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| イギリスは訳の分からないモノをいっぱい作り出しますが、時には素晴らしいものを生み出す場合があります。
| なんというか、連中はまさに紙一重なんですね。
| その成功品の一つこそが航空母艦。イギリス海軍の血と汗の努力により、空母は実用化されたんです。
| ここでは、イギリス航空母艦の黎明期について講義しましょう。
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| イギリスの航空母艦か…… ってか、後ろのヤツがうるさ過ぎ。
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| ア、アアアアアア――ッ!!
| ロイヤルネイビー! ロ、ロイヤルネイビー!! ハァハァハァ……
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| この時代は、空母に関する定義がなかった時期。
| 今回の講義で紹介するのは水上機母艦がほとんどですが、航空母艦への歩みという意味で見ていきます。
| 航空機が歴史に出現してから、各国の海軍は航空機をフネに乗せる事を試みてきた――
| そんな難解なチャレンジから、航空母艦への歩みは始まります。
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| 艦船から飛行機が使えたら、何かと便利だもんな。
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| この時代は、まだ偵察目的オンリーだったがな。
| 海軍がどうこうっていうより、飛行機自体が。ハァハァ……
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| そんな1910年、とうとうアメリカ海軍は巡洋艦「バーミンガム」から飛行機を飛び立たせる事に成功します。
| しかし流石に着艦は不可能なので、近くの飛行場まで行って着陸していました。
| 1911年には艦に取り付けられた特別甲板への着艦に成功し、翌年にはイギリスが同様のチャレンジに成功。
| ですが、これらは港で停泊している艦で行った実験に過ぎませんでした。
| 偉大な一歩ではありましたが、実用性はまだまだ皆無の状態ですね。
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| そんなに大変なのか……?
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| 飛行機ってのは、一般人が思ってる以上に離陸や着陸に手間が掛かる。
| それを狭い艦艇の上で行うのは、非常に難解だったんだ。ヒヒヒヒヒ……
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| そんな状況の1910年、フランスのアンリ・ファーブルは新たな種類の航空機を開発します。
| 従来の飛行機は車輪で地面を走った後、そのまま離陸しましたが……
| 新型飛行機は下部にフロートという水に浮く器具を付け、水面をヨットのように滑走しました。
| この新型飛行機を「水上機」と言います。後に出てくる「艦載機」とは別物ですよ。
| また、水上機を陸上で運用する事は不可能です。車輪がないですから滑走できませんので。
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| このフロートで、水面に浮く訳だな。
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| しかし、こんなもんブラ下げてたら飛行性能は落ちるという諸刃の剣。
| とにかく水上機の登場で、艦に飛行機を搭載するという難問に新たな地平が見えてきた。
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| ここであらかじめ断っておきたいのですが……
| 以下の講義では、「陸上機」という言葉は「車輪付きの航空機」という意味で使っていきます。
| これは、フロート付きの水上機と区別するためのものですね。
| 第一次世界大戦が終結してしばらく経つと、陸上機は徐々に大型化・金属化。
| いろいろ工夫しない事には、空母に搭載できなくなっていくんです。
| こうして「陸上機(車輪付き)」は、「陸上機(陸上基地専用機)」と「艦載機(空母専用機)」に類別される事に。
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初期の区分 航空機が発展・大型化しての区分
┏━ 陸上機(陸上の滑走路からのみ運用可能)
・陸上機(車輪付き) ━━┫
┗━ 艦載機(航空母艦でも運用可能)
・水上機(フロート付き) ━━━水上機(フロート付き)
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| なるほど…… 初期の陸上機と、後の陸上機では用語の意味が異なってくるんだな。
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| まあ、これも正確な定義じゃないけどな。
| ってか、正確な定義なんてどこにもないが。
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| そして、イギリス海軍はとうとう名案を思い付きました。
| 艦の上に積んでいる水上機をクレーンで水面まで運び、そこから水上機が発進。
| 帰りは近くの水面に着水し、そのままクレーンで吊り上げて艦に収容―― そんな、画期的な航空機運用艦。
| これが水上機母艦、後の航空母艦の先祖となる艦種でした。
| なお同時期の日本海軍も、全く同じ構想を持っていましたね。
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| なるほど、水上機は水面から離発着可能っていう特製を最大限に生かしたんだな。
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| さすがロイヤルネイビー!! そこにシビれるーゥ! 憧れるーゥ!
