そうな艦をリーダーと勘違いし、ガ島北300海里の地点でB-17が4機攻撃を仕掛けてきました。
| ここで「比叡」が迎撃に用いたのが、秘密兵器の三式弾。
| しかし、残念ながら効果は全く無し。敵の爆撃も外れ、なにやら気マズい状態に。
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・三式弾
戦艦の主砲から発射する、対空用の拡散砲弾。
470個もの焼夷弾子が花火のように拡散し、直径300メートル以内を焼き尽くす。
解説だけだと凄そうだが、実はほとんど戦果がない秘密兵器。
後に出てくる地上砲撃にも使われ、こちらは大いに役立っている。
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｜ どっちもハズレか。
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| 三式弾は評価が難しいが、これは別の講義でやる予定だ。
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| 同じ頃、空母「龍驤」と空母「サラトガ」の戦闘が発生し、「龍驤」は沈没。
| さらに、空母「翔鶴」の攻撃部隊は空母「エンタープライズ」を大破に追い込み、海戦は佳境。
| この戦いは無線封鎖の中で行われていたため、「比叡」と「霧島」は状況が分かりません。
| 艦隊司令の南雲中将から「第十一戦隊は何を遊んどるのか」とまで言われる始末。
| 結局は瀕死の「エンタープライズ」を取り逃がし、第二次ソロモン海戦は終結。
| 「比叡」と「霧島」はとぼとぼとトラック島に帰っていきました……
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｜ うわ、切ねぇ……
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| それでも、他の戦艦よりは遥かに働いてるんだけどな。
| 艦隊に同伴すらできない戦艦もいるんだから……
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| 以後、ガダルカナルで戦っている陸軍への海上輸送は、アメリカ航空機によって邪魔されてしまいます。
| そこで山本五十六長官は、ガダルカナル島の飛行場滑走路破壊を計画。
| 戦艦で島に大接近し、砲撃して滑走路を潰してしまおうという計画を立てます。
| 余りに前例のない危険な作戦に、部下達は大反対。
| しかし山本長官は、「お前たちが反対するなら、自分が『大和』に乗ってやってやる」とまで言い出す始末。
| 結局、栗田中将が指揮する第三戦隊の「金剛」、「榛名」が「挺身攻撃隊」として向かう事に。
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挺身攻撃隊（栗田健男中将）
戦艦「金剛」、「榛名」
軽巡洋艦「五十鈴」
駆逐艦「海風」、「江風」、「涼風」、「親潮」、「黒潮」、「早潮」、「高波」、「巻波」、「長波」
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｜ ぬぅ？
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| 栗田中将も猛反対したんだが、山本長官から「お前がイヤなら俺がやる」と言われればな……
| さすがに、「それなら私がやります」と言わざるをえなかった。
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| こうして1942年10月11日、トラック島から「挺身攻撃隊」と名付けられた艦隊が出発しました。
| 「金剛」型2隻が選ばれたのは、優れた速度性能、そして沈んでもあまり惜しくないからです。
| すなわち生きて帰って来れない可能性の高い、非常に悲壮な作戦でした。
| ガダルカナル島には100機近くもの敵機が存在し、そんなところに接近して攻撃を仕掛けるんですからね。
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「敵機約100機が常駐するその飛行場の膝元に迫って、
戦艦二隻で砲撃して来いというのであるから随分無茶な話である。
どうしてこのような着想が艦隊司令部に生まれたのかその経緯は知らないが、
ガ島作戦が暗礁に乗り上げ、切羽詰まって高速戦艦二隻を犠牲にしても、
と思いつめた窮余の一策ではなかったかと憶測する。
従って、これに参加した第三戦隊の二艦は、生きては帰らぬ悲壮な決心であった」
「金剛」艦長・小柳富次大佐
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｜ まさに、決死の決意だな……
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| 栗田中将は、「部下を犬死にさせるようなものだ」と大いに不満を漏らした。
| これは別に、彼がヘタレだったからじゃない。
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| そして10月13日、挺身攻撃隊は闇夜に紛れてガ島に接近。
| 夜中の23時36分、攻撃位置に到達した戦艦「金剛」が艦砲射撃を開始。2分後、戦艦「榛名」も砲撃を実行。
| 飛行場は炎上し、ガソリンタンクにまで引火します。アメリカ兵は突然の出来事により大パニックに。
| 飛行場に並んでいた航空機も次々に吹っ飛び、かなりの大ダメージを与えた事は明白でした。
| 1時間30分、砲弾1000発に及ぶ砲撃を終えた挺身攻撃隊は、即効でその場を後にします。
