/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| 第1回目の講義は、音速について。
| なお収録にあたり、いろいろ書き直している部分がありますよ。
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  第1回兵器史・X-1 〜音速への挑戦〜
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    | そのまま講義録に収録はされないのか?
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         | 適宜、過去の講義も更新していくみたいだな。
         | 特に第1回目は、批判講義(抗議)でもあった訳だし。
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| 音速というのは、知っての通り『音』が空気中を伝わる早さの事ですね。
| そして『音』というのは、空気の状態によって伝わる速度が違うんですよ。
| 具体的に言えば、空気の温度が高いときほど早く伝わるんです。
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 ・音速
  音が空気中を伝わる早さ。
  温度が高いときほど早く、温度が低いときほど遅く伝わる。
  これにより、音速は空気の温度によって変動する。

   a=340.3√(273+t/288) a:音速(m/秒) t:温度(摂氏)
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     | 換算式は暗記する必要は無いよな…
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           | 空気の温度って… 高度によっても違ってくるんじゃなかったっけ?
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| 学生ギコB君、良い疑問です。温度というのは、高度1000mにつき6.5℃ずつ下がっていくんですね。
| 航空機ってのは当然高いところを飛ぶ訳ですから、この事実が重要になってくるんです。
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 地上&気温15℃の時、音速は約340m/秒(1224km/時)
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     | つまり、通常の環境だと音速ってのは時速1224kmか。
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         | ややこしいな。
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| そして、航空機と音速との速度比を表す単位がマッハ。
| 例えばマッハ1.2ならば、音速の120%の速度が出ている事を表します。
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 ・マッハ
  航空機の速度と音速との速度比。
  エルンスト・マッハ教授の名にちなんで命名された。
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     | そういう訳で、マッハ1=音速なんだな。
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           | 本職のパイロットはマックと発音するぞ。
           | 素人がマネると、逆にカッコ悪いけど…
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| そして航空機が音速付近に達すると、とてつもない異常が機体を襲ったんですよ。
| これのせいで、人類は長い間音速を超えられませんでした。
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 ・航空機が音速に近付くと、空気が圧縮される事により、前面に圧力波が発生。
   →その影響で、機体が振動(フラッター)を起こし操縦不能に。
     機体の強度が耐えられない場合、そのまま空中分解。
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     | 第二次世界大戦時の航空機だと、機体の強度が持たなかったんだな…
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           | だから、あの当時の航空機じゃ音速超えは無理だったのか。
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| そして第二次世界大戦時は、航空機で音速を超える事は物理的に不可能では無いか?
| …という意見も強かったんです。
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 ・音の障壁(サウンド・バリヤー)
  上で板書した理由により、航空機が音速に近付くと様々な問題が発生した。
  これを壁になぞらえて、『音の障壁』と呼ばれる。
  1943年くらいまでは、この『音の障壁』により超音速飛行は不可能と言われていた。
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     | この場合の『音の障壁』って言葉は、越えられないって意味の比喩だな。
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           | その不可能が覆されるのは、終戦後すぐなんだよな…
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| そして、『1947年のX-1より先に、○○が音速を超えていた』って話はゴロゴロしてるんですよね。
| 中でも有名なメッサーシュミットMe262が音速を超えたってのは、明らかにホラ話です。
| 結論を言えば、第二次世界大戦時の航空機で音速を超える事は構造的に不可能なんですよ。
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     | 飛燕も、音速を超えたって類の話があったなぁ…
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         | そういうもんか。
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| では、少し休憩…… ううッ!?
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     | ん…? どうしたんだ?
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           | 今回の講義は、ずっとまともモードだったからな。いつものアレが来るんだろ。
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  │               ツ

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  私の好きな音

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     | …って! おいおい、また古いネタだなッ!!
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           | めちゃくちゃ久し振りだ…
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| さてここで、『第二次世界大戦時の航空機で音速を超える事は構造的に不可能』という点に関して、
| 異論が寄せられました。ここでは私見を述べておきます。
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    | うおっ、いきなり戻った!?
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         | 怖ッ!?
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| フローチャートにすると、こういう感じですね。
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 ・音速突破への道

