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| さて、今回はII号戦車について講義しましょう。
| 時は1934年、ヒトラーの再軍備宣言の一年前。すでにLaS(後のI号戦車)の生産はこっそり開始されていました。
| しかしLaSは、訓練用としてすら物足りないありさま。
| ドイツの中の人は、将来的に3.7cm砲を備えた軽戦車と7.5cm砲を備えた中戦車を主力にするつもりでしたが――
| この二台の戦車開発は、思ったより難航しそうな状態でした。
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 訓練用のLaS → 後のI号戦車
 7.5cm砲を備えた中戦車 → 後のIV号戦車
 3.7cm砲を備えた軽戦車 → 後のIII号戦車
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    |ここらへんの経過は、I号戦車の講義でもやったよな。
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         | 開発も難航し、レベルの高い戦車の生産技術もメーカーは備えていない。
         | III号戦車IV号戦車の完成を待ってたんじゃ、いつまで経っても戦車が揃わないからな。
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| そこで1934年7月、ドイツの中の人はIII号IV号戦車完成までの繋ぎとして、10トン級戦車の開発を決定します。
| この2cm機関砲を装備する試作戦車の開発が命じられたのは、MAN社、クルップ社、ヘンシェル社の三社。
| その秘匿名称はLaS100(農業トラクター100)、まだ戦車開発の事実は隠しておく必要がありました。
| 三社はさっそく開発を開始し、翌年の春にはそれぞれの会社が試作車を仕上げます。
| そして軍の中の人のハートを射止めたのは、MAN社の試作車両。
| この試作車両の車体が最も長く、拡張性が高いと判断されたんですよ。
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 MAN社:車体のみの完成、車体が最も大きい。
 クルップ社:I号戦車の改造車体をベースに、新砲塔を装備。
 ヘンシェル社:車体のみの完成。
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    | 2cm機関砲……I号戦車の7.92mm重機関銃よりはマシだけど。
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         | 他国の軽戦車の主兵装と、だいたい同等の武装だな。
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| こうしてMAN社の開発したLaS100――後のII号戦車a/1型の生産が開始されました。
| このa/1型が10両生産された後、a/2型が15両、a/3型が50両と微妙に改良を加えながら試作生産を実施。
| さらにb型は25両、c型は25両、試作生産の過程で様々な改良が施され、II号戦車は順調にバージョンアップ。
| そして1937年7月には、いよいよ本格的な生産型であるII号戦車A型の量産が開始されます。
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 ・II号戦車a/1型:初期生産型。
 ・II号戦車a/2型:エンジンの冷却装置を改良。
 ・II号戦車a/3前期型:燃料ポンプの改良、オイルフィルターのアクセスハッチを備え付け。
 ・II号戦車a/3後期型:エンジン部にラジエーター追加、サスペンションを改良。
 ・II号戦車b型:エンジンを換装、足回りを改良、車体を延長。
 ・II号戦車c型:足回りを大改良、新型サスペンションを搭載。
 ・II号戦車A型:エンジンを改良、本格生産型。
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    | いろいろ板書はややこしいけど、要は順調に改良がなされていったってことか。
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         | なおII号戦車a〜c型II号戦車A〜C型は別物なので注意。
         | このa〜c型の生産台数は、資料によって差異があるぞ。
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| さらに視察装置など極めて細かい改良が施され、B型C型の生産も始まりました。
| A〜C型は違いも非常に少なく、この3タイプが最もスタンダードなII号戦車と言えるでしょうね。
| 生産がいったん終了する1940年4月までに、合わせて1088両もの数のII号戦車A〜C型が量産されました。
| まだまだIII号戦車IV号戦車は非常に数が少なく、大量にあったI号戦車は余りにも非力すぎ。
| 事実上の主力は、まぎれもなくII号戦車だったんですよ。
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 ・II号戦車
  I号戦車とIIIIV号戦車の繋ぎとして、1937年から生産が開始された。
  主武器は2cm機関砲と非常に貧弱で装甲も薄く、主力にするにはあまりに非力な戦車である。
  しかし当時のドイツは深刻な戦車不足だったため、大戦初期はII号戦車を主力とせざるをえなかった。

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    | なんとも頼りなさそうな外見だなぁ……
    | そして左右非対称なのが、俺の美観を狂おしくざわつかせる。
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         | 砲塔には主兵装の2cm機関砲と、I号戦車と同じ口径の7.92mm機銃が並んでいるのが分かるだろ。
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| その武装も装甲も、I号戦車よりはマシという程度。
| 他国の軽戦車などとほぼ同レベルで、中戦車などとは比べるべくもありません。
| なお1937年にはスペイン内戦にII号戦車15両が送られていますが、その活躍のほどは不明です。
