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| さて、今回は日本海軍の初期艦上爆撃機について講義していきましょう。
| そもそも日本海軍に限らず世界中の海軍大国は、航空攻撃において魚雷を重視していました。
| それも当然、魚雷とは対艦攻撃において強烈な破壊力を発揮するんです。
| それに対して、爆弾での攻撃は艦艇に対するダメージが低く、当てるのも難しく、非効率的とされていました。
| よって艦上攻撃機の主力兵装は魚雷であり、爆弾はほとんど扱われなかったんです。
| ……1920年代の後半、アメリカ海軍が新戦術を確立させるまではね。
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    | 爆弾って、魚雷よりダメージ低いの?
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         | 実際のところ、喫水線より上にある構造物をどれだけ破壊されても艦は沈まないんだよ。
         | 当然ながら戦闘不能には陥るが――それでも、相当な数の爆弾を浴びせなきゃならない。
         | それよりも、喫水線下に穴を開けて浸水を起こさせ、沈めてしまう方が手っ取り早かったんだ。
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| しかし1920年代の後半、アメリカ海軍は急降下爆撃という技術を編み出しました。
| それまでは水平飛行しながら、敵の真上で爆弾を落としていたんです。
| これは意外と当てるのが難しく、命中率は非常に低いものでした。
| しかし急降下爆撃は、目標に向けて急降下しながら爆弾を投下するという技。
| これにより、爆弾の落下方向と機体の降下する方向がかなり近くなります。
| そういうわけで、爆弾の命中率が跳ね上がるというわけですね。
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    | なるほど……でも命中率の問題はクリアできても、威力不足の問題があるじゃないか。
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         | 爆弾による攻撃は敵艦の上部構造にダメージを与えるのみで、撃沈するのは難しい――
         | 確かにその原則に違いはなかったんだが、ここで特別な事情が浮上したんだ。
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| 沈められなくても、上部構造へのダメージがメリットになる――そんな、特殊な事情が想定できたんです。
| それが、この頃から本格的に現れ始めた航空母艦の存在でした。
| 空母の甲板は滑走路となっており、ちょっとでも爆弾を受けて壊れさえすれば、もう使えなくなるんです。
| つまり甲板にダメージを受けた空母ってのは、攻撃力を失った浮かぶハコと化してしまうんですよ。
| これに目を付けた日本海軍は、こう考えました。
| 「急降下爆撃こそが、敵空母対策の切り札にならないだろうか」――とね。
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    | なるほど。空母ってのは、頭上からの爆弾でも大ダメージを受けてしまうのか。
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         | 戦艦とかだと、多少なら上部構造物を吹っ飛ばされたところで戦い続けることは可能。
         | しかし空母は、頭上からの攻撃でたちまち戦闘能力を失ってしまうという脆さがあったんだ。
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| こうして日本海軍は、急降下爆撃のできる艦上機の開発を検討し始めたんですが――
| 急降下爆撃というのは、かなりアクロバティックな技。軽快な動作の出来る機体でなければ不可能です。
| しかし従来の艦上攻撃機は、大きな魚雷を扱うということで巨体を備えた存在でした。
| そういうわけで艦上攻撃機で兼用することができず、急降下爆撃専用機を開発することになります。
| これが後の日本海軍で、艦上爆撃機と呼ばれることになるんですね。
| なお板書したカテゴリー分けは、あくまで日本海軍特有のものなのに注意です。
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 ・艦上攻撃機:魚雷も大型爆弾も搭載可能。ただし鈍重で、急降下爆撃は不可能。
 ・艦上爆撃機:小型爆弾のみ搭載可能。ただし軽量で、急降下爆撃が実行可能。
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    | なるほど。
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         | 敵空母に関しては艦上爆撃機、その他の敵艦艇に対しては艦上攻撃機――
         | そういった使い分けが、だいたいの方針となっていったんだ。
         | 実際に戦争が始まってみれば、そう厳密に敵対象を選んではいられなかったんだけどな。
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| 1931年、日本海軍は中島航空機に対して特殊爆撃機(六試艦上特殊爆撃機)の開発指示を出しました。
