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| 3回に分けてお送りする古代オリエント講義、今回は最後の第3回になります。
| 前回の講義で、権勢を誇ったアッシリア帝国は崩壊。メソポタミアの地には四大国が並び立つという事態に。
| ここから、四国分立時代(紀元前612年〜紀元前525年)が始まるというわけですね。
| ではこの四大国の成立を、アッシリア在命時から遡って見ていきましょう。
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| 四つの国が並び立っていたのは、約100年間か。
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| そして、他国を制してオリエントを統一したのは……
| 四カ国のいずれでもない、ペルシア帝国だったんだ。
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| 紀元前715年あたり……アッシリア王サルゴン2世が、各地で起きた反乱鎮圧で駆け回っていた頃。
| アッシリア帝国の東の果て、ペルシア高原(イラン高原)あたりに新たな国家が誕生しました。
| その名も、メディア王国。首都はエクバタナ、構成員はこの地に住んでいたメディア人です。
| 彼らはインド・ヨーロッパ語族に属し、周辺の騎馬民族スキタイ人とは親戚関係だったとされていますが……
| あまりに史料が少なく、メディア王国に関して詳しくは分からないというのが実情です。
| メディア人自身が記した文献というのは、未だに発見されておらず……他国の文献が全てなんですよ。
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赤:アッシリア支配圏
黄:メディア支配圏
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| ステップの広がる大高原に、新たな国家が誕生したのか。
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| 例によって、地図の色分けはかなり適当だ。
| だいたいこのへんを支配していた、っていう感じで。
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| このメディア王国に関しては、初代国王の名さえ史料によってバラバラ。
| 主な史料はヘロドトスの『歴史』、ディオドロスの『歴史叢書』、そして碑文などこの時代の考古学的史料。
| ヘロドトスによれば、メディア王国はデイオケスという人物がこの地域を統一して完成したもの。
| それからフラオルテス、そして有名なキュアクサレスに王位が受け継がれたとされているのですが……
| かたやディオドロスの記録によれば、メディア王国の初代国王はキュアクサレス1世とされています。
| 有名なキュアクサレスは、初代の名を継いだキュアクサレス2世という説明であり……ヘロドトスと矛盾しますね。
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| 有名なキュアクサレスって言われても……知らないや。
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| 後で詳しく語るが、メディア王国で最も知名度の高い王のことだ。
| ……ってか、メディア王国の重要人物は彼くらいのもの。
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| そしてこの時代の碑文や外交文書など、考古学史料を検討してみると……
| ヘロドトス説もデイオケス説も合致している点と合致していない点があり、実に不一致なんです。
| ともかくメディア王国はアッシリア帝国からの独立に成功するも、当然ながらアッシリアは怒り心頭。
| こうしてアッシリアの激しい攻撃を受け、相当にメディアは弱らされたようです。
| しかしアッシリアの猛攻をなんとかしのいだメディアでしたが、今度は周辺の騎馬民族スキタイ人が襲撃。
| メディア王国はその攻撃に屈してしまい、以後はスキタイ人の支配を受けるという状態になってしまいます。
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| スキタイ人って、そんなに強かったの?
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| この時代、騎馬民族というのは圧倒的な武力を持っていた。
| まだまだ定住民には使いこなせなかった、騎乗という技術を自由自在に扱えるからな。
| 馬というのは、非常に強力な兵器なんだよ。
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| こうして、メディア王国は数十年ほどスキタイ人の支配下におかれましたが……
| ここで登場したのは、偉大なるメディア王キュアクサレス2世。
| 彼は策謀を練り、スキタイ人の偉い人達を酒宴に招待。
| そして彼らが酔っぱらったところを見計らい、一挙に殺害してしまいます。
| こうして紀元前625年、メディアはようやくスキタイ人の支配から解き放たれました。
| このキュアクサレス2世のもと、メディア王国は大国へと発展していきます。
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| スキタイ人、これで全滅したのか?