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｜ アメリカ側の反撃はなかったのか？
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| 魚雷艇がちょっかいかけてきたくらいだな。
| 微妙に評判が悪かった栗田中将は、この大成功で一躍英雄となる。
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| 飛行場に大ダメージを与え、65機もの敵機を破壊…… この大戦果に喜んだのは海軍だけではありません。
| 日本陸軍参謀の辻政信も「成算われにあり、安心乞う」と大喜び。
| 窮余に陥り、ガ島の確保すら危ぶまれた米軍ですが…… それでも、まだまだ連中はへこたれません。
| 日本陸軍のガ島総攻撃は失敗、このちっぽけな島を巡る戦いは、なおも続行する事に。
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｜ なんか、どっちもヘロヘロの総力戦だなぁ。
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| もはや、ガ島を手に入れた方が戦争に勝利するみたいな様相だったからな……
| その認識が、正しいのかどうだったかは別として。
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| 11月になると、日本側による大輸送作戦が立案されます。
| その輸送部隊突入を成功させるため、以前にやったようなガ島飛行場砲撃を再度行う事に。
| 「金剛」、「榛名」の第三戦隊が行ったんだから、次は「比叡」、「霧島」の第十一戦隊が行け……という話。
| こうして11月9日、阿部中将率いる第十一戦隊がガダルカナル島砲撃に向かいます。
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・挺身攻撃隊（阿部弘毅中将）
戦艦「比叡」、「霧島」
軽巡洋艦「長良」
駆逐艦「雪風」、「天津風」、「朝雲」、「村雨」、「五月雨」、「夕立」、「春雨」、「時雨」、「白露」、
「夕暮」、「暁」、「雷」、「電」、「照月」
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｜ 当然、アメリカも警戒してるだろ？
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| 挺身攻撃隊は11月12日、待ち受けていたアメリカ艦隊と遭遇するんだが……
| これは、アメリカ側にしても予想外の事態だったんだ。第三次ソロモン海戦の勃発だな。
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| 待ち受けていたのは、キャラガン少将率いる巡洋艦と駆逐艦で編成された艦隊でした。
| キャラガン少将の聞いた報告は、「日本の輸送部隊が近付いてくる」という誤報に近いモノ。
| つまり、輸送部隊を壊滅させる任務のつもりだったんです。
| まさか、日本側の艦隊に戦艦が2隻もいるとは思ってもみなかったんですよ。
| さらに待ち伏せていたはずなんですが、気付かないうちに日本艦隊の至近距離にいたんです。
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巡洋艦部隊（ダニエル・キャラガン少将）
重巡洋艦「サンフランシスコ」、「ポートランド」
軽巡洋艦「アトランタ」、「ジュノー」、「ヘレナ」
駆逐艦「カッシン」、「ラフェイ」、「ステレット」、「オバノン」、「アーロンワード」、「バートン」、
「モンセン」、「フレッチャー」
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｜ さすがにこれじゃ、戦艦2隻の相手はキツいんじゃないか……？
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| キツいってか、絶望的だな。
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| さて、ガ島付近にて今にも砲撃を行おうとしていた「比叡」と「霧島」……
| そこに「アメリカ艦隊接近中」の報、阿部中将は大いに狼狽します。
| ガ島砲撃の寸前でしたから、主砲に込めていた砲弾は対艦用ではなく三式焼夷弾だったんですよ。
| しかし不意の遭遇である以上、弾丸を詰め替えている余裕もありません。
| 阿部中将は、仕方なくそのまま敵艦への砲撃を命令しました。
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｜ 三式焼夷弾だと、艦船相手には通じないのか？
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| 敵艦に乗ってる人員は殺傷できるだろうが、貫通力に欠けることは明らかだ。
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| こうして始まった、夜間＋至近距離における海戦史上例を見ないほどの大乱戦。
| 23時51分、「比叡」は敵艦隊に探照灯を照射しつつ、敵艦「アトランタ」に主砲弾をブチ込みました。
| やはり対艦用ではない砲弾では貫通力が足りないものの、「アトランタ」は戦闘不能に。
| しかし、探照灯を照射し、闇夜に光輝いてしまった「比叡」…… 絶好のマト以外の何物でもありませんでした。
| 敵艦隊の攻撃が「比叡」に集中、艦橋は吹っ飛ばされ、舵は損傷してボロボロの状態に追い込まれます。
