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| さて、今回は『リンカーン暗殺事件』を講義しましょう。
| 奴隷解放の父とも呼ばれた、第16代アメリカ大統領エイブラハム・リンカーンの暗殺――
| アメリカの二大暗殺事件の一つとして有名なこの事件は、現在でも数多くの謎に彩られているんです。
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    | 二大暗殺事件? もう一つは?
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         | どう考えても、ケネディ暗殺だろ。
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| まずは、さらっとリンカーンの半生を。
| エイブラハム・リンカーンは1809年2月12日、ケンタッキー州にて貧しい農夫の息子として生まれました。
| 彼は少年時代に厳しい貧困を経験しつつも、成人すると船での運送業を開始します。
| そこで知り合った友人達の勧めもあり、州議会議員に立候補したものの見事落選。
| それから彼は当選と落選を繰り返し、政界での浮き沈みを体験するのです。
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    | 生まれは貧乏だったんだな。
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         | だからこそ、学ぶものも多かったんだろう。
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| 同じ頃、アメリカにも産業革命の波が到来。
| ここでアメリカの北部と南部の産業にシステム的な歪みが生じます。
| ここら辺は単純な問題ではないのですが、今回の講義の重点ではないので、あえて単純化しておきましょう。
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 ・北部:工業主体。熟練した工員は欲しいが、あんまり奴隷はいらない。
 ・南部:農業主体。熟練職など不要、奴隷に農業やらせとけばよい。
   →北部は奴隷制に反対、南部は奴隷制を推奨。
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    | 奴隷の是非に関して、それぞれの主産業が大きく関わってるんだな。
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         | 必ずしも、人道的な見地じゃなかったって事だろ。
         | 実際は、もっと複雑な事情が絡まり合ってただろうし。
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| そんな厄介な世情の中で、地位を高めていたリンカーンはとうとう大統領選挙に当選。
| リンカーンは奴隷制について明確に反対を表明していなかったものの、南部は大いに動揺します。
| その結果、南部の7州がアメリカ合衆国からの独立を宣言。
| この7州は『アメリカ連合国』を名乗り、独自の大統領まで選出してしまいました。
| こうしてアメリカは、南北で完全に分断してしまったんです。
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 サウスカロライナ州、ミシシッピ州、フロリダ州、アラバマ州、ジョージア州、ルイジアナ州、テキサス州
  →1861年2月4日、アメリカ連合国の成立を宣言。
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    | なんと、別の国家を名乗ったのか。
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         | そりゃ、北部が認めるはずはないわな。
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| そして、当然のごとく南北の対立は軍事衝突に発展。1861年、アメリカ南北戦争の勃発です。
| 南軍がサムター要塞を攻撃したことにより始まったこの戦争ですが、その経過はオールカット!
| 最初は南軍が有利でしたが、徐々に北軍が押し返してきたという程度の解説で終わりとします。
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    | また、派手にはしょったなぁ。
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         | これ、リンカーン暗殺の講義だし。
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| 南北戦争最大の激戦となったゲディスバーグの戦いでも、北軍は南軍を破り優勢に。
| この戦いでの戦没者を弔うため、1863年に国立戦没者墓地で行った演説がかの有名なゲディスバーグ演説。
| 「人民の、人民による、人民のための政治」というやつですね。
| この間にも北軍の進撃は続き、1865年に北軍が南部の首都リッチモンドを陥落させました。
| こうして1865年4月9日、南北戦争は終結します。
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    | 確か、第二次大戦の次にアメリカ人の死傷者が多かったんだっけ。
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         | アメリカ史上最悪の内戦だな。
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| 内戦の終結に騒ぎうかれるアメリカ国民。その僅か一週間後、驚くべきニュースが全米を駆け巡りました。
| 戦争を勝利に導いたリンカーン大統領が、ワシントンのフォード劇場にて射殺された――
| 1865年4月15日、エイブラハム・リンカーンは南部独立派の人間によって暗殺されてしまったんですよ。
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 ※リンカーンが撃たれたのは、4月14日の夜。翌朝の4月15日に死亡確認。
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    | まさに、全米が泣いた!