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| いや……スキタイ人というのは、そもそもこの周辺の騎馬民族の総称。
| メディア王国を支配していたのも、そのうちの一派に過ぎない。
| 後にメディア王国はスキタイ人達の力を借り、強力な騎兵部隊を要することになるんだ。
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| さて、同じ頃――アナトリア半島、今のトルコあたりにも新たな国家が出現していました。
| それがリディア王国、世界で初めて鋳造貨幣(エレクトロン貨)を導入したことで知られる商業国家です。
| この地域からは金が産出し、またギリシアやメソポタミアの諸都市の商業交通路の中心。
| そんな優れた条件があって、商業大国として大いに発展していきました。
| 中心都市はサルディスですが、歴史記録はあまり多くなく詳細は不明。
| このリディア王国もメディア王国と同じく、アッシリア帝国などの外交文書から概要が分かる程度なんですよ。
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赤:アッシリア支配圏
黄:メディア支配圏
水色:リディア支配圏
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| 各地で新国家が生まれていたんだな。
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| 後の四大国のうちリディアだけは、かつてのアッシリアの領土でないところで発祥した王国なんだ。
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| そういうわけで、リディアには詳細な史料がないんですが……一つだけ、有名な逸話というか伝説があります。
| 初期のリディアにおける王朝交代劇を、ヘロドトスが著作『歴史』で記していたんですよ。
| ここで少し、その逸話を見ていくとしましょう。
| 初期リディアに君臨していた王家はヘラクレス家であり、ヘラクレス朝の最後の王はカンダウレスと言いました。
| このカンダウレス王は、自分の妻が世界一の美女であるとして、周囲に自慢していたようです。
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| なんだ、王朝最後の王にしては微笑ましいじゃないか。
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| 中国では、王朝最後の王なんて毎回とんでもない人物だからな……
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| 今日もカンダウレス王は、部下のギュゲスなる人物に、世界一の美女である(と王は思っている)妻の自慢話。
| しかし……ギュゲスの冷めた反応は、明らかに世界一の美女だとは信じていない様子でした。
| ここで熱が入ってしまった王は、「じゃあお前、実際に妻の裸を見て来い!」とギュゲスに命令。
| ギュゲスは「王様、そりゃまずいっすよ!」と思ったものの、断り切れる状況ではありませんでした。
| こうしてギュゲスは不本意ながら、王妃の寝室へ忍び込まなければいけなくなってしまいます。
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| なんと嵐の予感……
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| 当時の道徳観念を考えると、これは相当にひどい話であることが伺える。
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| こうしてギュゲスは王妃の裸体をチェック、寝室を出ようとしたところで……思わぬアクシデントが!
| そそくさと脱出していくギュゲスの姿が、王妃に見られてしまったんです。
| ここで王妃は全てを察し、ギュゲスは王の命令で覗きに来たのだと確信。
| 王妃の激しい怒りは、ギュゲスではなく夫の王に向けられました。
| このような屈辱を与えた王に対し、王妃は復讐を誓ったんです。
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| こわいっす。
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| 怖い話だ。
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| そして翌朝、王妃はギュゲスを呼び出し、カンダウレス王の暗殺計画を実行するように迫ります。
| 「奥様、そりゃまずいっすよ!」と渋るギュゲスに対し、王妃は「断れば私の裸を覗き見した罪で死刑」と一言。
| これではどうしようもなく、計画通りギュゲスはカンダウレス王を暗殺。
| その結果、ギュゲスはリディア王の座に就き、カンダウレスの妻を自分の后としたんです。
| こうしてヘラクレス王朝は滅び、ギュゲスの一族が王位を継いでいく――メルムナス朝が成立したとのこと。
| 真偽の怪しい逸話ではありますが、非常に興味深い話ですね。
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| 逸話ってか、昔話みたいだな。
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| つうかリディアって、この話くらいしか特筆することがない……
| さっきも言った通り、あまり詳細な記録が残ってないんだ。
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| さて、ここまでメディア王国とリディア王国の誕生について見てきました。
| この頃にもなると、権勢を誇っていたアッシリア帝国は混乱状態に陥り、支配圏を維持できなくなっています。
| 紀元前625年には、アッシリアに対し反乱を繰り返していたバビロニア地方がとうとう独立。
| この地方を取り仕切っていたナボポラッサルという人物が、新バビロニア王国を築いたんです。
| また一時的にアッシリアの支配下にあったエジプトも、機を見て独立。
| 領土が次々と離反していき、アッシリア帝国は一気に弱体化してしまいました。
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赤:アッシリア支配圏
紫:新バビロニア支配圏
黄:メディア支配圏
水色:リディア支配圏
緑:エジプト支配圏
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| エジプトがアッシリアの支配下にあったのは、アッシリア最盛期のほんの短い期間だったんだな。
| エジプト側からすりゃ、一時的に領土が侵略者に占拠されたものの、すぐに追い返したって感覚か。
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| なお新バビロニア王国は、欧米ではカルデア王国と呼ぶのが一般的。
| 聖書に出てくるバビロニア王国ってのは、ハンムラビ王の古バビロニア王国ではなく、
| こっちの新バビロニア王国の方だな。
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| アッシリア帝国の弱体化を見て、動き出したのはメディア王キュアクサレス2世。
| 精強な騎兵に支えられたメディア軍がアッシリアに攻め込み、紀元前614年にアッシュル市を占領します。
| ここで打倒アッシリアの利害が一致し、新バビロニアとメディアは同盟を組むことに。
| そのまま両軍は合流し、紀元前612年、とうとう首都ニネヴェを包囲したんです。
| 弱体化していたアッシリアに抵抗の術はなく、三ヶ月の包囲の後に首都が陥落。
| アッシリア王シン・シャル・イシュクンは殺され、ニネヴェは略奪を受けてしまいました。
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メディア王
キュアクサレス2世
↓
,......,___ ___
{ r-}"''; アッシリア王 (,- ,_'',; 新バビロニア王
__ノYv"-ァ'=;} シン・シャル・イシュクン ,_、 Y' リ''ー ナボポラッサル
ヽー-ハ '、 ↓ / キ}、 {"ー {⌒
ト ハ } ,. -ー─-- 、___ / ハノ`{ {
! ! !__! ,-、_ ,,( ,  ̄`ー、 /"''ー;ー'"
|___|! !ー-ニー、;、;'""ノ';{ iー ヽ=ニ=),..- '"
K \ヽ !`ーニ'-、{ (e 人 |' ̄ ̄/`ー! | / /⌒
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| アッ尻アッー!
