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| さて……今回の講義で扱うのは、ソ連が60年代に開発した迎撃戦闘機MiG-25です。
| マッハ3クラスという前例のない速度性能は、西側を恐怖と困惑に陥れました。
| そんなMiG-25は決して万能戦闘機ではなく、色々と複雑な機体。
| これは超音速爆撃機XB-70などの出現――それに対する、ソ連側の対抗策に当たるんです。
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| XB-70「ヴァルキリー」……マッハ3でブッ飛ぶ核爆撃機だな。
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| 計画中止になった、夢の残り香だ。
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| XB-70の計画はポシャりましたが、アメリカの超音速機そのものは消えてなくなった訳ではありません。
| B-58やA-5、そしてA-12やSR-71などの超音速機がソ連本土に来襲する恐れは十分にありました。
| そこで、ソ連は対抗策を考え出します。それが、究極の迎撃戦闘機MiG-25の開発なんですよ。
| 相手は、戦闘機にも捉えられない速度で、戦闘機にも届かない高度を飛ぶ航空機。
| ならば話は簡単、それらを上回る高速・高度性能の戦闘機があれば良い!
| それが、XB-70と並ぶマッハ3を誇る迎撃戦闘機MiG-25の開発思想となりました。
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・MiGとは?
ソ連の航空機メーカーの1つで、一時期は社名の「ミグ」がソ連戦闘機の代名詞になったほど有名。
「MiG」とはミコヤン・グレビッチ設計局の略で、1938年にミコヤンとグレビッチが共同で開設した。
「M」と「G」はミコヤンとグレビッチを指し、小文字の「i」はロシア語で&という意味。
なお、現在は「グレビッチ」の部分は消滅し、ミコヤン設計局となっている。
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| つまり、「ミコヤン&グレビッチ」って事か。
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| 第二次大戦中にもMiG-1やMiG-3という戦闘機が存在したが、大した印象は残さなかった。
| 朝鮮戦争におけるMiG-15「ファゴット」の出現が、MiGの名を世に知らしめたんだ。
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| ここで戦闘機の任務をしっかり理解しないことには、MiG-25の意味を見失います。
| 戦闘機の仕事ってのは、簡単に言えば敵航空機を退治することなんですが……
| 一概に空中戦といっても、いろんな種類があります。それに応じて、戦闘機の特色も分かれてくるんですよ。
| とはいえ、現代のほとんどの戦闘機は両方の任務が可能となっています。
| そういう訳で、これも現在においては消えつつある分類といえますね。
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・制空戦闘機
敵地領空などに侵入し、敵戦闘機を叩き落して航空作戦を有利にするための戦闘機。
一般の人が思っている戦闘機のイメージは、ほとんどが制空戦闘機。
→敵戦闘機との格闘戦を行う機会が多いため、機動性が重視される。
また、かなり遠くまで行くことが想定されるため、航続距離も重要。
・迎撃戦闘機(要撃戦闘機)
自国領空に飛来してくる爆撃機やミサイル、またその護衛を叩き落すための戦闘機。
→相手は高速なため速度性能が要求されるが、機動性は余り必要ない。
自国付近の運用を想定しているため、航続距離は重要視されない。
侵入してきた敵を即効で発見・攻撃するため、高い索敵能力と長距離攻撃能力が特に重要。
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| つまり、アタック用の戦闘機とディフェンス用の戦闘機だな。
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| 「任務によって、必要とされる能力は違う」――
| これは講義を受ける上で、絶対に覚えておいて欲しい事実だ。
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| さて、MiG-25は戦闘機型と偵察機型の開発が平行して進められていました。
| なお初期はまだMiG-25という名は無く、試作機をあらわすYe-155という名前ですね。
| 1963年に偵察機型の試作機1号が完成してから、数々のテストを経て洗練化されていきます。
| またYe-155はテストを続けるついでに、さまざまな記録達成にもチャレンジしました。
| 国際航空連盟にはYe-266という名前を使い、数々の新記録を打ち立てたんですよ。
