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| III号戦車を一言で表すなら、「主力に成り得なかった主力戦車」でしょうか。
| 主力として期待されていた時期には数が揃わず、数が揃った時期には貧弱さが目立ち――
| そういう非常に微妙な戦車が、今から講義するIII号戦車でした。
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    | つまりはダメ戦車だったの……?
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         | 決してそうではないが、あらゆる意味で間が悪かったな。
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| I号戦車の開発が軌道に乗り始めた時期から、この戦車は実戦で使えるモノではないことが明らかでした。
| ドイツの中の人は、3.7cm砲を備えた軽戦車と7.5cm砲を備えた中戦車の二本立てを企画していたんです。
| あくまで主力は3.7cm砲軽戦車の方で、7.5cm砲中戦車の方は火力支援専用。
| 通常の戦闘は3.7cm砲軽戦車が担当し、どうしても歯が立たない堅固な施設などで7.5cm砲中戦車が出る――
| そんな予定だったんですよ。
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 訓練用のLaS → 後のI号戦車
 7.5cm砲を備えた中戦車 → 後のIV号戦車
 3.7cm砲を備えた軽戦車 → 後のIII号戦車
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    | つまり、3.7cm砲軽戦車は紛れもない主力戦車とされていたんだな。
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         | 3.7cm砲軽戦車が三個中隊、7.5cm砲中戦車が一個中隊の組み合わせを想定していた。
         | この四個中隊で、一個戦車大隊になる計算だな。
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| そして1934年、3.7cm砲軽戦車をZWの秘匿名称で、7.5cm砲中戦車をBWの秘匿名称で開発スタート。
| このZWが後のIII号戦車であり、BWが後のIV号戦車となるんですね。
| そんなZWの要求に応えたダイムラーベンツ社の試作案に対して、ドイツ軍は許可を出します。
| こうしてダイムラーベンツ社は試作車両の開発および生産に乗り出すんですが――
| その道は、これまでの車両にないほど苦難の連続でした。
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 ZW(後のIII号戦車)の要求仕様
 ・徹甲弾を発射できる対戦車砲を備え、対戦車戦闘が可能。
 ・敵歩兵にも対処できるよう、重機関銃を装備。
 ・路面を時速40kmで走行可能。
 ・対戦車兵器に対する最低限の防御を備える。
 ・無線機を備え、乗員は5名。
 ・重量は24トン(ドイツの橋の重量制限)を超えない。
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    | なんと、一筋縄ではいかなかったのか。
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         | 30年代中盤のドイツ車両開発技術は、やはり未発達の状態にあった。
         | あまりにZWの開発が上手くいかないので、ピンチヒッターとしてII号戦車の開発が始まったほどだ。
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| 3年もの月日が経過した1937年、1/ZW(後のIII号戦車A型)と呼ばれる試作車両10両が完成します。
| しかし板書にある通り、改善を要する問題点がまだまだ山積みの状態でした。
| さらに、3.7cm砲というこの当時ではスタンダードな主砲のサイズに関しても問題が持ち上がります。
| グデーリアンやルッツなど先進的なドイツ軍人は、「これからの戦車発展を考えると5cm砲が妥当」と発言。
| しかし兵器局は「3.7cm砲で十分、歩兵砲と規格を統一するべき」との見解を示していたんです。
| 結果的に3.7cm砲を搭載しつつ、5cm砲をも装備可能な砲塔リングを備え付けるということになりました。
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 1/ZW(後のIII号戦車A型)の問題点
  ・重量制限(24トン)との兼ね合いで、装甲が15mmと薄め。
  ・重量を制限したにもかかわらず、サスペンションの不調で最高時速は32km(要求仕様は時速40km)。
  ・主砲が3.7cmと、将来の発展を見越した場合には過小気味。
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    | 5cm砲をも装備可能な砲塔リング……どういうこと?