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｜ 「霧島」の方は？
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| 「霧島」は探照灯を付けなかったので、敵のマトにはならなかった。
| 370発もの主砲弾をブチかまし、敵艦隊に壊滅的なダメージを与えている。
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| 「比叡」と「霧島」の奮戦で、アメリカ艦隊は壊滅間際にまで追い詰められます。
| 敵艦隊司令官のキャラガン中将はこの海戦で戦死、アメリカ艦隊の生き残りは撤退していきました。
| しかし… 日本側も駆逐艦2隻が沈み、戦艦「比叡」も悲惨な状態になっていたんです。
| 満身創痍の「比叡」は乱戦の中で「霧島」ともはぐれ、そして夜が明け……
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沈没：軽巡洋艦「アトランタ」、「ジュノー」、駆逐艦「カッシン」、「ラフェイ」、「バートン」、「モンセン」
大破：重巡洋艦「サンフランシスコ」、「ポートランド」
中破：駆逐艦「ステレット」
小破：軽巡洋艦「ヘレナ」、駆逐艦「オバノン」
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｜ もう、メッタ撃ちだな……
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| ってか、アメリカ側の被害も凄まじいけどな。
| ガチで戦艦と殴り合ったら、こんな目に合うのか……
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| 翌朝…… 「比叡」はガダルカナル島からかなり近い位置で、舵をやられたのでぐるぐる回っていました。
| 司令部では、そのまま「比叡」をガダルカナル島に乗り上げさせ、地上砲台と化して撃ちまくるという案も出ます。
| しかし「比叡」の西田艦長は希望を捨てず、なんとか艦を立て直そうとしました。
| 実際のところ西田艦長の判断は正解で、舵以外に致命的なダメージはなかったんです。
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「比叡は、わが海軍に四隻しかない高速戦艦の一隻であった。
開戦になってみると、戦艦はこの四隻しか役立たないといえるような貴重な艦であった。
ガ島に乗り上げようとかなり心は動いたが、いまだ手のうちようもあるだろうに、
この貴重な艦を軽々に捨てるべきではないと思い直し、手段を尽くして退避する事にした」
「比叡」艦長・西田正雄大佐
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｜ 不屈の魂だな。
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| しかし「比叡」の居場所は米軍の目と鼻の先、相当に危険だった。
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| しかし、弱った「比叡」に向かってアメリカ機が襲来。爆弾2発と魚雷1発を食らってしまいました。
| 阿部司令官は復旧は不可能と判断、西田艦長に自沈を命令します。
| しかし「比叡」艦長の西田大佐はその案に反発、何とか危機を切り抜けようとしました。
| 艦内の士気もまだまだ高く、復旧は可能な状態だったんですよ。
| それでも、阿部司令官は再三に渡って自沈を命令し続けます。
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「どうしてそんなに処分をしたがるのかねえ。
救う方法があるうちは全力を尽くすべきだと思うのだがねえ」
「比叡」艦長・西田正雄大佐
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｜ 阿部司令官って分からずやなのか……？
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| 冷酷なようだが、浮上している艦内に敵が侵入するのは最悪の事態だ。
| 軍艦には多くの機密があるし、ましてや「比叡」のいるのは敵陣のすぐ近く。
| 阿部司令官の判断は非道ってほどじゃないが、ちょっとネガティブ過ぎたかもな。
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| そんな時、西田艦長のもとに「機関停止、修復不能！」の報告が。
| 流石の西田艦長も「比叡」復旧を諦め、艦の処分を決心。
| そして自沈の処分を終えて、乗員の退艦作業を進めていた最中……
| なんと、機関停止というのは誤報だった事が判明したんです。
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｜ ご、誤報……！？
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| でも、時すでに遅し。今さらどうしようもない……
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| 戦艦「比叡」は1942年11月13日の午後11時過ぎに沈没、その最期を看取った者はいません。
| こうして日本海軍は「比叡」を喪失…… これは、太平洋戦争開戦以来初めての戦艦喪失でした。
| なお生還した西田艦長を待っていたのは、後方の予備役へ編入という辞令……