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Ye-266の達成した記録
・1000km周回コースをペイロード2000kgを積んで、時速2920.67kmで飛行。
→ペイロードなしと、ペイロード1000kgの記録を同時達成。
・500km周回コースを時速2920kmで飛行。
・100km周回コースを時速2605.1kmで飛行。
・ペイロード2000kgで、高度29977mという高度記録を達成。
・高度20,000mまで169.8秒、高度25,000mまで3分192.6秒、高度30,000mまで243.8秒という上昇記録達成。
→後に、F-15「ストリーク・イーグル」に記録更新される。
→それに対し、エンジンを強化したYe-266Mがこの記録を破る。
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| うおッ! すげぇ。
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| Ye-155、Ye-266、MiG-25――名前は違えど、基本的には同じ機体だ。
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| 今とは違い、ソ連は「鉄のカーテン」と呼ばれる秘密のヴェールに覆われていた時代の事。
| この超音速迎撃機の存在は、しばらく西側には漏れていませんでした。
| それが初めて表舞台に姿を見せたのは、1967年に行われた航空ショー。
| Ye-155はマッハ3級の戦闘機と説明され、西側諸国は腰を抜かさんばかりに驚愕します。
| ベトナム戦争での教訓で打ちひしがれていたアメリカ空軍は、この機の存在に大ショック。
| 絶対的な性能を持つ新戦闘機の開発を始めることになります。
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| アメリカもびっくりか。
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| そうして完成したのが、20世紀最強と名高いF-15「イーグル」。
| しかし西側は、MiG-25を何でもできる万能戦闘機と誤解しててなぁ。
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| ともかく1969年、試験機であったYe-155偵察型はMiG-25Rという正式名が与えられます。
| その翌年には戦闘機型にMiG-25Pという名が付けられ、本格的に生産が開始されました。
| 西側諸国にとっては、MiG-25とは数ある記録を次々に達成してのけた、謎に包まれた戦闘機。
| ただし戦闘機型は爆撃機の迎撃専門であり、戦闘機同士のバトルはいっさい考慮されてません。
| それゆえに細かい機動など全くできず、そもそも機銃さえ搭載されていないんです。
| 戦闘機というか、もはや「空飛ぶ対空ミサイル発射機」という表現の方がしっくりきますね。
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・MiG-25「フォックスバット」
XB-70などの超音速機にに対抗して生まれた超高速戦闘機。
マッハ2.8というとてつもない速度性能と高度性能を備え、西側に深い脅威を与えた。
しかし爆撃機の迎撃に特化しているため、戦闘機同士の格闘性能は低い。
偵察機型も存在し、戦闘機型と合わせて各国に輸出されている。
また、ベレンコ中尉亡命事件において日本国内に持ち込まれたことでも有名。
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| なんとも、ミステリアスな戦闘機だったんだな。
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| 真っ黒なヴェールに覆われた超軍事大国の、最新鋭戦闘機だからな。
| しかしその正体は、西側が思い込んだような超音速万能戦闘機じゃなかった。
| 迎撃のみに特化して対空戦闘は度外視した、非常にアンバランスな戦闘機だったんだ。
| ベトナム戦争でアメリカがやったミスを、一世代遅れてやっちゃったんだよ。
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| そして1970年、中東のゴタゴタを支援するため、ソ連の航空機がエジプトに出向。
| その中には、4機のMiG-25偵察型の姿もありました。
| そういう情勢の中、イスラエルはMiG-25がマッハ3.2で飛んでいることを確認。
| 西側諸国はその凄まじい速度性能に仰天、謎の超音速戦闘機のイメージが一人歩き。
| ソ連が意図的に演出したかもしれない断片的な情報で、脅威と危機感が膨れ上がっていきました。
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MiG-25PD(戦闘機型の後期タイプ)
