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| うらー! 今回は、ソ連重戦車KVシリーズとISシリーズについて講義するのら。
| この一連のシリーズは、前大戦においてドイツの戦車を返り討ちにしたソ連陸軍の誇る重戦車。
| KV-1T-34と組み、独ソ戦初期においてドイツ軍に大ショックを与えた「怪物」戦車。
| そしてIS-2は、大戦期のソ連戦車を代表する存在、いわばソ連版ティーガーなのらよ。
| そんなソ連の重戦車達がどのように生まれたか、うぉー!
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    | 鬼戦車T-34は、確か中戦車だったな。
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         | その通り。今回は一つ上のウェイト、重戦車の話だ。
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| KVシリーズを語る前に、まずT-35重戦車のことを思い出してほしいのら。
| 戦間期の一時期、大国の間で「陸上戦艦」という考え方を継いだ多砲塔戦車がブームになったのられ。
| 中でもソ連は、多砲塔戦車を実際に量産した数少ない国家だったのらけれど――
| 砲塔がたくさん載っているという関係上、重量がアップして機動性は最悪。
| 装甲にまで重量制限のしわ寄せが来たあげく、さらに砲塔が多いと装甲も張りにくいという有様。
| それでいながら、砲塔同士が干渉しあって攻撃力もほとんど期待できない――つまり、完全な失敗作っす。
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      ミ   ★      .゙ミ ・T-35重戦車
      ミ;======゙ミ  ソ連が1935年に完成させた多砲塔戦車。
     ,/ ● L_/    'i,  この種の戦車の例に漏れず、軽装甲で性能は良くない。
    /     l ,/  ●   i  独ソ戦初期には前線に投入されているが、簡単に餌食にされた。
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    | それでも、60両ほど量産しちまったんだよな。
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         | ソ連は失敗にもめげず、多砲塔戦車への夢を諦めなかったんだが……
         | スペイン内戦に介入した経験により、より厚い装甲が重要であることが判明。
         | 今後は火力よりも、防御力を優先するような形でプランが進んでいくんだが――
         | そうすると、多砲塔戦車というスタンス自体に問題が生じるのは当然の成り行き。
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| そういうわけで、重装甲を施すためにも余計な砲塔は撤去してしまえ、という考え方が巻き起こってきました。
| 同志スターリンの「なぜ戦車をデパートにする(ごてごてと砲塔を載せる)のだ?」という一言で方針は決定。
| 砲塔の数が減らされ、主砲と副砲の二段構えということで新鋭重戦車のプランはまとまりすみぜる。
| そしていよいよ、そのプランに従った形で試作車両を設計することに。
| ここで二つの設計局に競作させ、より優れた方を採用することになったのられ。
| こうしてバルイコフ設計局とコーチン設計局が、それぞれ新重戦車の設計をスタートしたんらよ。
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    | また、スターリンの一言か……
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         | しかしスターリンの判断は、この上もなく正解だったことが後に実証される。
         | なおコーチン設計局の中心人物は、29歳の若き技師ジョゼフ・コーチン。
         | 彼が、この講義の主役であるKVシリーズの生みの親になるんだ。
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| こうしてバルイコフ設計局とコーチン設計局は、1939年にそれぞれ試作重戦車を完成させますた。
| それがT-100重戦車SMK重戦車なんですが――まずは、バルイコフ設計局のT-100重戦車を見てみましょう。
| これは76.2mm砲を主砲として搭載、その前部には副砲の45mm砲が置かれていたのら。
| しかし砲塔が二つとなるとやはり重量過大、その機動力は大いに低下したんらよ。
| 重量がかさばるので装甲もあまり厚くはできず、低機動の軽装甲――何度も見てきた欠点そのままれすね。
| ほとんどの人(この講義の受講者だけでなく、当時の関係者達も)が予想していたように、大失敗れした。
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      ミ   ★      .゙ミ ・T-100重戦車
      ミ;======゙ミ  ソ連が1939年に完成させた試作重戦車で、2両のみが完成。
     ,/ ● L_/    'i,  主砲の76.2mm砲に加えて副砲の45mm砲を備え、多砲塔戦車の流れを継いでいる。
    /     l ,/  ●   i  あまりに問題が多かったために、量産計画は破棄されてしまった。
  ,-、'i      しii     丿  試験も兼ねて試作車両がフィンランド戦に投入されたが、活躍したという記録はない。
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写真
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    | 見た目だけは、なんか強そうなんだがなぁ。
    | ともかく2種類のプランのうち、T-100重戦車はボツった……
    | ってことは、SMK重戦車の方に光が当たったのか?
    \____                           ∧
         / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄   ̄ ̄ ̄
         | ところが、そうはいかなかったんだ。
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| かたやコーチン設計局のSMK重戦車の方も、T-100とほとんど大差はないシロモノれした。
| 主砲の76.2mm砲と副砲の45mm砲を備え、低機動で軽装甲。
| この二種類の多砲塔戦車の試作車両が、いざ試験に臨んだのれすが――
| 両方とも、あまりに機動性が低いために落選するという無様な結果になってしまったのれす。
| 結果のみを言えば、こうしてソ連における(世界における)多砲塔戦車の歴史はここで潰えてしまいました。
| ご愁傷様れす。イヒッ! イヒヒヒヒ……
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      ミ   ★      .゙ミ ・SMK重戦車
      ミ;======゙ミ  ソ連が1939年に完成させた試作重戦車で、1両のみが完成。
     ,/ ● L_/    'i,  主砲の76.2mm砲に加えて副砲の45mm砲を備え、多砲塔戦車の流れを継いでいる。
    /     l ,/  ●   i  あまりに問題が多かったために、量産計画は破棄されてしまった。
  ,-、'i      しii     丿  試作車両がフィンランド戦に投入されたが、雪溜まりにはまって行動不可能に。
  ,-、'i      しii     丿  その後、あまりの重さに本車を撤去できなくなるなど、その欠点を見せ付けた。
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    | あれ? 写真がT-100と同じじゃないか……と思ったら、微妙に違うな。
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         | 他のどの国よりも多砲塔戦車にこだわり続けたソ連だが、とうとう投げ出してしまった。
         | これ以降、現在に至るまで世界でも多砲塔戦車は登場しない。
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| しかし……少しだけ時を遡って、SMK開発中のコーチン設計局。
| 若くして局のトップとなったジョゼフ・コーチンは、SMK重戦車の失敗を確信していました。
| そして彼は、独自に別タイプの重戦車設計プランを組み立てていたんれす。
| 同志スターリンによる例のデパート発言の後だけに、コーチンも必死だったんれすね。
| 副砲も廃して単一砲塔にし、軽減された重量制限を装甲にあてる重防御戦車――
| この計画はKVと名付けられ、SMKと並行する形でKV戦車の独自開発が始まったんれすよ。
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    | ところで、KVって何の略?
