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| 前回は戦車誕生のあらましまでを解説しました。
| 今回の講義は、初の戦車実戦投入からですね。
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   第31回兵器史・陸戦兵器の歴史2 〜はしれ、たたかうくるま〜
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    | 第一次世界大戦下のイギリスだったな。
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         | サブタイ、なんとかならんのか。
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| 戦車が初めて実戦投入されたのは、「ソンムの戦い」です。
| 1916年の9月15日、例によって膠着する戦線。
| そんなドイツ陣地に、32両もの巨大な鉄の塊が突っ込んできました。
| 余りにも理解を超えた事態に、ドイツ兵達は陣を捨てて逃走してしまいます。
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 ・ソンムの戦い(1916年7月1日〜11月19日)
  フランス北部のソンム河畔で行われた、ドイツ軍に対するイギリス・フランス連合軍の大攻勢。
  イギリスによる戦車の投入で一部のドイツ陣地を落とす事には成功したが、対局に影響は無かった。
  結局、ソンムの戦いは膠着したまま終わる。
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    | おお、大戦果じゃないか。
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         | ところが、同時に幾多の問題点も明らかになったんだ。
         | 用意された49両のうち、10両は戦闘前に故障。
         | さらにドイツ陣地に突入した32両のうち、18両は機械的トラブルでぶっ壊れてる。
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| さて… 前線のドイツ兵の目で見れば、脅威の敵新兵器の出現なんですが…
| それでも、戦局を打開したってほどじゃないんですよ。
| 大きい目で見れば、ドイツ人がびっくりした程度の成果しかなかったわけです。
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    | そんなもんなのか。
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         | 結局のところ、ドイツは「戦車は恐るるに足りず!」って結論を出す。
         | 当時の戦車はスピードも遅く、集中攻撃を受けて共同棺桶と化す事も多かった。
         | 戦車の有効性ってのは、敵味方両方から疑問視される事になったんだ。
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| 最初はパニックに陥っていたドイツ兵も、戦車対策を固めていきます。板書の3つの方法が代表的ですね。
| 1の「手榴弾による肉薄攻撃」ってのは、歩兵が突っ込んで手榴弾を叩き込むって技です。
| 当然ながら、戦車に歩兵が接近しなければならない時点で決死任務。
| 10人が突っ込んで9人が殺られ、残る1人がなんとか戦車を破壊ってのもざら。
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 第一次世界大戦における、ドイツ軍の対戦車戦法
  1.手榴弾による肉薄攻撃
  2.対戦車兵器の開発
  3.野砲の直接射撃
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    | 戦車を1両殺るのに、何人もの歩兵が散るんだな…
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         | 歩兵と戦車のコストから考えれば、得なのか損なのか微妙なとこだがな…
         | ちなみに太平洋戦争における日本兵VSアメリカ戦車で、この方法が多用された。
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| 2に関しては… イギリスの戦車と悪戦苦闘した結果、K弾という小銃弾ならば、戦車の装甲が貫ける事が判明。
| 戦車にK弾をブチ込まれて被害を出したイギリスは、K弾が効かない程の重装甲を備えたMk.IV戦車を開発。
| さらにドイツはMk.IV戦車に対抗して、Mk.IV戦車の装甲をも破れるライフルを開発します。
| こうして、「タンクゲーヴェルM1918」という世界初の対戦車ライフルが登場しました。
| 以後、戦車の発展と共に歩兵携帯用の対戦車兵器も発展していく事になります。
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 第一次世界大戦における、ドイツ軍の対戦車戦法
  1.手榴弾による肉薄攻撃
  2.対戦車兵器の開発
  3.野砲の直接射撃
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    | 早くも、矛と盾の競争が始まったんだな。
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         | この現象を、「兵器のシーソーゲーム」と言う。
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| 3に関しては… 砲兵の扱う野砲を近距離からブチ込めば、戦車を殺れる事が分かったんですよね。
| こうしてドイツでは、一部の砲兵を対戦車部隊として前線歩兵陣地に配備したんですよ。