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 II号戦車C型
 ・全長:4.81m  ・全幅:2.22m  ・全高:1.99m  ・重量:8.9t  ・乗員:3名
 ・最大出力:140hp  ・最大速度:40km/h  ・行動距離:200km  ・装甲厚:10〜16mm
 ・エンジン:マイバッハHL62TR(水冷直列6気筒ガソリンエンジン)
 ・武装:2cm機関砲KwK30×1、7.92mm機銃MG34×1
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    | これが事実上の主力って、厳しい話だな……
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         | 特筆すべきは、全車に無線が積んであったこと。
         | これが、「電撃戦」というソフトを走らせる何よりの要点だったんだ。
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| またII号戦車D型というのも開発されたのですが、これは亜種に属する戦車です。
| それというのもII号戦車の砲塔をいちおう流用しているものの、ボディは完全な別設計なんですね。
| このD型は、軽師団用として高速性能を追求したモデル。
| 後のIII号戦車E型にも採用されることになる新式のサスペンションを採用したのですが……
| 速度こそII号戦車を上回ったんですが、不整地に弱かったり安定性に問題が出たりと難点続出。
| そんなD型を改良してE型も開発されたんですが、欠点の改善は不可能。事実上の失敗作でした。
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 ・II号戦車D型:軽師団用の高速タイプ、車体は完全に新設計。
 ・II号戦車E型:D型のサスペンションを改良したタイプ。
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    | ううむ、失敗作か。
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         | D型E型の生産数は極めて少なく、たった43両。
         | 軽師団用に使うのは無理だと言うことで、全車が歩兵支援専門の第八戦車連隊に配備された。
         | それでもポーランド戦で問題点が続出し、フランス戦前には火炎放射型に全面改装されている。
         | ……結局のところ、厄介者扱いに近いな。
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| 話を戻して1939年、ドイツがポーランドに侵攻、とうとう第二次世界大戦が勃発します。
| 数の上での主力はI号戦車II号戦車であり、その中でもII号戦車はかなりの活躍を示しました。
| ポーランドの主力は軽戦車だったので、II号戦車の2cm機関砲でも撃破はなんとか可能だったんです。
| 装甲は薄くポーランドの対戦車砲の前で多大な出血を強いられるも、戦車部隊の中核として大活躍。
| II号戦車こそが、ポーランド戦勝利の立役者と言えるかもしれませんね。
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 ・開戦時のドイツの所持品
  I号戦車:1445両
  II号戦車:1226両
  III号戦車:98両
  IV号戦車:211両
  35(t)戦車・38(t)戦車:276両
  グデーリアンの「電撃戦」構想:Priceless
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    | 単純な数字上の性能だけじゃ、分からないもんなんだなぁ。
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         | このポーランド戦において、II号戦車の装甲はまるで満足ではないことが発覚。
         | 視界の悪さ等も問題になり、すでに配備されているII号戦車ほとんど全てに改良が施される事に。
         | 増加装甲や、より性能の優れた車長用展望塔の装着だな。
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| フランス戦においても、II号戦車は955両が投入されました。
| その数は、ドイツがフランス戦に投入した全戦車の約40%。数の上では明らかに主力だったんです。
| しかしフランスの所持する戦車はなかなかに強力で、II号戦車は凄まじい苦戦を強いられていました。
| それでも、電撃戦というソフトによってなんとか勝利を飾ることができましたが。
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    | まさに、グデーリアンの「電撃戦」構想:Pricelessだな。
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         | なお、II号戦車はノルウェーでの作戦にも投入されている。
         | ノルウェーの対戦車装備は稚拙で、特筆することはない。
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| こうしてフランス戦も勝利に終えたドイツ軍でしたが、戦車不足はやはり相当な問題。
| 主力であるべきIII号戦車IV号戦車は、この時期ですら全然数が足りなかったんです。
| そこで仕方なく、ドイツの中の人はII号戦車の再生産を決定しました。
| 上記の通り1940年4月をもってII号戦車の生産は終了していたんですが、再びの量産開始。
| こうして1941年3月から生産されたII号戦車には改良が加えられ、これをF型と呼びます。
| このII号戦車F型は事実上のII号戦車最終型であり、1942年12月まで524両が生産されました。
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 ・II号戦車F型:1941年からの再生産型で、防御力が増強されている。
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    | いくら改良型っていっても、II号戦車はフランス戦で明らかに貧弱だったんだろ……?
