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| さて、今回の講義はドイツに視点を戻します。
| 不満の高まるドイツに、国民の期待を集めながら颯爽と出現したヒトラー。
| 彼がいよいよ、ヨーロッパ情勢に対して行動を開始するんですね。
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第44回兵器史・第二次大戦への歩み7(ふゆやすみ特別企画・第二次世界大戦史7)
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| つ ∇ (゚Д゚,,) /_ V/レ'
| |┌─┐ /⊂ ヽ /⊂ ヽ
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| 第7回なのに、まだ第二次大戦が始まらないなんて…
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| シンイチ…
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| まず… ヒトラーの最終的な狙いは、ドイツ人の生存圏の確保でした。
| その為にはソ連のポーランドやチェコスロバキア、ハンガリー辺りの国を総取りし、
| ロシアの大地からロシア人を叩き出すつもりでいたんですよ。
| 東部をまるごとドイツ人のものにする… 実に壮大な理想でした。
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, -'" ̄ヽ 東プロイセン / |
, -'" ̄ ̄ ̄ ̄ヽ | (ドイツ領)/ |
, -'" ̄ ̄ ̄ / ヽ、___/ /
, -'" ̄ ̄ ̄| / /
, -'"ヽ オランダ / | /
海 , -'" "ヽ, / ヽ、 ポーランド /
, -'" ̄"ヽ ベルギー ヽ/ ̄ ドイツ ヽ、 |
 ̄ ̄ "ヽ |ヽ | |
ヽ、 |;;;;|←ラインラント地方 | |
`ー、;;;;;;| (非武装地帯) / / ソヴィエト連邦
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フランス ヽ;;;;| | チェコスロバキア |
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/" スイス ヽ オーストリア / / ヽ
| | _____/ ハンガリー / ヽ
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| つ ∇ (゚Д゚,,) /_ V/レ'
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| ホントに壮大だな…
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| この1933年当時、ドイツの軍備はヘボヘボだった事も忘れてはいけない。
| イギリスやフランスどころか、チェコスロバキアやポーランド相手でも勝利は怪しい…
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| そして、ヒトラーってかドイツはソ連を「社会主義者は人類の敵」として嫌悪していました。
| また、社会主義国家であるソ連も帝国主義が大嫌い。
| 皇帝ってのは労働者が築いた富を吸い上げてしまいますから、資本主義よりタチが悪いとみなしていたんです。
| 両者は互いを「世界人類の敵」として罵り合っていました。
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| 思想的に相容れない存在か。
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| またヒトラーは、最初はイギリスとは手を結んでおくべきと考えていたようだ。
| イギリスとの同盟を維持しながら、東方を我が物にする…
| そして、それからイギリスと決着をつけるというのがヒトラーの考え。
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| さて、夢は大きく軍は小さい、そんなヒトラーのギリギリな綱渡りがいよいよ始まります。
| まずヒトラーは、1933年の10月にドイツ国民に対して「国際連盟を脱退しよう!」と呼びかけました。
| そして、11月には国際連盟を脱退するかどうかの国民投票が行われたんですが…
| 投票率はなんと96%で、うち国連脱退賛成者は95%にも達したんです。
| こうして、ドイツは国際連盟を脱退しました。
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「いかなる対等の権利も与えられないこのような機構の一員として名を連ねる事は、
名誉を重んずる6500万の国民とその政府にとって、耐えがたい屈辱である」
アドルフ・ヒトラー
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| もうドイツ国民も、ヒトラーの政策にノリノリだったんだな。
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| 国際連盟を一方的に脱退したドイツに対して、各国は「遺憾である」とコメントを出しただけ。
| ヴェルサイユ体制がいよいよ崩れ去ったにも関わらず、どの国も動こうとはしなかった。
| この頃から、ヨーロッパには「臭いモノにフタ」姿勢がはびこっていたんだよ、シンイチ。
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| 翌年… 1934年の1月には、ドイツはポーランドと不可侵条約を結びます。
| 「俺は決してお前の国に攻め込まない。だから、お前も絶対に俺の国に攻め込むな」って事ですね。
| 6月には、もはやヒトラーのコントロールが効かなくなった突撃隊が粛清されています。
| こうして、ナチ内部の不安要素は完全に一掃されたといえるでしょう。
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| でも東部にドイツ人生存圏を築きたいヒトラーにとって、ポーランドは第一の敵じゃないのか?