| 前線の砲兵達は戦車をガンガン狩ったんですが、自分達の被害も増してしまいます。
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 第一次世界大戦における、ドイツ軍の対戦車戦法
  1.手榴弾による肉薄攻撃
  2.対戦車兵器の開発
  3.野砲の直接射撃
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    | 今まで後方からの砲撃支援が主任務だったのに、前線に引っ張り出されたんだからなぁ。
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         | 砲兵とはなんぞや?ってのは、前回の講義を参照。
         | 従来の砲兵の役回りと、ここで新たに出てきた対戦車任務の関わり…
         | この辺を頭に入れとかないと、以後の講義で混乱するぞ。
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| 一応はドイツでも「A7V」という戦車を開発したものの…
| 第一次世界大戦時のドイツは、戦車の運用にあんまり熱意はありませんでした。
| 先程も言ったように、「戦車恐るるに足りず」の風潮があったんですね。
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 ・A7V
  ドイツ初の戦車。実験的な要素も多いだけあって、余りパッとしない。
  イギリスMk-Iの装甲12mmに対し30mmの装甲を誇るが、その分重い。
  その形状から、塹壕を超える能力が致命的に低かった。
  「重装甲車両」というよりも、「移動要塞」といった方がしっくりくる。

ttp://mailer.fsu.edu/~akirk/tanks/ww1/a7v5.gif
ttp://mailer.fsu.edu/~akirk/tanks/ww1/A7V-diagram.jpg
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    | 戦車を軽視してたのか…
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         | 軽視っていうより、この当時の戦車は実際にそこまで恐ろしいもんじゃなかった。
         | ドイツは戦車の必要性を感じていなかったし、対戦車戦用の手段も確立されてたんだ。
         | ドイツが見逃していたのは、戦車という微妙な兵器の途方もない発展性だったんだよ。
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| では、第一次世界大戦でイギリスと同盟国だったフランスはどうだったかと言うと…
| おフランスも、独自に戦車を開発していました。
| 決してイギリスの戦車をパクった訳ではなく、たまたま同じ結論に達したって事ですね。
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 ・シュナイダー突撃戦車
  フランス初の戦車。イギリスを真似た訳ではなく、同時期に計画が始まっている。
  性能はイギリスの菱形戦車より良かったものの、機械的トラブルが続発して自爆が相次いだ。

ttp://www.chars-francais.net/images/archives/schneider/ca1-0026.jpg
ttp://www.chars-francais.net/images/archives/schneider/ca1-0006.jpg
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    | イギリス、ドイツ、フランスと来て… アメリカは?
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         | 戦車開発に関して、アメリカは完全に後手に回っていたんだ。
         | 第一次世界大戦の途中に援軍として駆けつけるんだが、その時は英仏の戦車を借りた。
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| ところで… 「戦車と砲兵って役割がカブらないか?」って疑問もあるかもしれませんね。
| 砲兵ってのは、前線じゃなくて後方から敵陣地へ大砲をブチかます役割なんですよ。
| それと違い、戦車は塹壕を乗り越えて敵陣へ突入。
| さらに搭載している砲や機関銃を乱射し、敵兵や機関銃座を片っ端からふっ飛ばす…
| 結果的に、味方歩兵の突撃を助ける事になります。
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 戦車:塹壕を乗り越え、前線で歩兵を支援。
 砲兵:後方からの砲撃で歩兵を支援。
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    | 要は、前線で歩兵を支援するか、後方で歩兵を支援するかの違いか。
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         | まあ、極論すればそうなるな。
         | 第一次世界大戦時の戦車の仕事は、「塹壕を越える」+「歩兵の支援」。
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| そして1917年11月20日、カンプレーでイギリスは476両もの戦車を投入した奇襲作戦を行います。
| これにより、ドイツの塹壕防御線を破ったんですが… その戦闘において妙な出来事が。
| フレスキエルという村落で、ドイツ軍により30両以上もの戦車が破壊されたんです。
| そして、ドイツ軍のたった1人の下士官が16両もの戦車を破壊したという噂が囁かれ始めました。
| 「フレスキエルの砲手」と呼ばれた、このドイツ軍下士官の正体とは…!?
