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| 艦上爆撃機「彗星」は、九九式艦上爆撃機の後継となるべく開発された機体。
| その性能値は、まぎれもなく優れたものでしたが――
| 例によって開発は遅れ、さらに巧緻な設計は大量生産に向かないシロモノ。
| 故障も多発し、出るはずの性能値が満足に出せない有様。
| 「強い兵器ではなく、便利な兵器が良い兵器」という言葉をダメな意味で思い知らせてくれた爆撃機なんです。
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    | つまりは、駄作……?
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         | 駄作と言い切るには、多々の異論があるだろうが……
         | それでも、兵器として優れたものではなかったのがまた事実。
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| そんな彗星の開発が計画されたのは、1938年――太平洋戦争開戦前のことでした。
| ハインケル社から輸入したHe118を参考に、一三試艦上爆撃機(後の彗星)の計画が持ち上がったんです。
| この機に関しては新鋭の技術を導入するため、海軍の空技廠で開発を進めることになりました。
| 当時の艦上機はアウトレンジ戦法を重視し、高速性能と航続距離が重視されています。
| 一三試艦爆もその考え方の元で、高性能を実現しようとしたんですが――
| その際、エンジン選定において重大なミスをやってしまったんですよ。
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    | 重大なミス……?
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         | 結果論でもあるんだが、この時の判断が彗星の運命を決定づけることとなったんだ。
         | とにかくスピードは一級品で、迎撃機も追い付けないほどの艦爆を目指したんだが……
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| これまで日本軍航空機のエンジンは、ごく一部の例外を除いて空冷方式でした。
| しかしドイツを始めとした海外の高速軍用機は液冷エンジンが主流、He118も例外ではありませんでした。
| この一三試艦上爆撃機において、開発側は日本での慣例に逆らって液冷エンジンの採用を決定。
| He118に搭載された液冷エンジンDB601を国産化し、『熱田』という名で新艦爆に搭載することになったんです。
| 当然ながら生産側も整備側も空冷エンジンに慣れきっているため、液冷エンジンについては不慣れ。
| 全く違ったエンジン方式の導入は、結果的に様々な問題を引き起こしてしまうことになります。
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    | 空冷エンジン? 液冷エンジン?
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         | 簡単に言えば、エンジンの冷却方式による分類。
         | 日本機では陸海軍問わず空冷エンジンが主流で、ごく一部の例外があるくらい。
         | この彗星や陸軍戦闘機の飛燕などが液冷エンジンだが、その不調に悩まされる結果となった。
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| そして開発当初、一三試艦爆は大量生産される予定にありませんでした。
| だから生産性を度外視し、新機構や新技術をふんだんに取り入れる方針だったんですよ。
| こうして1940年11月に完成した試作一号機は、二人乗りでありながら零戦にさえ似たスリムなボディを実現。
| その飛行性能も極めて高く、海軍関係者を大いに魅了してしまいます。
| しかしその裏では、非常に製造が面倒で厄介な機体でもありました。
| 後に「芸術品」とも呼ばれるのは、褒めているのではなく揶揄されているんですね。
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    | 兵器は、芸術品じゃやっていけないよな……
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         | もともと彗星は、正規空母に乗せる分だけの少数生産予定だった。
         | しかし完成時は状況が違い、空母ばかりか陸上基地にも配備されることとなっていたんだ。
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| しかし試作1号機以降は実用化に手間取り、その完成は伸びる一方。
| そんな1942年、彗星の試作3号機と4号機は爆弾倉にカメラを搭載して簡易偵察型に改造されます。
| 空母「蒼龍」に配備し、偵察機として実用試験を受けることとなったんですね。
| そのうち1機は南方作戦中に失われ、残る1機はミッドウェイ海戦において母艦と運命を共にしたんです。
| こういった風に彗星は高速性能に着目され、艦上偵察機としても期待されていたんですよ。
| そして本来の爆撃機型に先行する形で、彗星は1942年10月に二式艦上偵察機として制式採用されます。
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    | 彗星の偵察機バージョンが、先にデビューしたのか。
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         | この二式艦上偵察機は非常に評判が良く、以降もなかなかの活躍を見せた。
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| さて、肝心の爆撃機型の開発状況はというと……やはり、遅々たるものでした。
| 1942年にはミッドウェイで大敗北を喫し、以降は主力の九九式艦上爆撃機の被害が増大。
| そんな状況でも後継の彗星は完成せず、九九艦爆は棺桶呼ばわりされることに。
| やっと彗星が完成し、前線へと配備され始めるのは1943年12月にまでずれ込んだんです。
| とは言え彗星の生産性は非常に悪く、九九艦爆との交代は非常にゆっくりとしたものでした。
| その高速性能や航続距離は、非常に優れた水準だったんですがね……
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 ・艦上爆撃機「彗星」(D4Y)
  九九式艦上爆撃機の後継で、非常に高い性能を誇った艦上爆撃機。
  しかしエンジンに問題があり、故障が多発し生産性も悪い問題機でもある。
  登場時は劣勢だったこともあり、活躍できた局面は少ない。

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    | うーむ……
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         | いわば彗星は、ガチガチにチューニングされたF1カーみたいなものだ。
         | どう考えても量産には向いていないし、整備も面倒なんだよ。
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| しかし高性能と裏腹に、液冷エンジン『熱田』の不調は凄まじいもの。
| ようやく前線に着いた彗星でも満足に飛んでくれず、とんだ問題児となってしまいます。
| いくら優れた性能を持っていても、まともに発揮できないのでは何の意味もありません。
| おまけにこの時期、制空権はほとんどアメリカ側が握っていた状態。