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         | 現状で、ZW(III号戦車)に搭載されているのは3.7cm。
         | しかし車体は5cm砲搭載も可能なようになっているので、将来の改造も容易ってことだ。
         | この判断がなければ、III号戦車は悲惨な三流兵器となっていたかもしれない……
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| 積み重なる課題にもめげず、同年にダイムラーベンツは2/ZW(後のIII号戦車B型)を15両完成させます。
| これは1/ZWで問題になったサスペンションを改良したもので、速度性能は時速35kmにまでアップ。
| さらに同年末に、めげすにサスペンションを改良した3a/ZW(後のIII号戦車C型)15両が登場。
| それでもなお問題点は多く、1938年初頭には3b/ZW(後のIII号戦車D型)を完成させました。
| この3b/ZWは30両が生産されましたが、やはり足回りに不備のある問題車。
| こうして度重なる改良がもたらしたのは、生産の遅延でした。
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 ・III号戦車A型:初期試作型。極めて問題点が多い。
 ・III号戦車B型:A型の足回りを改良したが、問題の改善にはならず。
 ・III号戦車C型:B型の足回りをさらに改良したが、問題の改善にはならず。
 ・III号戦車D型:C型の足回りをそれでも改良したが、問題の改善にはならず。
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    | 1938年と言えば、もう大戦勃発の1年前じゃないか。
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         | 一方で、BW(後のIV号戦車)の開発はIII号戦車より順調に進んでいた。
         | こうして支援用だったはずのIV号戦車の方が、開戦時に数が多いという事態になってしまうんだ。
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| そんな1938年半ば、ダイムラーベンツ社は新方式のサスペンションに目を付けます。
| それが同時期に開発されていたII号戦車D型に搭載された、トーションバースプリング式サスペンション。
| 機械的な解説は省略しますが、これは後にドイツ戦車のスタンダードとなる非常に近代的な方式でした。
| この新式サスペンションを搭載して1939年に完成した4/ZWは、晴れて満足な性能を示します。
| 4/ZWはエンジンも換装し、足回りが抜本的に強化。速度に余裕が出たことで、装甲強化も行われます。
| 実に立派になったZW完成型に軍は大喜び、こうしてIII号戦車を名乗ることが許されました。
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 ・III号戦車E型:新式サスペンションを搭載し、エンジンや装甲も強化した初期生産型。
 ・III号戦車F型:E型とほとんど同一だが、あちこちに僅かな調整がなされている。
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    | おお、そいつははめでたい!
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         | でも、生産型の完成は1939年初頭。
         | 開戦時の1939年9月に数が揃っていないなんて、当然の話だな。
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| こうして完成した初の生産型であるE型ですが、すぐF型が登場することにより生産数は少ないです。
| 初期の時点で本格的に生産されたのは、エンジンや換気装置などに小改良が施されたF型
| こうしてF型は1940年夏までに、500両以上もの台数が量産されました。
| それでもポーランド戦時の1939年9月の時点では、主力であるIII号戦車の保持数は僅か98両。
| I号戦車II号戦車チェコ製戦車が頑張らなければならない事態となってしまったんです。
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 ・III号戦車
  主力戦車となるべく計画されたが開発が遅れに遅れ、数が揃わないままに開戦。
  ソ連戦の頃にはようやく主力レベルに数が揃ってきたが、ソ連のT-34に歯が立たなかった。
  だが、北アフリカでのイギリス軍との戦いでは、そこそこ活躍している。
  主砲は5cm砲(当初は3.7cm砲)だが、戦争中盤以降に登場した最終生産型では7.5cm砲を採用した。

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    | 「陸上兵器の歴史」で一度見たことのある板書だが……
    | こうして開発をゼロから追った後で目にすると、また趣が違ってくるな。
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         | なおポーランド戦には、生産型であるE型F型どころか試作型のA〜D型までが投入されている。
         | それだけ、ドイツ軍の戦車不足は深刻なものだったんだ。
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| III号戦車初期型の性能は、この時代としては極めて優秀。
| 初登場した時期に限定すれば、世界でもトップクラスの総合性能の高さを誇っていました。
| ポーランド戦での評判もかなり良かったものの……それでも、装甲の薄さは当初より指摘されています。
| 敵の所有する軽戦車はたやすく蹴散らす事が出来たものの、対戦車砲の前では犠牲を強いられたんですよ。
| 特に試作型のA〜D型は非常に装甲が薄いので、1940年2月には前線部隊から引き下げられてしまいました。
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 III号戦車F型
 ・全長:5.38m  ・全幅:2.91m  ・全高:2.44m  ・重量:19.8t  ・乗員:5名
 ・最大出力:300hp  ・最大速度:40km/h  ・行動距離:165km  ・装甲厚:10〜30mm
 ・エンジン:マイバッハHL120TRM(水冷V型12気筒ガソリンエンジン)
 ・武装:3.7cm砲KwK36×1、7.92mm重機関銃MG34×3
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    | III号戦車でも、装甲に問題があったのか……