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| ドイツはこの当時、ポーランドとすらまともに戦えるだけの力を持ってなかった。
| とにかく、まずは力を蓄えなければならなかったんだ。
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| 同年の7月、ナチスはオーストリアのドルフス首相を暗殺してしまいます。
| このまま、オーストリアを我が物にしてしまおうと思ったドイツですが… 思わぬところから「待った」が。
| イタリアのムッソリーニが、軍隊を国境に並べて威嚇してきたんです。
| イタリアもオーストリアを狙っていたんですよね。
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海 , -'" "ヽ, / ヽ、 ポーランド /
, -'" ̄"ヽ ベルギー ヽ/ ̄ ドイツ ヽ、 |
 ̄ ̄ "ヽ |ヽ | |
ヽ、 |;;;;|←ラインラント地方 | |
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フランス ヽ;;;;| | チェコスロバキア |
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/" スイス ヽ オーストリア / / ヽ
| | _____/ ハンガリー / ヽ
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ヽ | ヽ、 ヽ、 ヽ、 /
海 `ー--'"ヽ、 イタリア ヽ、 海 ヽ、 ユーゴスラビア ヽ、 /
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| ドイツとイタリアはオーストリアを巡って対立したのか…
| 決して、仲は良くなかったんだな。
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| なお同時期、対ドイツ強硬派だったフランスのルイ・バルトゥー外相が暗殺される。
| これは別にナチスは関わっていなかったんだが、以後はフランスに対独強硬派はいなくなった。
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| そして8月2日には、ドイツのヒンデンブルグ大統領が死去します。
| 国民投票の結果、ヒトラーは首相と大統領の権限を併せ持った「総統」という地位につきました。
| もう、ドイツは完全にヒトラーの思うがままになったんです。
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| 国民投票の結果か…
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| ドイツ人はヒトラーを選んだんだよ、シンイチ。
| ヒトラーは独裁者だが、彼の独裁を許容したのもまたドイツ人なんだ。
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| そして1935年の初頭には、15年前から決まっていたイベントが行われました。
| 第一次大戦前にはドイツが所有していた領地、ザール地方…
| この石炭がザクザク取れる地域は、ヴェルサイユ条約により15年間国際連盟が管理していたんです。
| そして15年が経ったら、ザール地方の住民投票でフランスかドイツのどちらの領土となるか決める…
| そういう約束事になってたんですが、この面倒な時期に15年の期限が切れたんですよね。
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フランス ヽ;;;;| | チェコスロバキア |
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| ほほう。
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| シンイチ…
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| そしてザールでの投票の結果、92%の住民はドイツに帰属する事を望みました。
| こうして、ザール地方はドイツのものとなります。
| フランスは、この成り行きに対して何の文句も言いませんでした。
| もうヘタれきっていて、ドイツに対して譲歩を重ねまくっていたんですね。
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| なんで…? あらかじめ投票で決める事になっていたんなら、フランスが口を挟む余地はないだろ?
