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| 人間、追い詰められれば何を始めるか分かりません。そして、それは国家でも同様。
| 特に敗戦間近の国家というものは、命運をかけてとんでもないアレ兵器を造ってしまうことがあります。
| 例えば、ティーガー約4両分の重量を誇る超巨大戦車マウス
| これはヒトラーが猛烈に後押しし、あのポルシェ博士が設計したという、なんとも駄目そうなシロモノ。
| 今日は、ドイツが産んだマウスE-100という二種類の巨大戦車について講義します。
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    | ポルシェ博士って……ティーガーの時にもいろいろやらかさなかったっけ?
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         | 電気駆動にこだわり、ヒトラーと組んで生産現場を大混乱に陥れたオッサン。
         | 発想が何かと派手なのでヒトラーに気に入られ、やりたい放題のマッド・サイエンティスト。
         | 彼とヒトラーが組んだ時、必ず嵐が起きる……第三帝国の風物詩的存在だ。
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| まず、巨大戦車E-100が開発されるきっかけとなったE計画から解説しましょう。
| では学生達、まずはこの板書を見て下さい。私の声、聞こえてますかー?
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 ・I号戦車A型:初期生産型。
 ・I号戦車B型:エンジン改良型、最もスタンダードなタイプ。
 ・I号戦車C型:空挺型、正確には全くの別設計。
 ・I号戦車F型:重装甲型、正確には全くの別設計。
 ・I号指揮戦車A型:通信性能増強タイプ、生産は極めて少数。
 ・I号指揮戦車B型:A型の改良版。
 ・I号15センチ自走重歩兵砲:sIG33重歩兵砲搭載型。
 ・I号対戦車自走砲:47mm対戦車砲搭載型。
 ・I号対空戦車:20mm対空機関砲搭載型。
 ・I号戦車B型爆薬設置車:I号戦車B型の車体に、爆薬の設置アームを取り付けた工兵用車両。
 ・I号戦車A型架橋車:I号戦車A型の車体を再利用した架橋車。
 ・I号火炎放射戦車:I号戦車A型の砲塔に火炎放射器を取り付けた戦車、主に北アフリカで使用。
 ・弾薬運搬車用Ia号戦車&Ib号戦車:I号戦車A・B型の車体に、弾薬運搬用の箱を載せたタイプ。
 ・II号戦車a/1型:初期生産型。
 ・II号戦車a/2型:エンジンの冷却装置を改良。
 ・II号戦車a/3前期型:燃料ポンプの改良、オイルフィルターのアクセスハッチを備え付け。
 ・II号戦車a/3後期型:エンジン部にラジエーター追加、サスペンションを改良。
 ・II号戦車b型:エンジンを換装、足回りを改良、車体を延長。
 ・II号戦車c型:足回りを大改良、新型サスペンションを搭載。
 ・II号戦車A型:エンジンを改良、本格生産型。
 ・II号戦車B型:A型の小改良型。
 ・II号戦車C型:B型の小改良型。
 ・II号戦車D型:軽師団用の高速タイプ、車体は完全に新設計。
 ・II号戦車E型:D型のサスペンションを改良したタイプ。
 ・II号戦車F型:1941年からの再生産型で、防御力が増強されている。
 ・II号戦車G型(VK9.01):新設計の速度追求型。事実上の試作のみ。
 ・II号戦車H型(VK9.03):G型の変速機、並びに装甲を改良したタイプ。事実上の試作のみ。
 ・II号戦車J型(VK16.01):防御力向上型だが、事実上の試作型で終わる。
 ・II号戦車L型ルクス:G型やH型の流れをくんだ偵察戦車。II号戦車シリーズとは実質の別物。