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| こうしてイギリス海軍は石炭輸送船を改造して、水上機母艦「アークロイヤル」を完成させます。
| しかも、水上機をクレーンで水面に下ろさず、そのまま甲板から発艦させようという革新的な艦。
| ですが11ノットという余りの低速で甲板からの発艦は不可能、やはりクレーンで水面に下ろすという方式に。
| 写真を見ていただければ、雰囲気は分かると思います。航空母艦とは似ても似つきませんね。
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・水上機母艦「アークロイヤル」
1914年に完成したイギリス海軍発の水上機母艦で、4機の水上機が運用可能。
第一次世界大戦においてトルコの巡洋艦を爆撃、航空機運用艦の実力をしらしめる。
なお水上機の艦上発艦を企てていたが、低速のため失敗している。
1934年、「アークロイヤル」という同名の空母が登場したために「ペガサス」と改名。
第二次世界大戦でも船団護衛任務を手掛けた、かなりの長寿艦。
写真1 写真2
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| 低速だと、甲板からの発艦は不可能になるのか?
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| 艦がそれなりのスピードを出していないと、航空機が甲板から発艦するのはムリなんだ。
| 理屈は省略するが、この事実は覚えておいてくれ。
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| そんな中、第一次世界大戦が勃発。
| 慌てたイギリス海軍は民間の海峡連絡船三隻を買い取り、水上機母艦に改造します。
| それが「エンガディン」、「リヴィエラ」、「エンプレス」の三隻。
| 色々と差異はありますが、まあ同時期に改造された同型三姉妹といったところですか。
| この三隻は艦隊行動を取るため、20ノットものスピードが出るようになっています。
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・水上機母艦「エンガディン」、「リヴィエラ」、「エンプレス」
民間の海峡連絡船をイギリス海軍が買い取り、1914年に水上機母艦へ改造。4機の水上機が運用可能。
それなりの活躍を見せ、第一次世界大戦終結後は民間の会社に返還。
写真「エンガディン」 写真「エンプレス」
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| 先生、後ろのヤツがうるさすぎです。
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| ハァーッ! ハァーッ!! ロ、ロ、ロ、ロイヤルネイビー!!
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| しかしこの頃のイギリスは、ドイツの飛行船に悩まされています。
| そこで浮上した作戦が、敵飛行船の基地だったドイツのクックスハーフェンへの攻撃。
| 「エンガディン」、「リヴィエラ」、「エンプレス」の三隻は、航空機でもって敵基地を爆撃するという任務に。
| そして1914年12月25日、三隻の水上機母艦から航空機が飛び立ったんですが…… 結果は散々。
| 発進した9機のうち、目的地まで到達したのは1機。母艦に帰ってこれたのはたった3機。
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| まさに大失敗の作戦だな。
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| …………
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| しかしジュットランド沖海戦においては、「エンガディン」から飛び立った航空機がドイツ艦隊を発見。
| これらの水上機母艦は哨戒任務にも活躍し、戦局に大きく貢献します。
| 「アークロイヤル」+この三艦の活躍で、「このタイプの艦は使える」という事実が明らかになりました。
| 同時に、水上機はどうにも性能不足である事も痛感します。
| クソ重いフロートを抱えてる分、性能は陸上機に大きく劣るんですよ。
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| やっぱり、陸上機を載せたいんだな……
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| さらに水上機は、天候の変化や波の状態に影響されまくりだ。
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| さらに翌年、「エンガディン」、「リヴィエラ」、「エンプレス」などの第一陣に続く水上機母艦が次々と完成。
| これらの海峡連絡船改造型水上機母艦第二陣は、「ベン・マイ・クリー」と「ヴィンデックス」。
| この二艦は、甲板全部に発艦用甲板を取り付けて艦上発艦を企てていたんです。
| つまりは、「アークロイヤル」で失敗した夢を捨て切れなかったんですね。
| しかし「ベン・マイ・クリー」はドイツ沿岸攻撃作戦において発艦に失敗、発艦用甲板は撤去されてしまいます。
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・水上機母艦「ベン・マイ・クリー」