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         | でも、最も手っ取り早く生産できるのはII号戦車だった。
         | 非力なのは分かっていても数を揃えなきゃいけないほど、悲惨な戦車不足に陥ってたんだよ。
         | 同年の6月には、非常に大きな作戦が控えていたしな。
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| そして1941年6月、ドイツ軍はソ連に全面侵攻を開始。泥沼の独ソ戦がスタートします。
| 当然ながらII号戦車も参加しており、この頃には2cm機関砲の新徹鋼弾開発の影響で火力も上がっていました。
| ソ連の所持する軽戦車はII号戦車でも十分に撃破できたんですが、そこへとんでもない敵が現れます。
| T-34KV-1、ソ連の誇る化け物戦車の前で、歴戦のドイツ戦車兵達はとんでもない光景を見せ付けられました。
| II号戦車どころかIII号IV号戦車の攻撃すら、このソ連戦車の前では全く通用しなかったんです。
| そして向こうの攻撃は、ドイツ戦車の装甲を紙のように貫いてしまう――それは、まさに悪夢でした。
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 ・T-34ショック
  対ソ戦で遭遇したT-34のあまりの強力さに前線兵士は恐怖、ドイツ戦車開発陣も愕然とした一件。
  このT-34ショックは、後のドイツの戦車開発に大いに影響を与える。
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    | もうそりゃ、II号戦車がどうこうできる次元じゃないな。
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         | それでもドイツ軍の戦術は非常に練達していたのに比べて、ソ連側は極めて稚拙。
         | T-34KV-1自体の数も少なかったし、なんとかドイツ有利のまま戦況は進んだ。
         | こんな戦車がゴロゴロ出てきたらどうなっちまうんだ?といった暗雲が立ち込めてたがな。
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| II号戦車はソ連戦の時期には、もう性能の限界を迎えていました。
| III号戦車IV号戦車とソ連戦車が殴り合っているところを、側面に回り込んで攻撃を仕掛けたり、
| 偵察や敵軽車両の撃破に専念したり――非常に苦しい戦いを強いられていくことになります。
| 1942年12月には最終生産型であるF型の生産もストップし、性能強化型の検討も見送られました。
| それでも残るII号戦車は、ソ連や北アフリカの前線にて戦車不足を補いつつ戦い続けることになります。
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    | もう、完全に旧式化してたんだな。
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         | そもそも開発当時から、性能の不足は分かってたんだ。
         | ドイツの中の人の予想以上に戦車性能がインフレ化していくに及んで、II号戦車の非力は際立った。
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| さて、ここで自走砲のことを思い出して下さい。
| I号15センチ自走重歩兵砲I号対戦車自走砲など、旧式戦車に大口径の砲を搭載するという方式。
| 火力は格段にアップするものの砲塔が旋回できなくなるので、運動戦は不可能になってしまいます。
| 当初はリサイクルの意味を込めてやっつけ仕事的に自走砲を組んでいたドイツ軍、しかしその有効性に仰天。
| 以後は、旧式戦車の車体に大口径砲を載せるという方式にハマってしまいます。
| II号戦車もソ連戦の時期には限界を露呈していたので、そろそろ目が付けられ始めました。
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    | おお、I号戦車の講義でもやったな。
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         | 確かに有効な方法なので他の国もマネしたが、ドイツの場合はちょっと病的だった。