| その理由は、「艦の最期を見届けるという、艦長としての使命を全うしなかった」からでした。
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｜ なにその不条理…… 懲罰人事、ｷﾀｺﾚ。
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| なお阿部中将も責任を取らされ、四ヵ月後に予備役に回された。
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| さて、その後の「霧島」は…… 11月12日夜の乱戦で、「比叡」とはぐれてしまった事を思い出して下さい。
| 特にダメージの無い「霧島」は北上したのですが、日本海軍がさらに増援させたガ島攻撃隊と合流。
| 山本長官は戦艦「比叡」を失いながらも、ガ島への輸送作戦は徹底しようとしたんです。
| こうして「霧島」を含めたガ島攻撃隊は、再びガ島へ向かう事に。
| しかしアメリカも最新鋭戦艦「サウスダコタ」、「ワシントン」、駆逐艦4隻からなる第64任務部隊を派遣。
| 11月14日22時01分にこの両者が会敵し、第三次ソロモン海戦の第2ラウンドが勃発しました。
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ガ島攻撃隊（近藤信竹中将）
戦艦「霧島」
重巡洋艦「愛宕」、「高雄」
軽巡洋艦「長良」、「川内」
駆逐艦「雷」、「五月雨」、「朝雲」、「白雪」、「初雪」、「照月」、「浦波」、「敷波」、「綾波」
第64任務部隊（ウイリス・A・リー少将）
戦艦「サウスダコタ」、「ワシントン」
駆逐艦「ウォーク」、「ベンハム」、「プレストン」、「グウィン」
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｜ 「サウスダコタ」と「ワシントン」って、アメリカの最新鋭戦艦だろ？
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| 「霧島」とは30年近くものジェネレーション・ギャップがある相手だ。
| しかも、それを率いる艦隊司令官のリー少将はレーダー射撃の専門家……
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| 日本側の駆逐艦隊が奮闘し、戦艦「サウスダコタ」及びアメリカ駆逐艦に猛攻を食らわせます。
| アメリカ駆逐艦は全て撤退、「サウスダコタ」は大ダメージを受けました。
| さらに、「サウスダコタ」に対して猛烈な砲撃を浴びせかける「霧島」。
| 「サウスダコタ」も猛反撃、「霧島」と「サウスダコタ」はガチの殴り合いに。
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｜ ウホッ！ 戦艦同士の殴り合い！
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| これが太平洋戦争で唯一の、戦艦同士の戦闘だ。
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| しかし、もう一方のアメリカ戦艦「ワシントン」は無傷。
| 「ワシントン」が後方から「霧島」を砲撃、レーダー射撃による凄まじい命中率で「霧島」を砕いていきます。
| そんな戦いの結果、「霧島」とガチで殴り合った「サウスダコタ」は大破、その場から撤退します。
| しかし、50発もの砲弾を受けた「霧島」ももはや虫の息…… ここまで僅か7分間の出来事でした。
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｜ たった7分の、壮絶な戦い…
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| 「サウスダコタ」も「ワシントン」も、同じ戦艦といえども「霧島」より遥かに格上の相手。
| そんなの2隻相手に、片方を大破にまで追い込んで… 本当に、良くやったよ。
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| 瀕死のダメージを負わされた「霧島」は、11月15日1時25分に力尽きて沈没します。
| 戦死者は250名、実に壮絶な最期でした。
| こうして日本海軍は「比叡」、「霧島」の二大戦艦を喪失。残る「金剛」型戦艦は、「金剛」と「榛名」のみに。
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｜ 第十一戦隊、全滅か……
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| 悲しいな。
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| そして1944年6月19日、マリアナ沖海戦……
| 日本海軍の総力を結集した大艦隊に、「金剛」と「榛名」の姿もありました。
| 「金剛」と「榛名」に与えられた任務は、ただひたすらに空母の護衛――
| もはや、戦艦が海戦の主役だった時代はとうに過ぎ去っていました。
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第1機動艦隊（小澤治三郎中将）
空母「大鳳」、「翔鶴」、「瑞鶴」、「隼鷹」、「飛鷹」、「瑞鳳」、「龍鳳」、「千歳」、「千代田」
戦艦「大和」、「武蔵」、「長門」、「金剛」、「榛名」
重巡洋艦「妙高」、「羽黒」、「高雄」、「愛宕」、「摩耶」、「鳥海」、「最上」、「鈴谷」、「熊野」、「利根」、「筑摩」
軽巡洋艦「矢矧」、「能代」