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         | まるで、自分の役割を終えたみたいな退場ぶりだな。
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| ここでいよいよ本題、リンカーンの4月14日から4月15日にかけての足跡を追っていきましょう。
| 4月14日、南北戦争で北軍を率いて戦った英雄、グラント将軍がワシントンに帰還してきました。
| そこでリンカーンは、彼と一緒にグローバー劇場へ演劇を見に行こうという事になります。
| メンバーは、リンカーンとその妻、グラント将軍とその妻の4人でした。
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  たのしい観劇メンバー
  ・リンカーン(大統領)
  ・メリー(リンカーンの妻)
  ・グラント将軍(南北戦争の英雄)
  ・グラント将軍の妻(グラント将軍の妻)
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    | ほほう。ダブルデートというやつか。
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         | ダブルデート… 心から腐った響きだぜ!!
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| しかし、ここで早くも奇妙な事態が生じます。
| グローバー劇場へ向かう予定が、14日当日になってフォード劇場に変更されたんですよ。
| なぜ、寸前になって行き先が変わったか… いつ、誰が変更させたのかは全くの不明なんです。
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    | 当日の予定変更なんて、普通なら考えられないよな。
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         | 大統領が向かうとなったら、警備も大変だしな。
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| さらに、奇妙な出来事はこれにとどまりません。
| 14日の夕方に4人は集まったのですが、そこへグラント将軍あてのメモが届けられました。
| それに目を通したグラント将軍は、リンカーンにこんな内容の事を告げたんです。
| 「子供に会うため、6時の汽車に乗らなければ。今夜は付き合えません」。
| こうしてグラント夫妻は、リンカーンに同行しなかったんですよ。
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 グラント将軍の行動の奇妙な点
 ・将軍という地位の人間が、大統領との約束をドタキャンするのは人間的にも政治的にも考えられない。
 ・6時の汽車(各駅停車)に乗るより、翌朝に出る汽車(急行)に乗った方が早い。
  つまり、リンカーンとの約束をドタキャンする必要はなかった。
 ・渡されたメモに何が書かれていたのか、全くの不明。
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    | 怪しい、怪しすぎる…
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         | そのメモ、何が書かれてたんだろう…
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| 仕方ないので、リンカーンはラスボーン少佐とその婚約者クララを同行させる事にしました。
| フォード劇場のオーナーは大統領一行を迎え、2階バルコニー席7号と8号に案内します。
| この席は演劇が見やすい絶好の位置にあり… そして、ドアのカギが壊れていました。
| そんな危ないところに、フォード劇場オーナーはわざわざ大統領一行を座らせたんですよ。
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  たのしい観劇メンバー・改
  ・リンカーン(大統領)
  ・メリー(リンカーンの妻)
  ・グラント将軍(南北戦争の英雄) → ラスボーン少佐(グラント将軍の代わり)
  ・グラントの妻(グラントの妻)    → クララ(ラスボーンの婚約者)
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    | フォード劇場のオーナーって、ドアのカギが壊れてた事に気付いてなかったのか?
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         | 当日になって、別の劇場からフォード劇場に変更になったって言ってたよな。
         | なんか… いろんな事を考えさせるな。
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| このドアのブッ壊れた大統領特等席を警護するのは、警官のジョン・パーカー(35)たった一人。
| 彼は素行不良で有名で、職務中に酒を飲んでグダグダになるという超不良警官でした。
| そして実際に演劇が始まると、わずか5分程度で職務放棄。
| 大統領の傍を離れるどころか劇場から出て、隣の酒屋へ行ってしまいます。
| なお、その酒場では、後に登場するジョン・ウィルクス・ブースという男が飲んでいたという証言も。
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    | なんだ、そりゃ…
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         | そんなヤツを、たった一人で大統領警備の任につけたのか…?
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| そして、演劇も佳境に差し掛かった午後10時13分… まあ午後11時17分という説もありますが。
| ジョン・ウィルクス・ブースという南部独立派の男が、リンカーンのいる2階バルコニー席に侵入。
| そのまま至近距離から拳銃を発砲し、無防備だったリンカーンは後頭部に銃弾を受けてしまいます。
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    | ジョン・ウィルクス・ブースって、隣の酒場で目撃されてたんだよな。
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         | つまり、酒場で警備をサボったジョン・パーカーと顔を合わせてた…
         | それから、ブースは劇場へ…
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| すかさずラスボーン少佐はブースにタックルを仕掛けましたが、ナイフで反撃されて軽症を負ってしまいます。
| ブースは「The south is avenged!!(南部の復讐だ!)」と叫び、2階のバルコニー席から階下へジャンプ。
| 着地の衝撃で足を折りつつ、ブースはそのまま劇場の外へ逃走。劇場内は騒然となりました。
| 客の一人がブースを追いかけて劇場の外へ出たところ、用意していた馬に乗って逃げるブースを目撃しています。
| そのままブースは、彼のホームグラウンドである南部方面へ向かって逃走したんですね。
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    | 南北戦争が終わったとはいえ、北部と南部の対立の爪痕は残ってたんだな。
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         | でも、そんなに目撃者が多かったんならすぐに捕まるだろ?
