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| 今回は、月光に代表される日本海軍の夜間戦闘機を見ていきましょう。
| 航空技術が発展した現在ならいざ知らず、第二次世界大戦中などは夜間飛行に危険を伴いました。
| さらに視界の問題により、夜間に空戦を行うのは非常に難しいもの。
| よって夜間での迎撃も難しいということになり、爆撃というのは夜間に行われることが多かったんです。
| もちろん爆弾を落とされる側も、夜に飛来してくる爆撃機をただ眺めているわけにもいきません。
| こうして、夜間専用の迎撃機――夜間戦闘機が生まれたんですよ。
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    | 用途に応じて、必要とされる能力も異なる……それが、兵器史のテーマだな。
    | じゃあ、夜間戦闘機に必要な能力は何なんだ?
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         | 視界が悪く戦闘機同士の戦いは起きないから、機体は鈍重で問題ない。
         | 優れた速力と攻撃力を備え、複数人が乗り込み、レーダーを備えているのが理想だが……
         | レーダーなどの電子機器に関しちゃ、日本軍は大の苦手だった。
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| 日本海軍夜間戦闘機の代表格である月光は、実は夜間戦闘機として開発されたものではありませんでした。
| まだ日本軍が夜間戦闘機という概念を持っていない時期に開発された、実に数奇な運命の機体――
| それが後の月光であり、そもそもは別の用途で開発された戦闘機なんです。
| 月光の前身である十三試双発陸上戦闘機の開発が始まったのは1938年であり、太平洋戦争前。
| 世界中で、エンジンを二つ載せた戦闘機――双発戦闘機がブームになっていた頃の話。
| この時期から開発がスタートした十三試陸戦が、二転三転して夜間戦闘機になるというわけなんですね。
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    | この時期の日本には、夜間戦闘機という機種そのものが存在しなかったのか?
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         | この種の機体は、敵の夜間爆撃を食らうようになって始めて必要性を痛感するもの。
         | ドイツだってそうだった。
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| そもそもの発端は、日中戦争における九六式陸上攻撃機の渡洋爆撃でした。
| この長距離爆撃作戦に主力戦闘機の九六艦戦では護衛できず、九六陸攻の被害が増大した――
| すっかりおなじみとなったこの事例は、後の月光が産声を上げるきっかけになります。
| 海軍は長距離での護衛もできる戦闘機を欲し、双発長距離戦闘機の開発をスタートさせたんですよ。
| それが、十三試双発陸上戦闘機。後に夜間戦闘機として活躍するとは、誰が想像したでしょうか。
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 ・九六式陸上攻撃機(G3M)
  1935年に完成した陸上攻撃機で、日中戦争や太平洋戦祖初期に活躍。
  当時としては極めて優れた速度と航続力を誇り、緒戦の快勝に大きく貢献する。
  その一方で後継の一式陸上攻撃機にも通じる脆さを見せていた。
  太平洋戦争初期から旧式化の兆しを見せ、一式陸攻に任を譲って前線から退いていく。

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    | 元々は、長距離戦闘機として開発が始まったんだな。
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         | なおこの頃、世界でも双発戦闘機の開発が流行していた。
         | ドイツのMe110やイギリスのボーファイター、フランスのポテP63……
         | そう言う流れに乗り遅れないよう、双発戦闘機をテストしてみたかったっていう意味もある。
         | 結局のところ、どの国でも双発戦闘機はモノにならなかったわけだが。
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| こうして海軍は1938年11月、十三試双発陸上戦闘機の開発を中島に指示します。
| これは空母での運用は考えない、陸上の飛行場から離発着する3人乗りの大型戦闘機でした。
| 海軍の要求仕様は理不尽と言えるほど過酷なものであり、中島は開発に苦心。
| しかし1941年3月にこの十三試陸戦一号機が完成した時には、零戦が大活躍していました。
