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| 「伊勢」型戦艦も、日本12戦艦のうちの2隻。
| 戦艦としては非常に地味でしたが…… なんと戦時中、世界で唯一の航空戦艦に改造されます。
| そんな極めて奇異な生涯を送った「伊勢」型について講義していきましょう。
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「金剛」型：「金剛」（1913年8月16日完成）、「比叡」（1914年8月4日完成）
「榛名」（1915年4月19日完成）、「霧島」（1915年4月19日完成）
「扶桑」型：「扶桑」（1915年11月8日完成）、「山城」（1917年3月31日完成）
「伊勢」型：「伊勢」（1917年12月15日完成）、「日向」（1918年4月30日完成）
「長門」型：「長門」（1920年11月15日完成）、「陸奥」（1921年10月24日完成）
「大和」型：「大和」（1941年12月16日完成）、「武蔵」（1942年8月5日完成）
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｜ ウホッ！ 航空戦艦！！
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| メチャクチャ便利な「金剛」型、決戦に温存「大和」型。
| そして、持て余し気味な「伊勢」・「扶桑」型。見事に三分化されてたな。
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| 時代は第一次世界大戦さなかの1910年代、各国が次々と完成させる新型戦艦。
| それらを上回る戦艦として、日本が自信を持って送り出した国産戦艦「扶桑」型ですが……
| 完成直後の時期にジュットランド沖開戦が勃発。
| この海戦によって新たな戦訓が明らかになり、「扶桑」型はそれを反映できませんでした。
| おまけに、それ以外にも「扶桑」型はいくつか欠陥を抱えています。
| そういう訳で、本来なら「扶桑」型の3番・4番艦となる予定の艦を大幅改良する事になりました。
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・「扶桑」型戦艦
日本が独力で完成させた国産戦艦。攻撃力は「金剛」型を大きく上回るが、速力で激しく劣る。
その事実が、この艦の以後の運命を決めたとも言える…… また、主砲配置など問題点は数多い。
なお艦名の「扶桑」は「日本」を表す美称であり、この艦に対する期待のほどが伺える。
1番艦は「扶桑」、２番艦は「山城」。
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｜ 1番艦は「扶桑」、２番艦は「山城」、3番艦は「伊勢」、4番艦は「日向」になるはずだったんだよな……
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| 3番艦「伊勢」と4番艦「日向」は、予算不足の影響で建造が遅れていたんだ。
| それが、この時ばかりはプラスに傾いた。
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| こうして、3番艦「伊勢」、4番艦「日向」は「扶桑」型の改良型として完成させる事になります。
| 主砲配置を変更し、発砲時の爆煙が射撃指揮所を覆うという問題を解決。
| ジュットランド沖海戦で明らかになった、水中防御や水平防御の脆弱性も改善。
| 速力もアップさせ、地味なところでは副砲の口径も小さくなっていますね。
| 1917年12月15日に「伊勢」が、1918年4月30日に「日向」が完成しています。
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・「伊勢」型戦艦
「扶桑」型の改良艦で、様々な問題点が解消されている。
とは言え、性能的に同時代の他国の戦艦に追いついたとは言い難い。
1番艦は「伊勢」、2番艦は「日向」。
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｜ あれ？ 副砲、弱くなったの？
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| 「扶桑」型の15cm砲弾は、日本人が扱うにはちょっと重すぎたんだ。
| 人力装填速度も考慮して、14cmに縮小した方が戦力はアップすると考えたんだな。
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| なお主砲配置を変更した影響により、乗員の居住区画が「扶桑」型よりも大幅縮小。
| そんな「伊勢」型の居住性は最悪で、乗務員泣かせの戦艦となってしまいました。
| また運動性能や針路保持能力にも問題が発生しています。
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「伊勢」型戦艦（完成直後のデータ）
・全長：208.2m ・全幅：28.7m ・吃水：8.8m ・基準排水量：31,260ｔ ・乗員：1,360名
・最大出力：45,000hp ・最大速度：23.0kt ・航続距離：8,000浬/14kt
・武装：45口径35.6cm連装砲6基、50口径14cm単装砲20基、7.6cm高角砲4基
53cm魚雷発射管6門
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｜ 針路保持能力？
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| 不慣れなヤツだと、まっすぐ進ませるのが難しいってこったな。
| 「伊勢」型は艦列から飛び出すケースがあるので、後続艦は注意とまで言われてる。
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| さて…… 例によって、1922年にはワシントン条約が締結。