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 ・フレスキエルの砲手
   フレスキエルという村落での戦いにおいて、戦車の損害が異常に多かった事から囁かれた噂。
   その実は、イギリス側の戦車群と歩兵群が分離した為、戦車群が集中砲火を浴びたに過ぎなかった。
   つまり「フレスキエルの砲手」など存在せず、イギリス側の戦術ミスによる大損害である。
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    | 戦車と歩兵が分離すると、マズいのか…?
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         | 戦車の突破力は凄まじいんだが、狭い機械に篭っている分、周囲への警戒力は劣るんだ。
         | そこは歩兵がカバーして、戦車にダメージを与えられそうな火砲はすかさず潰さなきゃならない。
         | フレスキエルではそれが出来ず、戦車群はドイツ側の集中砲火を浴びたんだ。
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| 戦車には歩兵が随伴しなければいけないって事が、この一件で明らかになったんですが…
| この段階でそれを重視し、ただちに戦術面で活用した者はいませんでした。
| しかし第一次世界大戦後に一部の軍人がこの事例に関心を寄せ、そして電撃戦の礎が生まれるんです。
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    | 電撃戦…?
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         | 第二次世界大戦時に、ドイツ機甲部隊が繰り出した機甲戦術。
         | まあ、かなり後の話だな。用語だけは覚えておいても損は無い。
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| さて… ここで先程の、ドイツが前線に一部砲兵を投入した話を思い出して下さい。
| フレスキエルで、イギリス側は戦車と歩兵を分離させるというミスを犯してしまいました。
| ドイツ側の砲兵から見れば、敵歩兵に邪魔されずにじっくりと敵戦車に照準を合わせられる事になります。
| 接近戦に弱い砲兵にとって、非常に美味しい状況だったんですよ。
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 第一次世界大戦における、ドイツ軍の対戦車戦法
 1.手榴弾による肉薄攻撃
 2.対戦車兵器の開発
 3.野砲の直接射撃
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    | なるほど… そういう事情で、フレスキエルの砲手という伝説が生まれたんだな。
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         | そういう事。15台以上の戦車を破壊したドイツ下士官なんて存在しなかったんだ。
         | この一件で、ドイツにおける「戦車恐るるに足りず」という風潮は加速する。
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| そして第一次世界大戦が長引く中、イギリスでの戦車運用思想は1歩前進。
| 戦車を軽戦車と重戦車の二種類に分け、それぞれ違う役割を果たせようという考え方が登場します。
| それに従って2種類の戦車が誕生、重戦車のMk.Vと軽戦車(当初の名称は中戦車)のMk.Aでした。
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 ・重戦車:読んで字の如く、重装甲・重武装の戦車。その分、機動性を犠牲にしている。
       従来のように塹壕を突破し、歩兵を支援する役割が主。
 ・軽戦車:重戦車に比べ、軽装甲・軽武装だが機動性が高い。
       重戦車が敵陣を切り開き、軽戦車が高速を活かして追撃戦を行うという戦術を想定。
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    | 攻防に優れるがスピードは遅い重戦車と、速度は速いが攻防はやや頼りない軽戦車だな。
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         | 平たく言えば、そういうことだな。
         | 一般に兵器ってのは、平均的な性能を持たせるより目的特化型の方が効果的だ。
         | だが柔軟な対処が出来なくなったりと、それはそれでマズい一面もあるが。
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| 同時期のフランスでは、自動車メーカーであるルノー社が非常に優秀な軽戦車を開発します。
| 「イギリスで流行ってるみたいだけど、軽戦車なんて興味ネーヨ」と言っていたフランス陸軍上層部も、
| その高性能振りを目にした途端メロメロに。
| また、無限軌道に全周旋回式砲塔を搭載… つまり、現在の戦車の形状の基礎となった戦車です。
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 ・ルノーFT17軽戦車
  フランスのルノー社が開発した優良な軽戦車。
  最初は機関銃を搭載していたが、後に砲搭載型がメインとなった。
  この戦車を量産する為、今までのフランス戦車は全て量産が中止されている。
  第1次世界大戦後は15カ国以上の国に輸出され、各国の戦車開発の礎となった。

ttp://www.chars-francais.net/images/archives/ft17_8mm/ft17-1_053.jpg