 ・II号戦車M型(VK13.01):H型の武装・装甲を増強したタイプ。試作のみ。
 ・VK16.02:L型を改良し、5cm砲を搭載したタイプ。計画のみ。
 ・II号7.62cm対戦車自走砲マルダーII:ソ連製7.62cm対戦車砲Pak36(r)を搭載した自走砲。
 ・II号7.5cm対戦車自走砲マルダーII:7.5cm対戦車砲Pak40を搭載した自走砲。
 ・II号15cm重歩兵砲搭載自走砲:sIG33重歩兵砲を搭載した自走砲。
 ・II号10.5cm自走榴弾砲ヴェスペ:10.5cm榴弾砲を搭載した自走砲。
 ・II号工兵用車両:II号戦車の車体を再利用した工兵用の車両。
 ・II号架橋戦車:b型の車台を再利用した架橋戦車、4両のみのリサイクル品。
 ・II号水陸両用戦車:英本土上陸作戦に向けて試作された戦車。作戦そのものが取り止めになり、無駄に。
 ・II号火炎放射戦車A、B型:使い物にならなかったII号戦車D、E型を改造したもの。新生産タイプも存在する。
 ・35(t)戦車:チェコから接収したタイプ。機械的欠陥を解消した以外、改良型はない。
 ・35(t)指揮戦車:無線機を増設した指揮官専用車で、20両程度が存在。
 ・35(t)火砲牽引車:35(t)戦車の車体を利用した車両で、事実上のリサイクル。38両が存在。
 ・38(t)戦車A型:チェコが生産したLTvz38に、ほんの少しだけ手を加えたもの。
 ・38(t)戦車B型:A型の細部を変更したタイプ。
 ・38(t)戦車C型:B型の砲塔に防弾設備を増設、他にも若干の手を加えたもの。
 ・38(t)戦車D型:C型の装甲スタイルを変更したもの。
 ・38(t)戦車E型:防御力を抜本的に向上させたタイプ。
 ・38(t)戦車F型:E型と変わらない。
 ・38(t)戦車G型:二枚の装甲板を一枚に改め、防御力と生産性を増した最終バージョン。
 ・38(t)戦車H型:マルダーIII用に改良された38(t)戦車車体。グリレにも流用されている。
 ・38(t)戦車M型:H型を、さらにマルダーIIIに適するよう改良された車体。
 ・38(t)戦車K型:H型を、グリレに適するよう改良された車体。実質はM型とそう違いはない。
 ・38(t)戦車S型:輸出用のタイプで、A型とほとんど変わりはない。
 ・38(t)7.62cm対戦車自走砲マルダーIII:38(t)戦車G型の車体に7.62cm対戦車砲Pak36(r)を搭載した自走砲。
 ・38(t)7.5cm対戦車自走砲H型マルダーIII:38(t)戦車H型の車体に7.5cm対戦車砲Pak40を搭載した自走砲。
 ・38(t)7.5cm対戦車自走砲M型マルダーIII:38(t)戦車M型の車体に7.5cm対戦車砲Pak40を搭載した自走砲。
 ・38(t)15cm自走重歩兵砲H型グリレ:38(t)戦車H型の車体にsIG33重歩兵砲を搭載した自走砲。
 ・38(t)15cm自走重歩兵砲K型グリレ:38(t)戦車K型の車体にsIG33重歩兵砲を搭載した自走砲。
 ・38(t)15cm自走重歩兵砲ヘッツァー:駆逐戦車ヘッツァーの車体にsIG33重歩兵砲を搭載した自走砲。
 ・38(t)指揮戦車:無線機を増設した指揮官型で、改造されたのはごく少数。
 ・38(t)弾薬運搬車:38(t)戦車の砲塔を撤去した運搬専用車両。
 ・38(t)戦車回収車:38(t)戦車の砲塔を撤去した戦車回収専用車両。
 ・38(t)偵察戦車:38(t)戦車の砲塔を撤去し、重機関銃を載せた車両。50両が完成した。
 ・38(t)対空戦車:38(t)戦車を改造した対空自走砲。
 ・38(t)駆逐戦車ヘッツァー:38(t)戦車の車体を再設計し、48口径7.5cm砲を搭載した車両。
 ・38(t)火炎放射戦車ヘッツァー:主砲の代わりにを火炎放射器に置き換えた火炎放射戦車。
 ・38(t)戦車回収車ヘッツァー:主砲を撤去した戦車回収車。
 ・III号戦車A型:初期試作型。極めて問題点が多い。
