/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| さて、今回は第一次大戦と第二次大戦の合間に登場した多砲塔戦車について講義しましょう。
| この多砲塔戦車というのは、その名前通り複数の砲塔を備えた戦車のこと。
| これは戦車の理想型がまだ確定していなかった時代に出現した、試行錯誤の一つの形と言えるでしょう。
| 一時期だけ世界的なブームを巻き起こし、そしてあっという間にダメさが証明された形式でもあります。
\__  _________________________________________
━━━∨━━━━━━━━━━━━━━━

  ,__
  iii■∧   /                  (・) |ヽ
━ (,, ゚Д゚) / ━━━━━ ∧∧━━━━  《 //|
   |   つ ∇      (゚Д゚,,)      /_ V/レ'
   |  |┌─┐   /⊂   ヽ    /⊂  ヽ
 〜|  ||□|  √ ̄ (___ノ〜 √ ̄ (___ノ〜
   ∪∪ |   |  ||   ━┳┛  ||   ━┳┛
 ̄ ̄ ̄ ̄|   | ====∧==========
    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
    | ルノーFT17が登場して、戦車の基本スタイルは定まったんじゃなかったのか?
    \____              ∧
         / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
         | あれよりも、もっと良い形があるんじゃないか?
         | 重戦車なら、あの形にこだわらなくてもいいんじゃないか?
         | ……そういう試行錯誤の結果、様々な形式が模索されたんだ。
         | その結果、FT17のスタイルが最も合理的だと判明したわけだな。
         \______________________________


/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| そもそも多砲塔戦車に正確な定義はありませんが、その始祖と言えるのは英国のインディペンデント重戦車
| これは1920年代に開発された重戦車であり、とにかく攻撃力を追求した敵陣突破車両でした。
| そういうわけで主砲塔の他に、副砲塔を4つも搭載しているという陸上戦艦的な発想で生まれた車両。
| しかし世界恐慌が始まり、イギリスの軍事予算も大削減という事態に陥ってしまいます。
| この戦車はコストが掛かりすぎるということで開発は打ち切られ、事実上の実験車両で終わったのですが……
| 多砲塔戦車に他国も興味を持ち、こぞって開発を始めるという事態になりました。
\__  ___________________________________________
━━━∨━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 ・インディペンデント重戦車
  イギリスの開発した多砲塔戦車。
  コストが高騰してしまったのと予算削減が重なり、試作車1両で開発は打ち切られてしまう。
  ,__
  iii■∧   /                  (・) |ヽ
━ (,, ゚Д゚) / ━━━━━ ∧∧━━━━  《 //|━━━━━━━━━━━━━━━━━━
   |   つ ∇      (゚Д゚,,)      /_ V/レ'
   |  |┌─┐   /⊂   ヽ    /⊂  ヽ
 〜|  ||□|  √ ̄ (___ノ〜 √ ̄ (___ノ〜
   ∪∪ |   |  ||   ━┳┛  ||   ━┳┛
 ̄ ̄ ̄ ̄|   | ====∧==========
    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
    | これより以前は、多砲塔戦車は存在しなかったのか?
    \____              ∧
         / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
         | 多砲塔戦車に正確な定義はないから、当て嵌まるような車両も幾つかある。
         | ただ戦間期に始まった多砲塔戦車ブームのきっかけになったのは、この車両だ。
         \__________________________________


/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 実際のところ、インディペンデント重戦車に始まった各国の多砲塔戦車には共通する大欠点がありました。
| 砲塔をいっぱい搭載している影響で重量が増加、速度性能は嫌でも下がってしまうんです。
| さらに致命的なのは、複数の砲塔を備えているせいで装甲を厚くできなかったこと。
| 多砲塔戦車は重戦車の割に、例外なく装甲は薄かったんですよ。
| また砲塔同士が相互干渉し、射界は極めて狭いという有様。
| 多砲塔を生かして複数の敵への同時対処なんて、実際には夢物語だったんです。
\__  _________________________________________
━━━∨━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 インディペンデント重戦車
 ・全長:7.747m  ・全幅:3.20m  ・全高:2.692m  ・重量:31.5t  ・乗員:8名
 ・最大出力:398hp  ・最大速度:32km/h  ・行動距離:不明  ・装甲厚:8〜28mm
 ・エンジン:アームストロング・シドレー(V型12気筒空冷ガソリン)
 ・武装:3ポンド戦車砲×1、7.7mmヴィッカーズ重機関銃×4