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| これが、犯行の一部始終なんですが… 犯行の時間について、二つの説があるのは奇妙すぎませんか?
| 午後10時13分と午後11時17分、なんと1時間も誤差があり、どちらが真の犯行時刻なのかは不明。
| いかに100年以上前の捜査とはいえ、一国の大統領の暗殺時刻なんですよ?
| それがはっきりしていないというのは、どう考えても異常すぎます。
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    | 確かにそうだな。犯行時刻に異説があるなんて奇妙すぎる…
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         | なんで、犯行時刻が乱立したんだ?
         | もう一つの犯行時刻を捏造した奴がいるのか? それで何か得することでもあったのか?
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| とにかく、実行犯のブースは劇場外へ逃走。
| 後頭部を撃たれて昏睡状態となったリンカーンは近くの民宿に運ばれましたが、もはや手遅れでした。
| 翌朝の午前7時21分、エイブラハム・リンカーンは息を引き取ります。
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    | 偉大な巨人が、この世を去ったんだな。
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         | 南北戦争から、わずか一週間足らず…
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| 大統領狙撃の報が伝わってすぐ、逃走した犯人への捜査が開始されました。
| この超重大事件、捜査の中心となったのはエドウィン・スタントン陸軍長官。
| 当然ながら、最も疑わしいのはリンカーンに深い恨みがある南部関係者でした。
| ゆえに犯人は南の方向に逃げるはず、南部への要路を警戒するのが常道です。
| しかしスタントン陸軍長官は、なぜか北方向への警備を指示したんですよ。
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    | はぁ? スタントン陸軍長官って、アホなのか?
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         | 確かに、対応がマヌケ過ぎるな。
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| ブースが南方へ逃げ去ったであろう真夜中、ようやくスタントン陸軍長官は南部方向への警戒を指示。
| ところでブースは、劇場の多くの者に目撃されています。犯人特定は簡単…のはずでした。
| しかし、ブースが犯人であると正式に確認されたのはなんと5時間後。
| そしてスタントン陸軍長官は「こいつがブースだ! 犯人だ!」と警官達に写真を配ったんですが――
| その写真は、どういう訳かブースではない全くの別人。もう、初動捜査はメタメタ。
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    | スタントン陸軍長官って、ドアホなのか?
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         | ドアホってか… これって…
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| 犯人逮捕が遅れること12日後、警察はようやく犯人一味の潜伏先である牧場を割り出しました。
| 犯人一味という表現を使いましたが、この事件はブースの単独犯じゃなかったんですよ。
| そして、ブースを含む犯人一味が潜伏している牧場の納屋を取り囲む警官隊…
| その中には、実行犯のブースと犯人グループのメンバーであるデービッド・ヘロルドという男がいました。
| 警官隊は、「さっさと出てこないと火を付けるぞ!」とブース達の立てこもる納屋に向けて呼びかけます。
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    | 火をつけるって… 物騒な話だ。
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         | 納屋だし、よく燃えるだろうな。
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| コンガー中佐とベイカー中尉率いる警官隊に取り囲まれ、ヘロルドは観念して出て来ます。
| しかし「納屋を燃やす」と脅されても、ブースは立てこもったまま。
| 仕方ないので、コンガー中佐は納屋の裏手に回り、本当に火を放ちます。
| たちまち火は納屋に広がり、中に立て篭もっているブースの姿が照らし出されました。
| そこへ一発の銃声が響き、その場に倒れ伏すブース。
| 慌ててベイカー中尉が駆け寄るも、彼はすでに死んでいました。
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    | なんと!
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         | 誰だ!? 誰が殺ったんだ!?