 ・III号戦車B型:A型の足回りを改良したが、問題の改善にはならず。
 ・III号戦車C型:B型の足回りをさらに改良したが、問題の改善にはならず。
 ・III号戦車D型:C型の足回りをそれでも改良したが、問題の改善にはならず。
 ・III号戦車E型:新式サスペンションを搭載し、エンジンや装甲も強化した初期生産型。
 ・III号戦車F型:E型とほとんど同一だが、あちこちに僅かな調整がなされている。
 ・III号戦車F後期型:F型の車体に42口径5cm砲を搭載。
 ・III号戦車G型:F型の後部装甲を強化したタイプ。
 ・III号戦車G後期型:G型の車体に42口径5cm砲を搭載。
 ・III号戦車H型:G型の砲塔や変速機を改良し、増加装甲を装着したタイプ。
 ・III号戦車J型:G型に見られる本来の装甲+増加装甲のスタイルを、一枚の装甲に改めた新設計型。
 ・III号戦車L型:J後期型の装甲を強化したタイプ。
 ・III号戦車M型:L型の渡河性能を強化したタイプ。
 ・III号戦車N型:L型に24口径7.5cm戦車砲を搭載したタイプ。
 ・III号潜水戦車:III号戦車を潜水できるように改造したタイプ。
 ・III号指揮戦車:III号戦車の無線増強型で、砲塔は精巧なダミー。D1型、E型、H型、K型が存在する。
 ・装甲砲兵観測車両:旧タイプのIII号戦車を改造したもので、その砲塔はちゃちなダミー。
 ・III号工兵戦車:旧タイプのIII号戦車を改造したもので、工兵用の機材を搭載している。
 ・III号弾薬運搬車:使えなくなったIII号戦車の砲塔を取り外したタイプ。
 ・III号戦車回収車:使えなくなったIII号戦車を改造したタイプ。
 ・III号火炎放射戦車:III号戦車H型、M型を改造した火炎放射器搭載型。
 ・III号突撃砲A型:初期生産型。
 ・III号突撃砲B型:A型の走行系統を改良したタイプ。
 ・III号突撃砲C型:弱点だった照準口を塞ぎ、ペリスコープ式の照準器を備え付けたもの。
 ・III号突撃砲D型:C型に車内通話装置を取り付けたタイプ。
 ・III号突撃砲E型:指揮官用に、無線機能を増強したタイプ。
 ・III号突撃砲F型:E型の主砲を43口径7.5cm砲に換装したもの。後期型は48口径7.5cm砲を搭載している。
 ・III号突撃砲F8型:ベースとなった車体の変更による呼称変化。主砲は48口径7.5cm砲。
 ・III号突撃砲G型:F型の基本設計を改め、大改良を施したタイプ。
 ・III号突撃砲弾薬運搬車:G型の主砲を撤去した弾薬運搬車、事実上の現地改造モデル。
 ・突撃砲火炎放射型:F8型を改良した火炎放射戦車。改修数はわずか10両で実戦にも投入されていない。
 ・42式10.5cm突撃榴弾砲:III号突撃砲F型の車体に10.5cm榴弾砲を搭載した車両。
 ・33B突撃歩兵砲:III号戦車の車体にsIG33重歩兵砲を搭載し、重装甲を備えた自走砲。
 ・IV号戦車A型:初期型。
 ・IV号戦車B型:エンジンを換装し、装甲を強化したタイプ。
 ・IV号戦車C型:B型に小改良を施したタイプ。
 ・IV号戦車D型:側面装甲と後部装甲を強化し、他にも大幅な改良を施したタイプ。
 ・IV号戦車E型:D型の装甲を簡易的に増強させたタイプ。他にも小改良が施されている。
 ・IV号戦車F型:設計を改善し、装甲強化を初め多くの改良を施したタイプ。
 ・IV号戦車F2型:43口径7.5cm砲を試験的に搭載したF型。
 ・IV号戦車G型:最初から43口径7.5cm砲を搭載したタイプで、F2型との差異はほとんどない。
 ・IV号戦車H型:装甲+増加装甲の形式を一枚の装甲に改め、様々な改良を施したタイプ。
 ・IV号戦車J型:生産性を上げるため、砲塔の自動旋回機構が廃止されたタイプ。
 ・III/IV号8.8cm対戦車自走砲ホルニッセ:III/IV号車体に8.8cm対戦車砲を搭載した対戦車自走砲。
 ・III/IV号15cm自走榴弾砲フンメル:III/IV号車体に15cm榴弾砲を搭載した自走砲。