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| ドイツはすでに国際連盟を脱退していたんだよ、シンイチ。
| だから、フランスはこの地方の領有権を主張し、投票を無効化できる資格があった。
| しかし、フランスはそれをやろうとはせず、ただ見てるだけだった。
| ドイツを下手に刺激する事を恐れた結果、ドイツが力を付ける事を黙認したんだよ。
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| そして3月、ヒトラーはラジオにて驚くべき発表をします。
| ドイツ軍を縛っていたヴェルサイユ条約軍備制限条項の破棄、徴兵制の復活、ドイツ空軍の創設…
| これがいわゆる、1935年の再軍備宣言ですね。
| こうして強大なドイツ軍の復活が、世界中に宣言されました。
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| とうとう、ヴェルサイユ体制が完全に崩れたんだな。
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| だが、景気良く宣言したはいいものの、やはりドイツ軍はお寒い状態だった。
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| この宣言を聞いたヨーロッパ各国は、一斉に立ち上がる――と言う事はありませんでした。
| 表向きでは、イギリス・フランス・イタリアの3国が対ドイツ共同戦線を発表しましたが…
| どの国でも、これはポーズだけのものだったと言わざるをいません。
| 各国とも、様々な思惑を抱えていたんですよ。
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| あらま。
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| そういうもんだよ、シンイチ。
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| イギリスは、ヨーロッパに2匹の狂犬がいるとみなしていました。
| それは、ドイツとソ連… この2国が潰しあってくれれば、非常に嬉しい成り行きなんです。
| で、どっちが御しやすいか… それは、ヨーロッパ圏内にあるドイツでした。
| ソ連は、得体の知れない社会主義国家。まだドイツの方が道理の通じる相手だと判断したんです。
| このイギリスの認識は、大ハズレだったと後の歴史が証明するんですがね…
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| 結局、イギリスはドイツの再軍備や領土拡張を黙認したって事か。
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| 1935年6月、イギリスとドイツは海軍協定を結ぶ。
| ドイツ海軍の規模はイギリス海軍の35%、ただし潜水艦の保有数はイギリスと同数まで認める…
| これは、イギリスによるドイツ再軍備の事実上の追認だ。
| そしてドイツにとっても、さっき言った通りイギリスは当分のところ仲良くしたい相手だった。
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| フランスは、もうフヌケと化して何もやる気がありません。
| ムッソリーニ率いるイタリアなんぞ、1935年10月にはエチオピアに侵攻。植民地獲得に乗り出します。
| 今のヨーロッパの主敵はドイツ。少々手荒な事をしても、他国は口を挟まない… そういう目論見ですね。
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| 足並みが揃わないとか、そんな生易しい状況じゃないな…
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| 国際連盟はイタリアを侵略国と断定、ユルユルの経済制裁を行う。
| さらに国際連盟によって両国に提示された和平案は、非常にイタリア有利のものだった。
| エチオピアは「そんな案が呑めるか!」と和平案を蹴り、徹底抗戦を決意する。
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| エチオピア軍の主武器は槍や弓矢。これでは流石にどうにもならず、イタリアの快進撃が続きました。
| しかしエチオピア国王の個人的なコネで、イギリスから機関銃などを獲得するとイタリアの侵攻も鈍ります。
| イタリアはとうとう毒ガスや焼夷弾を使い、1936年の5月にはエチオピアを破りました。
| こうして5月8日、ムッソリーニはエチオピアの植民地化を世界に発表します。
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「失業者のための土地を獲得する戦い」
ムッソリーニ、エチオピア戦争について
「エチオピアの門を、カトリックとローマ文明のために開く戦い」
ローマ・カトリック教会、エチオピア戦争について(非公式)
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| おい、板書の下段…
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| そんな事を言ってると、後ろギコの二の舞になるぞシンイチ。
| とにかく、これでイタリアは国際社会から孤立する結果となった。
| なおドイツは、この時にイタリアに兵器を供給している事も忘れちゃいけない。
| 後に語るが、ドイツはこの辺からイタリアを引き込む事を考え初めていたんだ。
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| この乱れに乱れた世界情勢、そしてイギリス・フランスなどのヘタレ対応…
| ヒトラーはこの状況を見て、大きな賭けに乗り出しました。
| それが、非武装地帯であるラインラント地方へのドイツ軍進出。
| この時点でフランスが本気になれば、まだまだ弱小のドイツ軍などひとたまりもありません。