駆逐艦「浅雲」、「磯風」、「浜風」、「初月」、「若月」、「秋月」、「霜月」、「満潮」、「野分」、「山雲」、「時雨」、
「秋霜」、「早霜」、「朝霜」、「岸波」、「沖波」、「玉波」、「浜波」、「藤波」、「島風」
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| つ ∇ (ﾟДﾟ,,) (ﾟДﾟ,,)
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｜ 空母護衛は立派な任務とはいえ、どこか寂しいよな……
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| しかしこのマリアナでは、その空母が悲惨な事に……
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| この海戦において、日本側空母から飛び立った攻撃隊から未帰還機が続出。
| さらに敵潜水艦に空母「大鳳」と「翔鶴」を沈められるに及んで、いったんは撤退。
| 翌日の20日17時35分には、小澤機動部隊にアメリカ機の大部隊が来襲してきました。
| 味方空母には近付けんとばかりに、戦艦「金剛」と「榛名」も大奮戦。
| しかし空母「飛鷹」は撃沈され、「瑞鶴」、「隼鷹」、「龍鳳」、「千代田」は小破。
| 戦艦「榛名」も爆撃を受け艦尾を損傷、4本あるスクリュー軸のうち1本を失ってしまいました。
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｜ ボロボロの負け戦だな……
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| 戦艦「榛名」は、終戦までスクリュー軸3本で戦い続けるハメになったんだ。
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| こうして負傷した「榛名」は、修理の為にドッグ入りする訳ですが……
| そのついでに対空火器を増強、同様の改装は「金剛」にも施されます。
| そして4ヵ月後の1944年10月24日、レイテ沖海戦。
| 味方空母部隊を囮にしてアメリカ艦隊をあらぬ方向に釣り……
| その隙に、フィリピンに押し寄せたアメリカ輸送艦隊に栗田艦隊が殴り込みという壮大な計画ですね。
| そんな殴り込み部隊である栗田艦隊の中に、歴戦の戦艦「金剛」、「榛名」の姿がありました。
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「捷一号作戦」
１．小澤機動部隊が囮になり、敵空母部隊を輸送船団から引き離して北へ引き寄せる。
２．敵空母部隊がいなくなったレイテ湾に、栗田艦隊が突入。敵護衛艦隊と殴り合う。
３．栗田艦隊と敵護衛艦隊が争っている隙に、西村艦隊と志摩艦隊が輸送船団を撃滅。
栗田艦隊（栗田健男中将）
戦艦「大和」、「武蔵」、「長門」、「金剛」、「榛名」
重巡洋艦「愛宕」、「高雄」、「摩耶」、「鳥海」、「妙高」、「羽黒」、「熊野」、「鈴谷」、「利根」、「筑摩」
軽巡洋艦「矢矧」、「能代」
駆逐艦「早霜」、「秋霜」、「長波」、「朝霜」、「岸波」、「沖波」、「島風」、「浜波」、「藤波」、「浦風」、「磯風」、
「浜風」、「雪風」、「清霜」、「野分」
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｜ 歴戦なの？ あんまり活躍してないような……
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| それ言うなら、他の戦艦は……
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| そして10月24日、栗田艦隊がレイテ湾へ突撃する途中のシブヤン海……
| そこでハルゼーが指揮するアメリカ空母部隊の攻撃隊が襲来、栗田艦隊は凄まじいまでの爆撃を受けます。
| 10時26分にやってきた第一次攻撃部隊45機は、前方にいた戦艦「武蔵」に殺到。
| やや後方に位置していた、「金剛」と「榛名」は見向きもされませんでした。
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｜ なんか辛いよな。味方がやられてて、何もできないなんて……
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| 「榛名」は対空射撃を行おうとしたが、距離が離れすぎているので断念した。
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| 12時06分に襲来してきた第二次攻撃隊も、ひたすら戦艦「武蔵」を攻撃。
| しかし13時30分の第三次攻撃隊は、「金剛」と「榛名」にも攻撃を仕掛けてきました。
| 幸いにも「金剛」と「榛名」に命中弾はナシ、「榛名」は敵機1機を撃墜します。
| 次の第四次攻撃隊は「金剛」と「榛名」を無視、しかし第五次攻撃隊は「榛名」に対しても攻撃してきました。
| 「榛名」はその攻撃を巧みに回避、なんとかノーダメージに徹する事ができました。
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｜ しかし、凄まじく執拗な爆撃だよな……
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| 来襲機はのべ200機。ひたすら攻撃を受けた戦艦「武蔵」は、ここで沈んでしまう。
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| かなりのダメージを追いながらも、レイテ湾に航路を取る栗田艦隊。
