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| では、今回は日本海軍の1万トン級航空母艦「龍驤」について講義しましょう。
| なぜ「鳳翔」の運用教訓で「空母は2万5千トンクラス以上は必要」と判明していた日本海軍が、
| このような小型といってもよい空母を建造したのか……
| それには、お馴染みのワシントン条約の存在がありました。
| ワシントン条約において、日本空母の総保有数は合計トン数が81,000トン以内と制限されてしまったんですよ。
| ただし1万トン以下の航空母艦は建造自由、つまり上記の81,000トンに計上されないという決まりだったんです。
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 ・ワシントン海軍軍縮条約(1921年11月11日〜1922年2月6日)
  アメリカのワシントンで行われた海軍軍縮条約。
  また、アメリカとしては日本海軍を抑える意図もあった。
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    | なるほど。それなら、1万トン級航空母艦の需要も出てくるな。
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         | いわば「龍驤」は、条約の産物だった訳だ。
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| こうして、水上機母艦「若宮」の後継であった「龍驤」(予算のみ成立・建造前)を小型空母として建造決定。
| しかし建造中に、ロンドン海軍軍縮条約で1万トン以下の空母も保有可能枠に含める事が決まります。
| こうなると1万トン以内に収める必要は消滅し、空母保有枠に加算される以上、性能UPは必然。
| こうして建造中にもかかわらず、「龍驤」の搭載航空機数は24機から36機に増大させる事に。
| この設計変更はかなり大きな影響を及ぼし、後の大事故に繋がっていきます……
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 ・ロンドン海軍軍縮条約(1930年4月)
  日本・アメリカ・イギリスの三国で結ばれた軍縮条約。
  ワシントン海軍軍縮条約後に浮上した問題点を解消している。
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    | 1万トンも空母枠を取られるんだったら、意地でも戦力化しないと意味ないもんな。
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         | でも、無理は良くなかった。
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| こうして1933年、航空母艦「龍驤」が完成します。
| 上からの搭載航空機数アップの要求ですが、もはや船体は完成していたので拡大は不可能。
| そこで、艦を縦に伸ばす事で解決を図った…… 何と言うか、ムチャです。
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 ・航空母艦「龍驤」
  ワシントン条約の枷により、小型空母として1933年に完成。
  建造中に搭載航空機数を増大させたため、かなり設計に無理が生じている。
  第四艦隊事件の発生時に大改装を行ったが、それでも不安定さは消えなかった。
  太平洋戦争においては真珠湾攻撃時には参加せず、南方での作戦を支援。
  第二次ソロモン海戦において、アメリカ航空機の攻撃を受けて撃沈された。
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    | 聞いただけでもダメダメの予感……
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         | 正直、紛れも無い失敗作だ。
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| で、縦方向に船体を拡張した結果、非常に不安定なスタイルに。
| 何もしなくても横転しそうな、スリリングなフォルムがたまりません。
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 航空母艦「龍驤」(1936年、改装後のデータ)
  ・全長:176.6m  ・全幅:23m  ・吃水:5.56m  ・基準排水量:10,600t  ・乗員:924名
  ・最大出力:65,000hp  ・最大速度:29.0kt  ・航続距離:10,000浬/14kt  ・搭載機:36機+補用12機
  ・武装:40口径12.7cm連装高角砲6基、25mm連装機銃2基、13mm4連装機銃6基

 写真1 写真2
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    | また暴言を…… ファンに怒られるぞ。
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         | いや、重厚なスタイルは素敵だとは思うけど。
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| そして「龍驤」完成の翌年、水雷艇「友鶴」が設計上は耐えられるはずの傾斜で転覆するという事件が発生。
| この友鶴事件により、日本海軍の所持艦全ての安定性を再度チェック。
| その結果、最も安定性に問題があったのが、この「龍驤」でした。
| 設計者は水雷艇「友鶴」と同じ藤本喜久雄大佐、さらに建造中に搭載機数を二倍にするという無茶を実行。
| 艦を縦に伸ばすという方法で搭載機数をアップさせた「龍驤」は、無理のカタマリだったんです。
