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| さて、今回はいわくつきの陸上攻撃機である一式陸上攻撃機について講義しましょう。
| これは傑作機だった九六式陸上攻撃機の後継であり、その速度や航続力を受け継いでいました。
| そして太平洋戦争の初期には大活躍したんですが、すぐにその地位は凋落。
| 一発当たると火が付くことから「ワンショットライター」と呼ばれ、モリモリ落とされるという有様。
| その原因は、いったい何だったのか――そういった点も踏まえて、講義していきましょう。
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| やはり、防御力を軽視していたんだろうなぁ……
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| その一点のみに、問題を集約してもいいのか……って話でもあるわけなんだが。
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| 日中戦争が勃発した直後の1937年9月、海軍は九六式陸上攻撃機の後継開発を三菱に命じます。
| この十二試陸上攻撃機(後の一式陸攻)に対する要求性能は、例によって極めて高い水準のものでした。
| 速度(400km/h以上)と航続距離(4,800km以上)ともに、海外では四発爆撃機と同水準の数値を提示。
| この時期の海軍の要求仕様はメチャクチャなものが多く、後世でも批難のマトになっていますね。
| あえてムチャな要求を民間メーカーに出し、出来たらラッキー……そんな風なノリが強いです。
| 零戦の成功以来、海軍が無茶な要求を押し付ける傾向は強くなっていたんですよ。
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| 押し付けられるメーカー側も、たまったもんじゃないな。
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| この一件に限らず、多くの海軍機の要求仕様は無茶なものだった。
| あえて厳しめに設定したというよりも、無定見に無茶な数字を持ち出したといった方が正しい。
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| 三菱は苦難しつつも、大型機用の大馬力エンジン『火星』を採用。
| さらに空気抵抗を抑えつつ胴体を太らせ、葉巻型と呼ばれる独特のスタイルを取らせました。
| それでも航続距離が確保できないので、主翼内にも燃料タンクを増設。
| その上で、後に問題となるインテグラルタンクという機構を採用せざるをえませんでした。
| これは主翼の表面材をそのまま燃料タンクの外殻として用いるもの。
| つまり主翼と燃料タンクが構造的に一体化しているみたいなもので、非常に危なっかしかったんです。
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| そんなに危ないのか?
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| 翼内にも燃料タンクがあるということは、そこをやられたら炎上するということ。
| すなわち、並外れた航続力を確保するのと引き替えの脆弱性なんだよ。
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| こういった機構により、後の一式陸攻は大型機とは思えないほどの高速性能と運動性を実現。
| さらに航続距離は驚異的で、もはや常識を逸脱したレベル。
| その総合性能は、双発機でありながら海外の四発機にさえ匹敵するものだったんですよ。
| そんな試作1号機が完成したのは、計画開始から2年後の1939年9月のことでした。
| 海軍は小躍りしながら採用決定、1941年4月には一式陸上攻撃機として生産が始まります。
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・一式陸上攻撃機(G4M)
日本海軍を代表する陸上攻撃機。
初期のうちは並外れた航続距離を活かして活躍したが、みるみる旧式化。
防御性能の低さも相まって、一度被弾したらたちまち火が付く「ワンショットライター」とまで言われる。
結果的に戦争全期に渡って運用され、莫大な損害を出した。
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| なんか、嫌な予感が……板書に末路が書いてるけどな。
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| しかし防弾装備の欠如は、俗説とは違う一面もありんだが……
| まあ、詳しくは後の講義だな。
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| これまで解説した通り、速度と航続距離は並外れたものがあったんですが……
| その実現と引き替えに度外視された性能がありました。予想は付くでしょうが、防御性能です。
| 重量を抑えるために、防弾装備などはほとんど搭載されていなかったんですよ。
| 結局は零戦と同じで、防御性能を犠牲にした上での高性能だったんです。
| とは言え九六陸攻が大被害を出したという戦訓があり、何の考慮もされていなかったとは言えないですが――
| 機体の防弾対策は、本格的というには全く足りないものでした。
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一式陸上攻撃機
・全長:19.97m ・全幅:24.88m ・全高:4.90m ・全備自重:9,500kg
・最大速度:428km/h ・航続距離:4,287km ・乗員:7名
・エンジン:三菱『火星』一一型 空冷星形14気筒(1,530hp)×2
・武装:7.7mm機銃×4、20mm機銃×1、魚雷×1 or 爆弾800kg
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| 防弾装備って、どんなのなんだ?