 ・IV号a型10.5cm対戦車自走砲:IV号戦車D型の車体に52口径10.5cm加農砲を搭載した車両。試作のみ。
 ・IV号b型10.5cm自走榴弾砲:IV号戦車の車体に10.5cm榴弾砲を搭載した車両。試作のみ。
 ・IV号b型10.5cm自走榴弾砲ホイシュレッケ10:IV号b型10.5cm自走榴弾砲の発展型だが、計画は中止。
 ・III/IV号10.5cm軽榴弾砲leFH18/40搭載自走砲:III/IV号車台に10.5cm榴弾砲を搭載した自走砲。
 ・IV号架橋戦車:IV号戦車C型とD型を改造した架橋作業専用の車両。
 ・IV号突撃歩兵橋:IV号戦車の車体に小型の橋を搭載し、歩兵が障害物を乗り越えられるようにした車両。
 ・IV号指揮戦車:IV号戦車J型をベースに、無線機能を増強した指揮官専用車両。主砲は搭載したまま。
 ・IV号装甲砲兵観測車:IV号戦車J型を改良した、砲兵部隊用の観測車両。
 ・IV号戦車回収車:使用できなくなったIV号戦車の車体を再利用した、戦車回収車両。
 ・IV号潜水戦車:ゼーレヴェ作戦に向けて、短時間の潜水が可能なように改造した車両。
 ・カール用弾薬運搬車:IV号戦車の車体を改造し、列車砲カールの弾薬を運搬できるようにした車両。
 ・IV号突撃砲:VI号戦車の車体にIII号突撃砲の主砲を載せた車両。
 ・IV号駆逐戦車:IV号戦車H型の車両をベースに、48口径7.5cm砲を備えた車両。
 ・IV号戦車/70(V):IV号駆逐戦車の主砲を70口径7.5cm砲に換装した車両。
 ・IV号戦車/70(A):IV号駆逐戦車の主砲を70口径7.5cm砲に換装した車両で、アルケット社製。
 ・IV号突撃榴弾砲ブルムベア:IV号戦車の車体にsIG33重歩兵砲を搭載し、重装甲を施した車両。
 ・V号戦車パンターD型:最初の生産型で、幾多の機械的不良を抱えている。
 ・V号戦車パンターA型:D型の砲塔や足回りに改良を施したタイプ。
 ・V号戦車パンターG型:A型の車体を再設計し、多くの改良を施した最多生産タイプ。
 ・V号戦車パンターF型:G型の砲塔に改良を加えたタイプだが、量産される前に終戦を迎える。
 ・パンターII:パンターの装甲強化型だが、未成に終わる。
 ・ヤークトパンター:パンターの車体に71口径8.8cm砲を備え付けた駆逐戦車。
 ・パンター指揮戦車:無線装備を強化した指揮戦車タイプ。主砲は撤去されていない。
 ・パンター装甲砲兵観測車:パンターD型の車体を流用した観測タイプの車両。主砲はダミーに換装されている。
 ・パンター戦車回収車:パンターの主砲を撤去した戦車回収車。ベルゲパンターとも呼ばれる。
 ・V号対空戦車ケーリアン:パンターの車体に3.7cm連装対空機関砲を搭載した車両、計画のみ。
 ・VI号戦車ティーガー:VK45.01(H)。サブタイプは存在しないが、生産時期ごとに多少の違いはある。
 ・VI号戦車ティーガーII:71口径8.8cm砲を搭載した、ティーガーの拡大強化版。
 ・VK.4510(P)ポルシェ・ティーガー:VK45.01(P)が生産されてしまったもの。
 ・VI号駆逐戦車ヤークトティーガー:ティーガーの車体に12.8cm砲を搭載した駆逐戦車。
 ・VK.3001(H) 12.8cm対戦車自走砲:VK.3001(H)に61口径12.8cmキャノン砲を搭載した自走砲。
 ・重駆逐戦車フェルディナント/エレファント:VK.4510(P)に71口径8.8cm砲を搭載した駆逐戦車。
 ・38cm突撃臼砲シュトゥルムティーガー:ティーガーの車体に38cmロケット砲を搭載した突撃車両。
 ・ティーガー戦車回収車:ティーガーを流用した戦車回収車両で、事実上の現地改造品。

 ※これでも、抜けは多し
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    | ぎゃああああ! な、なんじゃこりゃー!!