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| このネタも、これで最後だ……
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| しかし一部のアッシリア勢力は破壊を逃れ、ハランという都市を拠点に再起を図りました。
| アッシュル・ウバリト2世を王として、エジプトの支援を受けつつ、なおも抵抗を続けようとします。
| ハランへと押し寄せてくる新バビロニア軍を前にして、アッシュル・ウバリト2世はエジプトに援軍を要請。
| エジプト第二十六王朝のネコ2世は、援軍を率いてハランへと救援に駆けつけようとしたんですが……
| その進軍途中、通り道だったメギドの地で、そこを支配するユダ王ヨシヤと激突することになります。
| この戦いによってヨシヤは戦死、エジプト軍の勝利に終わりました。
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| ネコ2世……なんて可愛い名前なんだ。
| それはともかく、なんでいきなりユダ王が出てくるの?
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| エジプト側は「危害を加える気はないから、通してくれ」って言ったんだが……
| ユダ王国はバビロニア側に味方し、一歩も退かなかったという話だ。
| あくまでこれはエジプト側の言い分で、実際にどうだったのかは分からないが。
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| ようやくエジプト軍もハランへと救援に駆けつけたのですが、新バビロニア軍の猛攻の前に瓦解。
| 紀元前609年、残存するアッシリアの抵抗も完全に叩き潰されてしまいます。
| こうしてアッシリアは滅び――メソポタミアの地に残ったのは、四つの王国。
| 旧アッシリア領であった新バビロニア、エジプト、メディアの三国と、小アジアに発祥したリディアです。
| この時代を一般に、四国分立時代(紀元前612年〜紀元前525年)と言いますね。
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・四国分立時代

紫:新バビロニア支配圏
黄:メディア支配圏
水色:リディア支配圏
緑:エジプト支配圏
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| アッシリアの領地は、新バビロニアとメディアで分けたんだな。
| エジプトは……ほんの一時だけ服属していたが、すぐに独立したって感じか。
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| アッシリアが四つの国に分裂したと思ってる人がいるが、それは間違い。
| リデァアだけは、かつてのアッシリアの領土でないところで発祥した王国なんだ。
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| それでは……まず、四国のうちで最も優勢だった新バビロニア王国から見てみましょう。
| 首都は古都バビロンで、前にも言った通りカルディア人の建国した国です。
| チグリス・ユーフラテス川の恵みを受ける地なので、その生産力や国力は絶大でした。
| そして初代王ナボポラッサルは、弱体化していたアッシリア帝国から独立を宣言。
| メディアのキュアクサレス王と組んで、アッシリアを打倒した……ここまでは語りましたね。
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紫:新バビロニア支配圏
黄:メディア支配圏
水色:リディア支配圏
緑:エジプト支配圏
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| ナボポラッサル……覚えにくい名前だ。
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| バビロンってのは、メソポタミアの人々にとって伝統ある古都……日本の京都みたいなものだな。
| あらゆる文化や叡智が凝縮し、ここを領有していると言うだけで意義があったんだ。
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| 共にアッシリアを滅ぼした縁もあり、新バビロニアはメディアと婚姻外交を結んで友好関係に。
| かたやエジプトとは、アッシリア旧領地の支配権を巡って対立します。
| そして間もなく両者の間で火花が散り、新バビロニア軍はシリアへと遠征。
| その遠征軍を率いたのは、ナボポラッサル王ではなく――若く勇猛な息子、ネブガドネザル2世でした。
| ナボポラッサル王は軍の指揮も執れないほどに年老い、重病の身だったんです。
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| シリアって、よく戦場になるな。
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| エジプト勢がアジア大陸に進出し、アジア側が迎え撃つ場合――
| その激突ポイントは、地理的な問題でたいがいシリアなんだ。
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| そして紀元前605年(異説あり)、カルケミシュという地において新バビロニア軍とネコ2世のエジプト軍が激突!