| そういう訳で、「龍驤」には安定性をUPさせる改装が早急に施されたんですよ。
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    | 完成後、僅か1年で改装工事か……
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         | 切ないな。
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| さらに翌年の1935年には、演習中の第四艦隊が嵐に遭遇して大被害をこうむるという第四艦隊事件が発生。
| 被害を受けた艦の中には、われらが「龍驤」の姿もありました。
| 「龍驤」は艦橋を損傷した為、強度UPの為のさらなる改装工事が実行されています。
| それでもなお「龍驤」の乗組員からは艦に対する不満の声が殺到、とにかく問題の多い艦だったようですね。
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    | なんか、ボロボロだな……
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         | それだけ、設計に無理の多い艦だったんだ。
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| そして1937年の日中戦争において、「龍驤」「加賀」「鳳翔」と共に中国軍飛行場を攻撃。
| 1941年の日米開戦時においては、「龍驤」は南方作戦のサポートを担当します。
| 「赤城」「加賀」などの6空母が真珠湾攻撃で大成功を収める中、「龍驤」は南方作戦における制空権を奪取。
| 陸軍の進撃を頭上から支援し、地味ながら南方快進撃の力になりました。
| なお「龍驤」はこの作戦において、敵砲艦と砲撃戦を行い勝利するという珍妙な経験もしています。
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 航空部隊の編成(1941年12月、開戦時)
  第一航空戦隊:「赤城」(艦上戦闘機×18、艦上爆撃機×18、艦上攻撃機×27)
            「加賀」(艦上戦闘機×18、艦上爆撃機×18、艦上攻撃機×27)
  第二航空戦隊:「蒼龍」(艦上戦闘機×18、艦上爆撃機×18、艦上攻撃機×18)
            「飛龍」(艦上戦闘機×18、艦上爆撃機×18、艦上攻撃機×18)
  第三航空戦隊:「鳳翔」(艦上戦闘機×11、攻撃機×8)
            「瑞鳳」(艦上戦闘機×16、艦上攻撃機×12)
  第四航空戦隊:「龍驤」(艦上戦闘機×12)
            「祥鳳」(なし)
            「春日丸」(なし)
  第五航空戦隊:「翔鶴」(艦上戦闘機×18、艦上爆撃機×27、艦上攻撃機×27)
            「瑞鶴」(艦上戦闘機×18、艦上爆撃機×27、艦上攻撃機×27)
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    | 艦そのものは不具合続出でも、戦局には大きく貢献してるんだな。
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         | この際、ほとんどの零式艦上戦闘機は真珠湾に向かう空母部隊が持っていった。
         | 「龍驤」は仕方なく、旧式の九六式艦上戦闘機を積んで南方作戦に従事したんだ。
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| そして1942年6月、ミッドウェイ攻略作戦が発動します。
| 「龍驤」は陽動としてアリューシャン諸島に向かうも、米軍は日本側の作戦を完全に察知していました。
| 結果として、アリューシャンにおけるアッツ島とキスカ島の占領には成功しましたが……
| ミッドウェイに赴いた主力4空母は葬られ、日本の快進撃はたちまちストップしてしまいます。
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 アリューシャン攻略部隊
  空母「龍驤」、「隼鷹」
  重巡洋艦「高雄」、「麻耶」
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    | 陽動作戦の方が上手く行ったって……
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         | 主力4空母喪失により、今までサポートに徹していた「龍驤」も表舞台に立つことに。
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| そして1942年8月17日、アメリカ軍がガダルカナル島(以下、ガ島)に上陸。
| 陸海空を問わない激戦が、以後9ヶ月に渡って展開される事になります。
| 第一次ソロモン海戦において日本海軍はアメリカ海軍を叩きのめし、流れに乗っての島奪回作戦が本格化。
| 1942年8月16日には、南雲中将率いる第三艦隊が出撃。その目的は、ガ島奪還部隊の上陸支援です。
| この第三艦隊には、我等が「龍驤」の姿もありました。
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 第三艦隊(南雲忠一中将)
  空母「翔鶴」「瑞鶴」「龍驤」
  戦艦「比叡」「霧島」
  重巡洋艦「熊野」、「鈴谷」、「利根」、「筑摩」
  軽巡洋艦「長良」
  駆逐艦「秋雲」、「夕雲」「巻雲」、「風雲」、「時津風」、「天津風」、「初風」、「秋風」、「浦波」、「敷波」、「綾波」
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    | おお、新鋭空母の「翔鶴」「瑞鶴」とトリオを組んでる!