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         | たった数年でこんなことになるとは、当のドイツ人も当然ながら想定していなかった。
         | 本人達は、ちょっとでもコストを安く済まそうと小改修や再利用を繰り返しただけ。
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| なんかとんでもない事態になってしまい、ドイツの中の人もびっくり。
| 工業の常識ですが、同じものを大量生産するとコストは安く済みます。
| 逆に言えば、違う種類のものを多く生産すると、コストが膨れ上がるんですね。
| そこで1943年、全戦車の共通化計画というものが浮上しました。
| なるべく共通の部品を使い、戦闘車両を重量別に開発しようというもの――それが、E計画。
| 以下のシリーズを、様々な新機軸を持ち込んで開発しようという豪華計画でした。
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 ・E-5:よく分からないが偵察戦車? 詳細は不明で、記載されていない資料もある。
 ・E-10:7.5cm短砲身戦車砲を搭載した10トン級軽駆逐戦車。
 ・E-25:7.5cm長砲身戦車砲を搭載した25トン級中駆逐戦車。
 ・E-50:7.5cm戦車砲を搭載した50トン級中戦車、パンターの後継的存在。
 ・E-75:8.8cm戦車砲を搭載した75トン級重戦車、ティーガーの後継的存在。
 ・E-100:15cm戦車砲+7.5cm戦車砲を搭載した級超巨大戦車。
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    | なるほどなるほど……これならスッキリするな。
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         | 既存の戦闘車両、似たような性能と用途のものが多過ぎるからな。
         | 似てるのは同一化して、生産する上での合理化を図ったってわけだ。
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| では、Eシリーズをそれぞれ個別に解説――するまでもないです。
| 偵察戦車E-5、そもそも存在するの?
| 軽駆逐戦車E-10、スペックすらまともに定まらずに死亡確認!!
| 軽駆逐戦車E-25、モックアップ(木製実物大模型)が完成したのみで死亡確認!!
| 中戦車E-50、スペックすらまともに定まらずに死亡確認!!
| 重戦車E-75、サスペンションが完成した時点で死亡確認!!
| E-100を除き、いずれも試作車すら完成していないんですよ。
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 ・E-5
  存在するかどうか自体が微妙。

 ・E-10
  Eシリーズの一員で、48口径7.5cm対戦車砲を搭載した10トン級軽駆逐戦車。
  砲塔は回らず、詳細なスペックは不明。

 ・E-25
  Eシリーズの一員で、70口径7.5cm対戦車砲を搭載した25トン級中駆逐戦車。
  砲塔は回らず、傾斜装甲を採用。
ヘッツァーと似た外見の予定だったようだ。

 ・E-50
  Eシリーズの一員で、70口径7.5cm戦車砲を搭載した55トン級中戦車。
  E-75とかなり似ているが装甲は薄めで、防御力に劣るが機動性は勝る。

 ・E-75
  Eシリーズの一員で、71口径8.8cm戦車砲を搭載した75トン級重戦車。
  E-50とかなり似ているが装甲は厚めで、機動性に劣るが防御力は勝る。

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    | これはひどい……
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         | 末期のドイツは、こんなもん新規開発できるほど余裕がなかったからな。
         | なお、講義一覧でEシリーズはそれぞれ別項目が立てられているが、リンク先は同一。
         | 講義の水増しと言われても仕方ないよこれじゃ!
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| そして残るは、超重戦車E-100――Eシリーズのスタンスから外れた感のあるゲテモノ。
| 皮肉な事に、実車が完成したのはこのE-100のみなんですよ。
| これは140トンという脅威の重量を備えたバケモノ戦車。
| ティーガーですら重量からくる不調の問題でヒィヒィ言っていたことを考えれば、無茶というよりヤムチャ。
| こんなもん、まともに動くはずがないことは明らかでした。
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 ・E-100
  Eシリーズの一員で、140トンの重量を誇る超重戦車。
  15cm戦車砲と7.5cm戦車砲の組み合わせを予定していたが、17cm戦車砲の搭載計画もあったようだ。
  1944年に開発優先順位が一気に下がったものの、終戦まで細々と開発が続けられる。

 写真 写真
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    | じゃあ、なんでこんなもん造ろうとしたんだ……
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         | どうもこれ、後で解説する超重戦車マウスへの対抗馬だったらしい。
         | このE-100は、いわば堅実な技術で(マウスよりは)しっかりと造られた超重戦車。
         | マウスの開発計画を知ったドイツ軍の人は、「あんなゲテモノ生産ラインに乗せてたまるか」と決意。
         | マウスを追い落とすための対抗馬として、このE-100案をひねり出した――そんな説もある。
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| しかし1944年、若干夢から醒めた感のあるヒトラーが「超重戦車はもういいよ」と当座の開発中止を決定。
| こうしてマウスE-100は、共に命運を絶たれたものの細々と開発が続けられました。
| E-100はヘンシェル社工場の片隅で、たった3人の作業員が「細々と」試作車を組み立てることに。
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 E-100
 ・全長:10.27m  ・全幅:4.48m  ・全高:3.29m  ・重量:140t  ・乗員:5名
 ・最大出力:800hp  ・最大速度:40km/h  ・行動距離:120km  ・装甲厚:40〜240mm
 ・エンジン:マイバッハHL234(4ストロークV型12気筒液冷ガソリン)
 ・武装:38口径15cm戦車砲KwK44×1、36.5口径7.5cm戦車砲KwK44×1、7.92mm機関銃×1
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    | 「細々と」組み立てられたの?