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| そういうわけで、II号戦車車体に生産準備中の7.5cm対戦車砲を搭載することが企図されていたんですが……
| ソ連の
T-34KV-1とのバトルが勃発するに及び、7.5cm対戦車砲の大量生産など待っていられない状況に。
| そこでドイツの中の人が周囲を見回すと、目に入ったのはソ連製76mm対戦車砲(ソ連では野砲)。
| ソ連と激戦を繰り広げる中で、大量にゲットした敵国兵器でした。
| よっしゃ! これとII号戦車を合体だぁ!ってことで、喜び勇んで改造開始。
| そうして1942年4月から1943年6月までに201両作成されたのがII号7.62cm対戦車自走砲マルダーIIです。
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 ・II号7.62cm対戦車自走砲マルダーII
  対ソ連戦で大量獲得したソ連製7.62cm対戦車砲Pak36(r)を、II号戦車D型、E型の車体に搭載した自走砲。
  予想を超えた活躍を見せ、この種の自走砲の有用性を高めた。

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    | II号戦車D型、E型って……例の失敗作のアレか。
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         | なおソ連などでは76mmとミリ表記だが、ドイツは基本的に7.6cmとセンチ表記なんだ。
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| このII号7.62cm対戦車自走砲マルダーII、ドイツ軍の予想を超えた大活躍を示します。
| そうしているうちにそもそも搭載予定だったドイツ製7.5cm対戦車砲も完成、喜んでII号戦車と合体!!
| そうして完成したのが、II号7.5cm対戦車自走砲マルダーIIでした。
| 1942年6月から1943年6月までに576両が生産、さらに75両のII号戦車マルダーIIに改造されました。
| スタンス的には本格的な対戦車自走砲が完成するまでの繋ぎだったんですが、これが存外に活躍。
| 遙かに火力のある対戦車自走砲が出揃い始めてからも地味に貢献し、終戦まで戦い続けました。
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 ・II号7.5cm対戦車自走砲マルダーII
  ドイツ製7.5cm対戦車砲Pak40を、II号戦車F型の車体に搭載した自走砲。
  1942年中頃には、「II号戦車は可能な限り全てマルダーIIに改造せよ」との命令が下されるほど大活躍。
  ただし装甲は非常に薄い……というよりも問題外。生存性は極めて低い。

 
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    | こっちが、そもそも予定してたドイツ製7.5cm対戦車砲の搭載型だな。
    | 外見も、ソ連製対戦車砲搭載型より洗練されてる感じか。
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         | II号7.62cm対戦車自走砲II号7.5cm対戦車自走砲も、慣習的にはマルダーIIと呼ばれている。
         | ただし公式には、II号7.62cm対戦車自走砲マルダーIIの名称は付いていないんだ。
         | なおマルダーIマルダーIIIに関しては、別の講義で。
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| さらに
15cm33型重自走砲にも搭載したsIG33重歩兵砲、これもII号戦車車体への搭載が図られます。
| そうして完成したのが、II号15cm重歩兵砲搭載自走砲
| これは超やっつけ仕事の15cm33型重自走砲とは違い、細部にまでこだわったドイツらしい仕上がり。
| どうも連中、こういうのは徹底的にいじくらないと気が済まないようです。
| 1941年11月から翌月まで12両が生産され、北アフリカ戦線に送られていきました。
| やはりI号戦車よりはマシなもののII号戦車の車体も小さすぎ、あまり発展性はなかったようです。
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 ・II号15cm重歩兵砲搭載自走砲
  II号戦車の車体に、sIG33重歩兵砲を搭載した自走砲。
  なお車体はII号戦車そのままの再利用ではなく、車体延伸や転輪の増加などが施されている。
  12両全てが北アフリカ戦線に送られ、エル・アラメインの戦いで全滅。