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         | 残った空母の寄せ集めとも言う…… まあ、商船改造型空母もいるけど。
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| しかし8月18日から8月21日にかけての戦いで、ガ島に上陸した陸軍一木支隊は壊滅。
| その一方、ガ島奪回と輸送船団護衛の為に島へ接近する第3艦隊。
| 8月24日には、空母「龍驤」と重巡洋艦「利根」、駆逐艦2隻を分離、ガ島空襲に向かわせます。
| しかし同海域には、空母「エンタープライズ」と「サラトガ」からなるアメリカ空母部隊が存在しました。
| ここに、第二次ソロモン海戦が勃発する事になるのです。
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    | 第3艦隊、そんな簡単に戦力を分散して良いのか?
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         | 結果として、大失策だったな。
         | 軽空母1隻と僅かな護衛だけで敵警戒圏に突っ込ませた……そのツケは重かった。
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| そして7時50分、アメリカの索敵機に「龍驤」が発見されてしまいました。
| 一方「龍驤」は、10時ちょうどに攻撃地点へ到達。10時20分にはガ島へ攻撃部隊が飛び立ちます。
| しかし「龍驤」発見の報を受けたアメリカ側も行動を開始。
| 11時45分には、「サラトガ」から「龍驤」攻撃の為の部隊が発進しました。
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 7時05分:米軍索敵機、ガダルカナル島に接近してくる空母「龍驤」を発見。
 10時20分:「龍驤」からガダルカナル島へ攻撃部隊(零戦6機、九七艦攻6機)が発進。
 10時29分:空母「エンタープライズ」より、29機の索敵機が発進。
 11時45分:空母「サラトガ」から「龍驤」へ、攻撃部隊(SBD急降下爆撃機30機、TBF艦上攻撃機8機)発進。
 12時10分:「エンタープライズ」からの索敵機、「龍驤」を発見。その位置を母艦に報告。
 12時30分:「エンタープライズ」からの索敵機、「翔鶴」「瑞鶴」を発見。
        電波状況の悪化による通信混乱で、アメリカ空母から「翔鶴」「瑞鶴」への攻撃部隊は発進せず。
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    | 逃げてー! 「龍驤」、逃げてー!!
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         | なお、「龍驤」の発見直後に「翔鶴」「瑞鶴」もアメリカ策敵機によって発見されている。
         | しかし電波状況の悪化が原因で、攻撃部隊は「翔鶴」「瑞鶴」を無視する形になったんだ。
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| 「龍驤」の遥か背後に控えていた「翔鶴」「瑞鶴」も、アメリカ空母部隊の存在を察知。
| ただちに攻撃隊を上げましたが、もはや「龍驤」を救う事はできませんでした。
| 13時50分、「龍驤」に向かって「サラトガ」からの攻撃部隊が襲来。
| 魚雷1発と爆弾4発を食らい、4時間後の18時ちょうどに「龍驤」は沈没してしまいます。
| その後、日本側の攻撃部隊は「エンタープライズ」を襲うものの、致命傷には至らず。
| こうして日本側が撤退し、第二次ソロモン海戦は日本の完全敗北に終わります。
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 12時30分:「龍驤」からガダルカナル島へ飛び立った攻撃部隊、ヘンダーソン飛行場を爆撃。
        零戦2機、九七艦攻3機が撃墜。
 13時50分:「龍驤」に「サラトガ」からの攻撃部隊が襲来。魚雷1発と爆弾4発を受ける。
 14時08分:「龍驤」、航行不能。
 14時10分:ガダルカナルを空襲した攻撃部隊が帰還。「龍驤」への収容は不可能で、海上に不時着。
 18時00分:「龍驤」沈没。
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    | ああ、「龍驤」……
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         | 軽空母を単独行動させた失策で、これは流石に擁護できない……
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| そういう訳で…… 完成直後から不具合が多発し、日米開戦においては地味な南方作戦を担当。
| あげくの果てに完全な日本側のミスで沈んでしまうという、非常に不遇な空母「龍驤」の生涯でした。
| 最後にいつ転覆してもおかしくないような「龍驤」の写真をもう一度見て、ハラハラ気分を味わって下さい。
| では、これにて超不安定空母「龍驤」の講義を終わりましょう。
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航空母艦「龍驤」
航空母艦「龍驤」
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    | いつ転覆してもおかしくないような、って…… 言い過ぎじゃないか?
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         | 「一目見て、こりゃヤバそうだと思った」、「これ、本当に沈まないのか?」……
         | そういう「龍驤」の感想は、当時の海軍軍人達の発言や記録にも見る事ができる。
         | ってか、素人目に見てもヤバそうな軍艦なんてそうはないぞ。
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