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| 最後はもっと私を見て、しぃ助教授の世界史です。
| 前回の講義では、人類が世界に広がりつつ、ほんのり社会性を獲得するまでをやりました。
| 今回は、従来の狩猟に代わる食料革命――農耕と牧畜について詳しく見ていきましょう。
| 作物を育てて収穫したり、家畜を飼って増やしたりして、人類はより多くの食料を獲得することに。
| この食料生産大量化は、人類に新たなる変革をもたらしたんですよ。
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    | メシがたらふく食えるようになったほか、何か変革したのか?
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         | 食料革命によって、社会の複雑化にも加速が掛かっていった。
         | 農耕による食料革命は、人類史に残る大進歩なんだよ。
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| だいたい1万年前くらいから、人類は作物を植えて増やし始めたとされていますが――
| この数字はかなり曲者で、いつから人類が農耕を始めたかはっきりは言えません。
| 「この時期は農耕をしていた」という痕跡はあっても、「この時期から農耕を始めた」なんて痕跡はないです。
| 結局のところ、最古の農耕痕跡をもって、「この時代には農耕が始まっていた」としか言えないんですよ。
| それが、紀元前9000年頃のメソポタミア。ここで人類史上初の農耕を始まったとされていました……が!
| 近年の研究では、長江流域で紀元前1万4千年頃から農耕を始めていたということが有力視されています。
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    | つまり、人類最古の農耕は長江流域で始まったってこと?
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         | 当然ながら、また別の場所でもっと古い農耕跡が見つかるかもしれない。
         | 農耕に限らず、古代史における「最古の○○」ってのはいくらでも覆る可能性があるんだ。
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| もう一つ、近年になって覆ってしまった定説があります。
| 従来は「狩猟をしていた流浪集団が、農耕をするために定住するようになった」とされてきました。
| しかし最近では、「定住した後に農耕を始めた」とする説が主流となりつつあります。
| 農耕が始まる以前から定住していたことが分かる遺跡が、北シリアで見付かったんですよ。
| 今までは農耕を始めるようになって、役割分担などで社会が複雑化していったと言われていましたが――
| どうも社会の複雑化の方が先で、農耕はその後で始まり、さらに社会は複雑になっていったようです。
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    | 農耕を始めるよりも、定住する方が先だったのか。
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         | 当然ながら、周囲の環境などの制限で農耕を始めなかった連中もいるしな。
         | 色々なんだよ、人間ってのは。
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| また、これも勘違いされがちなんですが――狩猟民が、いきなり農耕民にチェンジしたわけではありません。
| 農耕初期は、あくまで食料獲得のメインは狩猟・採集。農耕の方は、いわば副業のようなものでした。
| しかし何百年もかけて研究が進み、農耕によって生産できる作物量が多くなっていきます。
| そうした過程で徐々に狩猟は圧迫され、ついには農耕による食料獲得がメインになってしまったんですね。
| いきなり人類は狩猟を捨てたわけではなく、農耕への移行も非常に緩やかに行われていったんです。
| そして――繰り返しになりますが、周囲の環境の都合で農耕など行わなかった集団だって存在するんです。
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    | 確かに最初のうちは、作物が上手く作れないことも多かっただろうしな。
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         | 何百年も試行錯誤して、農耕技術は洗練されていったんだ。
         | 農耕を狩猟に代わる食料獲得手段に確立するまでには、凄まじい努力があったことだろう。
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| ともかく……長江流域での農耕は西アジアよりも古いようなんですが、まだまだ研究途上。
| 西アジアのメソポタミアなどに比べて遺跡などが少なく、その詳細は把握できていないんですよ。
| また中国の南に位置する東南アジアでも、紀元前7000年頃には農耕が始まっていたようですね。
| しかし結局のところ、東アジアの農耕事情はまだまだ研究が進んでいないのが現状。
| それに対して西アジアの農耕は東アジアよりも後発だったようですが、研究はかなり盛んです。
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    | かなり最近の発見なんだな……
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         | 1970年代なんだよ、長江文明が浮上してきたのは。
         | おまけに四川からは黄河文明とも長江文明とも異なる地方文明が発見……
         | 中国考古学会は現在とても熱いが、詳しくは別講義で。
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| メソポタミアで農耕が始まったのが、前述の通り紀元前9000年頃とされています。
| 少なくとも紀元前4000年頃には、メソポタミアからヨーロッパへと農耕が伝わったようですね。
| また、西アフリカのサハラ砂漠より南――サバンナ地帯でも、農耕が始まっていました。
| 海を隔てたアメリカ大陸でも、紀元前5000年頃から先住民の間でトウモロコシなどの栽培が開始。