・全長:19.75m ・全幅:14.015m ・全高:6.50m ・自重:19,700kg ・全備重量:36,720kg
・最大速度:M2.83 ・航続距離:1250km(超音速時) ・上昇限度:20,700m ・乗員:1名
・エンジン:R-15BD-300×2
・武装:R-40空対空ミサイル×2(胴体下)
R-60空対空ミサイル×4もしくはR-40空対空ミサイル×2(主翼)
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| コクピット、なんかショボい……
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| ただアメリカは、MiG-25の正体に関して薄々気付いているフシがあった。
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| そして、1976年9月6日――世界を驚愕させる事件が発生しました。
| MiG-25に搭乗したソ連防空軍パイロットが強引にソ連を脱出、そのまま西側に亡命を希望します。
| 彼が強行着陸し、謎に包まれていたMiG-25を持ち込んだのは、なんと日本の函館空港。
| これが世に名高い、べレンコ中尉亡命事件です。
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・べレンコ中尉亡命事件(1976年9月6日)
ソ連のべレンコ中尉が日本領空に侵入、そのまま函館空港に強行着陸。
アメリカへの亡命を希望した事件。
彼が乗ってきた戦闘機が最新鋭のMiG-25であった事から、凄まじい混乱が巻き起こる。
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| 謎に満ちたソ連の最新鋭航空機… それが、思わぬ形で手に入ったんだな。
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| しかも、よりにもよって日本が。
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| 最初に、亡命を決意したべレンコ中尉の事情を述べておきましょう。
| 彼は最新鋭機MiG-25への乗機を認められるだけあり、非常に優秀なパイロットでした。
| そんな彼がソ連を捨てて亡命した理由は、あまりに腐敗した軍に対する憤りです。
| それというのも、彼の属する空軍基地ではアル中が大増殖していました。
| この惨状に嘆いたべレンコ中尉は、「アル中になりにくいビールのみを認めるべきだ」と上官に意見。
| すると、なぜか彼は反国家分子扱いを受けてしまう事に。そしてべレンコ中尉は、亡命を決意します。
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| なんて緊迫感の欠けた亡命事情なんだ……
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| さすがはロシア人。
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| こうしたわけでベレンコ中尉のMiG-25が降り立ち、当の日本は大騒ぎ。
| 各国の大使館員が次々に現れては祝辞を述べ、ついでに調査結果を教えてくれと言ってきたり――
| 函館空港周辺は世界中の報道関係者と、明らかに素人ではない怪しげな外国人でひしめいたり――
| ソ連は日本に対して中尉の身柄とMiG-25の引渡しを求め、「拒否すれば武力奪還も辞さない」と通告。
| 陸自北海道総監部はただちに緊急出動を決定。道路を封鎖して部隊を展開、臨戦態勢に。
| あわや戦争、下手したら第三次世界大戦か――という事態になってしまいます。
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| けっこうギリギリだったんだな。
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| 結局のところ、米軍の動きもあって戦争の危険性は回避された。
| MiG-25は返還されることになったが、その前に調べ尽くしてしまえ――ってことに。
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| そんな中、なんとか防衛庁がMiG-25を調査する立場に持っていくんですが……
| MiG-25を初めとしたソ連機には、秘密保持のために爆破装置がついています。
| そこでアメリカからソ連機解析を専門とした通称「ミグ屋」と呼ばれる連中が出向。
| 彼らのサポートで(実際は彼らの主導で)、MiG-25を詳細に調査するんですね。
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| 秘密保持のための爆破装置……マンガみたいだな。
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| そんな装置、実際に乗っけてしまうソ連に萌えないか?