| 戦艦の新造が禁止され、日本海軍は既存の戦艦を大改装する事になります。
| 「伊勢」型の改装は日本戦艦ズの中で最も後に施され、その分入念に手が加えられました。
| これで、ようやく他国の戦艦とも張り合える性能を手にします。
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「伊勢」型の大改装（1934年〜1935年）
・主砲の仰角アップ（より上が向ける）。これにより、射程距離が増加。
・高角砲（対空兵装）の増強。
・艦橋機能の強化。
・水上偵察機の搭載。
・防御力向上。
・速力UP
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｜ 条約による近代化改装、お決まりのパターンだな。
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| この中の幾つかは大改装前に既に実施されてたんだが、便宜上ここにまとめておく。
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| この艦の位置づけってのは… それでも、主力戦艦の中堅どころってとこですね。
| 「扶桑」型よりは優れてるけど、「長門」型や「大和」型に比べればパッとしない……
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「伊勢」型戦艦（近代化改装後のデータ）
・全長：215.8m ・全幅：33.8m ・吃水：9.21m ・基準排水量：36,000ｔ ・乗員：1,385名
・最大出力：80,000hp ・最大速度：25.3kt ・航続距離：11,000浬/16kt
・武装：45口径35.6cm連装砲6基、50口径14cm単装砲16基、40口径12.7cm連装高角砲4基、
20mm機銃20基
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｜ パッとしないのか。
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| あくまで「扶桑」型の改良版で、メチャメチャ優れてる訳でもない。
| 速度も防御も、「扶桑」型＋α程度だし。次の「長門」型は、かなりの傑作品と言えるがな。
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| 外観は、「扶桑」型よりは大分安定している感じです。
| スッキリした感じですが、それでも副砲配置など問題は多かったんですよ……
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・戦艦「伊勢」
・戦艦「伊勢」
・戦艦「日向」
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｜ 「扶桑」なんて、見ててハラハラするもんな。
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| 素人目にもヤバそうな戦艦「扶桑」って…
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| では、やや影が薄い戦艦「伊勢」と「日向」が、どう太平洋戦争の海戦を戦ったかを見ていきましょう。
| まずは、12月8日に日本海軍の真珠湾攻撃。
| 4隻からなる戦艦部隊が、空母部隊のはるか後方に展開していましたが……
| 結局、戦艦部隊にまるで出番はなくそのまま帰投。その中に、「伊勢」と「日向」の姿もありました。
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・開戦時の編成
第一戦隊：戦艦「長門」、「陸奥」
第二戦隊：戦艦「伊勢」、「日向」、「扶桑」、「山城」
第三戦隊：戦艦「金剛」、「霧島」、「榛名」、「比叡」
以下略
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｜ この時、あくまで戦艦部隊は主力扱いだったんだよな。
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| 名前だけはな。
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| そして「伊勢」と「日向」は内地に戻り、瀬戸内海の柱島を拠点にひたすら訓練。要は出番がなかったんです。
| 同様の境遇だった「扶桑」型や「長門」型などを皮肉り、「柱島艦隊」と呼ぶ者も。
| なお、この期間に「伊勢」と「日向」では、艦船用レーダーの実験が行われていました。
| そして1942年5月5日、「日向」は第5砲塔の爆発事故を起こして54人が死亡しています。
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｜ 事故か……
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| 第5砲塔は撤去したものの、とりあえずの作戦行動には問題なしとなった。
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| そして、運命のミッドウェイ海戦……
| 「伊勢」、「日向」とその僚艦はアリューシャンに向かいましたが、ミッドウェイを襲撃した味方4空母が沈没。
| 作戦は中止となり、「伊勢」と「日向」は引き返さざるをえなくなりました。
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｜ やはり切ないな……
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| この辺までの流れは、「扶桑」型とまったく共通だ。
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| 4空母喪失という、致命的な事態……