| これは他所から伝えられた形跡が無く、独自に始めたものであるということが確実ですね。
| こんな風に、世界中の人間が農耕を始めたんです。
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    | 独自に農耕を始めたところもあるのか。
    | 一カ所で始まった農耕が、世界中に伝わっていったわけじゃないんだな。
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         | そして三度目だが、農耕には手を付けなかった地域の民も存在する。
         | 農耕環境には恵まれず、牧畜に専念したりな。
         | これまで、世界史はそのような人々をあまりにも無視し続けてきたんだ。
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| またメソポタミアの民は、紀元前9000年頃には牧畜も行っていたようですね。
| 現在のイラク北部にある遺跡において、羊を飼育していた痕跡が確認されているんです。
| 野生の動物を捕まえて飼い慣らし、増やし、乳を貰ったり肉を食べたり、農作業や輸送を手伝わせたり――
| つまりは家畜の誕生ですね。なお最初の家畜は犬で、牧畜用途というより愛玩用だったとか。
| この家畜にも適する動物と適さない動物がおり、そう単純なものでもないことに注意です。
| メソポタミアには、羊、牛、ヤギなど家畜に適する動物がいっぱいいたんですよ。
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    | 家畜にできる動物がほとんどいない地域ではどうなるんだ?
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         | 当たり前の結論だが、牧畜という生産手段は根付かなかった。
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| 人間は知識を教え合う生き物ですから、農耕という手段もあちこちへと広まっていきます。
| しかし、世界には農耕に向かない土地もたくさんありました。
| 例えば、メソポタミアより東のステップ地帯――ただし草が生い茂っているので、牧畜は可能です。
| こうして農耕は行わず、流浪しながら牧畜を行う集団も現れます。
| その地域の環境によって、食料生産のスタイルは千差万別となったんですよ。
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    | 流浪しながら牧畜を行う集団……遊牧民だな!
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         | 遊牧民も、一般に誤解されているように、無計画にさすらってるわけじゃない。
         | 季節によって同じ場所に移動したり、時には定住して商業に専念することもあるが――
         | 詳しくは、また別の講義で。
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| さて、ここで重要なポイントを押さえておきましょう。
| 農耕というのは莫大な食料を生み出しますが、同時に莫大な量の水を必要とするのです。
| 当然ながら海水では駄目で、大きい川が近いほど農耕に有利な条件が整っていると言えるでしょうね。
| そればかりではなく、大河流域の土は養分たっぷりで農耕に最適なんです。
| それゆえ大河の流域では農耕が非常に行いやすく、そこにはたくさんの人々が集まってきます。
| 人が集まると、そこに文明が誕生する――そういうわけですね。
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    | だから、四大文明ってのはどれも大河の側で芽生えたのか。
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         | 逆に言えば、大河があったからこそ四大文明と呼ばれるまでに発展したんだよ。
         | ……とは言え、大河の存在は良いことばかりではないがな。
         | 大氾濫を起こして洪水が発生、流域に住む人々に悲惨な災いをもたらしたりもする。
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| 大河の側に住み、大河と親しみ、大河を利用し、時には大河と戦い――
| こうした大河との関わりは、流域における共同体の発展を進ませました。
| 大河を効率的に利用するためには、水を他の場所まで引いてくる(灌漑)という工事が必要です。
| また、増水対策としても工事が必要になるでしょう。
| こうした工事は当然ながら大作業であり、バラバラの人々ができるはずがありません。
| こういった作業を共同を行うことで、人々の社会的関係や役割分担が深まっていったんですよ。
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    | 工事を指揮する人なども必要だしな。
    | 個人単位や、家族単位じゃ無理にもなってくるか。
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         | 農耕で食っていくには、より高度な共同作業が必要になるわけだ。
         | リーダーが現れるようになって、管理者階級が出現し……
         | 支配する者と、支配される者の分化が進んだものと思われる。
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| 共同体の発展を促した要因は、これら共同作業のみではありません。
| 農耕やら牧畜による食料革命により、消費する以上の食料が確保できるようになりました。
| すなわち余剰生産物の発生――これにより、全員が食料生産に従事しなくてもよいということになってきます。
| そうなると、食料生産から免除されて、道具などの研究に専念できる人々も出てくるでしょう。
| こうして雑務から取り払われた人々が、色々な技術や知識を生み出していきました。
| 彼ら非農業従事者達を養う余裕ができたことにより、文明の発展はますます加速したんです。
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    | そこまで大量の食料が確保できるようになったのか?