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         | クリメント・ヴォシーロフ元帥――当時の国防人民委員。
         | 彼はコーチン技師のヨメの親父でもあり、そのイニシャルを拝借することになったんだ。
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| そして1938年8月、中央委員会の会議においてT-100SMKの模型が同志スターリンに見せられました。
| その際に、コーチン設計局があくまで独自に造っていたKVの模型も、参考なまでに開陳されます。
| しかし同志スターリンはむしろKVを最も気に入ったようで、快く試作製造許可が出されたのれすね。
| 別に見張られているから、得点稼ぎをするわけではではないのれすが……
| 戦車開発行政全般に関して、同志スターリンはかなり的確な判断を下したことが多いんれすよ。
| (これでポイントアップだな、ククク……)
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  | ッカ| i'        'l  / ヽ  ∇     (゚Д゚,,)     /_ V/レ'     ヨシフ・スターリンの笑み
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    | そう言えばT-34も、周囲の反対を押し切って(無視して)スターリンが許可を下したんだったな。
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         | 「複数の砲などいらない、一つだけでよい――ただし強力な砲だ」。
         | スターリンは常々そう言って、多砲塔戦車自体をあまり良くは思っていなかったようだ。
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| そして1939年の試験では、醜態をさらしたT-100SMKと比べ、KVはその性能を見せ付けました。
| フィンランドとの戦争では試験も兼ね、試作重戦車三種類が特別重戦車中隊として実戦配備されることに。
| そして前線では、アホでマヌケなSMKは雪溜まりに足を取られて動けなくなる事態になってしまったんれす。
| こうして自分では動けなくなると、クソ重いSMKはもはや回収も困難な状態に……クソッタレ!
| 数ヶ月放置した後に回収されましたが、その直後にスクラップ決定。
| この一件もあり、ソ連は欠点だらけの多砲塔戦車をとうとう見限ってしまうんれすよ。
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    | 結局のところ、KVの一人勝ちだったってわけか。
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         | 比べる対象があまりにもアレだただけで、KVとて足回りには不安があるんだが……
         | まあ、詳しくは後に。
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| こうして1939年12月19日、KVは新型重戦車として制式採用されたのらぁ。
| この時期の名称はKVであり、後にKV-2が登場した時に従来のKVKV-1という名で区別されることになります。
| ともかくKV-1の特徴は、76.2mmという強力な主砲と、とんでもない重防御れした。
| 特に防御力は凄まじく、正面装甲は75mmと当時の戦車でも最高クラス。
| これを打ち抜ける砲は、ドイツでは8.8cm対空砲しかないという有様だったんです。
| この重戦車が後に、侵攻してきたドイツ軍を大いにビビらせることになるんですね。
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      ミ            ゙ミ
      ミ   ★      .゙ミ ・KV-1
      ミ;======゙ミ  1939年8月に完成した、ソ連の重戦車。
     ,/ ● L_/    'i,  76.2mmという強力な主砲に加え、75mmという強力な装甲は世界でもトップクラス。
    /     l ,/  ●   i  1941年にドイツが侵攻してきた際には、T-34と共にソ連戦車の強力さを見せ付けた。
  ,-、'i      しii     丿  しかし機械的信頼性が低く、機動性も非常に劣悪。
  ,-、'i      しii     丿  ドイツ側の火力が増し重防御が絶対的なものでなくなると、問題兵器の筆頭となった。
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    | 主砲は中戦車のT-34とほとんど同じなんだろ? 重戦車としては寂しくないか?
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         | むしろ、T-34の主砲が当時の中戦車としては破格に強力だったと言えるな。
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| そんな風に、相対する側から見れば強力なKV-1ですが――使う側から見れば、問題兵器の典型でした。
| まず、機動性が非常に劣悪であるという問題があります。
| 多砲塔戦車よりはマシであったものの、中戦車であるT-34に比べればその差は歴然。
| T-34とペアで一緒に戦場へ向かっていると、KV-1はトロいので徐々に遅れていきます。
| なんか足回りの不調とかでT-34が先に行って、戦場にKV-1が到着する頃には戦闘が終わってたり……
| また、その重量で橋を壊してしまったりと、戦略・戦術の両面で機動性に難がありました。
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      ミ   ★      .゙ミ ・KV-1(1942年型)
      ミ;======゙ミ ・全長:6.75m  ・全幅:3.32m  ・全高:2.71m  ・重量:47.0t  ・乗員:5名
     ,/ ● L_/    'i, ・最大出力:600hp ・最大速度:28km/h ・行動距離:250km ・装甲厚:30〜130mm
    /     l ,/  ●   i ・エンジン:V-2-K(4ストロークV型12気筒液冷ディーゼル)
  ,-、'i      しii     丿 ・武装:41.5口径76.2mm戦車砲ZIS-5×1、7.62mm機関銃DT×3
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    | T-34の方が、トロいKV-1に歩調を合わせればいいんじゃね?