| 日本海軍はただちに空母補充を計画しますが、そう簡単に建造できるものでもありません。
| そこで、既存艦を空母に改造しようという事になりました。
| 「日向」は第5砲塔を失っていたので、ある意味ちょうど良かったとも言えますね。
| こうして、戦艦「伊勢」と「日向」は航空戦艦として生まれ変わる事になります。
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重巡洋艦「最上」 → 修理のついでに後部に飛行甲板を備え付け、航空巡洋艦（1943年5月復帰）に。
戦艦「伊勢」、「日向」 → 後部に飛行甲板を備え付け、航空戦艦（1943年11月復帰）に。
重巡洋艦「伊吹」（建造中） → 空母として完成させ、航空母艦「伊吹」（未成）に。
戦艦「信濃」（建造放棄中） → 空母として完成させ、航空母艦「信濃」（1944年11月完成）に。
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｜ 航空戦艦になったのは、「伊勢」型だけなのか？
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| 「大和」型と「長門」型は主力戦艦。「金剛」型は非常に役に立つ。
| 「扶桑」型と「伊勢」型が検討されたんだが、「扶桑」型航空戦艦は費用対効果の問題でボツに。
| こうして、「伊勢」と「日向」に大改装が施されたんだ。
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| 航空戦艦ってのは、別に航空母艦と戦艦の良点を併せ持ってる訳じゃありません。
| 本当は航空母艦が欲しかったのですが、完全な空母改造は時間がかかるので中途半端な形になっただけ。
| 1943年11月には、「伊勢」と「日向」の工事は完了してますね。
| 肝心の、両艦に搭載する航空部隊の方は整ってませんでしたが。
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航空戦艦への改造
・第5・6主砲塔の撤去。
・船体後部に格納庫と飛行甲板を搭載。
・発艦用カタパルトを設置。
・対空兵装の強化。
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｜ 他の国は、航空戦艦を開発しなかったのか？
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| 米英も検討はしたが、結局は航空戦艦2隻より戦艦1隻と航空母艦1隻ずつを造る方が有用と判断。
| 実際にその通りで、日本の航空戦艦もあくまで緊急対策のつもりでしかないんだ。
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| さらに、「伊勢」型航空戦艦で扱う為の搭載機なんですが……
| 結局のところ、艦上爆撃機「彗星」二二型と水上偵察機「瑞雲」の混成に決定。
| しかし「瑞雲」の開発は間に合わず、「伊勢」型航空戦艦の改造が先に完了。
| 載せる航空機のないまま、「伊勢」型は現場に復帰します。
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・水上偵察機「瑞雲」
偵察だけでなく急降下爆撃も可能な水上機で、ある程度の空戦能力も持たせていた。
「伊勢」型や「最上」への搭載が予定されていたものの、性能の欲張り過ぎにより開発が大いに遅れる。
結局「伊勢」型や「最上」への本格搭載は流れ、完成後ただちに実戦配備されたもの活躍は出来なかった。
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｜ 「急降下爆撃機能も、空戦能力も…」って欲出すから、開発がどんどん遅れたんだな。
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| ぶっちゃけ、この機体は「水上爆撃機」と呼んでもいいかもしれないな。
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| 「伊勢」型の復帰から遅れて、ようやく搭載予定の航空隊も編成されます。
| それが、「彗星」22機と「瑞雲」22機からなる「第六三四海軍航空隊」でした。
| しかし世界初の航空戦艦における航空機運用は悪戦苦闘で、訓練にも問題が多発。
| 「瑞雲」は2度も空中分解事故をおこすわ、機材は揃わないわ……
| ようやく形になってくるものの、マリアナ沖海戦には参加できませんでした。
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｜ なんと。
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| なお、「伊勢」と「日向」から行うのは発艦のみ。
| 帰りは、他の空母なり基地なりへどうぞといった具合だ。
| 水上機の「瑞雲」ならば、付近に着水して回収できるだろうが……
| 戦闘時にそんな余裕があるかは疑わしかった。
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| しかし困窮していく戦況は、六三四空が「伊勢」と「日向」の専属部隊でいる事を許しませんでした。
| 六三四空の「彗星」部隊は台湾沖航空戦に投入され、「瑞雲」部隊はフィリピンに出撃。
| 結局のところ六三四空は陸上基地の所属となり、そのメンバーの95%が戦死するという事になります。
| そんな中、「伊勢」と「日向」にもとうとう海戦出撃の声が掛かりました。
| それが、レイテ沖海戦――囮役である小澤機動部隊の中に組み入れられたんです。
| 上記の事情で搭載機を1機も載せないという、極めて中途半端な形でね……
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「捷一号作戦」
１．小澤機動部隊が囮になり、敵空母部隊を輸送船団から引き離して北へ引き寄せる。