ttp://www.chars-francais.net/images/archives/ft17_8mm/ft17-1_003.jpg
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    | 今までと違い、戦車っぽい戦車だな。
    | どこの国も、みんなこの形状をマネするようになったのか。
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         | まあ、この戦車が登場した途端にこぞって模倣したって訳じゃないんだがな。
         | 試行錯誤しているうちに、どこの国の戦車もこの形状に落ち着いたといった感じだ。
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| そして1918年の8月8日、アミアン攻勢でドイツは大敗北を喫してしまいます。
| イギリスの戦車が大量に投入され、大活躍したんですよね。
| この時にようやく、ドイツは「戦車はスゲェ!!」と気付きます。
| しかし、この時期になるとドイツの敗北は明白。余りにも遅すぎましたね…
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 ・アミアン攻勢(1918年8月8日)
  アミアンで行われた連合軍VSドイツの戦い。
  勢いに乗った連合軍が投入した戦車の前に、ドイツ軍は大きな被害を出す。
  「ドイツ陸軍暗黒の日」と呼ばれ、ドイツ軍内の戦車軽視思想は消滅した。
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    | せっかくドイツが悟ったのに、無駄になったんだな。
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         | そんな事はない。次の戦争の為に。次の次の戦争の為に…
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| そしてドイツが敗北し、第一次世界大戦が終わります。
| ドイツは連合国にベルサイユ条約を結ばされ、軍組織に多大な制限が掛けられました。
| もう、二度とドイツがヨーロッパの平安を乱さないように…ってね。
| ドイツ封じ込めとかソ連隔離とかによる第一次世界大戦後の欧州国際秩序を、ベルサイユ体制と呼びます。
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 ・ドイツが受けた軍備制限
   毒ガス、空軍、戦車、潜水艦の保有・開発の禁止。
   陸軍の兵力は10万人以下。将校の定員数と服務年限の設定。
   歩兵師団は7個、騎兵師団は3個まで。保有する大砲は77mmと105mmのみで、総数や貯蔵弾数も制限。
   徴兵制の禁止。参謀本部、陸軍大学の廃止。要塞施設の破壊。
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    | 戦車もダメになったのか…
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         | なお以降の講義は、必然的にドイツが主役になってしまう。
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| こうして1919年、幾多の不安要素を抱えつつもヨーロッパに平和が訪れたといってよいでしょう。
| 第二次世界大戦が始まる1939年までの20年間を、以後の講義では「戦間期」と呼称します。
| では、この戦間期の各国の戦車運用を見てみましょう。
| なおこの期間は平和の到来により、各国の軍事予算がのきなみ縮小された事は覚えておいて下さい。
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    | やっぱり、平和な世の中では軍隊なんて邪魔なんだな。
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         | 戦車の運用や種類は、この時期から国によって様々な特色を見せ始める。
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| まずは、戦車発祥の国であるイギリス。
| 軽戦車と重戦車の思想が、「巡航戦車」と「歩兵戦車」に発展していきます。
| そしてこの2種類の戦車を携え、イギリスは第二次世界大戦に突入し… こっぴどい目に合いました。
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 巡航戦車:軽戦車の(思想的)発展系で、下の歩兵戦車より比較的軽装甲。
        軽量であるが故の速度性能を生かして、偵察等の任務を行う。
 歩兵戦車:重戦車の(思想的)発展系。巡航戦車よりも鈍重な分、防御力が高い。
        従来の戦車のように、前線にて歩兵の支援を行う。
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    | 結局は、第一次世界大戦時の軽戦車・重戦車とほとんど変わらないな。
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         | つまり、第一次世界大戦時の思想のままで二次大戦に突入してしまったんだ。
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| 次に、FT-17という近代戦車の基本形を作り上げたフランス。
| 「巡航戦車」や「歩兵戦車」という名前こそありませんが、基本的な運用思想はイギリスといっしょ。
| 軽量で機動性を重視した軽戦車と、重装備・重装甲で歩兵支援を目的とした重戦車ですね。
| フランス戦車の性能は優れていたのですが、運用思想はやはり第一次世界大戦から抜け出なかったんです。