| これは後の艦上爆撃機であり、この当時は敵空母に対向する秘密兵器という扱いだったんですね。
| 翌年の11月、中島は苦心しながらも試作機を完成させたんですが――
| テスト中に墜落事故が起きてしまい、パイロットが死亡してしまうという悲劇をもたらしました。
| この種の機体開発は日本初であり、安定性や操縦性に難があったんですよ。
| こういうわけで、六試艦上特殊爆撃機の開発は即刻中止されてしまいます。
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 ・中島 六試艦上特殊爆撃機
  中島航空機が空技廠と組んで開発した、急降下爆撃機の試作。
  テスト機が墜落事故を起こしてしまい、その開発は中止となってしまう。
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    | まだまだ、技術に問題があったんだな……
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         | 海外の技術依存から、ようやく脱出し始めていた頃の話だ。
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| さらに翌年の1933年には、失敗した六試艦上特殊爆撃機に全面的な改修を施した改良型が完成。
| これは七試艦上特殊爆撃機という名で、海軍に提示されたのですが――
| やはり操縦性や安定性の欠如はまだまだ改まっておらず、採用はなりませんでした。
| この通り、艦上爆撃機の開発は当初から苦難の道を辿ったんです。
| 艦爆は軽快な運動性を実現しなkればならず、派手な動きをするので機体構造も頑丈にしなければなりません。
| そうなると、正直なところ当時の日本の技術力では荷が重かったんです。
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 ・中島 七試艦上特殊爆撃機
  六試艦上特殊爆撃機に大幅な改良を加えた試作機。
  やはり安定性や操縦性に問題があり、不採用となってしまう。
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    | うぅむ、やはり苦難の道だったのか……
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         | ちょうどこの頃、
七試艦上戦闘機七試艦上攻撃機も悲惨なことに。
         | 海軍が頭を抱えた時期なんだが――失敗経験も踏まえた技術の蓄積は、決して無駄じゃなかった。
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| しかし海軍は諦めるはずもなく、七試艦爆が失敗したのと同年の1933年に新艦上爆撃機の開発を指示。
| この八試特殊爆撃機計画は、中島航空機、愛知航空機、そして海軍自前の空技廠の三者競作となりました。
| 中島航空機は六試七試の失敗を踏まえつつ堅実に新型機を開発。
| ですが完成した試作機もやはり操縦性と安定性に難があり、結果的に不採用となってしまいます。
| 一方で空技廠が試作した機体の詳細は不明ですが、これも不採用に終わります。
| 結果的に採用の軍配が上がったのは、愛知航空機が提示した機体だったんですよ。
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 ・中島 八試特殊爆撃機
  八試特殊爆撃機計画において、中島が完成させた試作機。
  安定性や操縦性の問題は解決しておらず、やはり不採用となる。
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    | 中島、またも不採用か。無念だな……
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         | 結果的に、以降の艦爆は三世代連続で愛知航空機が独占することになる。
         | そして愛知航空機とハインケル社は技術提携の関係にあり、関わりは極めて深かった。
         | だから日本の艦爆は、ハインケル社の影響が極めて濃いんだ。
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| 八試特殊爆撃機計画において、愛知はどんな試作機を提示したかというと――
| それは、ドイツのハインケル社から輸入したHe66という機体の改良型でした。
| ハインケルHe66のエンジンを日本製の『寿』に換装し、各部を日本空母に合わせて改修したんです。
| この試作艦上爆撃機は中島や空技廠の試作機に比べ、性能も安定性も陵駕したものでした。
| こうして1934年12月、愛知の試作機は九四式艦上軽爆撃機という名で採用されます。
| この九四艦爆が、日本海軍が初めて手にした艦上爆撃機ということになりますね。
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 ・九四式艦上爆撃機(D1A)
  急降下爆撃が可能な艦上機として採用された、日本海軍初の複葉艦上爆撃機。
  ハインケルHe66の改造機であり、完全な国産機とは言い難い。
  また世界水準で言えば優れた性能ではないが、初期の中国戦線で活躍している。

 
写真