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| 燃料タンクを防弾ゴムで防御していた……その程度では全然足りなかったがな。
| とは言え、そこかしこの資料で見られる「全く防弾対策がされていない」ってのは明確な誤り。
| 初期生産型から、一式陸攻には防弾装備が搭載されていた。あんま役立たなかっただけだ。
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| 結局は高性能との兼ね合いもあり、防御装備は簡易に済ませてしまった――ってとこですね。
| そういうわけで一式陸攻の生産が進んでいた時期に、太平洋戦争が勃発。
| 初期のうちは優れた航続距離を活かして、先輩の九六陸攻と共に大活躍します。
| フィリピンのアメリカ航空基地に猛攻を掛け、事実上の壊滅に追い込むことに成功。
| さらにマレー沖海戦においては、イギリス戦艦「プリンス・オブ・ウェールズ」と巡洋戦艦「レパルス」を撃沈。
| この陸攻隊の活躍には、パイロット達の熟練技能も大きく関わっていました。
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神の操縦技術(1942)
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| ちょ……! なに、この低空飛行! 熟練っていうレベルじゃないぞ!
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| 魚雷投下の際は、腕の許す限り海面スレスレまで下がるんだ。
| とは言えここまでスレスレに機体を下降させるのは、もはや神の技量。
| この時期の陸攻パイロットがどれだけ凄かったかを、ありありと示す一枚だ。
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| しかし戦争中盤になると、一式陸攻は出撃する度に甚大な被害を受けるようになりました。
| 元々の脆弱性に加え、護衛戦闘機そのものが存在しない、あっても頼りにならない――
| こういった状況下では昼間の攻撃は危険すぎ、夜間に運用が限定されました。
| 例によって後継機的存在の銀河は完成せず、引退できない一式陸攻の撃墜数は雪だるま式に拡大。
| 翼に敵弾が当たっただけで燃え始めるということで、日本側パイロットは「ワンショットライター」と自嘲したほど。
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| ワンショットライターって、アメリカ側が呼んでいたんじゃないのか?
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| そうなっている資料も多いが、実際は日本側パイロットが自嘲混じりに言い始めた呼び名。
| それがアメリカの書籍に、「日本パイロットはこの機をこう呼んでいる〜」と紹介されたんだ。
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| なおアメリカ側のパイロットの多くは、一式陸攻を意外に落ちにくい頑丈な相手と認識していたようですね。
| 味方側と敵側で同じ兵器の評価が食い違うのは奇異のようにも感じられますが、実はよくあること。
| 乗ってみるとハラハラするが、敵に回すと意外に面倒な機体だったということでしょう。
| また1943年には、山本長官の乗る一式陸攻がアメリカ戦闘機P-38の待ち伏せを受けてしまいました。
| その結果、一式陸攻は撃墜。山本長官も戦死してしまうという大事件に。
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・一一型:『火星』一一型を搭載した初期生産型。
・仮称一三型:エンジンを『火星』一五型に換装したタイプだが、一一型として扱われていることも多い。
・二二型:エンジンを『火星』二一型に換装、機体全体を再設計した改良タイプ。
・二二甲型:二二型の側方機銃を20mmに強化、レーダーを搭載した武装強化型。
・二二乙型:二二甲型の上部旋回機銃を長銃身化させた武装強化型。
・二四型:エンジンを『火星』二五型に換装したタイプ。
・二四甲型:二四型の側方機銃を20mmに強化、レーダーを搭載した武装強化型。
・二四乙型:二四甲型の上部旋回機銃を長銃身化させた武装強化型。
・二四丙型:二四乙型の機首前方機銃を13mmに変更した武装強化型。
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| 一式陸攻の評価って、色々とややこしいんだな。
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| そもそも一式陸攻は、こちらに制空権がある状態での運用を想定されていたんだ。
| 最初から、敵がビュンビュン飛んでいるような場所で扱う機体じゃなかった。
| 単純に、防御性能だけが莫大な被害を出した原因でもなかった――運用の問題だな。
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| 後期型あたりになると、鈍重化は覚悟の上で消火装置や防弾ゴムが増設されていますね。
| 三四型は主翼タンクの防弾性をさらに増していますが、航続距離は今までの70%にダウン。
| なにより三四型の登場は1944年と遅く、40機ほどしか生産されていません。
| どっちにしろこの時期は、もはや一式陸攻に攻撃任務など期待されていませんでした。
| その任務の中心は、輸送作戦のみと成り果てていたんです。
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・三四型:二四型のインテグラルタンクを廃止、防弾装備を増強したタイプだが航続距離は減少している。
・三四甲型:三四型の側方機銃を20mmに強化、レーダーを搭載した武装強化型。
・三四乙型:三四甲型の上部旋回機銃を長銃身化させた武装強化型。