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         | 全体的に、戦車に要求する装甲の見通しが甘過ぎた、ってところがあるだろうな。
         | ドイツ軍に限った話じゃなく、ほぼ世界的な戦車開発の傾向として。
         | むろん、例外は幾つもも存在したが……
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| そして1940年5月からのフランス戦において、III号戦車は全投入戦車2800両のうち350両のみ。
| このフランス戦は決して生易しいものではなく、III号戦車の約40%に相当する135両が破壊されます。
| III号戦車の軽装甲は明らか、またイギリス・フランス連合軍の戦車に対して3.7cm砲では火力不足でした。
| フランス戦を勝利に飾ることはできたものの、主力であるIII号戦車に対する不安感は高まっていきます。
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    | 早くも、攻撃でも防御でも難があったのか……
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         | 主力戦車とされていたIII号戦車ですらこれだからな。
         | 実質上の主力だったI号戦車II号戦車なんて実に苦しい戦いだ。
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| 「なんとかしてくれぇーぎゃああ」という前線からの叫びは、フランス戦の最中から工場へと伝わっていきました。
| しかしラッキーな事に、III号戦車は最初から5cm砲にも対応しているというスグレモノ。
| さっそく5cm砲を搭載し、さらに後部装甲を強化したG型を生産開始!!といきたかったのですが……
| 5cm砲の生産が間に合わず、結局G型は3.7cmを搭載したまま生産が開始されることになります。
| しかもF型も平行生産するという状態で、ドイツの戦車工場は大わらわでした。
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 ・III号戦車G型:F型の後部装甲を強化したタイプ。
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    | 結局G型は、後部装甲を強化しただけのタイプに終わったのか。
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         | ところが、ここで混乱を引き起こす事態となる。
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| しかし5cm砲の生産が進むと、「よっしゃ! さっそく搭載だ! F型? G型? 関係ねぇ!」って状態に。
| こうして平行生産されていたF型G型に5cm砲を搭載しての生産に切り替わります。
| つまりF型G型は、3.7cm砲型と5cm砲の2タイプが存在するという事態になりました。
| これが後の世に混乱をきたし、F2型などといった非公式の名称を生み出すことにもなります。
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 ・III号戦車F後期型:F型の車体に42口径5cm砲を搭載。
 ・III号戦車G後期型:G型の車体に42口径5cm砲を搭載。
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    | 同タイプで主砲が違うというのは、確かに紛らわしいなぁ。
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         | これらの改装は、これまで生産されたIII号戦車E、F、G型にも施された。
         | まあ改装作業ははかどっていたとは言えず、旧式の37mm砲搭載型も数多かったがな。
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| そうこうしている間にフランス戦は終了、しかしドイツの厳しい戦いはなおも続きます。
| 徐々に性能不足を露呈してきたIII号戦車を抜本的に叩き直すため、大幅な改修が施されることになりました。
| そういうわけで車体や砲塔など根幹に関わる部分にまで手を入れたものの、結局は無難に改良が完了。
| こうして、どこか尻すぼみな形で完成したのがIII号戦車H型でした。
| 砲塔を新式にし、変速機を改良。また30mm増加装甲板を装着しています。
| 本来の装甲30mm+増加装甲30mm、単純計算で60mmの装甲を持つということですね。
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 ・III号戦車H型:G型の砲塔や変速機を改良し、増加装甲を装着したタイプ。
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    | それでも、抜本的に叩き直したとは言えないのか。
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         | 車体は手つかずで、増加装甲という簡易な方法でお茶を濁したからな。
         | この増加装甲も、これまで生産されたIII号戦車E、F、G型に装着されている。
         | まあ、全車に行き渡ったわけじゃないってのもお約束だが。
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| そういうわけで、どこか徹底しない改装で終わってしまったのがIII号戦車H型
| そのH型の車体を設計し直し、ようやく根本的な改良を果たしたのがIII号戦車J型でした。
| 30mm二枚重ねの装甲を50mm一枚に改め、他にも様々な変更が施されたタイプです。
| このJ型は非常にバランスが良く、最も数多く生産されたIII号戦車なんですよ。
| そんなIII号戦車J型の開発が始まりだした1941年5月、思わぬ事態が兵器局を襲いました。
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 III号戦車J型
 ・全長:5.52m  ・全幅:2.95m  ・全高:2.50m  ・重量:21.5t  ・乗員:5名
 ・最大出力:300hp  ・最大速度:40km/h  ・行動距離:155km  ・装甲厚:10〜50mm
 ・エンジン:マイバッハHL120TRM(水冷V型12気筒ガソリンエンジン)
 ・武装:42口径5cm戦車砲KwK38×1、7.92mm重機関銃MG34×2
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    | 30mm+30mmの装甲が50mmになったのって、弱体化じゃないか?