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| その調査結果は後ほど触れるとして、まずはこの事件の顛末を。
| ベレンコ中尉の要求は通り、無事にアメリカへ亡命。現在もビジネスマンとして健在です。
| 問題のMiG-25は調査を終えた11月15日、ソ連に引き渡されました。
| 北海道警察が道路不法占拠および道交法違反で陸自を告訴っていう日本的なオチがついて、
| 無事にこの騒動は収束します。
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| なんか、自衛隊も大変だなぁ……
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| また、この事件によって日本の防空網の脆さが明らかになった。
| あっさりと領空侵犯され、国内の空港への強行着陸を許してしまったからな。
| この防空の脆弱さは問題となり、早期警戒機が航空自衛隊に導入されるんだが……
| まあ、これは別の話だ。
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| この調査の結果、MiG-25を過大評価していたという事が明らかになりました。
| フタを開けてみれば、万能機どころか迎撃専用の超特化型戦闘機だったんです。
| 戦闘機同士の戦いは非常に苦手であり、旋回性能を初めとした機動性は極端に低い事が判明。
| 特に燃料効率の悪さはとんでもなく、加えて予想外のローテク振りも明らかになりました。
| チタニウムじゃなくニッケル鋼が多く使われてるし、電子機器も旧式だし……
| ローテク=ヘボいって訳でもないんですが……西側が肩透かしを食った形になるのは事実でしょう。
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| 兵器は家電じゃないんだから、安物はヘボいって事にはならんわなぁ。
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| むしろ能力が備わってれば、安いって事は最大の武器になるんだ。
| アメリカの研究者は、ローテクのみでこれほどの性能を出しているという事を評価。
| 「アメリカでは、これほど効率の良い航空機開発はできない」とコメントしている。
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| この事件で手の内を明かされてしまったソ連は、電子機器を中心にMiG-25を改修します。
| そうして完成した電子機器増強バージョンの戦闘機が、MiG-25PD。
| これを機に、古い型の方もちょっとだけ改修してインドや中東に輸出していますね。
| 偵察機型の改修タイプは種類が多いので、板書のみの紹介にしておきます。
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MiG-25の型式
・MiG-25P:初期戦闘機型
・MiG-25PD:MiG-25Pの電子機器を改修した戦闘機
・MiG-25PDF:MiG-25PDの弱化バージョンで、他国への輸出限定版。
・MiG-25PU:MiG-25Pの訓練型で、教官用のコクピットを追加。
・MiG-25R:初期偵察機型
・MiG-25RB:MiG-25Rに爆撃機能を付加した、偵察爆撃型。一説によれば核の搭載も可能。
・MiG-25RBV:MiG-25RBの電子機器増強版で、探査能力が増している。
・MiG-25RBT:MiG-25RBVのさらなる電子機器増強版で、レーダーを強化したタイプ。
・MiG-25RBS:MiG-25RBの写真偵察型。
・MiG-25RBSh:MiG-25RBSの強化型で、電子機器がバージョンアップ。
・MiG-25RBK:MiG-25RBの電子偵察専用タイプ。
・MiG-25RU:MiG-25Rの訓練型で、教官用のコクピットを追加。
・MiG-25BM:防空制圧型で、対レーダーミサイルを搭載している。
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| 西側にバレちゃったから秘密保持の理由も無くなって、旧型の方は輸出されたんだな。
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| さすがソ連、なんともしたたかだ。
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| そして80年代に入ると、後に解説する後継機MiG-31「フォックスハウンド」が姿を見せ始めます。
| それと交代する形で、波乱に満ちたMiG-25は静かに第一線を退いていきました。
| そして現在のロシア空軍には、MiG-25偵察型のごく一部が残るのみとなっています。
| また当機を輸入した諸外国では活躍し続け、イラクやシリアが中東戦争や湾岸戦争などで使用。
| アルジェリアやインドも、2005〜2006年あたりまで運用し続けました。
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| 偵察機型は、今もロシア空軍に生き残ってるのか……
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| その高速性能は、SR-71にも匹敵するからな。
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| 実戦におけるMiG-25の存在感も大きく、湾岸戦争やイラク戦争でも姿を見せていますね。
| ……まあ、高性能なアメリカの戦闘機にカモにされた局面の方が多かったりするわけですが。
| それでもアムラーム(アメリカの超高性能対空ミサイル)を、その高速性能で回避しきったというケースも。
| またF-15撃墜疑惑やフェニックスミサイル回避などにも関わっており、逸話は妙に多いです。
| そしてベトナム戦争以後、空戦でアメリカ軍機を撃墜した戦闘機はMiG-25のみという事実も見逃せません。
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・レバノン紛争(1983年?)