 写真 写真
  ,__
  iii■∧   /                  (・) |ヽ
━ (,, ゚Д゚) / ━━━━━ ∧∧━━━━  《 //|━━━━━━━━━━━━━━━
   |   つ ∇      (゚Д゚,,)      /_ V/レ'
   |  |┌─┐   /⊂   ヽ    /⊂  ヽ
 〜|  ||□|  √ ̄ (___ノ〜 √ ̄ (___ノ〜
   ∪∪ |   |  ||   ━┳┛  ||   ━┳┛
 ̄ ̄ ̄ ̄|   | ====∧==========
    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
    | 見た目はかなり強そうなのにな、砲塔がいっぱいあって。
    \____              ∧
         / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
         | 結局のところ、多砲塔戦車は大失敗といってもいい。
         | 全周砲塔一つを備えた戦車の方が、遙かに性能が高かったんだからな。
         | 各国とも実際に多砲塔戦車を試作し、その事実に気付くことになる。
         \______________________________


/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| そんなインディペンデント重戦車に、ソ連は興味を示します。
| イギリスに「売ってくれ」と打診しましたが、すげなく断られてしまいました……ってか、そもそも生産してませんし。
| そこでソ連が1932年に自力で開発した多砲塔戦車が、T-35重戦車なんですが――
| この車両とこれに連なる系譜に関しては、また別の講義で解説しましょう。
| とりあえずこのT-35自体は、多砲塔戦車の欠点をもれなく抱えた大失敗作でした。
| いちおう量産され独ソ戦にも投入されましたが、良い餌食となったのみです。
\__  ___________________________________________
━━━∨━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 ・T-35
  ソ連が1932年に完成させた多砲塔戦車。
  砲塔を増やしたことによるメリットはほとんどなく、装甲が薄いというデメリットばかりが目立った。
  実戦にも参加しているが、ドイツにとってなんら脅威とはならなかった。
  なお、このT-35の系譜がKV-1系統へと発展していく。
  ,__
  iii■∧   /                  (・) |ヽ
━ (,, ゚Д゚) / ━━━━━ ∧∧━━━━  《 //|━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
   |   つ ∇      (゚Д゚,,)      /_ V/レ'
   |  |┌─┐   /⊂   ヽ    /⊂  ヽ
 〜|  ||□|  √ ̄ (___ノ〜 √ ̄ (___ノ〜
   ∪∪ |   |  ||   ━┳┛  ||   ━┳┛
 ̄ ̄ ̄ ̄|   | ====∧==========
    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
    | これでソ連は、多砲塔戦車が役立たないことを思い知ったわけだな。
    \____              ∧
         / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
         | むしろ、別方面に発展していくわけだが。
         \__________________________


/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| そしてソ連ばかりか、ドイツもインディペンデント重戦車に多大な興味を示していました。
| 当時のドイツでは機動力を重視した電撃戦構想を打ち立て、それに沿った戦車開発を進めていましたが……
| 決してドイツ軍全体が電撃戦思想を重視していたとは言えず、敵陣突破用の車両も検討されていたんです。
| こうして1934年、20トン級多砲塔戦車の開発がスタート。この車両の秘匿名称はノイバウフォールツォイク
| 
重トラクターをベースに、複数の砲塔に7.5cm砲と3.7cm砲、そして重機関銃を備えた戦車です。
| 頭文字を取って、Nb.Fz.戦車と呼ばれるのが一般的ですね。
\__  ___________________________________________
━━━∨━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 ・ノイバウフォールツォイク
  ドイツの開発した多砲塔戦車。
  その性能はドイツ上層部を満足させるものではなく、より優れた多砲塔戦車の開発が指示される。
  よってこの車両は、試作だけで終わることに。
  後には電撃戦の成功によりこの類の戦闘車両自体が見放され、その系譜は途絶えてしまう。
  ,__
  iii■∧   /                  (・) |ヽ
━ (,, ゚Д゚) / ━━━━━ ∧∧━━━━  《 //|━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
   |   つ ∇      (゚Д゚,,)      /_ V/レ'
   |  |┌─┐   /⊂   ヽ    /⊂  ヽ
 〜|  ||□|  √ ̄ (___ノ〜 √ ̄ (___ノ〜
   ∪∪ |   |  ||   ━┳┛  ||   ━┳┛
 ̄ ̄ ̄ ̄|   | ====∧==========
    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
    | 1934年というと、II号戦車III号戦車の開発も始まった時期か。
    \____              ∧
         / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
         | まだまだ、機動戦重視という戦車開発方針にはドイツ国内でも懐疑的な者が多かった。
         | ノイバウフォールツォイクは、そういう時期の産物だな。
         \____________________________________