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| コンガー中佐に向かい、「なぜ射殺したんですか!?」と詰め寄るベイカー中尉。
| しかしコンガー中佐の返答は、「…え? お前が撃ったんじゃなかったのか?」。
| 結局、ブースは自殺したということでその場を収めます。
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    | いや、自殺って… それでいいのか、おい…
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         | いくらなんでもマズすぎるだろ…
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| しかし、後にブース殺害の容疑者が浮かび上がります。それは、警官隊の中にいたコルベット軍曹。
| 彼はライフルを持ち、ブースが撃たれた時にかなり近い位置にいたんですよ。
| ですが、現場にいた者達は揃って「コルベット軍曹ではありえない」と主張しました。
| 確かに、ブースは警官隊に対して正面を向いていたはずなんですが、弾痕は首の後ろ。
| しかもブースはかなり近くから撃たれたようで、首にヤケドが残っていたんです。
| その位置にいたのは、この場を仕切っていたコンガー中佐… しかし、結局真相は不明のまま。
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    | 犯人自殺で処理しようとした… でも、後になって射殺した男が浮上。
    | でも、実はそいつには物理的に不可能… いったい、どうなってるんだ?
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         | 複数の陰謀が錯綜して、収拾不能になったみたいな感じだな。
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| とにかく、射殺されたブースの死体は納屋から運び出されました。
| その際、へロルドは死体を見るなり「誰だコイツ? これ、ブースじゃないぞ!?」とか言ってますが…
| これ以上事件がややこしくなっても仕方ないので、無かった事にしておきましょう。
| こうしてブースの死体は軍艦に乗せられ、厳重な警備の元にワシントンまで護送されていきました。
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    | 無かった事って、おい!!
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         | ブースじゃなかったら、誰なんだよ!! 本当のブースはどうなったんだよ!!
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| しかし、そこへ現れたのが、かのスタントン陸軍長官。
| 彼はなんとブースの死体を護送している軍艦にボートへ乗り付け、死体を別の場所へ運び去ってしまいます。
| ブースの死体がどこへ運ばれたのかは不明。ブースが身に着けていた衣服などの証拠とかもまとめて消失。
| なお陸軍長官は「ブースの墓が南部の連中の聖地になっちゃ困るので、どこへ埋めたかヒ・ミ・ツ」とコメント。
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    | スタントン陸軍長官って、本物のアホだな。
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         | だからアホっていうか、こいつは――
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| さらにブースの死体を軍艦へ運んだ人(スタントン陸軍長官が絡む前)は、
| 「ブースの所持品の中に日記があった」と主張。しかしスタントン陸軍長官は「そんなもんないよ」と否定。
| かなり後になって、スタントン陸軍長官は「日記はやっぱりあったんだよ」と裁判に提出したのですが――
| そのブースの日記は、リンカーン暗殺前後の24ページ分(18ページ説も)が破り取られていました。
| 当然ながら、スタントン陸軍長官は「元から破れてたんです」と主張しましたが…
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    | スタントン陸軍長官って、国宝級のアホだな。
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         | いや、違うと思うぞ。
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| さて、ブースのゆかいな仲間達も次々に捕まり、裁判にかけられていきました。
| しかしこの裁判は公正なものとは言えず、メアリー・サラットがどの程度事件に関与していたかなど、
| 数々の疑問点を残したんですよね。
| 最大の疑問点は、本当に犯人はこの連中だけだったのか。もっと、裏に大きなものがあったんじゃないか――
| さらに事件から27年もの後、奇妙な事実が浮上したんです。
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 リンカーン暗殺事件の犯人達
  ・デービッド・ヘロルド → 絞首刑
  ・ジョージ・アッツアーロット → 絞首刑
  ・ルイス・パウエル → 絞首刑
  ・メアリー・サラット → 絞首刑
  ・マイケル・オローリン → 終身刑
  ・サミュエル・アーノルド → 終身刑
  ・サミュエル・マッド → 終身刑
  ・エドマン・スパングラー → 懲役6年
  ・ジョン・サラット → 無罪
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    | また奇妙な事実? もう、おなかいっぱい…
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         | この上、まだ何があるってんだ。
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| 暗殺時、バルコニーにはリンカーン夫妻、そしてラスボーン少佐と婚約者クララの4人がいたという事でしたが、
| なんと5人目の人物がいた事が明らかになったんですよ。
| 彼の名はチャールズ・フォーブス。リンカーンの従者であった人物でした。
| 27年間もの間、彼の存在は全く表に出なかったんです。
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  たのしい観劇メンバー・最終版
  ・リンカーン(大統領)
  ・メリー(リンカーンの妻)
  ・グラント将軍(南北戦争の英雄) → ラスボーン少佐(グラント将軍の代わり)
  ・グラントの妻(グラントの妻)    → クララ(ラスボーンの婚約者)
  ・フォーブス(NEW!!)