イスラエルのF-15をシリアのMiG-25が奇襲し、撃墜したとシリアが発表。
しかしイスラエル側は「撃墜されたF-15は存在しない」とコメントし、疑惑にとどまっている。
・湾岸戦争(1991年)
1月17日、イラクのMiG-25がアメリカの戦闘機F/A-18「ホーネット」を撃墜。
湾岸戦争において、多国籍軍の戦闘機が空中戦で落とされた唯一の事例である。
またMiG-25とF-15は外見が似ており、多国籍軍パイロットは識別に苦労したとか。
・1993年の事例
飛行禁止区域を飛んでいたMiG-25に対し、アメリカ海軍のF-14が攻撃。
F-14はついにフェニックスミサイル2発を放つものの、MiG-25は2発とも回避に成功。
これが実戦におけるフェニックスミサイル唯一の発射例となり、命中率は0%という不名誉な結果に。
・イラク戦争(2003年)
イラクのMiG-25がアメリカの無人機RQ-1A「プレデター」と交戦、見事に撃墜。
世界初の有人機VS無人機の空中戦は、MiG-25の勝利に終わる。
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| こうして見ると、意外に活躍してるじゃないか。
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| 板書だけを見たらな。
| その影で、多くのMiG-25が撃墜されていることは言うまでもない。
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| さて……MiG-25は、XB-70に対抗するために開発された迎撃戦闘機だと言われてきました。
| XB-70が開発中止になった時点で、MiG-25も存在意義を失ったってことですが……これは違います。
| MiG-25はXB-70キラーとして開発された訳ではなく、アメリカの超音速機全般に対するカウンターなんです。
| ソ連崩壊後に明らかになった文章によると、むしろA-12(後のSR-71)に対抗した感がありますね。
| この種の迎撃機をソ連が必要としていたことは、後継機のMiG-31の存在でも明らかなんです。
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| XB-70がなければ、MiG-25も必要ない……ってわけじゃなかったんだな。
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| そうでなきゃ、後継機なんて必要ないだろ?
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| そういうわけで、1975年に完成したMiG-25の発展型がMiG-31「フォックスハウンド」。
| 外見こそMiG-25に似ているものの、中身は全く別物の迎撃戦闘機です。
| 速度性能等は低下しましたが、レーダー等の能力はアップ。戦闘能力は大きく向上しています。
| 目視外戦闘能力は世界トップクラス。10目標同時探知、4目標同時攻撃機能に萌えろ!!