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`ー、;;;;;;| (非武装地帯) / / ソヴィエト連邦
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フランス ヽ;;;;| | チェコスロバキア |
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| ほほう。
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| ドイツの再軍備宣言以来、「ドイツは強大な軍備を保持している」という幻想が各国を支配していた。
| なんせ、第一次大戦で世界を相手に4年も戦った戦闘民族ドイツ人。
| 「ドイツ軍=メチャクチャ強い」の公式は、この時代から健在だった。
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| そういう幻想を巧みに利用し、すでにイギリスと同等の軍備が整っているようなハッタリをかます総統。
| こうして1936年3月7日、ドイツ軍が非武装地域ラインラントに進駐します。
| 「散々ハッタリはかました。大丈夫なはずだ。でもフランスが動けば、ドイツは終わる…」。
| 不安を抱えたヒトラーのバクチは、結果的に大成功でした。
| 非武装地域への進駐という掟破りを目の当たりにしても、フランスは何の動きも見せなかったんです。
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「ラインラント進駐後の48時間は、私の生涯で最も神経を痛めた時だった。
もしフランスがラインラントに兵を進めたなら、わがほうは尻尾を撒いて撤退しなければならなかっただろう。
(中略) 私の不退転の頑張りと冷静さが、ドイツを救ったのだ」
ヒトラー、ラインラント進駐に関して
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| ラインラントってドイツ−フランス国境だろ。
| そんなとこまでドイツ軍が姿を見せ始めたのに、フランスは何もしなかったのか…
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| この大バクチに勝ったヒトラーは、自分の直感を何よりも信じるようになる。
| それが的中していた頃は良かったんだが…
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| しかしイギリスやフランスは、この頃になると流石にドイツの脅威を感じ始めます。
| イギリスはドイツへの態度を硬化し始め、英仏両国はドイツに対抗して軍備拡張を始めました。
| それでもなお、ヨーロッパの盟主たる両国は具体的な行動を行わなかったんですね。
| こうして、ヒトラーはどんどん調子に乗っていく事になります。
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| なんと。
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| しかし流石に、イギリスと同盟関係を結ぶというドイツの望みは実現不可能になってきた。
| そこでドイツは、国際社会から孤立していたイタリアに目を付け始めるんだ…
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| さて、ここでドイツの軍備の話をしましょうか。
| 1934年初頭、当時はまだ首相だったヒトラーが軍の演習を見学に来ます。
| そこで、グデーリアンは自動車化部隊の実験演習を披露しました。
| 先進的なドイツ軍内ですら、異端だったグデーリアンの「電撃戦」理論でしたが…
| それを目の当たりにしたヒトラーは、「これだ! これこそが私の求めていたものだ!」と狂喜しました。
| こうして主流から遠い位置にいたグデーリアンは、余りにも強力な後ろ盾を獲得する事になったんです。
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| で、以後は「電撃戦」理論からなる装甲部隊がドイツ陸軍の根幹になっていったと。
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| まだまだ、それを受け入れられない将軍もいたがな。
| ヒトラーは自身も歩兵経験があるからか、家柄の良い高級参謀の類が嫌いだったようだ。
| その一方、グデーリアンのような実力でのし上がってきた有能な人間にシンパシーを感じていた。
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| こうして、ドイツ戦車がズラリと並ぶ風景が内外にアピールされるようになりました。
| それを見た各国軍の感想は「戦車ばっかりバカみたいに並べて、連中は何を考えとるんだ?」。
| これは他国だけでなく、ドイツ軍内部でもそんな感じが強かったんです。
| 「ヒトラーみたいな成り上がりに取り立てられた若造が、調子に乗って妙な事をやりだした」ってね。
| この5年後には、装甲部隊の恐ろしさが世界中に刻み込まれる事になりますが…
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| ほとんどの人間は笑ってたのか…
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| そういうもんだよ、シンイチ。
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| こんな風に、理論は先進的なドイツ陸軍でしたが… 戦車の性能は非常に頼りないものでした。
| 以前の講義でもやりましたが、I号戦車〜IV号戦車に関してもう一度見ておいてください。
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第32回兵器史・陸戦兵器の歴史3 4/43〜8/43参照
ttp://professorgiko.fc2web.com/kougi44/tank3.html
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| ホア――ッ!! ホア――ッ!!