| 空母や基地に配備された彗星は低い稼働率に悩まされながら、苦戦を強いられることになります。
| 当然ながら、パイロットや整備員に非常に嫌われる存在となってしまいました。
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 艦上爆撃機「彗星」一一型
 ・全長:10.22m  ・全幅:11.50m  ・全高:3.29m  ・全備自重:3,650kg
 ・最大速度:552km/h  ・航続距離:3,890km  ・乗員:2名
 ・エンジン:愛知『熱田』二一型 液冷倒立V型12気筒(1,200hp)×1
 ・武装:7.7mm機銃×3、500kg爆弾×1 or 250kg爆弾×1、60kg爆弾×1
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    | まともに動いてくれないなら、どうしようもないよな。
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         | 一部の部隊は、それでも高い稼働率を誇ったんだがな……
         | そもそも整備員が、液冷エンジンに不慣れだったのも大きい。
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| 『熱田』の悪評判が前線で荒れ狂っている頃、出力と整備性を向上させた『熱田』三二型が登場。
| この『熱田』三二型を搭載した改良型が、彗星一二型なんですが――
| やはりエンジン不調が続発し、『熱田』の問題点が改善されたとは言い難い状況でした。
| さらに『熱田』は生産性が非常に悪く、彗星の本体に比べても仕上がりが遅れるという有様。
| それゆえ、エンジンの搭載されていない彗星のドンガラだけが余っていくという事になってしまいます。
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 一一型:液冷エンジンの『熱田』二一型を搭載した初期生産型。
 一二型:エンジンを『熱田』三二型に換装したタイプ。
 一二甲型:一二型の後方旋回機銃を13mm機銃に換装した武装強化版。
 一二戊型:一二型に20mm斜め銃を搭載した夜間戦闘機型。
 二二型:航空戦艦「伊勢」型のカタパルトで運用できるよう改造されたタイプ。
 二二甲型:二二型の後方旋回機銃を13mm機銃に換装した武装強化版。
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    | なんと。
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         | この首なし機(エンジンのない機体)が余るという状況は、陸軍戦闘機の飛燕でも見られた。
         | 飛燕も数少ない液冷エンジン搭載機であり、その生産性の悪さに苦しめられたんだ。
         | そんな状況への対策も、彗星と飛燕でほぼ共通していた。
         | なお「伊勢」型に搭載される予定だった彗星二二型は、「伊勢」型の講義で触れているぞ。
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| そうした厄介な事態に及び、とうとう海軍は彗星に空冷エンジンの『金星』搭載を決意します。
| 『金星』六二型に換装された彗星三三型として完成し、さっそく生産が始まることに。
| 当初は従来の一二型と平行生産されましたが、徐々に空冷エンジン搭載型へとシフトしていきます。
| しかしそれも1944年半ばのこと、もはや末期的な情勢となっていました。
| 1944年10月のレイテ沖海戦では基地攻撃隊の彗星が軽空母「プリンストン」を爆撃。
| 戦闘不能に追い込みましたが……目立った戦果はそれくらい、自軍の損失の方が明らかに多かったんです。
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 ・三三型:エンジンを『金星』六二型に換装したタイプ。
 ・三三戊型:三三型に20mm斜め銃を搭載した夜間戦闘機型。
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    | 性能低下は避けられなくても、信頼性の確かな空冷エンジン搭載に踏みきったわけか。
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         | なお彗星はその高速性を活かして、夜間戦闘機に改修されたタイプも存在する。
         | 月光で有名な斜め銃を搭載し、本土防空部隊などの配備され、意外にもそこそこ活躍したんだ。
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| そして1944年10月のレイテ沖海戦を境に、本格的に特攻が始まることになります。
| そうなると、彗星は特攻の筆頭機として扱われることとなりました。
| 事実上の特攻専用機である彗星四三型も登場し、次々にアメリカ艦隊へと突っ込んでいくことになります。
| そして玉音放送後、第五航空艦隊司令長官の宇垣纒中将が最後の特攻を行うんですが――
| その際に用いられた乗機も彗星であり、特攻に幕を引くこととなりました。
| 彗星の総生産数は2,160機――生産性が悪いと言われながらも、結構な数を造ったんです。
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 ・四三型:三三型をベースに、操縦席や燃料タンクを防弾化し、代わりに機銃を撤去した特攻専用機。
 ・五四型:エンジンを『誉』に換装したタイプだが、計画のみに終わる。
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    | 悲しい話だ。
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         | また異色なところでは、いわゆる「特攻拒否」で有名な芙蓉部隊というのもあった。
         | 各部隊で嫌われていた彗星を集め、かなりの戦果を挙げたんだが……
         | この部隊に関しては、後にまた講義しようと思う。
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| そういうわけで彗星は、兵器としては非常に問題児でした。
| 一部の部隊では高い稼働率をキープしていたという反論もありますが……一部ではダメでしょう。
| 原因がどこにあったかはともかく、全体で見れば稼働率が非常に低かったのは事実。
| 結局のところ、システムの中で活きていない――そういう面が、あまりにも色濃いです。
| まあこんな風に傑作・駄作論争の激しい彗星ですが、問題機であったことは紛れもない事実ですね。
| そういうわけで、彗星の講義を終わりましょう。
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 〜|  ||□|  √ ̄ (___ノ〜 √ ̄ (___ノ〜
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    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
    | たまには、明るく締めくくってほしいものだが。
    \____              ∧
         / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
         | 日本機は、どれもこれも悲劇的だからなぁ。
         | アメリカ機なんて、HAHAHAHAHAなノリで講義できるんだが。
         \__________________________


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