| やはりMiG-25ほどでないにしろ、対戦闘機戦が大の苦手なのは相変わらずです。
| ちょっとだけ空戦に考慮していますが、あくまでちょっとだけ。
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・MiG-31「フォックスハウンド」
MiG-25の発展系で、1975年に完成した迎撃戦闘機。
高々度迎撃のみならず、当時主流になりつつあった低空侵攻に対する迎撃能力も高い。
現在もロシア空軍などで現役であり、その速度性能と上昇性能は抜群。
写真 写真
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| MiG-25の後継機は、やっぱり迎撃特化型戦闘機だったんだな。
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| 敵戦闘機の相手は、別の戦闘機にやらせておけ。
| MiG-31、汝は迎撃せよ――という感じか。役割分担をはっきりさせているんだよ。
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| MiG-31は、フェイズド・アレイ・レーダーというのを世界で始めて搭載した戦闘機なんですが……
| この「ザスロン」というレーダーの詳細は、長くなるのでここでは省略しておきますね。
| また主兵装のR-33は、MiG-31専門に開発された超長射程ミサイル。
| 160キロ近い射程を誇り、その長距離性能はF-14のAIM-54「フェニックス」に比べられます。
| 目視外の敵を特殊なレーダーで収め、超長距離対空ミサイルで始末する――そんな迎撃機ですね。
| 目視外戦闘能力のみならSu-27「フランカー」以上、世界でもトップクラスと言われる所以です。
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MiG-31「フォックスハウンド」
・全長:22.69m ・全幅:13.46m ・全高:6.15m ・自重:21,825kg ・全備重量:41,000kg
・最大速度:マッハ2.83 ・航続距離:3300km ・上昇限度:20,600m ・乗員:2名
・エンジン:D-30F6×2
・武装:GSh-6-23 23mmガトリングガン×1(固定)
R-33空対空ミサイル×4(胴体下)
R-60空対空ミサイル×4もしくはR-40空対空ミサイル×2(主翼)
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| す、すげぇ……
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| 遠距離から敵爆撃機や巡航ミサイルを狙い撃つのは得意なんだが……
| やはり、格闘戦は大の苦手。それがMiG-31だ。
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| MiG-31は極端な機体なので輸出実績は少なく、カザフスタンへと輸出型34機が売られたのみ。
| 現在のロシア空軍は300機弱を所持しており、今でも非常に重要な地位を占めています。
| ロシア軍は典型的な防衛軍。当面の脅威は消えたと言っても、この類の戦闘機は捨てられなかったのでしょう。
| 「ロシアの空は、Su-27とMiG-31が半分ずつ守っている」とさえ言われるほど信頼の厚い迎撃専門機ですね。
| 今のところMiG-31に実戦記録はありませんが、北方領土にも配備されています。
| 同島を武力奪還するとなると、こいつらと戦わなきゃいけないんですね。
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MiG-31の型式
・MiG-31:初期型。電子機器の情報がスパイによって西側に漏れ、改修を余儀なくされる。
・MiG-31B:電子機器を改良し、空中給油装置を搭載したタイプ。現在の主流。
・MiG-31E:輸出専門のグレードダウン型で、電子機器などが弱化している。カザフスタンが所持。
・MiG-31M:新式ミサイルの搭載を初め、大幅な改修を施した強化タイプ。資金難により計画倒れに。
・MiG-31BM:MiG-31Mに対地攻撃能力を持たせたタイプだが、買い手は存在しなかった。
・MiG-31D:専用の衛星破壊ミサイルを搭載し、軍事衛星を攻撃する特殊タイプ。当然、計画倒れに。
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| 俺は何も聞かなかった。
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| 俺も何も聞かなかった。
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| そして現在においても、戦闘機の最速記録はMiG-25が保持しています。
| 決して現代の技術では不可能って訳じゃなく、マッハ3クラスの速度性能が必要とされないだけなんですがね。
| マッハ3で飛ぶ脅威が存在しない以上、それに比する戦闘機も不要なんですよ……
| ……という訳で、今回の講義は終わりにしましょう。
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| 現代でも、「世界最速の戦闘機」の座はMiG-25にあるんだな。
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| MiG-25といいX-15といい、60年代の航空機が現在も速度記録を保持しているんだ。
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| なお、航空機の話が続き過ぎたので…
| とうとう、私自身も航空機モードに変形できるようになっちゃいました。
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;ヘ. ヘ / つ ジャキーン
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| どこかの玩具かよ。
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| どうせ、モナ研にやられたんだろなぁ…
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| 見よ、この速度性能!!
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ギュゥゥゥゥゥン!! / /
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| おお! 無駄に速い!!
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| …ん?
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| さて、帰るか…
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| そうだな…
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