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    | あれ? 車体そのものもちょっと改造したんだな。
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         | I号戦車をやっつけ改造した15cm33型重自走砲は、安定性に大きな問題があったからな。
         | それを考慮に入れても、ちょっと手が込みすぎとも言えるだろうが……
         | ドイツ人の凝り性の精神が目覚めてしまったようだ。
         | そしてこの形式の自走砲は、グリレへと発展していく。
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| こうして対戦車砲や歩兵砲が自走化されていったんですが、砲兵の機動化はまだまだでした。
| ポーランド戦やフランス戦でも、良くてトラック、下手すりゃ馬で砲を引っ張って運んでたんですよね。
| しかし対ソ戦が勃発すると、ロシアの泥だらけの悪路では榴弾砲の牽引すら難しくなってきます。
| ここでようやく榴弾砲の自走化計画が持ち上がり、目を付けられたのが旧式化していたII号戦車でした。
| こうして10.5cm榴弾砲をII号戦車の車体に搭載し、完成したのがII号10.5cm自走榴弾砲ヴェスペ
| 1943年2月から1944年7月まで676両が生産され、終戦まで戦い続けます。
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 ・II号10.5cm自走榴弾砲ヴェスペ
  II号戦車F型の車体に、代表的な野戦砲である10.5cm榴弾砲を搭載した自走砲。
  やはり車体には入念に改良が施され、車体延伸やサスペンション改良、エンジン位置変更と極めて多岐。
  様々な戦線で投入され、性能の良さも相まって非常に広く活躍した。なお、ヴェスペとはスズメバチの意味。
  搭載弾薬量の少なさをカバーした専用弾薬運搬車も存在する。

 
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    | おお、これは大成功みたいだな。
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         | ただし車内は非常に狭く、元がII号戦車だけに装甲も薄めだった。
         | 乗員からの評判はそんなに良くなかったようだな。
         | なおヴェスペの上位タイプとして、フンメルというのが存在するぞ。
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| さて、ここで本流から外れた亜種も紹介しておきましょう。
| 話は開戦前に遡って1938年6月、II号戦車D型の生産が始まった時期のことです。
| ドイツ軍において、新型II号戦車となるVK9.01の開発がスタートしていました。
| 基本的に砲塔も車体も新設計であり、そのコンセプトは最高速度の追求。
| どこか失敗作に終わったD型E型を彷彿とさせますね
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    | 新型II号戦車……もしかして、D型E型の方針を諦めていなかったのか?
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         | その可能性も高いな。
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| このVK9.01は量産が決まったものの、度重なる改修によってなかなか大量生産に移れません。
| 結局のところ、1942年2月までに12両が完成した時点で生産ストップ。
| このVK9.01、後のII号戦車G型――と呼ばれるまでもなく計画がポシャったんですよ。
| このVK9.01生産はキャンセルされ、次に解説するVK9.03とVK13.03が生産されることになりました。
| とりあえず完成した12両は実戦では使われず、砲塔のみがトーチカとして用いられたとか。
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 ・II号戦車G型(VK9.01):新設計の速度追求型。事実上の試作のみ。
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    | なんと! VK9.01は失敗作だったのか……!?