| このカルケミシュの戦いで、ネブガドネザル2世は見事にエジプト軍を破ります。
| こうして、このままエジプト本土に突撃――というところで、思わぬ知らせが。
| 新バビロニア本国にて、ナボポラッサルが死去したという報告が新バビロニア遠征軍へと届いたんです。
| 即座にバビロンへと戻ったネブガドネザル2世は、父の跡を継いで王位へと就きました。
| このネブガドネザル2世が、新バビロニアにおける最も偉大な王として記録されることになるんですよ。
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| エジプトの方は、危ないところで助かったんだな。
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| これから後も、新バビロニアとエジプトは対立を続けるんだが……
| 困ったのは、その周辺小国。両大国の板挟みになり、どちらに付くか選択しなきゃいけない。
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| そんな情勢の下、小国であるユダ王国の王ヨアキムはエジプトと同盟を結びました。
| それに危機感を持ったネブガドネザル2世は前601年、パレスチナの地に遠征軍を派遣します。
| 慌てたヨアキム王は新バビロニアに服属を誓い、この揉め事はいったん収まったのですが……
| それから3年後になって、ヨアキム王は新バビロニアに反旗を翻します。
| 当然のように新バビロニアの大軍がパレスチナに押し寄せ、あっという間に首都エルサレムを包囲。
| たちまちのうちに、ユダ王国は大ピンチに陥ってしまいました。
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| ほとんど戦いにもならなかったんだな。
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| 新バビロニア王国とユダ王国じゃ、ちょっと国力が違いすぎる。
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| 窮地に陥ったユダ王国にて、ヨアキム王の子であるヨアキンが父の後を継いで即位。
| そのままヨアキン王は、新バビロニア王国に降伏を申し出ます。
| この際、ネブガドネザル2世の処断は熾烈で、歴史に残るものでした。
| ヨアキン王と有力者、さらに市内の兵士や職人、有力市民などをバビロニアの地に強制連行。
| これが第一次バビロン捕囚と呼ばれる事件であり、これは後の歴史に大きな波紋を投げかけました。
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| 第一次ってことは……第二次もあるのか。
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| 一連の出来事は、ユダヤ人の凋落――ひいてはユダヤ教やキリスト教の成立にも関わるんだ。
| この辺の事情は、また別の講義で詳しくやるぞ。
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| さて……この事件の後、ユダ王国の王位に就いた新王ゼデキヤは愚昧で優柔不断。
| エジプトと同盟を組むなど、空気を読めないことをやらかして新バビロニアを挑発してしまいます。
| 怒った新バビロニアは前588年、遠征軍を繰り出して再びエルサレムを包囲しました。
| エジプトの同盟軍が駆けつけたものの、救援はならず……18ヶ月の包囲のあとにエルサレムは陥落。
| エルサレムの民はほとんどがバビロンに強制連行され、エルサレム神殿なども徹底的に破壊。
| この第二次バビロン捕囚によって、ユダ王国は滅亡してしまったんです。
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| なんたる小国の悲哀……
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| ゼデキヤ王も捕らえられ、家族は処刑、自身も目を潰された上でバビロンに連行された。
| これ自体は当時よくある事件なんだが、後世への影響が絶大なんだ。
| 約40年後、ペルシア帝国によって解放されるまで、元エルサレムの民は強制労働に勤しむことに。
| ここら辺は、詳しくはまた別の講義で。
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| 軍事のみならず、ネブガドネザル2世は内政的偉業も多く達成しています。
| 彼は建築事業に情熱を燃やし、ひたすらにバビロン市内を整備したんですよ。
| その中でも有名なのは、イシュタル門の建造とジグラトの再建ですね。
| イシュタル門は、彩色レンガをふんだんに用いた立派な門。バビロン建築の代表格です。
| また彼によって再建されたジグラトはエテメンアンキ(天と地の基盤となる建物)とも呼ばれる巨大寺院。
| 高さ91メートルにも達する五層の塔ですね。
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・イシュタル門(レプリカ)
・エテメンアンキ
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| 高さ91メートルって……すげぇな。
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| エテメンアンキはあまりの豪華さゆえ、旧約聖書の中で人間の奢りの象徴にされてしまったほどだ。
| そして、神は怒って神罰を下す……すなわち、バベルの塔のモデルだな。
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| またネブガドネザル2世は、バビロンの空中庭園なるものを造ったと言われています。
| 彼の妻である王妃アミティスはメディア出身であり、故郷の山々を恋しがっていました。
| しかしバビロニアはなだらかな平野で、遠方に見える山々なんて光景はどこにもありません。
| そこでネブガドネザル2世は、妻の望む光景を模して空中庭園を作り上げたというわけですね。
| それが世界七不思議の一つ、バビロンの空中庭園なんですが……詳細は分からず、実在は曖昧。
| ニネヴェに存在したとされる別の庭園と混同されたという説もあり、所在地すらはっきりしません。
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・バビロンの空中庭園(想像図)
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| 空中庭園って……空に浮かんでるのか?