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    | ようやく、日本海軍は念願の艦上爆撃機を手にしたわけだな。
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         | 小型爆弾しか扱えないということで、当初は九四式艦上軽爆撃機という制式名称だった。
         | しかし1936年には、九四式艦上爆撃機という名前に改められている。
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| ……とは言えこの九四式艦上爆撃機も、アメリカやドイツから見れば旧式機でした。
| 日本海軍もそれを理解しての採用であり、あくまで最初の第一歩的存在。
| これを踏み台に、世界にも通用する強力な艦上爆撃機を開発する――そういう思惑だったんですね。
| それゆえに九四艦爆は、そこまで強力な機体とはお世辞にも言えません。
| ですが日中戦争においては、相手の弱体振りにも助けられて結構な活躍を見せています。
| 生産数は162機。後継の登場が早かったので、総数はそう多くないですね。
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    | なるほど……そう悪い機体でもなかったってことか。
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         | 日中戦争においては、海軍機も地上攻撃の支援に駆り出された。
         | そこで九四艦爆は正確無比な爆撃能力を示し、この種の期待の実力を知らしめたんだ。
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| さらに愛知航空機は、九四艦爆が採用されると同時期に大幅な改良を実行します。
| エンジンを最新の『光』に換装するなどの改修を行ったところ、速力や上昇性能が抜本的にアップ。
| これに喜んだ海軍は、九四艦爆改良型に九六式艦上爆撃機という新しい名を与えたんです。
| つまりは、別の機体として扱われるほどに性能向上が著しかったんですね。
| 1937年に量産が始まった九六艦爆は、ただちに日中戦争にも参加。
| 先輩である九四艦爆と肩を並べ、正確無比な爆撃任務で大いに名を馳せたんです。
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 ・九六式艦上爆撃機(D2A)
  九四式艦上爆撃機のエンジンを換装し、その他の改良を施した艦上爆撃機。
  その性能向上は著しく、九六式艦上爆撃機として採用が決定。
  日中戦争に投入され活躍し、
九九式艦上爆撃機の登場後は前線から引退していった。
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    | 改良型なのに新たな名前が与えられるっていうのは、珍しいパターンだな。
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         | 特に1937年9月の南京航空戦では、揚子江に集まった中国軍艦艇に急降下爆撃を実行。
         | 多くの艦艇を戦闘不能に陥らせ、艦上爆撃機という機種の実力を内外に知らしめたんだ。
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| この九六艦爆は、日中戦争における主力艦爆として428機が生産されました。
| しかし結構な優良機だったとはいえ、複葉機の時代には終わりが来つつあったのも事実。
| 太平洋戦争の開戦に合わせる形で、後継の九九式艦上爆撃機が姿を見せ始めると――
| 九六艦爆は、それと交代する形で前線から退いていきます。
| こうして本土に戻った九六艦爆は、その後も練習機として用いられることになるんですよ。
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    | って事は、次は単葉・全金属の時代か……
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         | その通り。
         | 九六艦爆の後継となる九九式艦上爆撃機は、単葉・全金属化を達成している。
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| こういう風に、ようやくモノになった艦上爆撃機は空母上で独自の地位を築くことに成功しました。
| そしていつしか艦上戦闘機、艦上攻撃機、艦上爆撃機の三種が艦上でトリオを組むことになります。
| そんなスタイルが定着した頃に太平洋戦争が始まり、いよいよ艦爆も空母破壊という任務に赴くのですが――
| さて、次回は日本海軍の代表的艦爆である九九式艦上爆撃機について講義しましょう。
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    | やはり、艦上爆撃機は対空母向けの航空機なんだな。
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         | とは言え、敵艦隊に空母がいなかった場合でも、のんびりしているわけにはいかない。
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