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         | 「○○がドイツの攻撃を受けている! 至急、向かえ!」なんて時、悠長なことはしてられない。
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| また機械品質が悪く、特に劣悪なトランスミッションは致命的――これはT-34以上のヒドさ。
| クラッチもエンジンもしょっちゅう故障し、動かなくなるという事態が多発。
| そうなるとクソ重いのでどうしようもなくなり、結局は敵の手に渡らないよう爆破してしまうしかありません。
| 戦場に着くまでに、機械的不調で半分が途中脱落なんてのも独ソ戦初期にはよく見られました。
| トロいわ、脱落するわ、橋は壊すわ、整備に手間は掛かるは……なんという問題児。
| しかし、防御力は凄まじい! 装甲が凄いから、それでも許せる!! ……って感じの重戦車でした。
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    | いかにもソ連の戦車だな。
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         | 他にも乗員配置がまずく、視界もかなり問題があったという欠点もある。
         | 「操縦手の視界が信じられないほどひどい」というのはドイツ側の評価。
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| さて、KV-1初期型(1939年型)の量産は1939年の12月から開始されました。
| この初期型は30.5口径の76.2mm砲が搭載されていたのですが、その生産数は非常に少ないです。
| 翌年には本格的な量産がスタートし、この1940年型には39口径の76.2mm砲が搭載されました。
| 主砲を強化した上で、本格量産に入ったというわけですね。
| また、この1940年型に35mmの増加装甲板をボルト止めし、突貫的に防御を増強したタイプも存在します。
| これをKV-1E、または1940年型エクラナミと呼称していますね。
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      ミ   ★      .゙ミ ・KV-1(1939年型):初期に生産されたもので、そう数は多くない。
      ミ;======゙ミ ・KV-1(1940年型):主砲を39口径76.2mm砲に換装した本格量産型。
     ,/ ● L_/    'i, ・KV-1E:1940年型の増加装甲装着タイプ。
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    | この時期はまだ、対ドイツ戦は始まってなかったんだよな。
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         | しかし、ポーランドやフランスにおけるドイツ陸軍の勇名は鳴り響いていた。
         | ソ連ものんびりしてられる情勢ではなかったな。
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| こんな風に増加装甲で防御力を補っていましたが、あくまでこれは簡易的な対処。
| 1940年末には基本装甲そのものを増強したので、この増加装甲は撤廃されます。
| これは、1940年型の後期型にあたりますね。
| さらに1941年に入ると、主砲の39口径76.2mm砲を、T-34と同じ41.5口径76.2mm砲に換装。
| 独ソ戦の勃発により、生産工程を簡略化できるような工夫も図られています。
| この1941年型は、1941年中に1121両が生産されていますね。
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      ミ   ★      .゙ミ ・KV-1(1941年型):主砲を41.5口径76.2mm砲に換装したタイプ。
      ミ;======゙ミ             その一部は、砲塔の組み立て方式も変わっている。
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    | この時期、ドイツがソ連に攻め寄せてきたわけだ。
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         | T-34もそうだったか、ソ連戦車の改良ってのは「生産を阻害しない」というのが最重要視される。
         | ともかく数、次に性能っていう考え方が徹底してたわけだ。
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| さて、運命の1941年……いよいよ独ソ戦が勃発してしまいました。
| ソ連のT-34KV-1は、性能だけを見れば完全にドイツのIII号戦車やIV号戦車を優越。
| ドイツの所持していた火器の大半がまるで通じず、KV-1に付けられた渾名は「怪物」。
| しかしKV-1の数はそう多いとは言えず、そして所持していた砲弾数はなんと必要量の10%。
| KV-1に乗った戦車兵は、仕方ないので突撃して跳ね飛ばすという力技を行使するしかありません。
| ソ連軍将官の稚拙さ云々が良く言われていますが、もはやそれ以前の問題だったんですよ。
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    | ドイツは強力戦車の登場に面食らいながらも、なんとか撃破してモスクワに迫ったわけだ。
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         | 特にKV-1は頑丈で、ドイツ側では最強の戦車砲を搭載していたIV号戦車ですらどうしようもない。
         | 8.8cm対空砲を引っ張り出して、なんとか撃破することができたんだ。
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| また戦車兵の訓練不足も、ソ連側の劣勢に拍車を掛けました。
| 彼らは新型であるKV-1などまともに見たことがなく、その整備もきっちり教わっていません。
| 元々が非常に壊れやすい戦車だけに、これはとんでもない問題でした。
| 機械的故障で動かなくなる事故が多発し、結局は放棄・爆破してしまう事態があちこちで発生。
| 戦場に到着するまでに50%のKV-1が壊れてしまったというのはザラ。
| この時期の戦闘記録を見ると、約半分は戦闘以外での場所で故障放棄されているような感じれすね。
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    | なんかもう、戦闘以前の問題だよな。
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         | そもそも整備用の器具が足りていないという、どうしようもない状況。