・三四丙型:三四乙型の機首前方機銃を13mmに変更した武装強化型。
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| 制空権をほとんどアメリカに奪われ、飛ぶだけで危険な存在だったみたいだな。
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| この頃には、ようやく後継の銀河も現われた……
| その銀河とて、もはやまともに活躍できる局面じゃなかったんだけどな。
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| そして大戦末期ともなると、一式陸攻は特攻兵器「桜花」の母機として扱われることに。
| しかし桜花はとても大きく、一式陸攻の胴体にブラ下げざるを得ないので機動性が格段に低下。
| 桜花を発射する前に、母機ごと敵に撃墜されるケースが非常に多かったようですね。
| そんな悲惨過ぎる状況の中、ようやく終戦を迎える事になるんです。
| その総生産数は約2400機、あまりにも辛く苦しい戦いがようやく終わったんですよ。
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・二四丁型:桜花を搭載できるように改造した母機タイプ。
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| 本当に散々だったんだな……
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| 脆弱な日本軍機の代表格として、筆頭に上げられる機体なんだよ。
| 一式陸攻ほど、悲惨な体験をした航空機もそうはない。
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| 他にも一式陸攻には、いくつかエンジンを換装した実験型が存在。
| また十二試陸上攻撃機改というのがあり、これは一式陸攻の量産開始時期に遡ります。
| 「翼端援護機」とも呼ばれ、武装や防御力が格段に強化された一式陸攻改良型が30機ほど生産されました。
| これは普通の一式陸攻隊に混じり、編隊の護衛を担当するはずの機体だったのですが――
| その重武装ゆえに速力が低下、通常型の一式陸攻に着いていけないというマヌケな事態に。
| おまけに零戦が当時は強力な護衛機として存在したので、たちまち役立たずとなった失敗作ですね。
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・二五型:『火星』二七型を搭載した改良型で、試作のみ。
・二六型:『火星』燃料噴射装置付き二五乙型を搭載した改良型で、試作のみ。
・二七型:『火星』排気タービン付き二七型二五乙を搭載した改良型で、試作のみ。
・十二試陸上攻撃機改:一式陸攻の編隊護衛型で、武装・防御力が強化されている。
・一式大型陸上練習機一一型:十二試陸上攻撃機改を練習機にしたもの。
・一式大型陸上輸送機:十二試陸上攻撃機改を輸送機にしたもの。
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| なんてマヌケな……
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| 実際のところ、海軍が思いつきで作ったも同然の機体だったんだよ。
| こうして役立たずの十二試陸上攻撃機改は、練習機や輸送機として転用されることに。
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| ここまで講義してきましたが……そもそも、陸上攻撃機という機種自体に矛盾があったんですよ。
| 性能の優れた双発機って程度じゃ、がっちりガードされてる敵艦隊に近寄って無事で済むはずがありません。
| この種の機体には護衛機をいっぱい付けないとどうにもならない、ってのが戦訓だったんですが――
| 情勢がそれを許さず、そればかりか無理解もあって――海軍は、一式陸攻を用いざるを得なかったわけです。
| これは単に一式陸攻の防御性能云々の問題ではなく、陸上攻撃機という存在の根本に問題があったんですよ。
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| 結局のところ、陸上攻撃機そのものが時代に合わなかったってこと?
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| これが開発された時代は、優速の爆撃機が敵戦闘機の妨害をものともせずに飛び回る――
| そんな夢が語られていた時代なんだ。
| しかし実際に戦争を体験し、そんなのはありえないということが分かってしまった。
| そういった時期の、夢の残り香と言えるかもしれないな。
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| しかし、戦争中期以降はもはや満足な戦闘機も存在しないという有様。
| 結局のところ、無理を承知で陸上攻撃機を飛ばし続けるしかなかったんです。
| そういうわけで一式陸攻というのは、陸上攻撃機の限界を提示した機体だったわけですね。
| ……と、まあ、暗い気分を味わいながら一式陸上攻撃機の講義を終えるとしましょう。
| 次回は、未完成に終わった陸上攻撃機の講義ですよ。
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| つ ∇ (゚Д゚,,) /_ V/レ'
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| なんで日本機は、毎回こんな暗い終わり方なんだ?
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| 負けたから。
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