   1.音速に近付くほどプロペラが無力化していくので、推進力が足りない…
                ↓
   2.なんとか気合で推進力UP! これで音速を突破できるぜ!!
                ↓
   3.…と思ったら、機体がバラバラになっちまった〜!!
                ↓
   4.なんとか気合で機体強度UP!
                ↓
  ,__        ☆音速突破☆
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     | 推進力をクリアしたとしても、機体強度が最後の砦になってくるわけか…
    \____              ∧
          / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
           | それをクリアして、やっと音速突破なんだな。
          \__________________________


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| そして、第二次世界大戦中の話に戻るんですが…
| ダイブ(急降下)状態に限っては、この推進力に関する問題はクリアできたと見て良いと思います。
| 先の講義で説明したスピットファイアの急降下においても、
| 推力不足よりむしろフラッター(振動)の方が問題になってましたし。
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  物体が音速に近付けば、その周囲の空気が剥がれ落ちていく。
  プロペラの回転についても同様の事がいえ、速度が速くなれば速くなるほどプロペラは無力化していく。
  問題のスピットファイアの場合は、急降下による自由落下により推力をプラスさせていた。
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     | つまり、上のチャートで3の段階まで行ってたと。
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           | 自由落下で推力不足を補ったって形になる訳か。
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| 第二次世界大戦中の音速突破に関する話はしばしば議論になるんですが…
| 究極的には、機体強度の問題に帰結すると思いますねぇ。
| 逆に言えば… 機体強度さえ何とかなっていれば、音速突破できたのではないか?って事です。
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     | 実際、議論になるって事は様々な見解があるって事だからなぁ…
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           | ここら辺をどう捉えるかは、論者によって異なる、と。
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| さて、ここまでに音速を超える事についての難解性を解説しました。
| そんな1943年に、NACA・アメリカ陸軍・アメリカ海軍が合同で超音速機の開発をスタートします。
| そのプロジェクトが政府に承認されたのは、翌年の1944年でした。
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  1943年:NACA(後のNASA)・米陸軍・米海軍の合同で、超音速機の開発を開始。
  1944年:超音速機プロジェクトが正式に承認、予算が下りる。
  1945年:ベル社(一流航空機メーカー)と契約。
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    | 1943年… 戦時中だな。
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         | この頃は、まだアメリカ空軍はなかったんだよな。
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| そして戦争も終わった1945年12月27日、紆余曲折の末にXS-1の1号機が完成しました。
| この際に開発者達は、ライフル弾は音速を超えている事に着目します。
| 銃弾型の機体にハネを生やしたら音速突破だぜAHAHAHAHAHAHA!という、なんともアメリカンな機体でした。
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 ・XS-1
  ベル社の作成した、世界初の超音速突破実験機。銃弾のような形状に、ロケットエンジンを搭載している。
  機体は従来の航空機と同じくアルミ合金だが、機体形状により圧力波の影響を受けにくい。
  自分では離陸できない為、B-29に吊り下げられて高空で発進するという形態を取った。
  なお、脱出装置は用意されていない。
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    | 1945年12月… 本当に終戦直後だな。
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         | XS-1? 初めて音速を突破したのって、X-1じゃないのか…?
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| XS-1とX-1は同一の機体。1948年に改名されたんですが… この講義では以後X-1と呼称します。
| では、その外観を確認してみてください。NASAの公式サイトへのリンクです。
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X-1 in 空
X-1と愉快なアメリカン達
X-1、B-29にコバンザメ
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    | 本当に、弾丸にハネを取り付けただけみたいな外観だな。
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         | 音速突破だけを目的に作られた実験機だからな…
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| 次に動画を見ていただきましょう。これもNASAの公式サイトから。
| そのままクリックすると途切れ途切れになりますので、右クリックしてから「対象をファイルに保存」をお勧めします。
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X-1、おおぞらをとぶ
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    | なお、動画閲覧にはQuickTimeが必要だぞ。
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         | おお、飛んでる。
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| このX-1は様々な試験をクリアし、2号機も完成し…
| そして1947年10月14日。航空史に残る日がやってきました。
| テストパイロットはチャック・イェーガー。人類で初めて超音速の世界を体験する事になる男です。
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    | いよいよ、マッハの壁を破る時がやって来たのか。
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         | X-1の存在は、重要機密だったみたいだな。