海峡連絡船を改造した水上機母艦で、4機の水上機が運用可能。
発艦用甲板を取り付けているも、やはり失敗し撤去。以降は純粋な水上機母艦として運用される。
トルコの輸送船に世界初の航空雷撃を掛けるという活躍を見せた艦。
1917年、トルコの地上砲台からの攻撃を受けて沈没する。
写真
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| 航空雷撃…… 航空機からの魚雷攻撃を、世界で初めて成功させたのか。
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| 以降、ロイヤルネイビーは航空雷撃のトリコに…… ハァハァハァ……
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| さて、上で述べた通り「ベン・マイ・クリー」の発艦用甲板は撤去されます。
| 同時期に完成した「ヴィンデックス」も、水上機の艦上発艦を試みるも難航。
| そんな中、「この発艦用甲板を用いて、陸上機(車輪付き)を飛ばすのはどうだ?」という案が。
| その試みは成功し、「ヴィンデックス」は前部で陸上機、後部で水上機を扱うという奇妙な母艦に。
| この特殊な艦を、「Mixed Carrier」と呼ぶ事になります。
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・水上機母艦「ヴィンデックス」
民間の海峡連絡船を改造した水上機母艦で、5機の水上機と2機の陸上機が運用可能。
「Mixed Carrier」と呼ばれる、前部で陸上機、後部で水上機を扱う母艦の第一弾。
地中海における作戦に従事し、活躍を見せる。第一次世界大戦終結後、民間の会社に返還。
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| また一つ、航空母艦に近付いたって感じだな……
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| 最大の問題は、陸上機を回収する手段がないことだ。
| 発艦はできたものの、着艦は不可能だったんだな。
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| 「ヴィンデックス」に続く二隻目の「Mixed Carrier」が「マンクスマン」。
| 搭載できる陸上機(戦闘機)の数をさらに増大させ、迎撃能力が大幅にアップ。
| しかし速度は遅くなってしまい、艦隊行動には付いていけないことに。
| 地中海で任務に就き、トルコ海軍を相手に戦いました。
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・水上機母艦「マンクスマン」
海峡連絡船を改造した水上機母艦で、4機の水上機と4機の陸上機が運用可能。
二隻目の「Mixed Carrier」であり、戦闘機の搭載数が増える事により迎撃能力が増加。
しかし速度は低下し、艦隊行動には参加できなくなった。
地中海における哨戒任務に従事し、第一次世界大戦終結後は売却。
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| イギリス水上機母艦って、ほとんど地中海送りだな。
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| ロ、ロイヤルネイビー……
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| さらにイギリス海軍は、三隻の「Mixed Carrier」を相次いで完成させます。
| 「カンパニア」は元が客船であるため、非常に大型。搭載機数も多いです。
| 「ナイラナ」と「ペガサス」はやはり海峡連絡船の改造型で、やはり「Mixed Carrier」。
| イギリス海軍は第一次世界大戦中に多くの水上機母艦を生み出し、試行錯誤しながら洗練させていったんです。
| しかしいずれも低速で艦隊行動は不可能、地中海での哨戒任務が中心でした。
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・水上機母艦「カンパニア」
客船を改造した水上機母艦で、12機の航空機が運用可能。
非常に大型で搭載機数も多い母艦だが、第一次世界大戦終盤に味方巡洋艦と衝突事故を起こして沈没。
・水上機母艦「ナイラナ」
海峡連絡船を改造した水上機母艦で、7機の航空機が運用可能。
地中海における哨戒任務において活躍を見せ、第一次世界大戦終結後は売却。
・水上機母艦「ペガサス」
海峡連絡船を改造した水上機母艦で、8機の航空機が運用可能。
「Mixed Carrier」シリーズの最終期に造られたので性能が良く、第一次世界大戦終結後も海軍に残された。
1923年には発艦用甲板を撤去され、純粋な水上機母艦に改装。売却される1931年まで現役。
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| ひたすらに量産したんだな。
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| この頃になると、運用の主眼は陸上機に移っていた。
| やはり、水上機よりも陸上機の方が便利で性能も良いんだ。
| いったん飛び立てば、陸上機の回収は不可能って言う致命的弱点はあったがな……
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| そしてイギリス海軍はいよいよ、陸上機の発艦だけではなく着艦も可能な母艦の開発に取り掛かります。