         | 弾薬もまるでないし、これでいったいどうしろと。
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| 翌年の1942年には、KV-1にさらなる改良が施されました。
| 特に防御力の増強に重点が置かれ、正面装甲などが強化されています。
| このタイプが1942年型であり、1753両が生産のう゛ぁ。
| ただしエンジンなどに改良はなかったため、装甲が分厚くなった分だけ機動力が低下。
| 防御力のみならず、重い、壊れやすい、という欠点も大幅に強化されてしまったんれす。
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      ミ   ★      .゙ミ ・KV-1(1942年型):装甲を強化したタイプ。
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    | ますます、重く使い辛くなっていくな。
    | それでも、重防御というのは戦車兵にとって安心なものだろうが……
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         | しかしこの時期には、ドイツ側にもKV-1の重装甲を貫通できる砲や弾薬が出始めた。
         | そうなると、それまで絶大な防御力で定評のあったKV-1の地位が一気に揺らいでいく。
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| こうしてKV-1の重量が増加していくにつれて、劣悪な機動性という弱点が顕著になっていきます。
| またその重さで橋を壊してしまい、後続部隊が進撃できなくなるという事態も多発。
| 同じ場所からT-34と共に前線へ向かうも、その機動性の低さゆえに置いてけぼり。
| 重装甲ゆえにそれでも我慢してきたんですが……ドイツ側の火力が強化されると、その重防御にもヒビが。
| その防御力が絶対的ではなくなるに及んで、いよいよKV-1は厄介者扱いされ始めます。
| とあるソ連将軍は、とうとうKV-1を旅団装備から外すという決断さえしたんれすよ。
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    | KV-1だけはぐれちゃうんじゃ、流石にどうしようもないよな。
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         | この時期、重戦車不要論――というか中戦車と重戦車の統合論が持ち上がっていた。
         | これも、重戦車KV-1の不信と中戦車T-34の優越がきっかけになっているな。
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| このKV-1の惨状を知ったコーチン設計局は、T-34に同行できるようKV-1の軽量化計画をスタートさせます。
| 装甲を削って、エンジンやトランスミッションなど足回りを改良、こうして完成したのがKV-1S
| 「S」というのは「素早い(skorostnoi)」の略で、1942年8月に制式採用が決定しました。
| さっそく量産が開始され、翌年までに1232両が生産されれれれれ。
| しかし皮肉なことに、このKV-1Sが前線に届いた頃には、戦車兵達は機動性より装甲を欲していたのれす。
| VI号戦車ティーガーという怪物が、いよいよ前線に姿を見せ始めていたんれすよ。
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      ミ   ★      .゙ミ ・KV-1S:KV-1の軽量化モデルで、装甲は82mmにまで削られている。
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    | じゃあ、このKV-1Sは無用だったのか?
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         | 1000両以上も造られていることから分かる通り、そう悪い車両じゃなかった。
         | むしろ、KVシリーズで最もバランスが取れているといっても過言ではない。
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| さて、この辺からKVシリーズの後継にあたるISシリーズに話が移っていくのれすが……
| その前に、KV-1の派生車両について見ていきましょう。
| 最も有名なのがKV-2、これは型式番号から見てKV-1の発展改良系と思われがちなんですが……
| 実はKV-2は、どちらかと言えばKV-1のバリエーション的な存在です。
| そのプランが持ち上がったのは1939年末、KV-1の本格量産が始まりつつあった時期とかなり早期。
| しかも確固とした改装計画ではなく、むしろ場当たり的なその場しのぎの改造に近いものでした。
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    | KV-1量産開始当初ってことは……独ソ戦よりも前、フィンランド戦の時期じゃないか?
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         | その通り。このKV-2も、フィンランド戦に投入するために開発されたんだ。
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| この時期、ソ連軍はフィンランドの強固な防御陣地に手を焼いていました。
| そういうわけで火力支援車両が切望されるようになったのですが、悠長なことはしてられない情勢。
| そこでKV-1の車体を流用しつつ、152mm榴弾砲を搭載してみようという計画が持ち上がったんれす。
| その試作車は1940年4月に早くも完成、多数の問題点は承知の上で量産が開始されました。
| それがKV-2なんですが、そのヤヴァさは画像を見ただけでも察せられると思います。
| 何というか……無理がありすぎですね。
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      ミ   ★      .゙ミ ・KV-2
      ミ;======゙ミ  KV-1の車体を流用し、1940年に完成した敵陣攻撃用の重戦車。
     ,/ ● L_/    'i,  砲は旋回するものの、運用目的から見れば事実上の自走榴弾砲だった。
    /     l ,/  ●   i  フィンランド戦に対し応急的に造られた車両だったものの、その有用性を実証。
  ,-、'i      しii     丿  後にドイツ戦でも量産され、前線に投入されて活躍している。
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    | これ、自走砲……?