２．敵空母部隊がいなくなったレイテ湾に、栗田艦隊が突入。敵護衛艦隊と殴り合う。
３．栗田艦隊と敵護衛艦隊が争っている隙に、西村艦隊と志摩艦隊が輸送船団を撃滅。
小澤機動部隊（小澤治三郎中将）
空母「瑞鶴」、「千歳」、「千代田」、「瑞鳳」
航空戦艦「伊勢」、「日向」
軽巡洋艦「多摩」、「五十鈴」、「大淀」
駆逐艦「桑」、「槇」、「杉」、「桐」、「初月」、「若月」、「秋月」、「霜月」
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｜ なんで、囮部隊に…？
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| 小澤機動部隊は囮だから、いかにも強力に、主力っぽく見えた方がいいだろう。
| 航空戦艦なんて世界唯一の艦種が加わってたら、いかにも本気っぽいからな。
| 実際のところ、ハリボテ同然だった訳だが。
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| こうして、アメリカ空母部隊を釣るべく動き出した小澤機動部隊。
| その役目は成功、25日早朝にはエンガノ沖にて100機を越える敵航空機が群がってきます。
| その凄まじい爆撃の前に、味方空母は次々に沈没。
| 「伊勢」と「日向」は果敢に対空射撃を繰り出して数十機を撃墜しましたが、敵の数は余りに膨大。
| 夕方の第四次攻撃隊は「日向」を狙って爆撃してきましたが、「日向」は神業的操艦で回避します。
| こうして小澤機動部隊は壊滅しましたが、「伊勢」と「日向」にダメージはありませんでした。
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｢老練なる艦長の回避運動により、ついに一発の命中弾をも得ず｣
アメリカ空母部隊指揮官 ウィリアム・ハルゼー
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｜ 無傷……？ すげぇ！！
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| この時の「伊勢」と「日向」の爆弾回避術は神業。フェイントも絡めて爆弾を避けまくり。
| さらに、沈んだ空母「瑞鶴」の乗員を戦闘中に救助するという離れ業を見せる。
| まあ、敵の攻撃は空母に集中してたってのもあるが。
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| 「伊勢」と「日向」は無事に帰還するものの、日本海軍は大ダメージで艦隊行動など不可能。
| 以後は、ひたすら輸送任務に従事するという事に。
| 「伊勢」と「日向」もさっそく戦地のフィリピンへ輸送任務を与えられたものの……
| マニラは爆撃を受けまくり、近寄るのも危ない状況に。
| 「伊勢」と「日向」は急遽行き先を新南諸島に変更され、任務を果たします。
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｜ なんと。
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| 航空戦艦に搭載する機体はもはや無く、飛行機格納庫には輸送物資を詰め込んでいた。
| 失敗したかに見えた航空戦艦は、輸送艦として思わぬところで役立ったんだ。
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| そして、「伊勢」と「日向」はシンガポールを中心に輸送任務に従事していたのですが……
| 米軍がリンガエン湾に上陸し、シンガポールと本土との海上交通が寸断。
| 「伊勢」と「日向」の乗員達は、もう二度と祖国の土は踏めない事を覚悟します。
| そんな中、この二艦に驚くべき任務が与えられました。
| 現在地点のシンガポールから、航空燃料や生ゴムを積めるだけ積んで日本に帰って来ること――
| 余りに難解なこの輸送作戦は、「北号作戦」と名付けられました。
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｜ でも、海上交通は封鎖されてるんだろ？
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| 通行ルートである南・東シナ海の制海権や制空権は、完全にアメリカの手の中。
| 敵戦闘機や敵航空機がウヨウヨしてる中を突っ切るんだから、生還の可能性は極めて低い。
| 海軍内でも成功率は20%以下と予想されていた、破れかぶれの作戦だな。
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| そして2月10日、航空戦艦「伊勢」、「日向」は若干の護衛艦と共にシンガポールを出ました。
| なおこの部隊は、任務の完遂を祈って「完部隊」と名付けられます。
| 順調に行けば、日本の到着は10日後の2月20日の予定でした。
| 余談ですが、完部隊出港の翌日にシンガポールはB-29の爆撃を受けています。
| 出港するのが1日遅かったら、非常に危ないところでしたね。
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完部隊（松田千秋少将）
航空戦艦「伊勢」、「日向」
軽巡洋艦「大淀」
駆逐艦「朝霜」、「初霜」、「霞」
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｜ おお、ラッキーだな。
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| まさに、幸先の良いスタートだ。
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| そして出港からたった1日…… 完部隊は、アメリカ潜水艦に発見されてしまいました。
| 攻撃を仕掛けてこないものの、索敵機も艦隊上空について見張ってきます。
| 完部隊はいよいよ覚悟を決め――そして2月13日、とうとうアメリカの攻撃が始まりました。