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         | VK9.03とVK13.03は、VK9.01の発展改良型。
         | より改良が施されたタイプを生産することにした、って話だ。
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| VK9.01の変速機を改良し、側面装甲を強化したのがVK9.03。
| しかしこのVK9.03は同じくVK9.01を改良したVK13.03と用途が被っているということで、計画の一本化が図られます。
| そういうわけで、VK13.03に上書きされる形でVK9.03の計画もポシャりました。
| このVK9.03、II号戦車H型という名前が与えられることになっていたとか。
| そんなH型の装甲をさらに強化し、5cmを搭載しようとしたのがM型なんですが、これもボツに。
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 ・II号戦車H型(VK9.03):G型の変速機、並びに装甲を改良したタイプ。事実上の試作のみ。
 ・II号戦車M型(VK13.01):H型の武装・装甲を増強したタイプ。試作のみ。
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    | なんかもう、ことごとくダメってるな。
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         | ボツになったというか、一つの開発計画に収斂されていったってのが正確なところだが。
         | あっちこっちに手を伸ばしている余裕など、当時のドイツにはなかったからな。
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| そんなG型H型M型を踏み台にして完成したのが、VK13.03――後のII号戦車L型ルクス
| 速度性能を重視した、非常に快速な偵察タイプ。車体も砲塔も新設計で、厳密にはII号戦車と別の系譜です。
| 問題は……このII号戦車L型ルクスの生産開始が、1942年6月だったことですね。
| この時期はV号戦車パンターの生産で大わらわ、偵察戦車の生産など当然のごとく後回しに。
| そういう事情で、800両の生産が予定されていたII号戦車L型ルクスですが、実際に生産されたのは100両。
| 重要性もそう高くない車両ということで、そこで生産が打ち切られてしまいました。
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 ・II号戦車L型ルクス
  高速性能を追求した偵察戦車で、II号戦車シリーズとは実質の別物。
  最高時速60kmに2cm機関砲搭載と、偵察戦車としては非常に優れた性能を誇った。
  しかし当時のドイツでは優先度が低く、100両程度の生産で終わる。なお、ルクスとは山猫の意。

 
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    | ……結局のところ、G型、H型、M型、L型の系譜は失敗だったってこと?
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         | まあ結果論で言えば、そういうことだな。完成形のL型は、決して悪くはなかったんだが……
         | パンターを彷彿とさせるようなスタイルも素敵だ。
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| なお、このII号戦車L型ルクスにはさらなる改良型が予定されていました。
| それがL型をベースに5cm砲を搭載した偵察戦車で、II号戦車シリーズとしては破格の大型でした。
| しかしL型ですら生産を打ち切られる状況で、そんなものを生産する余裕も必要性もありません。
| それがVK16.02レオパルドなんですが、もはやII号戦車としてのナンバーも与えられていません。
| これらの偵察戦車の系列は、
Sd.Kfz.234/2プーマ重装甲偵察車が跡を継ぐことになりました。
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 ・VK16.02:L型を改良し、5cm砲を搭載したタイプ。計画のみ。
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    | 俺はまだ登り始めたばかりだからな。この果てしないVK16.02レオパルド坂を。
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         | II号戦車L型ルクスの生産予定800両のうち、100両はL型として生産。
         | 残る700両は、このVK16.02レオパルドとして完成させるという話もあったとか。
         | 結局のところ、L型が100両生産された時点で打ち切られたがな。
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| さて……以上が新型II号戦車と呼ばれる、速度性能を重視した別系統でした。
| しかしそれ以外にも、新型II号戦車強化型と呼ばれるさらに別の系統が存在します。
| この新型II号戦車強化型において重視されたのは、防御力でした。
| 正面装甲を80mmに増強したVK16.01(後のII号戦車J型)、
| これは重装甲の偵察戦車開発を企図していたのではないか、と言われていますが……
| このJ型の最高時速は31kmと、パンターティーガー以下。何がしたかったのかよく分かりません。
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 ・II号戦車J型(VK16.01):防御力向上型だが、事実上の試作型で終わる。
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    | ううむ……なんなんだ、これ?