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         | 二枚の装甲を重ねるという方式だと、30mm+30mmの単純計算で60mmの強度とはならないんだ。
         | 結論だけを言えば、50mmの一枚装甲の方が強度が上。
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| ここで少し話を戻すと、第三帝国総統はIII号戦車G型が短砲身5cm砲を搭載することに異を唱えていました。
| 兵卒思いの伍長閣下は、より強力な長砲身5cm砲を搭載せよ!と主張していたんですね。
| しかし兵器局は、そんなヒトラーの要求を完全に無視。「バランスを崩すもの」として切って捨てたんです。
| そして、そのままIII号戦車に短砲身5cm砲を載せ続けていた――それが、ヒトラーにバレてしまったんですよ。
| こうして独ソ戦を控えた1941年5月、ヒトラーはこの一件で大激怒!!
| 兵器局は慌てて、III号戦車J型に長砲身5cm砲を搭載できるように開発を進めるという事態に。
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 ・III号戦車J後期型:J型の主砲を60口径5cm砲に換装したタ .il/             "-、;;;;;;::::lProblems, das uns auch
  ,__                                  il   -、   イ´        ヽ;;;:,ider Versailler Vertrag,
  iii■∧   /                  (・) |ヽ         「| t´ュ`l  t´_ュソ        |`ld.h. das Versailler Diktat,
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   |   つ ∇      (゚Д゚,,)      /_ V/レ'   Problems,ヽ、,,イi_l_>ヽ          i_,/das in seiner Ausartung
   |  |┌─┐   /⊂   ヽ    /⊂  ヽ   und Entartung'l  .il|||i;ll.  `  ''     /;'fur uns unertraglich
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   ∪∪ |   |  ||   ━┳┛  ||   ━┳┛       deutsche'i  l    i  ノ  ,/  |Stadt.Der Korridor war
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    | ヒトラー……
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         | ほら……あの人、戦車マニアだから。
         | なお長砲身5cm砲搭載タイプであるIII号戦車J後期型の生産開始時期は、1941年12月。
         | 独ソ戦がとっくに始まった後のことだったんだ。
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| さて、独ソ戦を控えた時期のドイツ陸軍はどんな状態だったのかというと……
| フランス戦の終了後あたりから、各部隊にようやく満足な数のIII号戦車が行き渡ってきました。
| I号戦車はほぼ引退し、それまで事実上の主力だったII号戦車チェコ製戦車はサブに控えることに。
| といっても、まだまだIII号戦車を主力と呼ぶには配備数に問題がある状態でした。
| ドイツ軍の装甲師団数自体が倍増しており、戦車不足はマシになったものの解決には程遠い状況なんです。
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    | 今、誰か後ろで騒いでなかったか……?
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         | 君が呼んだんじゃないのか?