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| 「空中庭園」ってのは誤訳に近く、実際は高台に造られた屋上庭園だ。
| まったくミステリーな色彩はないことに注意だな。
| そもそも、「世界七不思議」って言葉も誤訳といっていいんだが……
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| とにかく、ネブガドネザル2世の時代は新バビロニア王国が隆盛を極めた時代とも言えるでしょう。
| すなわち、後の新バビロニアは衰退していくということでもありまして……
| これ以降は王位継承を巡る内紛が何度も発生、王の暗殺が相次ぐ混乱期に入ります。
| 国内の支配者層同士が争い、神官と王の権力対立も激しかったようですね。
| ネブガドネザル2世より後に王となった4人のうち、3人は暗殺されているというハチャメチャ振りです。
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| これはひどい……
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| また新バビロニア王国は、軍事力で他国を圧倒することができなかった。
| ネブガドネザル2世の軍事的偉業を除き、領土を広げることはできなかったんだ。
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| 軍事力で言うならば、群を抜いていたのがイラン高原に広がる大国メディアでした。
| アッシリア帝国は、戦車から騎馬兵に主力が移る過渡期の軍隊だったんですが……
| メディアは周辺の騎馬民族スキタイ人の援助を受けられるという位置にあり、騎兵の導入が容易。
| こうしたスキタイの弓騎兵を傭兵として迎え、メディアは四国の中でも強大な軍事力を誇ったんですよ。
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紫:新バビロニア支配圏
黄:メディア支配圏
水色:リディア支配圏
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| スキタイ人は、最初はメディア王国を支配していたんだよな。
| でもキュアクサレスがスキタイの偉い人を酒宴に招き、殺っちゃったんだっけ。
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| キュアクサレス王は、メディアの軍事改革を行った人物でもある。
| まさに、東の高原に現れた傑物だな。
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| メディアの初代王キュアクサレスは、支配者だったスキタイ人を撃退。
| その後に軍事力を整備し、新バビロニアと組んでアッシリアを打倒しました。
| 以後、メディアと新バビロニアの王家は婚姻を結んで良好な関係となった……
| ……ってのは、新バビロニア王国のところで解説しましたね。
| そのままメディアはアッシリアの旧領地を吸収していき、とうとうメソポタミア西まで進出。
| 周辺地域を支配していたリディアと激突することになります。
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黄:メディア支配圏
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| どの国も、支配圏を広げようと躍起になっていたんだな。
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| メディア軍とリディア軍が激突したのはハリュス川、両国の国境とも言える地域だ。
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| こうして紀元前585年5月8日、ハリュス川を挟んで対峙していた両軍ですが……
| 合戦中に皆既日食が起こり、あまりの怪異に恐れおののいた両軍は戦闘を中止。
| 「戦いの最中に突然、真昼が夜になった」という記録が残るほどの衝撃を与えました。
| これは両国の戦争を望まない神の思し召しだと解釈され、メディアとリディアは和平を結びます。
| このハリュス川は国境となり、メディアとリディアの王家は婚姻外交を結んで対等な関係となりました。
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| こういうこともあるんだな。
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| ギリシアの哲学者タレスは、この日食を事前に予測していたとか。
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| しかし以後のメディアには大した軍事的指導者が現れず、強大な軍事力は宝の持ち腐れに。
| メディアを大国の地位に引き上げた初代王キュアクサレスのような逸材は、とうとう現れなかったんです。
| 先にも言った通り、メディアには文字文化がなく、ほとんど記録が残っていません。
| またメディアの都市の発掘も進んでおらず、あまり詳しくは分かっていないんです。
| 結局のところ、世界史的な位置としては後のペルシア帝国の前身的な捉え方ですね。
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| ペルシア帝国……?