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         | どの資料を見ても、「3人の作業員によって『細々と』組み立てられた」と書いてある。
         | ジャーマンタンクスにも、齋木先生の著書にも、学研のガイドにも、光栄の戦車名鑑にまで……
         | 本当に細々とやってるところを想像すると……泣かせる話だ。
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| そして、ようやく車体が完成。後はエンジンやサスペンションを組み込むのみ――というところで終戦。
| この工場はアメリカに接収され、組み立てのみを残したE-100もアメリカに押さえられました。
| しかしアメリカはなんとE-100に興味を示し、組み立ての続行を命令。
| こうしてアメリカの許可の元でE-100車体が完成したのですが――まあ当然ながら、まともに走るのは無理。
| アメリカは途端に興味を失い、押し付けるようにイギリス軍に引き渡してしまいました。
| 貰ったイギリス軍も扱いに困り、結局のところスクラップにしたようです。
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    | うわ、たらい回し……
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         | だってこんなの、使い物にならんだろう。
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| そんな可哀想なE-100が生まれた理由、なんとか兵器局が生産を阻止しようと思った超重戦車マウスとは――
| 「ヒトラーとその顧問の幻想から生まれ出た怪物」と評したのはグデーリアン。
| この戦車の開発は、1942年3月にヒトラーが100トン級超重戦車の必要性を熱く語り出したところから始まります。
| 「攻撃力も防御力も最強の巨大戦車を!」などと大騒ぎする総統閣下に、文句を言える人物などいません。
| こうしてこの馬鹿げた計画は実行に移され、設計はかのポルシェ博士に全面的に任されました。
| そしてポルシェ博士が超重戦車用に採用した駆動方式は、やはり電動だったんです。
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    | なんて懲りないオッサンだ……
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         | とにかくポルシェ博士は、戦車を電気駆動で走らせることに執念を燃やしていたようだ。
         | そんなアレ魂とヒトラーのドリームが結実し、超重戦車の開発が始まってしまった。
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| この巨大戦車は、ドイツ人流のジョークなのかマウス(ねずみ)と名付けられます。
| しかし、ドリームに酔ったのは総統とポルシェ博士ではありませんでした。
| 人は大きいもの、強いものに心が惹かれます。そして技術者は、思う存分に新機軸を練りたくなるもの。
| そんな大勢の人のドリームが合わさり、この開発計画は進んでいったんです。
| 1943年5月14日にはモックアップ(木製実物大模型)が完成し、ヒトラーも大喜び。
| 8月1日には、いよいよ試作型マウスの組み立てが開始されます。
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    | おおお……
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         | 世の中、ドリームを持った人でいっぱいだ。
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| しかし11月になると、鬼の軍需相シュペーアは「マウスは試作2両のみで、大量生産は行わない」と決定。
| ドリームを爆発させる人もいれば、しごくまっとうな結論を出す人もいるということです。
| ヒトラーもこの決定には大して口を挟まず、微妙に夢から醒めた感が漂っていました。
| そんな1943年12月23日、マウス1号車の試作車体が走行試験に臨むことになります。
| 驚いたことに、ここでそこそこの走行性能を見せたそうなんですが……生産中止はとうに決定済み。
| もはや参考研究の意味しかない車両として開発が続くマウス、2号車が完成したのは1944年6月でした。
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    | なんと、ちゃんと動いたのか……!
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         | 誰もが無理だと思ってた中、なんと普通に走れたっていうだけの話だ。
         | 当然ながらトロ過ぎて、もはや実用以前の問題だな。
         | それでも、こんなゲテモノを実際に走らせたのは本当にすごい!
         | さすが(無駄に労力を注ぐ)ドイツ! そこにしびれる、あこがれるー!