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    | モノは良かったのに、考え方が古かったんだな。
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         | 第一次世界大戦から抜け出せなかったのは、戦車運用だけじゃない。
         | 軍事思想そのものが、フランスでは完全に硬直してたんだ。
         | 第一次世界大戦における「防御優勢」の常識を、ずっと盲信してたんだよ。
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| 結局のところイギリス・フランス、そして世界中ほとんどの国は、第一次大戦時の戦車運用を引きずってました。
| つまり、戦車を歩兵支援用の「前線移動砲台」だと考えていたんです。
| 敵陣へ突撃していく歩兵の群れ。その中に分散して配置され、同じく敵陣へ突っ込んでいく戦車。
| 戦車の砲や機銃が敵兵を吹き飛ばし、敵陣を破壊する… そんな風景が頭にこびりついていたんですよ。
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    | つまり第一次世界大戦時の戦車は、「前線移動砲台」に過ぎなかったと。
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         | その通り。そして、イギリスとフランスはその思想から脱却できなかった。
         | …ってか、現代の日本でも「戦車=移動砲台」と思ってる人が大部分だろうが。
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| では、アメリカはどうでしょうか。
| 第一次大戦で英仏ほど戦車運用経験がなかったアメリカは、両国のような固定観念にハマりはしませんでした。
| 歩兵支援という任務はおいといて、戦車だけを集めた「戦車部隊」を結成してみたんですよ。
| これはイギリス・フランスよりは正解に近かったんですが、それでもやっぱり間違いでした。
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    | どこが間違ってたんだ?
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         | それは、非常に重要な事なんで後でゆっくりと講義する。
         | まあここまでの講義をしっかり理解している受講者なら、見当は付くだろうが。
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| ちなみに我等が日本はと言うと… 戦車の導入自体は、非常に素早いものでした。
| しかし戦車運用思想においては「戦車=歩兵支援=移動砲台」の道をひた走ります。
| さらに戦車の性能においては「海外への輸送」という要因に縛られ、大いに制限されました。
| ここら辺の経緯は、第十一回兵器史「チハ」でやりましたね。
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    | あの時は、「対戦車戦闘が考慮されてない戦車」ってのが非常に奇異に感じたけど…
    | 戦車ってのは、第一次世界大戦においてはそういうものじゃなかったんだな。
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         | 結局、日本は戦車運用思想ではイギリス・フランスと同じミスをやっちまった。
         | 戦車はあくまで歩兵支援の道具だったからこそ、対戦車戦闘は眼中に無かったんだ。
         | その結果、対アメリカ戦で非常に悲惨な事態を引き起こした…
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| そして、残るはドイツとソ連…
| では、軍備に大幅な制限を受けてからのドイツを見てみましょう。
| ドイツは戦車の開発を禁じられていましたが、いつまでもその制限に甘んじるつもりはありませんでした。
| ベルサイユ条約なんぞ、ドイツ人にとっては勝者どもの理不尽な押し付け。
| ドイツは、ベルサイユ体制成立直後から早くも再軍備に向けて極秘裏に動き出します。
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 1919年:ベルサイユ条約締結
 1933年:ヒトラーによるドイツ再軍備宣言
 1939年:第二次世界大戦勃発
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    | つまり、全然ヘコたれてなかったと。
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         | 1933年にアドルフ・ヒトラーがドイツ再軍備宣言をやらかすんだが…
         | ヒトラーが関わる前から、ドイツは再軍備に向けて水面下で動いていたんだよ。
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| そしてドイツは、第一次大戦における敗戦の原因を「戦車」に求めました。
| 「我が軍が負けたのは、我々にまともな戦車が無かったせいだ」ってね。
| 実際の話、戦車の有り無しに関係無くドイツは負けてたんですが…
| とにかくドイツは、次の戦争では戦車という存在が重要なファクターになると確信します。
| 戦車ってのが単なる歩兵支援兵器だった時代に、ドイツはそういう結論に至ったんですよ。
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    | じゃあ、イギリスやフランスは戦車を余り重要な存在とみなしてなかったって事か?