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| メディア王国は、広大なペルシア高原をも領土に含んでいた。
| そこに住んでいたペルシア人は、メディア王国に服属していたんだが――
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| 次に、リディア王国はというと……先にも説明したように、経済大国として知られていました。
| その地理的な位置も、ギリシアやメソポタミア、シリア方面の商人が行き来する貿易中心地。
| 世界で初めて貨幣を鋳造したのも、このリディアなんですよ。
| 覗き見が縁で、王になったという伝説を持つギュゲスの話はしましたね。
| 彼の死後に勢力を伸ばしてきたメディア王国と戦争になりますが、戦場での日食により戦闘は中断。
| 両国は同盟を結ぶことになる――これも、メディアの時に説明した通りです。
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紫:新バビロニア支配圏
黄:メディア支配圏
水色:リディア支配圏
緑:エジプト支配圏
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| 新バビロニアやエジプトとは、地理的な問題で激突しないんだな。
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| この地図にはないが、リディアの北にはギリシア諸都市が存在していた。
| そっちの方に、リディアは軍事進出することになる。
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| そしてクロイソスという人物が王位に就き――彼は、リディア最後の王となってしまいました。
| 巨大な帝国が、南方から迫りつつあったんです……ってとこで、リディアに関してはいったん休憩。
| 残るエジプトに関しては、エジプト史の講義でまとめてやりますね。
| これで四大国のうち、新バビロニア、メディア、リディアをざっと見ていきました。
| これらの国の最期は、ほとんど同時期に訪れます。
| それはメソポタミア地域の統一であり、巨大な新帝国の登場でもありました。
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紫:新バビロニア支配圏
黄:メディア支配圏
水色:リディア支配圏
緑:エジプト支配圏
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| いよいよ統一か……!
| でも新バビロニアもメディアもリディアも最期が近いということは、統一したのはこれらの国じゃないのか?
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| その通り。メソポタミアの覇者となったのは、四カ国のいずれでもなかったんだ。
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| メディア王国の支配するペルシア高原には、ペルシア人という人々が住んでいたことは説明しました。
| 彼らは、メディア王国の支配下にあったのですが……紀元前550年、ペルシア人は偉大な指導者の下で独立。
| ペルシア人達の指導者となったのは、キュロス2世という大傑物でした。
| 彼はメディア人とペルシア人の混血であり、メディア王家とも親戚関係であったとか。
| そんなキュロス2世は、メディア最後の王アスティアゲスに対して大反乱を起こしたんです。
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紫:新バビロニア支配圏
黄:メディア支配圏
水色:リディア支配圏
緑:エジプト支配圏
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| メディア王国の内部で、新勢力が出現したんだな。
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| なお、「ペルシア」と「イラン」はほぼ同義。
| 「ペルシア」は他称で「イラン」は自称だが、同じ言葉だと思ってもらっていい。
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| ペルシア王キュロス2世VSメディア王アスティアゲスの戦いの最中、メディア側に思わぬ裏切りが発生。
| メディア将軍ハルパゴス達がペルシア側に寝返り、アスティアゲス王を捕らえてしまったんですよ。
| こうして紀元前549年にメディア王国は滅亡、ペルシア王国はその支配圏をそっくりそのまま受け継ぎます。
| この際に、メディアの統治システムやら何やらは丸ごとペルシアに持ち越されました。
| 後にペルシアが各地を支配するための地方統治制度であるサトラップ制は、メディア時代に原型があります。
| ペルシア王国の基礎は、メディア王国にあるといっても間違いではないですね。
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薄緑:ペルシア支配圏
紫:新バビロニア支配圏
水色:リディア支配圏
緑:エジプト支配圏
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| メディア王国が、そっくりそのままペルシア王国に置き換わったんだな。
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| この際、多くのメディア人は割とあっさり新たな支配者に協力したようだ。
| この後のメディア人はペルシア人と同化していき、後には両者は区別されなくなってしまう。
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| メディア王国を滅ぼした……というか継承したペルシア王国は、次にリディア王国へと襲い掛かります。
| この時のリディア王は、五代目のクロイソス。財貨をため込んだ金持ちの王様として有名な人物です。
| 現在でも、英語圏では「クロイソスのように裕福」などという言い回しが残っているほどですね。
| 彼は金持ちなだけではなく、なかなか有能な人物。北へ進出し、ギリシア諸都市をいくつか陥落させています。
| その際、ギリシアの賢人を招いたり、他のギリシア諸都市と友好を築いたりもしていますね。
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| ギリシアか……都市国家がいっぱいあったんだっけ。
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| ギリシャ七賢人の一人であるソロンを招いたとき、クロイソスはこう言われる。