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         | 砲塔はちゃんと旋回可能。まあ、運用的にはそう変わらないんだけどな。
         | この時期はまだ独ソ戦前、自走砲的なノウハウをまだソ連は持っていない。
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| その火力は凄まじく、フィンランド兵にギガント(巨人)と呼ばれて恐れられました。
| 防御力も非常に高く、当時のスタンダードだった37mm砲程度なら何発もらっても平気なほど。
| ただし見た目通り、機動戦などは論外。すなわち自走砲と同じで、走る砲台そのものでした。
| また車高も非常に高く、すぐ敵に見つかってしまうという難点も抱えています。
| フィンランド戦でその破壊力を実証し、以後もそう数は多くないれすが量産は続けられました。
| 1940年には141両、1941年には232両が生産。なお1940年型と1941年型では砲塔の形が少し違います。
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      ミ   ★      .゙ミ ・KV-2
      ミ;======゙ミ ・全長:6.95m  ・全幅:3.32m  ・全高:3.24m  ・重量:52.0t  ・乗員:6名
     ,/ ● L_/    'i, ・最大出力:550hp ・最大速度:34km/h ・行動距離:250km ・装甲厚:30〜75mm
    /     l ,/  ●   i ・エンジン:V-2-K(4ストロークV型12気筒液冷ディーゼル)
  ,-、'i      しii     丿 ・武装:20口径152mm榴弾砲M-10×1、7.62mm機関銃DT×3
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    | 元々は応急的な車両だったのに、フィンランド戦後も量産されたんだな。
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         | なかなか使い勝手が良かったからな。
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| そして独ソ戦が始まると、このKV-2も戦場に姿を見せました。
| 当初はその巨体と火力、防御力でドイツを圧倒していたのですが――
| ドイツ側が強力な砲を使うようになってくると、KV-1と同じくKV-2の装甲も進化に付いていけないように。
| そうなると鈍重なKV-2は、狙いやすいマト以外の何でもなくなってしまいます。
| その頃には、ソ連でもKV-2の火力を上回る火力支援車が登場。肩身は狭くなっていきました。
| それでも、終戦の日まで細々と戦い抜いたようれすね。
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    | ドイツ戦より遥か以前に開発された車両ながら、終戦まで頑張ったんだな。
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         | 当然ながら、戦車戦なんて全く考慮されてない車両だったからなぁ……
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| 他にもKVシリーズには数々の改良・改装型がありますが、まともに生産されたのはKV-8くらい。
| KV-1を改良した火炎放射戦車であるKV-8は、同志スターリンもお気に入りの逸品。
| かなり広範囲に渡って活躍し、ファシストの豚どもをバーベキューにしています。
| なお、SU-152などKVシリーズを流用した自走砲についてはまた別の講義で。
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      ミ   ★      .゙ミ ・KV-3:KV-1の装甲強化型。独ソ戦の勃発により、計画は立ち消えに。
      ミ;======゙ミ      増加装甲型(1940年型エクラナミ)の登場は、この流れを継いだもの。
     ,/ ● L_/    'i,  ・KV-4:92トン級の超重戦車。ドイツ戦車を過剰に恐れすぎたために計画される。
    /     l ,/  ●   i      あらゆる意味で無理があり、試作車両も造られず計画中止。
    /     l ,/  ●   i  ・KV-5:150トン級の超重戦車。ドイツ戦車を過剰に恐れすぎたために計画される。
    /     l ,/  ●   i      あらゆる意味で無理があり、試作車両も造られず計画中止。
    /     l ,/  ●   i  ・KV-7:ドイツの突撃砲を参考にしつつ、一門の主砲に二門の副砲を備えた自走砲。
    /     l ,/  ●   i      複数砲の搭載計画がスターリンにバレ、ひどく怒られたあげく計画中止。
    /     l ,/  ●   i  ・KV-8:KV-1の車体に火炎放射装置を搭載した火炎放射戦車。
    /     l ,/  ●   i      スターリンが非常に気に入り、量産が決定。そこそこ活躍している。
    /     l ,/  ●   i  ・KV-9:122mm榴弾砲を搭載した自走砲型。計画は中止されている。
    /     l ,/  ●   i  ・KV-1K:KV-1にロケット砲発射装置を搭載した、ロケット発車戦車。
    /     l ,/  ●   i      ロケット砲の命中率に問題があり、計画は却下。
    /     l ,/  ●   i  ・KV-1S:KV-1の軽量型、詳しくは前述。
    /     l ,/  ●   i  ・KV-8S:KV-1Sの火炎放射タイプ。
    /     l ,/  ●   i  ・KV-85:KV-1Sに85mm砲を搭載した重戦車、詳しくは後述。
  ,-、'i      しii     丿       IS-1が普及するまでの繋ぎとして、応急的に少数が生産された。
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    | なんか百花繚乱だな。
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         | ほとんどはペーパープラン同然だったんだけどな。
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| さて、ここで話を戻し、KVシリーズからISシリーズへの変遷を見ていきましょう。
| KV-1は機動性の低さが問題となって、簡易軽量型のKV-1Sが開発されたことまでは解説しました。
| そのKV-1S開発と並行して、KV-13という新設計の戦車開発が始まっていたんれす。
| このKV-13というのは、KV-1の重装甲と
T-34の軽量さを併せ持った新鋭戦車。
| 当時のソ連で主流となりつつあった、中戦車と重戦車の統合という考え方を体現した車両なんですが……
| しかしドイツが繰り出してきた怪物が、そんなソ連の戦車開発を根本からひっくり返してしまいます。
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    | VI号戦車ティーガーか……
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         | KV-13に搭載が予定されていた76mm砲では歯が立たず、
         | さらにV号戦車パンターが姿を見せ始めると、ソ連の危機感は頂点に達したんだ。
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| こうして、失敗に終わったKV-13を改良してティーガーに太刀打ちできる重戦車の開発がスタート!!
| 計画を任されたコーチン技師は、これを機会にKVというネーミングを改名。
| この名称の元となったクリメンティ・ヴォシーロフは、1941年時点で国防人民委員長を解任されていたんれす。
| 新しいネーミングは、誰からも文句が出ようのない人物名から――それは我らが同志、ヨゼフ・スターリン!!