| 広大な航続力で長距離任務はオマカセの零戦がある以上、十三試陸戦の存在意義は開発時点で微妙。
| おまけにその運動性能も低く、長距離戦闘機としての採用は流れてしまいます。
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    | なんか可哀想だな……せっかく完成したのに、すでにお役御免だなんて。
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         | 運動性能が低かったのは、双発(エンジンが二つ)という重量機である以上仕方がない。
         | 双発機で零戦と同等の運動性能ってのは、もはや物理的に不可能だったんだ。
         | 海軍は運動性能にこだわりすぎ、航空機開発方針を誤った――という批判も多いな。
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| それでも十三試陸戦は鈍重でありながら、速度性能や航続性能はなかなかのものでした。
| そこで、「偵察機にしてみてはどうか?」という声が聞こえるようになります。
| こういうわけで、十三試陸戦は二式陸上偵察機として採用されたのですが――
| 少し後に、より優れた二式艦上偵察機やら、陸軍の大傑作である百式司令部偵察機が登場。
| これらの傑作偵察機が重宝がられるに及んで、二式陸上偵察機はすっかり立場と出番を失ってしまいました。
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    | なんて哀しい機体なんだ……偵察機という分野でもお払い箱か。
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         | 本来なら、ここで十三試陸戦はそのまま消滅してしまっただろう。
         | しかし、とある軍人の発案が十三試陸戦の運命を変えたんだ。
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| ここで、一人の海軍軍人を紹介しなければいけません。
| 彼の名は、小園安名中佐――やや、奇人っぽい傾向のあった人物です。
| とは言え小園中佐は決して駄目な人間ではなく、むしろ立派な名将とも言えるでしょう。
| ただ、いろいろ変わったエピソードを残している人で……とにかく、面白い人です。
| そんな小園中佐が編み出した発明が「斜め銃」であり、その存在が十三試陸戦の運命を一変させました。
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    | へ、変人なの……?
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         | 別の講義でやるかもしれないが、色々と変わった人だ。
         | それでいながら功績も非常に大きく、日本海軍の軍人を語る上で欠かせない人物でもある。
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| この当時、米軍の頑丈な爆撃機が海軍パイロットを悩ませていました。
| そこで小園中佐は、「斜め上に向けて機銃を取り付け、敵爆撃機の斜め下から追う形で撃てばよい」と発案。
| そんな案に海軍上層部は取り合おうとしませんでしたが、小園司令は粘り強く交渉。
| とうとう、「そんなにやりたいんだったら、用無しの十三試陸戦でやれ」という投げ槍な許可をもらいます。
| そういういきさつで、小園中佐の率いる第二五一航空隊に2機の十三試陸戦が配備されました。
| この十三試陸戦に斜め向きの20mm機銃が取り付けられ、特別な戦闘機としての改造が施されたんです。
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    | 確かに、珍発明にも思えるよな……
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         | 「斜め銃」という言葉だけ聞くと珍案のようだが、実に合理的な仕掛けだ。
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| そんな小園中佐の第二五一航空隊は、ラバウル基地にいました。
| 毎晩のようにアメリカ爆撃機が少数で飛来し、爆弾をバラ撒いては帰っていきます。
| 当時の零戦パイロットは夜間飛行の経験などなく、毎夜の爆撃に唇を噛むだけだったんですね。
| しかし1943年5月21日の深夜は違い、斜め銃を載せた2機の十三試陸戦改造型が待機していました。
| それに乗っているのは、夜間飛行に慣れている水上偵察機のパイロット。
| そして十三試陸戦改造型は斜め銃を用い、なんと一晩に2機ものB-17を撃墜してしまったんです。
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    | おお、やった!!