| 航空機の離発着が可能な母艦、それはすなわち現代において航空母艦と定義される艦でした。
| とにかく、長大な着艦用甲板を確保しなければ話になりません。
| そこでイギリス海軍が目を付けたのが、建造途中で放置されていた大型巡洋艦「フューリアス」でした。
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・大型巡洋艦「フューリアス」
第一海軍卿フィッシャーの発案で建造されていた超大型巡洋艦。
45.7cmという巨砲2門を搭載していたが、建造時に計画されていたバルト海作戦が中止に。
それに従い「フューリアス」の建造も中断したまま放置されるが……
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| 45.7cm砲!? 戦艦「大和」が46cm砲だろ!?
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| まあ、「フューリアス」の砲は失敗作同然で使い物にならなかったがな。
| ロイヤルネイビーをナメるな! ゲテモノ建造は専売特許だぜ!!
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| この大型巡洋艦「フューリアス」を改造し、航空母艦に生まれ変わらせる事になりました。
| 艦前部に発艦用甲板を設置し、次の改装では艦後部に着艦用甲板を設置。
| その真ん中に巡洋艦時代の艦橋がそびえ立つという、極めて奇異な風貌の艦となりました。
| しかもこの艦橋が邪魔で、まともに着艦ができないという事態に陥ったんです。
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・航空母艦「フューリアス」
建造がストップしていた大型巡洋艦「フューリアス」を、航空母艦に改造したもの。
最初は艦前部に発着艦用甲板を設置したのみだったが、着艦試験で事故が続発。
後部に着艦用甲板を設置したものの、それでも着艦試験は難航。発艦専用の艦として運用されることに。
1922年には艦橋を丸ごと撤去し、完全な全通型飛行甲板の航空母艦となる。
第二次世界大戦にも参加した、非常に寿命の長い艦。
写真
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| これが、世界最初の空母?
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| 空母の正確な定義なんてないから、難しい話なんだが……
| まあ、そう言っても間違いじゃないな。
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| また大戦も終盤に差し掛かった時期、「艦隊の同伴が可能な水上機母艦を」という要望が持ち上がります。
| 先も言った通り、水上機母艦はいずれも低速だったんですね。
| そこで、軽巡洋艦を改装して生まれた水上機母艦が「ヴィンデクティブ」。
| 同時期に存在した「フューリアス」と同様、前部に発艦用甲板、後部に着艦用甲板というスタイルです。
| しかし着艦は非常に難しい……というか、不可能。完全な失敗作となってしまいました。
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・水上機母艦「ヴィンデクティブ」
艦隊に同行できる速度を確保するため、軽巡洋艦から改装された水上機母艦。
前部に発艦用甲板、後部に着艦用甲板を持つが、やはり着艦は不可能だった。
ほとんど活躍もなく、1923年に軽巡洋艦に戻される。
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| 着艦って、そこまで難しい技術だったんだな。
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| ロイヤルネイビーをもってしても難しいんだから、他国の連中に出来るわけがない。
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| この「フューリアス」と「ヴィンデクティブ」の失敗により、英国海軍は一つの結論を導き出します。
| それが、「着艦を行おうと思ったら、艦の上には艦橋を含めた構造物はいっさい置くな!」。
| こうしてイギリス海軍はイタリア客船を買い取り、離発着が可能な航空母艦としての改造に着手。
| そして完成した「アーガス」は、艦上がまったいらで艦橋すら存在しないという特異な艦型に。
| それはすなわち、私達が航空母艦として知っているシルエットと全く同一でした。
| こうして航空母艦「アーガス」は念願の航空機着艦に成功、世界初の空母として完成した艦となるんです。
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・航空母艦「アーガス」
イギリス海軍が1918年に客船を改造して完成させた小型航空母艦で、戦闘機15機が運用可能。
全通型飛行甲板を持つ世界初の空母で、離着艦を可能にした極めて高い意義のある艦。
とは言え実験艦的な要素が強く、速度不足で搭載機数も少ない。
第二次世界大戦が始まると、空母の不足により老齢を押して参戦。輸送任務や船団護衛任務に従事する。
大戦終結後、スクラップとなり生涯を終えた。
写真1 写真2
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| おお、見た目もまさに航空母艦じゃないか!