| こうして同志スターリン(Iossif Stalin)の名からイニシャルを頂き、新重戦車はISと名付けられました。
| 強力な85mm対空砲を主砲として搭載することも決定、新重戦車計画が本格的に動き出したのれす。
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    | つまりISシリーズは、KVシリーズの流れを継いでるんだな。
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         | そして1943年夏、この新戦車の量産が開始されると同時期にクルスク戦が行われた。
         | 戦いそのものはソ連の勝利に終わったんだが……
         | T-34KV-1では、最新鋭のドイツ戦車に太刀打ちできないことが明らかになる。
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/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| そんなクルスク戦と同時期にプロトタイプとしてIS-1が完成し、1943年8月には量産が開始されたのですが――
| この調子では、年末まで配備が間に合わないことは明白となりました。
| 逼迫する戦況で、悠長にIS-1の生産を待っている状況ではないれす。
| そこで緊急対処として、KV-1Sの車体にIS-1の砲塔を載せるという急造品を製作開始。
| これはKV-85と呼ばれ、1943年9月から11月にかけて130両が完成しました。
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      ミ   ★      .゙ミ ・KV-85
      ミ;======゙ミ  IS-1投入までの繋ぎとして開発された戦車で、KV-1Sの車体を流用している。
     ,/ ● L_/    'i,  IS-1の砲塔を搭載しているが、車体に比べて過大で色々と無理が出ていた。
    /     l ,/  ●   i  やや力不足であるものの、ドイツ戦車相手にそれなりの活躍を見せている。
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    | つまり、KV-1SIS-1の応急的な繋ぎだな。
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         | その割には中々バランス良くまとまっていて、そう悪くない戦車だった。
         | ……と言っても相手がパンターティーガーなんで、相当に大変だっただろうが。
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| そして1934年秋には、IS-1の生産が始まったのですが――ここで早くも暗雲が。
| T-34の主砲を76mmから85mmに強化するという情報を、IS-1の開発達は耳にしてしまったんでれよ。
| それはあまりにショッキング、なぜなら最新鋭重戦車であるIS-1の主砲も85mm砲れすから。
| これでは、わざわざ重戦車を生産する意味があるのか?という疑念が持ち上がります。
| こういう次第で、生産が始まったばかりのIS-1ですが、早くも武装強化の必要性が生じてしまったんれすね。
| それゆえにIS-1自身の生産数は107両と、非常に少ないです。
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      ミ   ★      .゙ミ ・IS-1
      ミ;======゙ミ  KVシリーズの跡継ぎとして開発された新鋭重戦車。
     ,/ ● L_/    'i,  しかし主砲である85mm砲に火力の点で問題が生じ、
    /     l ,/  ●   i  生産開始15日目にして武装強化タイプが検討されることに。
  ,-、'i      しii     丿  結果的に生産量は非常に少ないながら、ウクライナ戦に投入されている。
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    | 確かに、重戦車の癖に中戦車と同じ火力ってのは、存在意義が微妙だなぁ……
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         | それに85mm砲では、仮想敵であるティーガー相手じゃかなり苦しかったんだ。
         | この火力不足問題により、生産開始から僅か15日後には武装強化計画が動き出した。
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| 少数ながら生産されたIS-1がどうなったかについては、戦後いくつかの説が存在していました。
| 一時期は、結局のところ実戦には投入されなかったとも言われていましたが――
| ソ連崩壊後に公開された資料によれば、確かに実戦投入されていたということれす。
| ウクライナの戦いに投入され、ドイツの猛攻によって次々と損耗。
| 徐々に、IS-2(後述する、IS-1の武装強化型)に入れ替わっていったということれすね。
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      ミ   ★      .゙ミ ・IS-1
      ミ;======゙ミ ・全長:8.56m  ・全幅:3.07m  ・全高:2.73m  ・重量:44.0t  ・乗員:4名
     ,/ ● L_/    'i, ・最大出力:600hp ・最大速度:37km/h ・行動距離:150km ・装甲厚:20〜120mm
    /     l ,/  ●   i ・エンジン:V-2-IS(4ストロークV型12気筒液冷ディーゼル)
    /     l ,/  ●   i ・武装:51.6口径85mm戦車砲D-5T×1、7.62mm機関銃DTM×2
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    | そんなに活躍はしなかったみたいだな。
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         | IS-1に関しては、様々な説が乱れ飛んでいたんだ。
         | ソ連崩壊後に資料が流出し、それもようやく落ち着いたがな。
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| では、このIS-1の武装強化型――IS-2について解説しましょう。
| IS-1の51.6口径85mmを、46.3口径122mm砲という非常に強力な榴弾砲に換装。
| 実はこれ徹甲弾ではなく榴弾なのですが、ここまでデカいとその威力も超強力。
| 貫通できなくても、その衝撃だけで敵戦車を破壊できたりもします。
| 
パンターティーガーですら破壊できる能力を秘めている、まさに怪物的重戦車。
| その正確な生産台数は不明ですが、約3500両が生産されたようれすね。
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      ミ   ★      .゙ミ ・IS-2
      ミ;======゙ミ  IS-1の武装強化型で、46.3口径122mm榴弾砲が搭載されている。
     ,/ ● L_/    'i,  事実上、大戦時におけるソ連の最強戦車としてドイツ軍を苦しめた。
    /     l ,/  ●   i  初期型はいくつかの欠点を備えていたが、後に改良されている。
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    | これが、ソ連版のティーガーか。やはりゴツいな。
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         | このIS-2は、JS-2重戦車、またはスターリン戦車とも呼ばれている。
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| このIS-2は戦車戦にも投入されましたが、むしろ敵陣攻撃で活躍したようですね。
| その主砲は122mm榴弾砲なので、火力支援にも適しています。
| それでいながら、パンターティーガーが暴れていると聞けば即出撃。
| 46.3口径122mm砲という巨砲と、ティーガーを超える防御力で大激闘。
| その戦闘力は、総合的に見てティーガーとほぼ同等だったと言われています。
| まさにソ連陸軍の切り札、そこにシビれるー! あこがれるー!