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| しかしチャック・イェーガーはこの前日にうかれて酒をガブ飲みし、馬に乗って走り回ったあげくに落馬。
| 肋骨を2本骨折してしまいます。当然、彼はそれを隠して飛行試験に臨みました。
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    | さすが陽気なアメリカン。
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         | これだからメリケンは…
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| そしてチャック・イェーガーは、『GLAMOROUS GLENNIS』と機種に書かれたX-1に乗り込みました。
| グレニス(GLENNIS)とは妻の名で、彼は愛妻家だったんですね。
| 彼は肋骨を折っていたので前かがみになる事が出来ず、モップの柄を使ってX-1の搭乗口を閉めたそうです。
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    | 本当に大丈夫か、チャック・イェーガー…
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         | ケガしてるのバレたら、テストパイロットの座を降ろされるだろうからな。
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| こうして彼の乗ったX-1はB-29によって高空(高度6100m)まで上げられ、その高度から発進します。
| そして10時29分、彼の乗ったX-1の速度計の針が振り切れてしまいました。
| この速度計は、マッハ1が上限だったんです。こうしてX-1は、音速を超えました。
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 「マッハ計がおかしいぞ!」
        チャック・イェーガー、音速を突破した瞬間の言葉
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    | とうとう、やってしまったんだな。
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         | 人類で始めて、公式に音速を超えた瞬間か…
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| この時にX-1が達していた速度は、マッハ1.06。
| 実はそれ以前の実験段階で音速を超えていたという話もあるんですが、公式の記録はこれが初めてです。
| この後もX-1は速度記録を更新し続け、最終的にはマッハ1.45という記録を生みました。
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    以降はX-1AやX-1Bなどのシリーズ機が作られるが、ここでは省略。
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    | ここら辺のいきさつは、『ライトスタッフ』と言う題名で映画化してるって話だ。
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         | チャック・イェーガー本人もチョイ役で出てるという、アレか。
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| さて… それ以降についても少し触れておきましょう。
| 1967年には、アメリカのX-15がマッハ6.7を記録します。
| このX-15は、型式を見ても分かる通りX-1プロジェクトの発展系ですね。
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 ・X-15
  マッハ6.7での超音速飛行を実現した、世界最速の有人機。
  この機が達成した記録の多くは、現在でも破られていない。
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    | マッハ6.7!? マッハ1を達成するのにもあれだけ苦労したのに!?
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         | 技術の発展ってのは凄まじいな…
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| そして一連の超高速機研究の流れは、スペースシャトル開発に繋がっていくわけですが…
| 最速の有人機ってのは、現代においてもこのX-15です。
| と言っても、現代の技術をもってしてもX-15以上の速度を達成できる機体が作れない、って訳じゃないんです。
| 単純にスピードを追い求める事自体が古くなったって事でしょうね。
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    無人機においては、X-43Aがマッハ9を達成。
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    | 今でも、有人機最速記録を保持してるのはX-15なんだな。
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         | 飛行機って、速ければ速いほどいいんじゃないのか?
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| 宇宙開発分野ではともかく、軍事分野においては過度の高速性能は必要とされないんですね。
| 戦闘機が空戦を行うスピードはマッハ1以下ですし、それ以上のスピードでは中の人がついていけません。
| マッハ2が出なくて困った戦闘機乗りなんて、この世に存在しませんよ。
| 戦闘機の最高速度が機体の強さを決める要因になる時代は、第二次世界大戦と共に終焉したんです。
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    | なるほど。
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         | それはそれで、どこか寂しい気もするなぁ…
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| さて… これで今回の講義は終わりです。
| 質問や抗議とか、航空機に限らず取り上げてほしい軍用機械とかあったら遠慮なくどうぞ。
| ううッ! 長い間まともに講義したから、いつものアレが…!
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  第1回兵器史・X-1 〜音速への挑戦〜

               終
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    | また、お約束のアレか。
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         | コロッケか? アヒャか? 黒板引っかきか?
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  私の好きな音

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     | うおッ! 両手できたか!
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           | カーテン登ってるネコみたいだ!
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