/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| このノイバウフォールツォイクは試作車両が1935年に2両製作され、後に増加試作車3両が完成。
| しかしドイツはノイバウフォールツォイクの性能に納得せず、強化版のVK6501の開発を指示します。
| それが1939年のことなんですが――同年にポーランド戦が勃発し、電撃戦が大当たり。
| とにかく機動性を重視する戦術が威力を発揮したに及び、この種の戦車の必要性が考え直されました。
| 多砲塔戦車は敵陣を正面から突破する戦車であり、いわば第一次世界大戦時の思想の産物。
| こんな戦車いらないってことで、VK6501の開発も中止が決定してしまいます。
\__  ________________________________________
━━━∨━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 ノイバウフォールツォイク
 ・全長:6.60m  ・全幅:2.19m  ・全高:2.98m  ・重量:23.41t  ・乗員:6名
 ・最大出力:250hp  ・最大速度:30km/h  ・行動距離:120km  ・装甲厚:13〜20mm
 ・エンジン:BMW Va(直列6気筒液冷ガソリン)
 ・武装:24口径7.5cm戦車砲KwK×1、45口径3.7cm戦車砲KwK×1、7.92mm機関銃MG13×3

 写真
  ,__
  iii■∧   /                  (・) |ヽ
━ (,, ゚Д゚) / ━━━━━ ∧∧━━━━  《 //|━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
   |   つ ∇      (゚Д゚,,)      /_ V/レ'
   |  |┌─┐   /⊂   ヽ    /⊂  ヽ
 〜|  ||□|  √ ̄ (___ノ〜 √ ̄ (___ノ〜
   ∪∪ |   |  ||   ━┳┛  ||   ━┳┛
 ̄ ̄ ̄ ̄|   | ====∧==========
    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
    | 結局のところ残ったのは、ノイバウフォールツォイクの試作5両のみか。
    \____              ∧
         / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
         | 最初に試作された2両は軟鋼で出来ていたので、実戦への参加は不可能だった。
         | 次の3両はちゃんとした装甲を備えていたがな。
         \__________________________________


/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| そして……ドイツはなんと、ノイバウフォールツォイク3両を実戦投入したんです。
| それも困窮しきった大戦末期ではなく、1940年のノルウェー戦とかなり早い時期。
| 第40特別戦車大隊第3中隊にノイバウフォールツォイク3両が編制、オスロに進軍します。
| その途上で1台のノイバウフォールツォイクが故障して動かなくなり、道路を通せんぼ。
| 仕方ないので、味方工兵が爆破処理してしまったということです。
| そんなハプニング以外、ノイバウフォールツォイクはほとんど戦闘に巻き込まれませんでした。
\__  ____________________________________
━━━∨━━━━━━━━━━━━━━━

  ,__
  iii■∧   /                  (・) |ヽ
━ (,, ゚Д゚) / ━━━━━ ∧∧━━━━  《 //|
   |   つ ∇      (゚Д゚,,)      /_ V/レ'
   |  |┌─┐   /⊂   ヽ    /⊂  ヽ
 〜|  ||□|  √ ̄ (___ノ〜 √ ̄ (___ノ〜
   ∪∪ |   |  ||   ━┳┛  ||   ━┳┛
 ̄ ̄ ̄ ̄|   | ====∧==========
    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
    | ノルウェーって確か、陸上ではほとんどまともに抵抗できなかったんだよな。
    \____              ∧
         / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
         | こうして残る2両は、ノルウェー要塞の守備に就くことに。
         | そして1940年末、任務を終えてドイツ本土へと送り返される。
         \_____________________________


/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| さらにドイツは何を血迷ったのか、この2両のノイバウフォールツォイクを東部戦線に投入。
| バルバロッサ作戦に参加した2両は、ウクライナへの進撃途中にソ連重戦車KV-1に遭遇します。
| ソ連の誇るバケモノ重戦車の前では、ノイバウフォールツォイクの装甲などブリキ同然。
| こうしてKV-1の主砲が火を噴き、2両とも一瞬でスクラップにされてしまったということです。
\__  _____________________________________
━━━∨━━━━━━━━━━━━━━━