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| また同時期の1941年春、北アフリカでロンメル率いるDKA(ドイツアフリカ軍団)が暴れ始めます。
| この部隊の主力となったのはIII号戦車で、イギリス戦車相手に獅子奮迅の活躍。
| しかし同年6月から始まった対ソ戦では、ドイツ戦車は恐ろしい強敵と相対してしまいました。
| それがT-34――III号戦車の5cm砲どころか、IV号戦車の7.5cm砲でも打ち破るのが困難だったんです。
| そんな苛烈極まる戦闘が続き、III号戦車は次々と消耗。実に多大な出血を強いられる戦闘となりました。
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 ・T-34ショック
  対ソ戦で遭遇したT-34のあまりの強力さに前線兵士は恐怖、ドイツ戦車開発陣も愕然とした一件。
  このT-34ショックは、後のドイツの戦車開発に大いに影響を与える。
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    | T-34、恐るべし。
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         | 北アフリカにおいては、III号戦車はかなり活躍していたんだがな。
         | ソ連の所有するT-34も初期のうちはそう多くなく、III号戦車にも十分に活躍の余地があった。
         | この北アフリカ戦や、1941〜42年あたりのソ連戦が最もIII号戦車が輝いていた時期だろう。
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| そんな強敵と戦火を交えるにあたり、前線に送られ始めた60口径5cm砲搭載III号戦車J型でも力不足。
| このIII号戦車J後期型に、さらに装甲強化を施したL型。250両が生産されたM型なども生まれました。
| M型は渡河性能を強化したタイプなんですが、なんでいきなりそんな能力をアップさせたのか分かりません。
| J型は2500両以上、L型は1700両以上と目もくらむような台数が生産されて前線に送られています。
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 ・III号戦車L型:J後期型の装甲を強化したタイプ。
 ・III号戦車M型:L型の渡河性能を強化したタイプ。
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    | すっげえ数だ……
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         | なお60口径5cm砲搭載型のIII号戦車は、北アフリカ戦線にも投入された。
         | 東部戦線では力不足だったが、イギリス戦車相手だとかなりの活躍を見せる。
         | イギリスからは「マークIIIスペシャル」と呼ばれて恐れられたんだ。
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| とは言え1942年末あたりで、III号戦車の旧式化は目に見えて明らかでした。
| V号戦車パンターVI号戦車ティーガーが出現するに及んで、いよいよIII号戦車は現役引退を迫られることに。
| こうして1943年8月には戦車型の生産は終了、しかし前線でのIII号戦車は最後まで戦い続けることになります。
| 明らかに旧式化しながらも、老骨にムチ打って戦い続けるかつての主力戦車――切ない話です。
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    | ドイツなら……ドイツなら、きっとなんとか(自走砲に)してくれる!
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         | その最たる例のIII号突撃砲は、別講義で扱っている。
         | III号突撃砲は、正直なところIII号戦車の何倍も戦場で活躍したんだ。
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| さて、III号戦車の正当な進化はここまで。ここで亜種を紹介しておきましょう。
| 1942年6月、ヒトラーは旧式化していた短砲身7.5cm戦車砲の生産中止を命令します。
| ここで問題になったのが、450門ほど余っていた短砲身7.5cm戦車砲の用途。
| ふと思いついたのが、III号戦車の車両への搭載。こうして完成したのが、III号戦車N型でした。
| この主砲はIV号戦車初期型に搭載されていたものと同じ方なんですが、まあ時期が時期。
| 結構好評だったのでリサイクル用途で相当数のN型が生産されるも、目に見えた活躍は多くありません。
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 ・III号戦車N型:L型に24口径7.5cm戦車砲を搭載したタイプ。
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    | 戦局は極端にインフレ化していったんだなぁ。
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         | エル・アラメインの戦いや、スターリングラードの戦いがIII号戦車の活躍できる限界だった。
         | それ以降は、ヤムチャほどではないもののクリリン振りをさらすばかり……
         | もはや、主力戦車として期待されていたことなど過去の話となっていた。
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| また非常に奇異な亜種として、III号潜水戦車というのが存在します。
| これは1940年半ばから計画されていたゼーレヴェ作戦(英本土上陸作戦)を見越してのもの。
| シュノーケルを付け、海底を走るというブッ飛びすぎた発想から開発されたものです。
| それでも流石はドイツ人、既存のIII号戦車を改造し……なんと168両が完成してしまいました。
| 潜水艦の技術は超一流ですが、まさかこんなものにまで応用してしまうとは……
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 ・III号潜水戦車:III号戦車を潜水できるように改造したタイプ。
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    | 上陸作戦だからって、戦車をそんな、海からザバーって…… え? え?