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| では、その超重戦車マウスとはどのようなものだったのか――要するに、箱形のお化けです。
| でっかい箱に砲塔と走行機能を備え付けたもの、という感じの設計ですね。
| 装甲は車体前部200mm〜後部160mm、砲塔は前部240mm。ガタイがでかいだけにとんでもない頑丈さです。
| 主砲は12.8cm戦車砲、当時の戦車砲で最強クラス。また、副砲に7.5cm砲を別途搭載。
| そして、おなじみ電動駆動――発電用のエンジンは、1号車は航空機用のエンジンを流用。
| 2号車は艦艇用のエンジンが搭載されたとかされてないとか、どうもはっきりしません。
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 ・超重戦車マウス
  約190トンもの重量を誇る巨大戦車。
  いちおうは強力な兵装と装甲を誇るものの、この巨体をまともに動かすことなど不可能だった。
  試作車両が2両完成したのみで、当然ながら量産はされていない。

 
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    | で、でかっ!!
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         | このマウスの開発計画を知った兵器局は、「こんなゲテモノ造らせるか!」と決意。
         | 自分たちで無難な超重戦車E-100を開発し、マウスの制式化を防ごうとした――
         | そんな一面もあるな。
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| もはや戦況も悲惨な1944年半ばにもなると、ヒトラーは超重戦車の「ち」の字も出さなくなりました。
| 総統閣下は、この種の戦車には完全に興味を失っていたんです。
| それでも試作車2両の組み立ては細々と進められていったんですが――
| いよいよベルリンにソ連軍がなだれこんできて、もはや長かった戦争も終局。
| この状況に及んで、なんと試作型のマウスはソ連軍と一戦交えるために前線へと赴きました!!
| しかしその途中で故障して動かなくなると言う有様。ソ連の手に渡らないように、2両とも爆破処理されます。
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 超重戦車マウス
 ・全長:10.09m  ・全幅:3.67m  ・全高:3.66m  ・重量:188t  ・乗員:5名
 ・最大出力:1080hp  ・最大速度:20km/h  ・行動距離:186km  ・装甲厚:40〜240mm
 ・エンジン:ダイムラー・ベンツMB509(V型12気筒液冷ガソリン)
 ・武装:55口径12.8cm戦車砲KwK44×1、36.5口径7.5cm戦車砲KwK44×1、7.92mm機関銃MG34×1
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    | おいおい、こんなもん実戦投入したのかよ……!!
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         | ベルリン攻防戦の際は、なんと博物館に展示されていた菱形戦車まで駆り出されたんだ。
         | なおこの時のマウス、うち1両が実際にソ連軍と戦火を交えたという説もある。
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| こうして、自軍によって破壊されたマウス……しかしソ連は、その残骸を2両とも回収しました。
| それはソ連本国に持ち帰られ、2両分の部品を合体させてなんとか1両分に復元したんです。
| 当然ながらそんなものを実用させるはずがなく、戦勝記念碑のようなものでしたがね。
| このマウスは現在も、ロシアにあるクビンカ戦車博物館に展示されているんですよ。
| またソ連が接収したマウスの工場には、なんと生産途中のマウス6両が存在していたという話も。
| とっくの昔に、生産中止が決定していたにもかかわらず――おそらく独断で造ったんでしょうね。
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    | 夢を捨てきれない者が、ここにもいたか。
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         | そもそもドイツの重視した機動戦という戦術に、この類の戦車は全く向いてない。
         | ティーガーにもその傾向はあったんだが、超重戦車なんか鈍重の極みだからな。
         | こういう戦車が必要とされている状況は、放っておいても敵が向こうから迫ってくる場合くらい。
         | たとえ技術的な問題がクリアされたとしても、役立つような兵器じゃなかったんだ。
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| 超重戦車は別にドイツの専売特許じゃありませんし、他国にもドリームを見た人はいっぱいいます。
| イギリスのトータスや、アメリカのT-28、ソ連のKV-5、日本の120トン級重戦車……
| しかし実用化された例は皆無、やはり全ては夢に終わってしまいました。
| そしてこの類の巨大戦車は、現代に至るまで検討すらされていません。
| それは技術云々の問題ではなく、必要ないから――なんですね。
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    | やはり、夢は夢だったのか……
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         | 現代の戦車運用思想も、ドイツ電撃戦思想の延長にある。
         | やはり、この種の巨大戦車は何の役にも立たないんだよ。
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