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    | 実は、第5の人物がいた…!?
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         | 最後の最後に、こんな重要な前提が覆るなんて…
         | これが推理小説なら、読者からお叱りを受けるぞ。
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| なぜ、バルコニー席にてチャールズ・フォーブスの存在が確認されたか… そのいきさつはこうです。
| ハンスコムという雑誌編集長が、ホワイトハウスから受け取ったメモを大統領に届けようとしたんですよ。
| バルコニー席には警備の警官がいたはずなんですが、そいつはとっとと酒屋に消えていました。
| その代わりに、バルコニー席のドアの前に立っていたのがフォーブス。
| そして、ハンスコムはフォーブスにホワイトハウスからのメモを渡したということなんです。
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    | なんと。そのフォーブスが、代わりに警備していたのか?
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         | そんな後になって、こんな話が出るなんて妙じゃないか?
         | ハンスコムとやらが、売名目的で語ったデマのような…
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| ところが、ハンスコムがフォーブスにメモを渡すところを目撃した人物が、2人もいるんですよ。
| その証言が表に出てこなかっただけ。捜査の初期から、すでにその証言は確認されてたんです。
| それを握りつぶし、闇に葬ってしまったのは、おなじみスタントン陸軍長官でした。
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    | ま た お ま え か 。
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         | スタントン陸軍長官、大活躍だな。
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| さて、ホワイトハウスがハンスコムに託し、フォーブスに渡ったという謎のメモ。
| その存在は確認されていませんが、とりあえずハンスコムがフォーブスにメモを渡したというのは事実。
| フォーブスは、そこで何をしていたのか。なぜ彼の存在が抹消され、バルコニーに4人のみという事になったのか。
| そして、そのメモには何が書かれていたのか。
| 事件が全面的に覆りそうなこの一件が浮上した時には、全ての裁判はとっくに終わっていました。
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    | 事件から、27年後の新事実だもんな…
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         | その時には、もう調べようがないか。
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| まだまだ奇怪な謎があります。リンカーンが撃たれたのが14日夜、死亡したのが15日朝なんですが…
| なんと14日の朝には、すでにリンカーン大統領が暗殺されたという噂が広がっていました。
| ミネソタ州やニューハンプシャー州では14日朝からリンカーン大統領が死亡したという噂が囁かれ、
| ニューヨーク州ではなんと14日の新聞朝刊に「リンカーン大統領暗殺」の第一報が載ったんですよ。
| この事実は、いまだにさっぱり解明されない謎として残っていますね。
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    | ハァ? どういうことなんだ、これ…
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         | もう、意味が分かりません…
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| 最後に、今回の講義の登場人物達のその後を追ってみます。
| 一言でいえば、みーんな発狂。みんなみんな、精神病院に逝っちゃいました。
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 ・メリー・リンカーン(リンカーンの妻)
  目の前で夫を殺され発狂。精神病院送りに。

 ・ラスボーン少佐(リンカーンと共に演劇を見に行った人物)
  事件から数年後、発狂。妻のクララ(リンカーン射殺時に同行)を殺害し精神病院送りに。

 ・コルベット軍曹(ブースを射殺したとされる人物)
  事件から数年後、発狂。精神病院送りに。

 ・スタントン長官(例のあの人)
  アメリカ国民から凄まじい批判を受け退職、人前に姿を現さなくなり発狂したと言う噂も。
  その最期には自殺説がある。
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    | ちょっと待て! これおかしいって! 絶対おかしいって!!
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         | 発狂祭りじゃないか…
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| なお暗殺事件の直前、リンカーンは「私の暗殺に関する話を聞いた事がないか?」と側近に訊ねています。
| この事件は、本当に南部の反リンカーン一派のみによるものなのか…
| 事件の背後に、どこまでの闇が広がっていたのか… その多くは、今も解明されないままなのですよ。
| どうだ、モヤモヤしただろう! えぇ!?
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 (,#゚Д゚) ミ━━━━モヤット∧∧━━━━ ∧∧
/\/ ̄つ      三●Д゚,,)      (゚Д゚;)
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    | 痛ッ! なんで俺が!?
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         | こんなひでぇ逆ギレ、初めて見た…
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