| 「世の中には金より大切なものがあるし、あなたの幸運がいつまでも続くとは限らない」……
| しかしこの時のクロイソスは、ソロンの言葉を一笑に付すだけだった。
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| しかし、いよいよソロンの忠告が現実になる時が来ようとしていました。
| 東の地で、ペルシア王国が友好国メディアを滅ぼしたという報が入ってきます。
| これに危機感を持ったクロイソス王は、神託所でお告げを受けることに。
| そこで出た結果は、「戦いを挑めば、大きな『帝国』が滅ぶ」というものでした。
| ここでクロイソスは、滅ぶ『帝国』とはペルシアのことだと早合点。戦争を決意するのですが――
| 実は、その『帝国』とはリディアのこと。ペルシアに戦いを挑めば、自国は滅ぶというお告げだったんです。
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| 面白いが、なんかできすぎた話だな。
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| まあ、真偽は怪しいところだが……こういう伝説が残っているということにも意義がある。
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| こうしてクロイソス王は、当時ギリシアで最強を誇っていた都市国家スパルタと同盟を結びました。
| さらに新バビロニアやエジプトとも同盟を組み、大連合軍を形成します。
| そしてリディア連合軍は、ペルシアの支配下にあったカッパドキアへと侵攻しました。
| これを知ったペルシア王国のキュロス2世は、すみやかに迎撃軍を率いて進軍。
| こうして紀元前548年5月、アナトリア東部のプテリアで両軍が激突。
| しかし激戦の果てに決着は付かず、そのまま秋となってしまいます。
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| 秋が到来し、冬も目前か……
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| 当時、冬に戦争は出来なかった。
| 食料の確保が非常に難しいし、寒さによる兵の損失も凄まじいからな。
| 冬が来ると、戦争を一時中断するのは当時の常識だったんだ。
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| 冬の到来により、クロイソスは全軍を首都サルディスまで引き上げさせます。
| 今期の戦闘はないと判断し、そのまま軍の大部分を解散したのですが――
| それを知ったペルシア王国のキュロス2世は、この隙を突いて首都サルディスを急襲したんです。
| 当然ながら、冬の進軍ってのは自軍にも壊滅的な損害をもたらすもの。
| サルディス近郊のテュンブラ平原まで辿り着いたときには、ペルシア軍は激減していたんです。
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| なんで、軍を解散しちゃったんだ……?
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| 近代や現代とは、まったく軍の制度が異なるんだ。
| 当時の軍ってのは、臨時的に雇った大集団。
| 結成していれば結成している時間、莫大な資金が消費されていく。
| それを常備できるようになったのは、この時代から2000年近く後のことだ。
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| 一方、軍を解散したクロイソスでしたが……まだリディア騎兵とエジプト重装歩兵が手許に残っていました。
| これだけでも、現状のペルシア軍よりは優勢。クロイソスは残軍を駆って迎撃に向かいます。
| こうして紀元前548年、首都サルディスも間近のテュンブラ平原にて両軍は対峙しました。
| 兵力劣勢なペルシア軍は防御を優先して方陣を組んだのですが、勝利の秘策がありました。
| 馬はラクダを嫌い、怖がるという習性を見越して、前衛にラクダ兵を配置したんです。
| これは効をなし、リディア騎兵のまたがる馬はラクダを恐れてパニック状態になってしまいました。
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| なんと!
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| リディア騎兵は長槍を装備しており、オリエントでもその勇名が鳴り響く精鋭だった。
| それを、一気に無力化してしまったことは極めて大きい。
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| こんな苦境でも、リディア兵やエジプト重装歩兵は勇敢に戦ったのですが……
| 劣勢は覆せず、サルディス城内に撤退して籠城するという事態になってしまいます。
| そのまま首都サルディスはペルシア軍に包囲され、絶体絶命の大ピンチに。
| クロイソス王は同盟国の救援を待ったのですが、ペルシアの激烈な攻撃の前にわずか14日で落城。
| こうしてクロイソス王は捕らえられ、リディア王国は滅亡してしまいました。
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薄緑:ペルシア支配圏
紫:新バビロニア支配圏
緑:エジプト支配圏
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| こうして、メディアに続いてリディアまでがペルシアに滅ぼされたわけか。
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| クロイソスはキュロス2世に捕らえられ、火刑台の前に立たされてしまった。
| 悲嘆に暮れたクロイソスが火の神アポロンに懇願すると、雨が降ってきて火が消えてしまう。
| これを見たキュロス2世はクロイソスを助命し、以後クロイソスはキュロス2世の参謀となったとか。
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| そして次にペルシア王国のターゲットとなったのは、新バビロニア王国でした。
| その際のバビロニア王は、ナボニドスという人物。奇行で有名な王です。
| 当時は国政を息子に丸投げし、10年ほどアラビア砂漠に引きこもっている真っ最中。
| 他にも、王が果たすべきマルドゥク神をあがめる儀式を全く行わなかったなど……
| バビロニアの民衆から反感を買いまくっていた、困った王様だったようです。
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| なんで、砂漠に引きこもっていたんだ……?