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         | 敵爆撃機の後方からそっと忍び寄り、斜め銃で叩き落とすというのが基本スタイル。
         | 敵から見れば、そっと後方から近寄る月光の姿は、真っ暗な大地に紛れて非常に見えにくい。
         | それに対し月光側からは、地上の探照灯から照らされた敵爆撃機の姿がよく見えるんだ。
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| その後も次々と十三試陸戦改造型は戦果を叩き出し、その撃墜数はB-17とB-24合わせて10機。
| 驚いたアメリカ軍はラバウルへの夜間爆撃を中止し、海軍上層部も態度を変えました。
| 持て余していた十三試陸戦に改造を施し、夜間戦闘機「月光」として制式採用したんです。
| 三座だったのを二座にし、上向きと下向き2挺づつ斜め銃を搭載したんですよ。
| こうして月光は、南方の基地を悩ませていた夜間爆撃に立ち向かうことになりました。
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 ・夜間戦闘機「月光」(J1N)
  1943年8月に採用された夜間戦闘機で、元々の機体は用途のなかった双発の戦闘機。
  これに斜め銃を搭載することにより、予想外の戦果を挙げることに成功。
  本土防空戦では苛烈化していくB-29の爆撃に対向するも、戦局に影響を与えることはできなかった。

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    | あんなに役立たず扱いされた双発戦闘機が、こんな事になるなんて……
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         | 小園司令は以後も斜め銃にこだわり、零戦やら雷電にまで斜め銃を搭載していった。
         | 「放っておけば、全ての海軍機の機銃が斜めにされてしまう」と恐れられたほど。
         | なお雷電の斜め銃は効果が薄く、小園司令に内緒でこっそり元に戻したそうだ。
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| こうして南方に送られ、夜の戦いを始めた月光ですが……
| この頃は連合軍の優勢に傾き、敵は夜間ではなく昼間に爆撃を仕掛けてくるようになってきました。
| 夜は忍者のような戦闘スタイルで活躍できる月光も、お日様の下では鈍重な戦闘機。
| こうなると非常に分が悪くなり、月光は苦戦を強いられていきます。
| さらにこの時期から日本軍は南方の拠点を次々と失い、月光も本土に戻らざるを得なくなってしまいました。
| しかしここから、月光の活躍第二幕が始まるんですよ。
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 夜間戦闘機「月光」(一一型)
 ・全長:12.13m  ・全幅:17.0m  ・全高:4.56m  ・全備重量:6,900kg
 ・最大速度:507.4km/h  ・航続距離:2,547km  ・乗員:2名
 ・エンジン:中島『栄』二一型 空冷星型14気筒(1,130hp)×2
 ・武装:上向き20mm斜銃×2、下向き20mm斜銃×2
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    | なんと! まだ月光は活躍するのか!
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         | また月光は、南方において夜間偵察や夜間の敵基地攻撃にも用いられた。
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| 本土においてアメリカ機の夜間爆撃が激しくなってくると、ここでも月光は大活躍します。
| 特に厚木基地所属である第三〇二航空隊の活躍はめざましいものでした。
| 遠藤幸男大尉は、斜め銃生みの親である小園中佐の部下でもある夜のベテラン。
| 夜戦のエキスパートである彼は、月光を駆って敵爆撃機を多数撃墜しました。
| 他にも黒鳥四郎少尉と倉本十三上飛曹のペアは、一晩で5機を撃墜するという戦果を挙げています。
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    | 夜のベテランって……なんだかいやらしいな。
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         | シンイチ……
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| しかしB-29が昼間に爆撃を行うようになったり、護衛にP-51を連れ歩くようになると状況は一変。
| 昼間の月光は水から上がった魚同然であり、夜にしても敵戦闘機には太刀打ちできません。
| 月光の存在価値は一気に低下し、そのまま終戦を迎えてしまうということになったんです。
| また月光の生産も1944年10月に終了、苦境の中では生産現場にも余裕はありませんでした。
| 元から夜間戦闘機は配備数が限定されるので、そのような少数機を造る余裕はなかったんですよ。
| なお後期の月光にはレーダーが搭載されていましたが、その性能は極めて低かったようですね。
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 ・一一型(J1N1-S):初期型で、上向きと下向きの20mm機銃を2挺づつ搭載
 ・一一甲型(J1N1-Sa):下向き機銃を廃止し、上向き機銃を3挺に増やしたタイプ。
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    | やっぱ、レーダーはダメだったか……
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         | この斜め銃がドイツに伝えられ、Bf110に搭載されて戦果を挙げたという話があるが……
         | それは事実誤認で、Bf110の斜め銃はドイツが独自に発案したもの。
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| さて……月光が活躍を見せたのと同時期の1943年、海軍は夜間戦闘機の発展に取り組み始めました。