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      ミ            ゙ミ
      ミ   ★      .゙ミ ・IS-2(1944年型)
      ミ;======゙ミ ・全長:9.90m  ・全幅:3.09m  ・全高:2.73m  ・重量:46.0t  ・乗員:4名
     ,/ ● L_/    'i, ・最大出力:600hp ・最大速度:37km/h ・行動距離:240km ・装甲厚:20〜120mm
    /     l ,/  ●   i ・エンジン:V-2-IS(4ストロークV型12気筒液冷ディーゼル)
    /     l ,/  ●   i ・武装:43口径122mm戦車砲D-25T×1、12.7mm重機関銃DShK×1、
  ,-、'i      しii     丿     7.62mm機関銃DTM×2
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    | さすがに、ティーガーII相手だと勝てないか。
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         | あれはもう、本物の化け物だからな。とはいえ、ソ連もそれに対して無策ではなかったが――
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| このIS-2の欠点は……IS-1の車体に、明らかに過大な122mm砲をムリヤリ載せた事から来る不具合。
| 特に砲塔内部が狭くなり、居住性も視界も操作性も劣悪。スペースが少ないので、弾数も少なめ。
| パンターは81発の主砲弾を持ち歩いていましたが、IS-2は僅か28発の砲弾しか搭載できなかったんれす。
| そこで1944年4月には、それらの欠点を改良すべく細かに手が入れられました。
| 車体形状が改善され、防盾などを改善。避弾傾始も徹底されて防御力がアップ。
| それで全ての欠点が治ったとは言えませんが、この新タイプを1944年型と呼びます。
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      ミ   ★      .゙ミ ・IS-2(1944年型):IS-2の車体形状を改良したタイプ。
      ミ;======゙ミ
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    | 弾数は、敵の三分の一か……
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         | この1944年型は、古い資料ではIS-2mと呼ばれている。
         | 後に登場する、IS-2Mとはまた別物なので注意だな。
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| そして1944年末には、IS-2の後継となるべく造られた、新設計の重戦車が登場します。
| それがIS-3であり、
ティーガーIIの攻撃にも耐えられることを目的とした重装甲が特徴。
| 主砲こそIS-2と同じですが、装甲は厚みを増し、低く平べったいボディで命中した敵弾を滑らせて被害軽減。
| しかし量産される頃には、もはやドイツはギブアップ寸前れした。
| なんとか部隊配備を完了し、ベルリン戦へ投入するつもりだったのですが――ギリギリで試合終了。
| 結果的に、ドイツ戦には間に合わなかった重戦車となってしまいました。
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      ミ            ゙ミ
      ミ   ★      .゙ミ ・IS-3
      ミ;======゙ミ  IS-2の後継となる新鋭重戦車で、防御性能がさらに増している。
     ,/ ● L_/    'i,  その平べったいシルエットは西側を驚かせ、後の戦車開発に影響を与えた。
    /     l ,/  ●   i  独ソ戦中に生産が始まるものの、戦線投入には至らず終戦を迎えている。
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    | なんと、間に合わなかったのか……
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         | ソ連は長い間、ベルリン戦に間に合ったと公式に主張し、専門家の間でも意見が割れていた。
         | ソ連崩壊後に流出した資料により、実戦投入は間に合わなかったことが明らかになったがな。
         | なお、IS-3は満州で日本軍相手に使われたという話もあるが……
         | これも部隊配備まではしたものの、実戦投入はされなかったようだ。
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| このIS-3は1945年9月7日にモスクワで行われた先勝パレードに登場。
| その特徴的な外見を見た西側の偉い人達は腰を抜かし、その底知れぬ能力に恐怖を覚えたんです。
| こうしてアメリカもイギリスも、このIS-3を超えるというのが後の戦車開発の主眼となりました。
| とは言え、その後には重戦車そのものが時代遅れとなり、中戦車と統合されて消えていくのですがね――
| 戦後もソ連は、IS-2IS-3をポーランドやチェコ、中国、中東諸国に輸出しています。
| また1950年代になると現存するIS-2に、1960年代にはIS-3に近代化改修を施していますね。
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      ミ   ★      .゙ミ ・IS-2M:IS-2の近代化モデルで、エンジンの換装やその他改修が施されている。
      ミ;======゙ミ ・IS-3M:IS-3の近代化モデルで、様々な改修が施されている。
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    | ここからは、戦後の話か。
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         | 東西冷戦が始まった時期だな。
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| こうして戦後は、IS-2IS-3が世界のあちこちの紛争で姿を見せるようになりました。
| IS-2はなぜか変な逸話が多く……例えば朝鮮戦争では、中国の手を介してIS-2が投入されたと東側は主張。
| しかし対峙したはずのアメリカは、IS-2など戦場では見たこともなかったそうです。
| インドシナ戦争では、ベトナムによるIS-2投入の噂を聞き付けたフランスが増援を送ります。
| こうしてIS-2対策に送られたのが、何を思ったのかドイツから接収したV号戦車パンターが1両。
| 「IS-2の相手はやっぱパンターだろ、HAHAHA」などとフランス人が思ったのかどうかは知りませんが……
| 結局IS-2は現れず、1両だけ送られたパンターは例によって壊れてしまったようです。
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    | 大戦を戦い抜いた化け物達でも、時代の流れには勝てないんだな……
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         | IS-3や近代化改修型のIS-3Mは、中東戦争でよくその姿を見せている。
         | それでも、まともに活躍できるのは1960年代が限界だったがな。
         | なお1990年代まで、IS-3は北方領土に配備されっぱなしだったりする。
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| さて、IS-2IS-3の顛末を追ったところで、今度は続くISシリーズについて見ていきましょう。
| 時代は遡って、独ソ戦も終盤となった1944年。IS-3の開発が始まったのと同時期のことです。
| 当時活躍していたIS-2を拡大強化して、新鋭重戦車を開発しようという試みがありました。
| 装甲を強化し、エンジンの出力を増強させ――そんな重戦車IS-4は、1947年に完成します。
| しかし機動性にかなりの問題を抱え、250両程度が造られた時点で生産中止となりました。
| そしてIS-4は全く活躍もないまま、その生涯を終えてしまうことになったんです。
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      ミ   ★      .゙ミ  ・IS-4
      ミ;======゙ミ   IS-2を拡大発展させた重戦車で、少数の完成の後に生産が停止している。
     ,/ ● L_/    'i,   朝鮮戦争に向けて配備されたが、結局は投入されなかった。