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| 戦車を重視しようという考えを持つ人はイギリスにもフランスにもいたが…
| 彼等はその異端ゆえに中央を追われ、誰も彼等の話を聞こうとしなかったのさ。
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| ヒトラーが政権を握って以来、ドイツとソ連の協力関係は解消してしまいましたが…
| それでも、軍同士の交流は完全に途絶えたとは言えない状況だったんですよね。
| そしてある日、赤軍のお偉いさんは「後学のため、ドイツ最強の戦車を見せてほしい」と申し出たんです。
| 仲良くやっていた赤軍の頼みなので、ドイツ軍は素直に開発中のIV号戦車を見せました。
| しかし赤軍は、「あのドイツの最強戦車がこんなもののはずがない。連中はウソをついている」と認識。
| IV号戦車が当時のドイツ最強戦車であると信じてもらえなかったとか…
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| ああ、IV号戦車…
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| なにせソ連では、あの鬼戦車T-34を開発中だったからな。
| IV号戦車がオモチャに見えても仕方がない。
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| こんな風に、ドイツはヒトラー総統着任後から戦争初期まで、戦車の数と性能不足に悩まされることになりました。
| 「強大なドイツ陸軍」の幻想も、フタを開けてみればこんな状況だったんです。
| ヨーロッパ各国のどれかが本気で動いていれば、ひとたまりもなかったんですね。
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| 結果論になるが、もっと初期にドイツを叩いておけば第二次大戦は防げたかもしれないんだな。
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| その通り。まあ、過ぎた事をとやかく言っても仕方がない。
| しかし各国は、第二次大戦後にこの教訓を頭に叩き込んだ。
| 膨張の兆しを見せていたフセイン率いるイラクは、こうして湾岸戦争で多国籍軍にボコられたんだ。
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| さて、ドイツ海軍は… 1933〜36年、次々に3隻の最新戦艦が完成していました。
| しかしこれ、ヴェルサイユ条約の軍備制限条項を受けながら建造していたもの。
| 正直ながら戦艦と言えるものではなく、「ポケット戦艦」と言われていますね。
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・「ドイッチュランド」級装甲艦
1930年代にドイツが完成させた、いわゆるポケット戦艦。
ヴェルサイユ条約により排水量1万トン未満、主砲28センチまでという制限を課せられている。
その為に他国の戦艦には対抗できず、通商破壊という任務が主眼となった。
1番艦は「ドイッチュランド」、2番艦は「アドミラル・シェーア」、3番艦は「アドミラル・グラーフ・シュペー」。
なお「ドイッチュランド」は、1940年に「リュッツォウ」と改名されている。
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| 通商破壊… ドイツ名物だな。
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| 派手な交戦は避け、商船を狙い撃ちにして敵国を物資不足に陥らせる…
| 持たざる海軍に許された大技だ。
| その為に開発された、俊足で遠くまで行ける艦が「ドイッチュランド」級。
| 殴り合いだとてんで弱いが、嫌がらせに徹すれば一級品だ。
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| この「ドイッチュランド」級、敵が重巡洋艦以下ならば砲力で勝っています。
| そして敵戦艦と出会ったならば、速力を生かして逃げれば、普通の戦艦では追いつけません。
| 決して強くはありませんが、非常に厄介… イギリスやフランスにしてみれば、凄く嫌な艦だったんです。
| 「ドイッチュランド」級に対抗できるのは、ロイヤルネイビーが所有する一部の巡洋戦艦くらいでした。
| この艦の出現をきっかけに、ヨーロッパではプチ建艦競争が勃発するのですが… それは後ほど。
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| 「強い兵器より、便利な兵器が良い兵器」か…
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| 排水量1万トン未満に制限されれば、まともな戦艦が出来る訳がない。
| そんな開発陣の出した結論が、「ドイッチュランド」級だったんだ。
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| そして、例の再軍備宣言の中で創設が発表されたドイツ空軍…
| その総司令官に就いたのは、ナチ幹部でもあり、ヒトラーの側近でもあり、元エースパイロットでもある男でした。
| 彼の名は、ヘルマン・ゲーリング。第一次大戦におけるエースで、国民からも非常に人気のあった存在。
| そしてナチスにも深く食い込んでいた彼が、新空軍のリーダーとなったんです。
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・ヘルマン・ゲーリング
元エースパイロットであり、ナチスにおける最重要人物の一人。
1935年には新設された空軍の総司令官となり、権力を振るう事になる。
自分で作った賞を自分に授与させたり、ヤク中でラリったりと愉快な一面もあった。
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| なんか、ダメ人間じゃん…
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| まあ、そこは否定しない。
| とにかくナチスの重要人物を空軍のトップにつけることで、軍に対する影響力を強めたんだ。
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| こういう「無敵ドイツ軍」の衣を被りながらも、実際は寒い状況だった新生ドイツ軍…
| その力を振るう機会は、思ったよりも早く訪れます。それが、1936年に勃発したスペイン内戦への介入。
| ここでドイツは、兵器の供給のみでなく正規軍を義勇兵と偽って派兵する事になります。
| 果たして、リニューアルされたドイツ軍の実力は…? ここで、今回の講義を終わりましょう。
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第44回兵器史・第二次大戦への歩み7(ふゆやすみ特別企画・第二次世界大戦史7)
完
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| 次回は、スペイン内戦からか。
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| シンイチ…
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