| B-29という最新型爆撃機の情報も伝わり、高性能な夜間戦闘機の必要性が増していたんですよね。
| ドイツも夜間爆撃に悩み、夜間戦闘機の開発に追われているという事情も伝え聞いていました。
| そういうわけで、月光よりも性能の高い夜間戦闘機の新規開発を愛知航空機に命じます。
| それと同時に、既存の爆撃機を改造して夜間戦闘機にしようという計画も生まれました。
| 新規開発することとなったのが電光、大型陸上爆撃機を改造して夜間戦闘機としたのが極光ですね。
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    | たぶん改造機の方が早く完成するから、それで急場を凌ぎ、新鋭機の登場――って流れだな。
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         | おそらく、そういう展開を海軍も期待したんだろうな。
         | 水上戦闘機開発の時にも見られた流れだ。
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| まず、新規開発となった電光ですが――
| 例によって海軍の要求性能は厳しく、『誉』二二型を2基も搭載することに決定します。
| 他にもゴテゴテと装備を搭載すると、驚くべき事に10トンを超えるという計算に。
| 完成すれば、日本最大の巨大戦闘機となったんですが――1944年には、計画の中止が決定。
| 逼迫する情勢の中、そんな夢みたいなものは造っていられないということですね。
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 ・十八試夜間戦闘機「電光」(S1A)
  日本海軍が開発を計画した夜間戦闘機で、試作機も完成しないままに終戦。
  10トンを超える巨大戦闘機として計画されていた。

 
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    | なんと、夢轍に終わってしまったのか。
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         | 10トン超えでは、完成したところで戦闘機として使えるはずがない。
         | なお計画中止後も、研究のために試作機2機の開発は続けられたんだが――
         | 米軍の空襲により2機とも破壊され、結果的に電光は1機たりとも完成しなかった。
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| そして、
陸上爆撃機「銀河」を改造した夜間戦闘機「極光」ですが――なかなか資料も少なく、厄介な機体です。
| 銀河とは日本海軍の所持機のうち最大規模の機体で、スペースに余裕がありました。
| この銀河のエンジンを換装して斜銃やレーダーを搭載、96機が生産されたようですね。
| 実戦配備されたのですが、少数生産機なのでほとんど活躍はありません。
| しかも、多くの部隊では極光の斜め銃を取り払って爆撃機型に戻してしまったとか。
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 ・夜間戦闘機「白光」(P1Y1-S)/「極光」(P1Y2-S)
  陸上爆撃機「銀河」に斜め銃やレーダーを搭載、エンジンを換装して夜間戦闘機に改造した機体。
  その機数は非常に少なく、活躍はほとんど記録されていない。

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    | 謎が多いのか?
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         | 記録があんまりなく、色々と曖昧な機体なんだ。
         | 最末期で、混乱状態に近いしな。
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| 極光には白光という別名もあり、これがまた非常にややこしい存在。
| この機体は生産した会社によってエンジンが異なるという面倒な事情があります。
| 今までは、搭載しているエンジンによって極光白光の名が呼び分けられているとされていたんですが――
| 最近では、「当初の白光という名前では月光と似ていてややこしいから、極光に改名した」という説が存在。
| 近年の研究を見ると、どうやらこちらの方が主流みたいですね。
| ともかく極光は、さほどの活躍はありませんでした。
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    | なんか、良く分からないな……
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         | パイロットやら関係者の記録を見ても、極光に関してはかなりグダグダ。
         | 記憶も記録も曖昧で、証言も人によって違う。
         | ともかく、夜戦型の銀河極光と呼ばれていたことは確かだ。
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| ともかく、最後になりましたが……
| 日本の夜間戦闘機は、外国では夜間戦闘機と言えるものではなかったということも言っておかねばなりません。
| 実際にアメリカは、月光を夜間戦闘機とみなしていなかったフシがあります。
| 日本に対する戦略爆撃を実行したルメイは、「日本には夜間戦闘機がなかったから――」という風に発言。
| 彼らからすれば、まともなレーダーを積んでいない戦闘機など夜戦とは呼べない、といったところでしょうか。
| 技術力の差がこんなところでも重くのしかかる、そんな日本海軍夜間戦闘機の講義でした。
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    | ルメイの発言は、あんなもん夜間戦闘機じゃないっていう意味の皮肉なのか?
    | それとも、本当に月光の存在を失念してたのか?
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         | それは分からないが……
         | どちらにしろ、日本の夜間戦闘機と諸外国の夜間戦闘機には隔たりがあったのも事実。
         | 仕方ないと言えば仕方ないんだが、哀しい話だ。
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