| 10月25日6時43分、サマール島沖にてなんとアメリカの軽空母部隊に接近遭遇してしまいました。
| 空母というのは、接近すれば非常に弱い艦種。しかも、こちらには戦艦が4隻。
| 美味しいなんてレベルじゃない超幸運、レイテ突入なんて後回しです。
| 「全軍突撃セヨ！」の命令が下る栗田艦隊、一目散に逃げようとするアメリカ軽空母部隊……！
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｜ そんなに美味しい事態なの？
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| はぐれメタルが集団で居眠りしてたみたいなもの。
| 日本側の幕僚の中には、嬉し涙を流しながら絶叫する者までいた。
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| 「金剛」と「榛名」、及び「大和」と「長門」が一斉射撃するも、敵空母は巧みに避けつつスコールの中に退避。
| 残念ながら、一発も命中しませんでした。
| そんな中、味方空母の危機を救うべくアメリカ側の航空機が飛来。
| 「金剛」は敵戦闘機の機銃攻撃を受け、当たり所が悪く測距儀が使用不可能に。
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｜ 測距儀……？
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| 距離を測る機器。これで、命中率がガタ落ちに。
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| スコールに退避している味方空母部隊を守るため、駆逐艦「ジョンストン」が絶望的な反撃を仕掛けてきました。
| この「ジョンストン」による攻撃により、重巡「熊野」が中破。
| その直後、「榛名」、「大和」、「長門」の攻撃により「ジョンストン」はたちまち致命傷を受けます。
| この後に「ジョンストン」は沈没、実に勇壮な最期を遂げました。
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｜ なんと。
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| 敵ながら、実に勇敢だな。
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| 「金剛」は、逃げ遅れた護衛空母「ガンビアベイ」を砲撃で撃沈。
| 一方の「榛名」は駆逐艦「ヒアマン」の砲弾を食らいましたが、幸いにも不発でノーダメージ。
| さらに反撃してくる護衛駆逐艦「サミュエル・B・ロバート」も「金剛」によって葬られます。
| こうして思わぬ遭遇戦は、日本側の圧倒的な勝利で幕を閉じました。
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｜ 「大和」と「長門」は？
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| 敵魚雷と徒競走してて、戦闘にはほとんど貢献してなかった。
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| さて、なおもレイテ湾に急ぐ栗田艦隊……
| しかし湾内突入を目前にしてクルリと反転、引き返してしまうのは以前の講義の通り。
| こうしてレイテ沖海戦は終わり、内地へと航路を取り帰還していく栗田艦隊……
| 戦艦「榛名」はリンガ泊地にて暗礁に引っ掛かり、出港が6日ほど遅れてしまいます。
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｜ 戦艦「榛名」、置き去りか。
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| しかし、その帰り道で栗田艦隊は思わぬ受難を……
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| 内地に帰還中の栗田艦隊は、台湾の北西にてアメリカ潜水艦「シーライオン」に発見されてしまいます。
| 「シーライオン」の放った魚雷のうち、2発が「金剛」に当たってしまいました。
| 「金剛」の船体が大きく揺れたはずみで、弾薬庫の棚に置いてあった砲弾が壁に衝突。
| そのショックで大爆発が起き、11月21日に「金剛」はあっけなく沈没してしまいます。
| 乗組員1600人中、1300人が戦死してしまうという悲惨な事態に……
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｜ たった2発で……
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| 当の「金剛」乗員も、これぐらいじゃ大丈夫と楽観的だったそうだ。
| やはり近代化改修を繰り返したといっても30年前の艦、船体は劣化してたんだろうな……
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| さて、「金剛」型戦艦4隻のうち、唯一生き残った「榛名」は……
| 空母「隼鷹」が運んできた砲弾を受け取り、仲良く内地へ帰ることに。
| その途中でアメリカ潜水艦「カバラ」の攻撃を受けますが、なんとか回避。
| さらに台湾の近くでは敵潜水艦7隻の待ち伏せに合いますが、退避に成功。
| こうして戦艦「榛名」と空母「隼鷹」は、内地に帰還を果たします。