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         | 講義で述べた通り、第一次世界大戦における戦車の活躍はさほど大きいものじゃなかった。
         | 便利な兵器である事は確かだが、陸戦の主役なんてとてもとても…ってとこだな。
         | 皮肉な事に、戦車を実際に運用したイギリス・フランスではなく、
         | 戦車と真っ向から戦ったドイツ側が、その潜在性に気付いたんだ。
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| しかし、ドイツは戦車の開発を禁じられていました。そこで目を付けたのが、国際社会から孤立していたソ連。
| 苦しい立場の者同士が接近し、軍事同盟を極秘裏に結んだんです。
| ドイツはソ連領地内で戦車の開発や生産、訓練を行い…
| ソ連はドイツから優れた軍事技術を学び、卓越した戦闘センスが生み出す戦闘思想を教わる。
| 完全なギブ・アンド・テイクが成り立っていたんですね。
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 ・ラッパロ秘密協定(1922年)
  ドイツとソ連の間で結ばれた秘密協定。
  これによりドイツ士官は旅行者という名目でソ連に入り、ソ連兵士を指導。
  その見返りとして、ドイツ軍はソ連内の演習場や研究施設を使用できた。
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    | ドイツとソ連って、第二次世界大戦で激突したんじゃなかったっけ?
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         | 第二次世界大戦初期までは、紆余曲折ありつつも仲が良かったみたいな感じだ。
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| そしてドイツに、画期的な理論を携えた1人の軍人が登場します。彼の名は、ハインツ・グデーリアン。
| 彼は、「戦車の集中運用」という戦術・戦略思想を唱えたんですよ。
| 後にグデーリアンは、「ドイツ装甲部隊の父」と呼ばれる事になります。
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    | 「戦車の集中運用」…? アメリカがやった、戦車部隊の創設とどこが違うんだ?
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         | アメリカの「戦車部隊」ってのは、言葉の通り戦車だけの部隊だ。
         | だが、戦車だけを集めるのもまた間違いなんだよ。
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| 戦車ってのは… 突破力は凄まじいですが、防御に回ると脆いという一面があるんですよ。
| 当然ながら戦車の装甲は凄まじいものですが、ドイツは対戦車兵器や野砲を駆使して幾多の戦車を狩ってます。
| 戦車群と歩兵群が分離してしまい、大被害を出した「フレスキエルの砲手」の話を思い出して下さい。
| 邪魔をする敵歩兵がいないおかげで、ドイツ砲兵は突っ込んでくる敵戦車を余裕を持って狙い撃ちできました。
| つまり、戦車のみの単独運用は非常に危険なんですよ。
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 第一次世界大戦における、ドイツ軍の対戦車戦法
 1.手榴弾による肉薄攻撃
 2.対戦車兵器の開発
 3.野砲の直接射撃
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    | なるほど。戦車と歩兵が離れるとヤバい事は、実証されてたんだな。
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         | 戦車は視界が狭いから、対戦車兵器には非常に対処しにくい。
         | そういうのは、歩兵にぶっ壊してもらった方が助かるんだ。
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| そこでグデーリアンは、「戦車は歩兵を支援する」という常識を逆転させたんですよ。
| 戦車を主力として集中運用し、その凄まじい突破力を生かして敵陣を粉砕。
| そして、その戦車の突撃を支援して対戦車兵器の破壊などを担当するのが歩兵。
| 「歩兵が戦車を支援する」という新しい運用思想… それが、「電撃戦」なんです。
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 ・グデーリアンの電撃戦理論
   戦車:前線移動砲台  → 機動戦・運動戦を行う為の主力
   歩兵:敵陣制圧の主力→ 戦車の支援
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    | 戦車が主兵力で、歩兵がその支援か… 第一次大戦型の戦車運用思想と全く逆だな。
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         | 「電撃戦」の重要なところは、「戦車主・歩兵従」での混成部隊の存在。
         | 「歩兵主・戦車従」でもないし、「戦車単独」でもないんだ。
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| 必然的に、「歩兵」と「戦車」という移動スピードが異なる者同士が混成される訳ですが…
| 当時の戦車でも時速30kmは出るので、歩兵が追いつくのは不可能。
| かといって戦車が歩兵の移動スピードに合わせれば、戦車の最大武器である突破力が死んでしまいます。
| なんとしても歩兵は戦車に追いついて貰わなければ、「電撃戦」自体が机上の空論になってしまいますね。
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    | 戦車って、以外に速いんだな。