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| いちおう、この地域への遠征、そして占領地の統治という名目だったようだ。
| マルドゥク神を軽視したのも、増長する神官達を統制したかったという話だが……
| どれも空回りし、バビロニアの民の反感を買うだけだったみたいだな。
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| そんな微妙な政情の新バビロニアへと、いよいよペルシア軍が迫ります。
| 紀元前548年にキュロス2世がアルベラ地方と進出。これが最初の両国の激突となりました。
| それから十年近くも戦いは続きましたが、新バビロニアは徐々に劣勢へと陥っていきます。
| そして紀元前539年9月オピスの戦いでナボニドゥスは決定的な敗北を喫してしまいました。
| 首都バビロンに逃げ込むナボニドゥスでしたが、配下だった将軍ウグバルの裏切りで捕縛されてしまいます。
| こうしてペルシア王キュロス二世は、首都バビロンに無血入城したということです。
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| これで、新バビロニアもペルシアの手に落ちたんだな……
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| キュロス二世はバビロン入城において、「解放者」としてバビロニアの民から歓迎を受けたようだ。
| あくまでペルシア側の記録だし、敗北した側の身の施し方という面もあるだろうが……
| やはり、当時のバビロニア人はナボニドゥスに対する反感が根強かったようだ。
| なお新バビロニア滅亡後のナボニドゥスは、命だけは助けられて追放刑にされた。
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| こうしてバビロニアを占拠したキュロス2世は、バビロン捕囚にあっていたユダヤ人を解放。
| 故郷の地へ帰ることを許したとされており、旧約聖書での評価は極めて高いです。
| このようにキュロス2世は各地固有の宗教を重視するなど、征服民に寛大な政策を実行しました。
| それゆえ彼は「民族の解放者」、「諸王の王」などと呼ばれ、古代でも理想的な帝王とされていますね。
| このキュロス2世の手で、メディア・リディア・新バビロニアの領地を統合したペルシア帝国が誕生したんです。
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| エジプトを除いて、オリエント世界を統一したんだな。
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| しかしキュロス2世は周辺の征服事業の最中、まさかの戦死を遂げてしまう。
| その息子のカンビュセス2世の代、いよいよかつての四国が統一されるんだ。
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| キュロス2世の跡を継いだカンビュセス2世は、父の時代から続く仕事のやり残しを片付けます。
| それが、エジプト征服でした。
| 当時のエジプトはギリシア傭兵やフェニキア船団との不仲で揺れており、まさに絶好の機会だったんですよ。
| そして紀元前525年にカンビュセス2世はエジプトを攻略、その領土を支配下に置きました。
| メソポタミアはもちろん、エジプトからインド方面までを支配権に含めた史上空前の大帝国。
| ここまでの大帝国が歴史の中に出現したのは、世界でも初めてでした。
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薄緑:ペルシア支配圏
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| すげぇ……ここまで一色に染まったのは、このオリエント史講義でも初めて見るぞ。
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| なおこのペルシア帝国だが、厳密にはアケメネス朝ペルシアと呼んでいる。
| このアケネメス朝ペルシアが滅んだ後、ササン朝ペルシアという別の国が出現するんだ。
| どっちも自称は「ペルシア帝国」なんだが、区別のためにこういう歴史用語を用いる。
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| 歴史上類を見ないこの大帝国の存在は、古代ギリシア諸都市を圧迫。
| アジアの地に築かれた大帝国として、後のヨーロッパにも絶大な影響を与えました。
| 後のアレクサンドロス大王の征服事業とて、このペルシア帝国の二番煎じと言えるほど。
| まさにペルシア帝国こそが、古代オリエント帝国の頂点とも言えるでしょうね。
| ……と、ここで、古代オリエントの歴史講義はこれにて終了。
| ペルシア帝国の歴史は、また別の機会にやっていきましょう。
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| これで、ようやく一区切りだな。
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| ここから古代エジプトをやって、古代地中海周辺事情から古代ギリシア……
| まだまだ、色々あるがな。
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