  ,__
  iii■∧   /                  (・) |ヽ
━ (,, ゚Д゚) / ━━━━━ ∧∧━━━━  《 //|
   |   つ ∇      (゚Д゚,,)      /_ V/レ'
   |  |┌─┐   /⊂   ヽ    /⊂  ヽ
 〜|  ||□|  √ ̄ (___ノ〜 √ ̄ (___ノ〜
   ∪∪ |   |  ||   ━┳┛  ||   ━┳┛
 ̄ ̄ ̄ ̄|   | ====∧==========
    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
    | なんてこった。
    \____              ∧
         / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
         | この一件に関しては、相対したソ連側の資料も残っている。
         | 「見慣れないドイツ戦車を発見。砲弾を撃ち込んだら、驚くほどバラバラになった。
         |  あれは何だったのだろう、さっぱり分からない」
         | そりゃ15mm程度の装甲にKV-1の主砲を撃ち込まれたら、紙屑同然だったろうな。
         \__________________________________


/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| では、軟鋼製のノイバウフォールツォイク2両はどうなったか……これがまた、妙なところで活躍していました。
| 砲塔がいっぱいの外見だけを見るとなんとも強そうなので、宣伝用に使われたんです。
| パレードのお供に、演説台の代わりにと大活躍。無敵ドイツ軍の風格を内外ともにアピール。
| さらに戦車工場の近くにいかにも意味ありげに保存しておいたので、連合軍側はすっかり騙されました。
| バリバリの現役戦車と勘違いし、「かなりの数が量産されている」とか「あれが最新のV号戦車だ」とか大混乱。
| 妙なところで連合軍にしてやった車両、それがノイバウフォールツォイクなんです。
\__  ___________________________________________
━━━∨━━━━━━━━━━━━━━━

  ,__
  iii■∧   /                  (・) |ヽ
━ (,, ゚Д゚) / ━━━━━ ∧∧━━━━  《 //|
   |   つ ∇      (゚Д゚,,)      /_ V/レ'
   |  |┌─┐   /⊂   ヽ    /⊂  ヽ
 〜|  ||□|  √ ̄ (___ノ〜 √ ̄ (___ノ〜
   ∪∪ |   |  ||   ━┳┛  ||   ━┳┛
 ̄ ̄ ̄ ̄|   | ====∧==========
    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
    | 見た目だけは強そうなのが、こんなところで役に立つとは……
    \____              ∧
         / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
         | なおソ連の多砲塔戦車T-35も、パレードによく使われていた。
         | この種の戦車は見た目が非常に強そうなので、宣伝戦略には最適だったようだ。
         \__________________________________


/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 結局のところ多砲塔戦車というのは、第一次世界大戦時の陸上戦艦的な発想で生み出された産物。
| 戦間期に試行錯誤の一環として開発が進み、第二次世界大戦にも少数が姿を見せましたが――
| 結局のところ、それらの発想が間違っていることを証明しただけでした。
| こうして、全周砲塔を単独で搭載している戦車の方が遙かに合理的であることが判明。
| そんな、一時期だけの徒花のような存在でした――ってことで、今回の講義を終わりましょう。
\__  _______________________________________
━━━∨━━━━━━━━━━━━━━━

  ,__
  iii■∧   /                  (・) |ヽ
━ (,, ゚Д゚) / ━━━━━ ∧∧━━━━  《 //|
   |   つ ∇      (゚Д゚,,)      /_ V/レ'
   |  |┌─┐   /⊂   ヽ    /⊂  ヽ
 〜|  ||□|  √ ̄ (___ノ〜 √ ̄ (___ノ〜
   ∪∪ |   |  ||   ━┳┛  ||   ━┳┛
 ̄ ̄ ̄ ̄|   | ====∧==========
    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
    | 切ない話だな。
    \____              ∧
         / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
         | こういう失敗を積み重ねて、現在の理想型があるんだよ。
         | その現在の形すら、本当に理想なのかは分からないんだけどな。
         \___________________________

「陸上兵器・イギリス」に戻る
「陸上兵器・ドイツ」に戻る
全講義一覧に戻る
左メニューが表示されていない方は、ここをクリック inserted by FC2 system