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         | 戦車を鈍重だと思ってる者も多いが、現代の戦車だと時速50〜70kmは出るぞ。
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| こうして、戦車の移動速度に追いつける歩兵… 「機械化歩兵」が出現します。
| 機械化歩兵というのは「ナチスの科学力は世界一ィィィィ」と叫ぶあの人の同類ではなく、車に乗った歩兵のこと。
| 行軍時は戦車に追随して車で移動。いざ戦闘となると下車し、戦車を支援して戦うんですね。
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    | 機械化歩兵… 夢が広がりんぐなネーミングだな。
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         | 結局のところ、機械化歩兵とは戦車に追随できる歩兵なんだ。
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| 戦車、機械化歩兵、機械化砲兵などを混成した装甲部隊…
| グデーリアンは、この機械化混成部隊の必要性を訴えたんですよ。
| 歩兵や砲兵などのあらゆる兵科が戦車と同じスピードで移動でき、それらを1つの部隊として運用する事。
| これが「電撃戦」のポイントであり、「戦車の集中運用」っていう意味なんです。
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  機械化砲兵に関しては、次回。
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    | 単に、戦車を集めて部隊を作っただけじゃなかったんだな。
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         | 何度も言うが、戦車を中心とした「兵科混成」という点がポイント。
         | この「電撃戦」は、第二次世界大戦において猛威を振るう事になる。
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| まあ、これでも電撃戦には幾つか要素が足りないんですが… そこら辺は次回にやりましょう。
| しかし当時のドイツでも、グデーリアンの「電撃戦」理論に反対する者が大部分でした。
| 普通ならこのまま潰されていたであろうグデーリアンの理論を大いに評価し、彼を後押しした人物…
| それは世界で最も有名な独裁者、アドルフ・ヒトラーでした。
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 「これだ! これこそ私の欲しかったものだ!!」
          ヒトラー、グデーリアンが行った演習を見学して
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    | なんと、あのヒトラーが。
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         | イギリスやフランスにも、「戦車の集中運用」って考えを持った者は少数ながら存在したが…
         | それらの意見は一笑に付され、各国陸軍に反映される事は無かった。
         | グデーリアンも同じ道を歩むところだったが、ヒトラーにその理論の先進性を認められたんだ。
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| ヒトラーがドイツ再軍備宣言を行った翌年に、ソ連との秘密協力関係も解消されます。
| ソ連軍が、ドイツ士官の指導の下で得たものは非常に大きかったんですが…
| ソ連の指導者スターリンが軍部の重要人物の首をトバしまくり、まともな用兵理論を学んだ者が全滅。
| この大粛清によって、ソ連の戦車運用も含めた軍事思想は一気に後退します。
| ソ連軍はこのまま第二次世界大戦に突入し、ドイツ軍と相対する事になるんですね。
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 ・戦間期のソ連陸軍の歩み
  ドイツに匹敵する(上回る?)機甲部隊 → (陸軍幹部粛清) → 戦車は歩兵の支援兵器に
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    | 見事に、第一次世界大戦の思想に逆戻りだな。
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         | 特に、「赤いナポレオン」と呼ばれたトハチェフスキー元帥が処刑されたのは大きかった。
         | 陸戦理論なら世界でもトップクラスの人物だったんだがな。
         | 彼を失ったことにより、ソ連陸軍は何年も立ち遅れたと言っても過言じゃない。
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| 結局のところ、戦間期の戦車運用思想に関してはドイツだけが何歩も先を行っていました。
| そして1939年、とうとう第二次世界大戦が勃発します。
| そこで見せたドイツの電撃戦の凄まじさに、世界は驚愕するのですが… 今回の講義はここまで。
| 次回は、第二次世界大戦における戦闘車両の発展について講義します。
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   第31回兵器史・陸戦兵器の歴史2 〜はしれ、たたかうくるま〜

                     完
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    | 今回は、難し目の講義だったな。
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         | 前回講義の兵科のところをしっかり理解しないと、かなり苦しいかもしれない。
         | これでも、相当に噛み砕いたつもりなんだがな…
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