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｜ すげぇ…… なんか避けまくり。
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| ってか、日本に帰る途中でこれだけ敵に会うって状態がすでに末期的なんだけどな。
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| その後…… 「榛名」は呉の近くにしばらく停泊することに。
| もう日本海軍はボロボロで、作戦どころじゃなかったんですね。
| 1945年6月22日、停泊していた「榛名」はB-29の爆弾を1発食らいました。
| 「榛名」停泊地の近くに特攻兵器の工場があり、これは完全なとばっちりですね。
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｜ 停泊中に爆撃を受けたのか。
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| もう、石油も枯渇してたしな……
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| こうしてダメージを受けた「榛名」ですが、特に修理されるあてもなく……
| 曳船に引っ張られ、江田島の小用海岸に連れて行かれます。
| それから一ヶ月の間に「榛名」は何度も空襲を受け、合計で13発もの爆弾を受けて大破着底。
| しかし7月28日の空襲の際には、「榛名」は主砲を撃って反撃。B-24を1機撃墜します。
| この撃墜記録が、「金剛」型戦艦の最後の戦果なんですよ。
| 1945年8月15日、終戦…… その頃には、「榛名」はフネの形をした残骸と化していました。
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｜ 切なすぎる……
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| 1946年5月2日、「榛名」の解体作業が開始。
| 2ヵ月後、「榛名」は完全に解体されてその生涯を終えた。
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| 結局のところ…… 太平洋戦争において、「金剛」型は未曾有の大活躍を見せています。
| といっても従来のように海戦の花形ではなく、空母部隊の護衛や支援。
| 空母からなる機動部隊は速力が高く、これに随伴できる速力を有した戦艦は「金剛」型のみなんです。
| そしてかなりの老齢という事実が、前線への投入に拍車を掛けました。
| ぶっちゃけ、日本海軍は「金剛」型は沈んでもそんなに惜しくないと考えていたフシがあります。
| だから雑務とかにも惜しみなく投入され、結果的に大いに貢献する事になったんですよ。
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｜ 要は、壊れてもあんまり惜しくないから、働かせまくったって事か。
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| 「大和」や「長門」は日本海軍の象徴。雑務に放り込んで沈みでもしたら、シャレにならない。
| その分、「金剛」型なら惜しくは無いから、躊躇無く最前線に投入された。
| 結果的に「大和」や「長門」は出し惜しみされ、まともに使われなかった一方で、
| 「金剛」型は地味ながら活躍する事になるんだ。
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| そしてアメリカにとっても、「金剛」の存在は非常に頭を悩ませるものでした。
| 「金剛」より強力な戦艦はアメリカもいっぱい持ってましたが、速力で劣るために逃げられます。
| だからといって、巡洋艦レベルでは逆に戦艦である「金剛」の餌食。
| かくしてアメリカは、対「金剛」型の新型高速戦艦を開発する事になるんですね。
| これが、アメリカ最後の戦艦である「アイオワ」級戦艦……
| よく「大和」と比されていますが、実際のところは「金剛」キラーの特色が強いんですよ。
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｜ そんなに嫌がられてたのか…
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| 「金剛」型が暴れ出したら、アメリカには対処できる艦が無いからな。
| 無論、空母優勢が明らかになってなかった頃の想定に過ぎないが。
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| ネームシップの「金剛」は、日本海軍の最高殊勲艦としてアメリカ側の戦史に記録されています。
| 攻撃力も防御力も高いとはいえないが、その高速性能でこそ成し遂げられる任務があった……
| 「強い兵器ではなく、便利な兵器が良い兵器」という言葉の見本のような艦ですね。
| 以上、日本の戦艦にしては異例なほどの活躍を見せた「金剛」型戦艦の講義でした。
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｜ 海上自衛隊が誇るイージス艦の名前も「こんごう」だったな。
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| 最新鋭の軍艦に付けられた、かつての歴戦艦の名前……
| 「金剛」という輝かしい名は、現在に至るまで受け継がれているんだ。
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