    /     l ,/  ●   i   その後はスクラップや訓練の標的にされ、ソ連軍から姿を消している。
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    | 戦後重戦車の悲哀だな。
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         | また、この戦車のコストの高騰も生産中止の一因となった。
         | IS-3の約3倍の値段なんだよ。
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| 他にもISシリーズの後継はいくつか試作されているのですが……ほとんどはろくな運命を辿っていません。
| いずれも無理のしすぎで機械的故障が多く、ものになったのはありませんでした。
| IS-5、IS-6など、独ソ戦の末期に計画が開始されたものばかりですね。
| 独ソ戦が終了して、少し落ち着いた時期……ソ連の抱えていた重戦車は三種類ありました。
| 大戦時に製造したIS-2と、その発展型のIS-3、そして少数だけ造ってしまった失敗作同然のIS-4
| 1948年の末には、これら三種類の重戦車の後継開発計画が検討されます。
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      ミ   ★      .゙ミ ・IS-5:1944年から計画された重戦車で、モックアップのみが完成。
      ミ;======゙ミ      V号戦車パンターの影響が強かったが、開発は中止。
     ,/ ● L_/    'i,  ・IS-6:IS-5のエンジンに変革を加えた重戦車だが、試験中に大爆発。
    /     l ,/  ●   i      この事故により、計画は却下されている。
  ,-、'i      しii     丿 ・IS-7:1946年に完成した新設計の大型重戦車だが、機械的トラブルが多く却下。
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    | なんか、全然ダメじゃないか。
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         | まあ計画開始時期は戦争中だったので、元々のプランがぶっとび気味だった点も大きいが。
         | 量産性を度外視した、ゴージャス機能を追求したものも多かった。
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| 新鋭重戦車計画を手掛けたのは、ソ連重戦車の功労者であるコーチン技師。
| 彼はIS-3を拡大発展させ、IS-8という非常に強力な重戦車を完成させたんれす。
| このIS-8は1950年に量産が決定されたのですが……ここで問題が発生。
| エンジンの生産に問題が生じ、量産の開始がズルズルと伸びてしまったんれすよ。
| そして未だIS-8が量産が始まらない1953年、同志スターリンが死んでしまったのらぁ!!
| 死んだだけじゃなくて、党内部で熾烈な権力闘争が勃発。スターリン批判が始まってしまうんれす。
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     ,/ ● L_/    'i,                        同志スターリンさまがみていない
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    | なんと、同志スターリンが……
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         | こうなってくると、「IS」というスターリンのイニシャルも使いにくくなってきた。
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| そしてIS-8も改名を余儀なくされ、T-10という新たな名前が付けられます。
| 1953年末にはようやく生産が始まりましたが――ISシリーズの末っ子は、ISの名を名乗れなかったんれすね。
| このT-10ですが、基本的には傑作重戦車だったIS-3の強化版。
| 特別な新機軸は見られない、非常に堅実な重戦車れした。
| とは言え機動性や車内の狭さといった例の欠点はそこそこ克服されており、新世代重戦車にふさわしい出来。
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      ミ   ★      .゙ミ ・T-10
      ミ;======゙ミ  IS重戦車シリーズの最終型だが、政治的事情によりIS-8からT-10に改名された。
     ,/ ● L_/    'i,  IS-3を参考に設計され、基本的にその特徴を踏襲している。
    /     l ,/  ●   i  1957年には火力強化モデルであるT-10Mが完成し、ソ連重戦車の最後を飾った。
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    | 最後……? これが、最後のソ連重戦車なのか?
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         | 量産された重戦車では、これが最後になってしまったな。
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| 1957年には、火力を抜本的に向上させた改良型のT-10Mが登場。
| これらT-10シリーズは約8000両が生産されたんれすが……実戦には、一度も参加していません。
| そしてT-10Mがソ連最後の重戦車となり、以後この系列の戦車が開発されることはありませんれした。
| 重戦車というカテゴリーそのものが、もはや時代から取り残されていたんれすね。
| T-10の後に新型の重戦車が検討されたことはあったんれすが……結局、立ち消えに終わっています。
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      ミ   ★      .゙ミ ・T-10M
      ミ;======゙ミ ・全長:10.56m  ・全幅:3.38m  ・全高:2.585m  ・重量:51.5t  ・乗員:4名
     ,/ ● L_/    'i, ・最大出力:750hp ・最大速度:50km/h ・行動距離:350km ・装甲厚:30〜250mm
    /     l ,/  ●   i ・エンジン:V-12-6(4ストロークV型12気筒液冷ディーゼル)
    /     l ,/  ●   i ・武装:55口径122mmライフル砲M-62T2×1、14.5mm重機関銃KPVT×2
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    | 重戦車そのものが、時代遅れになってしまったのか?
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         | 火砲やミサイルが発展していくと、重装甲の意義が失われ、鈍重さだけが目立ってな……
         | 火力面から見ても、中戦車の主砲が強化されていくことで重戦車の意義はさらに低下。
         | 結局は中戦車と重戦車との統合という形で、戦車開発史から姿を消してしまう。
         | ソ連はそれでもかなり重戦車にこだわった方なんだが……
         | それでも70年代に入ると、重戦車にはもうスポットを当てなくなってしまった。
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| さて、ソ連重戦車の系譜は以上です。
| T-34の血を引く中戦車はというと、戦後にT-54/T-55という優良戦車が登場。
| この中戦車の系譜が発展していき、ソ連重戦車はそれに取り込まれることで消滅。
| 以後、この中戦車と重戦車が統合された戦車は「主力戦車(MBT)」と呼ばれました。
| 他国においてもほとんど同じ現象を見せ、重戦車は世界的に消滅してしまいます。
| それでも、そのスタンスの一部は現在でもMBTの中に生きている……そういうわけですね。
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    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
    | 単に消滅したんじゃなく、中戦車に吸収されたとも言えるんだな。
    \____                           ∧
         / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
         | まあ、そういうことだ。
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