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| 全通型飛行甲板ってのは、艦上が全て飛行甲板になってるスタイル。
| ロイヤルネイビーが編み出した、空母の理想だァァァァァァァ――ッ!!
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| さらにイギリス海軍はチリの戦艦を買い取り、航空母艦への改造を開始――
| ――しようとしましたが、完成前に第一次世界大戦は終結。
| 改造工事はのんびりと進み、1920年には未完成のまま実験艦として就役。
| こうして「イーグル」は、さらなる航空母艦開発の為にデータ取りを開始します。
| この艦は島型艦橋(アイランド)という、右舷に寄せた艦橋が用いられていました。
| これは、後の空母で主流となる艦橋のスタイルですね。
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・航空母艦「イーグル」
チリ戦艦「アルミランテ・コクラン」を改造した航空母艦で、1920年に未完成のまま就役。
データを取った後で再び工事を行い、1924年に完成している。
島型艦橋(アイランド)を実験的に取り入れ、成功を収めた。
元が戦艦のため、防御力は高いが速力は低く、搭載機数も少ない。
第二次世界大戦にも参加し、1942年にドイツのUボートによって撃沈される。
写真1 写真2
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| あの、甲板上に出っ張った艦橋がアイランドってやつか。
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| 滑走の邪魔にならないよう、脇に除けたんだよ。
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| 「アーガス」と「イーグル」の成功に従い、1922年には「フューリアス」の艦橋も完全撤去。
| ここで「フューリアス」が取り入れたのは、多段式飛行甲板という新スタイルの飛行甲板でした。
| 二段になった飛行甲板により、上段は攻撃機用、下段は戦闘機用と同時発艦が可能となったんです……
| ……と言いたいところなんですが、下段の戦闘機用甲板は非常に狭いもの。
| 複葉機の時代なら問題ないんですが、航空機が金属化・大型化するに従い下段飛行甲板は役立たずに。
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・改装後の「フューリアス」
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| 確かに、二段になってるな。
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| この多段式飛行甲板は、日本海軍も真似て「赤城」と「加賀」に採用している。
| やはり失敗で、後に撤去されたがな。ゴホゴホ……
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| この「アーガス」、「イーグル」、「フューリアス」の三隻を運用し、イギリス海軍の空母技術はステップアップ。
| ついには他の艦種の改造型ではなく、最初から航空母艦として建造された「ハーミズ」が建造される事に。
| こんな風に、第一次世界大戦中〜直後の空母開発はイギリスが他国を大きくリードしていたんですね。
| ……って事で、この辺でイギリス空母黎明期の講義を終わります。
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| 他の国はどうだったんだ?
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| 日本も航空機運用艦に興味を持っていたが、イギリスの方が先を進んでいた。
| アメリカは、まだまだ様子見の段階だな。
| こうまで軍艦への航空機搭載に執念を燃やしたのは、全世界でロイヤルネイビーだけだったんだ。
| ロ、ロイヤル…… ゲホゲホ……
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