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｜ うわー！！ 逃げて！ 完部隊、逃げて！！
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| 最初から逃げる気マンマンだって。
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| 12時ちょうど、88機のアメリカ機が飛来。
| 完部隊で対空戦闘が発令されたんですが、目の前に突如スコールが。
| 完部隊はすかさずスコールの中に飛び込み、敵の目をくらませます。
| こちらの艦隊の姿が捉えられなくなった攻撃隊は、諦めて去っていきました。
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｜ おお、ナイス・スコール！！
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| とんでもない幸運だな……
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| そして13時40分…… 今度は、潜水艦が襲ってきます。
| 「伊勢」と「日向」に向かって魚雷8発をブッ放してきたのですが、神業的操艦で全て回避。
| さらに翌日の11時23分に80機の爆撃機が襲ってきましたが、またもスコール発生。
| その中に姿を隠し、完部隊は難を逃れます。
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｜ すげぇ運の良さだな！！
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| 運の良さも凄まじいが、魚雷8発を避けきった操艦術も並外れている。
| 高い技量と異常な強運の相乗効果だ。
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| そして2月19日には対馬海峡を通過し、20日に呉へ到着！！
| こうして完部隊は、無事に本土への帰還を果たしました。
| ほぼ失敗は確実と言われた任務を、凄まじいまでの強運と操艦術で乗り切ったんです。
| 海軍にとって、久々の大成功でした。
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「完部隊、1隻の脱落も無く日本に到着」の報が海軍中に駆け巡る。
奇跡の成功に皆が狂喜し、中には涙を流す者さえいた。
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｜ うおお！
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| そして「北号作戦」の成功が、航空戦艦「伊勢」と「日向」の最大の戦功でもある。
| 敵艦を1隻も沈めていないが、そんな事より遥かに国の役に立ったんだ。
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| さて…… 「伊勢」と「日向」が内地へ帰還したのはいいものの、もはや作戦どころではない有様。
| この二艦も他の幾つかの戦艦や重巡洋艦と共に、呉港内で延々と停泊する事に。
| そんな1945年3月19日、呉をアメリカ爆撃機が襲います。
| 「伊勢」や「日向」を初めとした各艦は対空射撃で迎え撃つものの、被害は甚大。
| 「伊勢」に命中弾はなかったものの、「日向」は3発被弾。他の艦船もダメージを受けます。
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｜ なんと。もはや末期的だな……
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| 切ない話だ。
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| 4月20日には、「伊勢」と「日向」を初めとした港内の軍艦は第四予備艦に指定されます。
| 第四予備艦とは、事実上の戦力外通告。こうして「伊勢」と「日向」も、以後は地上砲台と同じ扱いに。
| そして7月24日、「日向」は凄まじいまでの爆撃を受けて大破着底。「伊勢」も大ダメージを受けます。
| 損傷した「伊勢」を修理しようとした7月28日、またもアメリカからの爆撃が。
| 「伊勢」は砲弾がカラになるまで対空射撃を続けるものの、11発もの爆弾を受けて大破着底。
| こうして2艦は、その数奇な生涯を閉じてしまいます。
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｜ 単なる砲台になっていたにもかかわらず、最後まで戦い抜いたんだな。
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| この「伊勢」の対空射撃が、日本戦艦最後の主砲発射だ……
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| さて、講義は以上です。「伊勢」型は、非常に評価の難しい戦艦でした。
| 航空戦艦として使われた事は一度もなく、戦艦としての砲戦経験もなし。
| その場しのぎに弄り回された失敗作、という評価も間違ってはいないでしょう。
| しかし広い輸送スペースを持った「伊勢」型、輸送任務は一級品……
| 後世の人間は、「伊勢」型をこう呼びました。「世界最強の輸送艦」と――
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｜ なんじゃそりゃ！
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| ただ航空戦艦という唯一の艦種だけあり、知名度はそれなりに高い……
| お世辞にも、傑作艦とは言えないがな。
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