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         | 兵器開発の歴史の中では、後世の研究家が首をひねってしまうような事例もたまにある。
         | このII号戦車J型は22両が完成し、東部戦線に送られたが……その活躍は不明。
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| その他の改造型としては、以下の通りでしょうか。
| ドイツ人の「決してモノを無駄にしない」「創意工夫でなんとかする」という精神がよく分かるでしょう。
| それが時に行き過ぎ、妙なところで手間を掛けすぎ、結果的に非効率を導くことも多いのが切ないところ。
| なおII号指揮戦車というものが存在しているという話もありますが、これは正式なものではありません。
| II号戦車の無線機能を増強した、現地改造的なものに過ぎないものとされています。
| PaK38搭載型に関しても試作の域を出ないので、ここでは触れません。
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 ・II号工兵用車両:II号戦車の車体を再利用した工兵用の車両。
 ・II号架橋戦車:b型の車台を再利用した架橋戦車、4両のみのリサイクル品。
 ・II号水陸両用戦車:英本土上陸作戦に向けて試作された戦車。作戦そのものが取り止めになり、無駄に。
 ・II号火炎放射戦車A、B型:使い物にならなかったII号戦車D、E型を改造したもの。新生産タイプも存在する。
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    | もったいないお化けは出そうにないな。
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         | なおII号火炎放射戦車は対ソ戦初期に投入されたが、装甲の薄さが問題になって撤収。
         | 結局はマルダーIIに再改造されることになった、なんとも数奇な運命の車両だ。
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| こんな風にII号戦車は大戦初期において主力として大活躍。
| 常に装甲の薄さや非力さが目立ったものの、ドイツ常勝期において主力を務めたという事実は揺らぎません。
| そしてII号戦車の車体を転用した自走砲に至っては、終戦まで活躍し続けます。
| 一般的にはパンターティーガーに脚光が当たり、ちょっとした通ならIV号戦車こそ主力と理解しているでしょう。
| しかしII号戦車も、もう少し評価されてもいいのではないでしょうか――ってことで、今回の講義を終わります。
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 ・II号戦車a/1型:初期生産型。
 ・II号戦車a/2型:エンジンの冷却装置を改良。
 ・II号戦車a/3前期型:燃料ポンプの改良、オイルフィルターのアクセスハッチを備え付け。
 ・II号戦車a/3後期型:エンジン部にラジエーター追加、サスペンションを改良。
 ・II号戦車b型:エンジンを換装、足回りを改良、車体を延長。
 ・II号戦車c型:足回りを大改良、新型サスペンションを搭載。
 ・II号戦車A型:エンジンを改良、本格生産型。
 ・II号戦車B型:A型の小改良型。
 ・II号戦車C型:B型の小改良型。
 ・II号戦車D型:軽師団用の高速タイプ、車体は完全に新設計。
 ・II号戦車E型:D型のサスペンションを改良したタイプ。
 ・II号戦車F型:1941年からの再生産型で、防御力が増強されている。
 ・II号戦車G型(VK9.01):新設計の速度追求型。事実上の試作のみ。
 ・II号戦車H型(VK9.03):G型の変速機、並びに装甲を改良したタイプ。事実上の試作のみ。
 ・II号戦車J型(VK16.01):防御力向上型だが、事実上の試作型で終わる。
 ・II号戦車L型ルクス:G型やH型の流れをくんだ偵察戦車。II号戦車シリーズとは実質の別物。
 ・II号戦車M型(VK13.01):H型の武装・装甲を増強したタイプ。試作のみ。
 ・VK16.02:L型を改良し、5cm砲を搭載したタイプ。計画のみ。
 ・II号7.62cm対戦車自走砲マルダーII:ソ連製7.62cm対戦車砲Pak36(r)を搭載した自走砲。
 ・II号7.5cm対戦車自走砲マルダーII:7.5cm対戦車砲Pak40を搭載した自走砲。
 ・II号15cm重歩兵砲搭載自走砲:sIG33重歩兵砲を搭載した自走砲。
 ・II号10.5cm自走榴弾砲ヴェスペ:10.5cm榴弾砲を搭載した自走砲。
 ・II号工兵用車両:II号戦車の車体を再利用した工兵用の車両。
 ・II号架橋戦車:b型の車台を再利用した架橋戦車、4両のみのリサイクル品。
 ・II号水陸両用戦車:英本土上陸作戦に向けて試作された戦車。作戦そのものが取り止めになり、無駄に。
 ・II号火炎放射戦車A、B型:使い物にならなかったII号戦車D、E型を改造したもの。新生産タイプも存在する。
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    | しかし板書、凄いことになってるな。
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         | 教授の声が聞こえない……II号戦車がなんだって?
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