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         | もっとも、これでドーバー海峡をそのまま渡ろうとしたわけじゃない。
         | イギリスの沿岸まで輸送した後、近海に投下。そこからザバーって上陸……それも凄い発想だが。
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| 何が凄いって、こんな訳の分からない兵器に相応の性能が伴っていたこと。
| なんと水深15mまでの潜水が可能でというシロモノでしたが……ゼーレヴェ作戦は中止が決定。
| こうして、思いっきり役立たずになるIII号潜水戦車――と思いきや、意外なところで活躍の機会が。
| 独ソ戦における渡河作戦で、楽々と河を渡るという活躍を見せたんですよ。
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    | 戦争ってのは、何がどこで役立つか分からないんだな……
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         | なおIII号潜水戦車とほぼ同じ目的で、IV号潜水戦車も存在するぞ。
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| III号戦車の車体を流用した車両は、他のシリーズ戦車と比べて極めて少ないです。
| これは、III号突撃砲という極めて優秀な兵器が存在していたからでした。
| III号戦車の軽快な車両は非常に完成度が高く、スタンダードな戦車型や突撃砲型として生産。
| 他の派生車両には、流用する余裕も必要性もなかったというわけですね。
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 ・III号指揮戦車:III号戦車の無線増強型で、砲塔は精巧なダミー。D1型、E型、H型、K型が存在する。
 ・装甲砲兵観測車両:旧タイプのIII号戦車を改造したもので、その砲塔はちゃちなダミー。
 ・III号工兵戦車:旧タイプのIII号戦車を改造したもので、工兵用の機材を搭載している。
 ・III号弾薬運搬車:使えなくなったIII号戦車の砲塔を取り外したタイプ。
 ・III号戦車回収車:使えなくなったIII号戦車を改造したタイプ。
 ・III号火炎放射戦車:III号戦車H型、M型を改造した火炎放射器搭載型。
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    | 精巧なダミー砲塔とちゃちなダミー砲塔……
    | 指揮戦車には指揮官が乗ってるから、より優れた欺瞞が必要だったってことか。
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         | III号戦車とIV号戦車の車体はサイズ的には似通っていたが、全く性質が違った。
         | III号戦車車両は小回りが利いて、非常に軽快。
         | IV号戦車車両は軽快さとは程遠いが、非常に生産性が高い。
         | そんな特質の差により、このサイズの派生車両はIV号戦車がベースになったんだ。
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| III号戦車は、一連のドイツ戦車の中で最も人気がない戦車と言われています。
| 数不足や性能不足がつきまとい、活躍しきれなかったイメージは納得。
| しかし一概にダメ戦車とは決して言えず、非常に高い総合性能と信頼性を保っていたのも事実。
| ただ、周囲の情勢がIII号戦車にとってプラスに働かなかった……といったところでしょうか。
| ただしIII号突撃砲III号戦車と完全に道を分かち、独特の存在感を放ち続けています。
| そんな突撃砲〜駆逐戦車については、別の講義で。では、III号戦車の講義を終わります。
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 ・III号戦車A型:初期試作型。極めて問題点が多い。
 ・III号戦車B型:A型の足回りを改良したが、問題の改善にはならず。
 ・III号戦車C型:B型の足回りをさらに改良したが、問題の改善にはならず。
 ・III号戦車D型:C型の足回りをそれでも改良したが、問題の改善にはならず。
 ・III号戦車E型:新式サスペンションを搭載し、エンジンや装甲も強化した初期生産型。
 ・III号戦車F型:E型とほとんど同一だが、あちこちに僅かな調整がなされている。
 ・III号戦車F後期型:F型の車体に42口径5cm砲を搭載。
 ・III号戦車G型:F型の後部装甲を強化したタイプ。
 ・III号戦車G後期型:G型の車体に42口径5cm砲を搭載。
 ・III号戦車H型:G型の砲塔や変速機を改良し、増加装甲を装着したタイプ。
 ・III号戦車J型:G型に見られる本来の装甲+増加装甲のスタイルを、一枚の装甲に改めた新設計型。
 ・III号戦車L型:J後期型の装甲を強化したタイプ。
 ・III号戦車M型:L型の渡河性能を強化したタイプ。
 ・III号戦車N型:L型に24口径7.5cm戦車砲を搭載したタイプ。
 ・III号潜水戦車:III号戦車を潜水できるように改造したタイプ。
 ・III号指揮戦車:III号戦車の無線増強型で、砲塔は精巧なダミー。D1型、E型、H型、K型が存在する。
 ・装甲砲兵観測車両:旧タイプのIII号戦車を改造したもので、その砲塔はちゃちなダミー。
 ・III号工兵戦車:旧タイプのIII号戦車を改造したもので、工兵用の機材を搭載している。
 ・III号弾薬運搬車:使えなくなったIII号戦車の砲塔を取り外したタイプ。
 ・III号戦車回収車:使えなくなったIII号戦車を改造したタイプ。
 ・III号火炎放射戦車:III号戦車H型、M型を改造した火炎放射器搭載型。
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    | ドイツ戦車の講義なのに、熱狂的ゲルマンスキーの後ろギコを見ないよな……
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         | 家に閉じこもって、なんか組み立てている様子だったぞ。
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