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         | あくまで試算だが、一つの家族が狩猟生活で必要な土地は1000ヘクタール。
         | しかし農耕と牧畜を行うと、一つの家族で必要な土地は10ヘクタール。
         | 一気に人口が増大し、それでもお釣りが出るという結果になった。
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| さらに、非農業従事者からは宗教者も現れるようになります。
| 具体的に彼らがどんな風に現れ、地位を築いていったか、地域差もあって確かなことは言えませんが――
| 科学的知識がまだない時代の人々にとって、世界は漠然とした不安や理不尽さに満ちているでしょう。
| だからこそ、自分達を守ってくれる超自然的な存在を必要としたのではないでしょうか?
| 自分達は、「神」という存在に守られている――そう思いたかったのではないでしょうか?
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    | そこで、「神」の発明か。
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         | この「神」のタイプは、地域によって様々だが……
         | 「太陽」、「月」、「雨」、「麦」、「死」など、彼らに馴染み深い出来事や物を擬人化したものが多い。
         | 全知全能の一神教というのは、かなり例外的な存在だな。
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| こうした人々の不安を解消するべく、宗教というものが生まれたと考えられています。
| そういう超自然的な分野を扱う人々は、社会内での待遇が違ってきますよね。
| 神官階級が支配階級と結合し、最も偉い神官が共同体のリーダーとなることも。
| 細かくは地域によって様々ですが、どこでもやはり神官は特別な存在とされていますね。
| 宗教に関しては、また別の講義で詳しく触れたいと思っています。
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    | ほほう。
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         | また彼らは、知識階層も兼ねていたようだ。
         | 天文術、医術、暦……そういったものにも関わっている。
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| また農耕という行為そのものが、高い社会性を必要としていました。
| 貯蔵物の管理や食糧配分など、そういうのを取り仕切る役割の人も現れてきます。
| そうなると自然と身分の上下も生まれていき、社会が複雑化していったというわけですね。
| こうして地域の人々の暮らしも密接化していき、「村」という共同体が生まれていきます。
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    | 農耕の民が、村を築くようになったのか。
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         | 一方で、狩猟を続ける人々の集団も存在していた。
         | 彼らは、農耕の民よりも格段に高い戦闘能力をキープし続けたんだ。
         | 遊牧メインの連中もいるし、世の中は色々だな。
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| しかし余剰食糧(≒富)が発生し、集団社会が形成されてくると、争いも発生するものです。
| 「村」単位で戦争が起き、他の村の食料を奪ったりといった事例も見られるようになったでしょう。
| また、定住生活をしない民族――狩猟民族や遊牧民族が、農耕民族の村を襲うということも。
| そういう連中は圧倒的な戦闘力を誇り、農耕民族は太刀打ちできないというのはよくあるケース。
| そんな外部からの襲撃を恐れて結束し、定住民の中からリーダーが出現することもありますね。
| 外敵に対する結束が、さらに集団の社会性を向上させていくんです。
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    | やっぱ、狩猟民族や遊牧民族の方が強かったのか。
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         | 各地の農耕民族は、これから何世紀もの間、狩猟民族の襲撃に手を焼き続けるんだ。
         | あまり農耕民族と狩猟民族を対立的存在として理解するのも、実は間違いなんだがな。
         | そこら辺は、以降の講義で細かく見ていくけど。
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| そして人類は、とうとう石ではなく金属の使用も始めました。
| トルコにある集落において8000〜9000年前、銅を叩いて形を整えたことが分かっています。
| この時期はまだ、熱で形を変えるほどのことは行われていませんでした。
| 金属製の最古の遺物はエジプトで発見されたピンで、6000年前ほどのものだと思われていますね。
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    | いよいよ、金属を使うようになったのか。
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         | これはつまり、銅などの産地に価値が出てきたということでもある。
         | みんな、その材料を欲しがるんだからな。
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| そして5000年前には、メソポタミアにおいて銅とスズを混ぜて青銅を造るという技術が出現。
| この青銅は低温で溶かすことができ、思い通りの形に仕上げることも容易だったんです。
| そんな青銅の登場によって、金属器の幅は一気に広がり、様々な道具や武器が出現。
| 金属の産出地は大繁盛し、各地から食料品を携えた人が集まり金属と交換していくことに。
| こうして交易路が発展していき、産業システムも整い始めました。
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    | こうして、全てが繋がっていく……
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         | グローバルだな。
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| こういう様々な要因で、多くの村の連携が強化していき、大規模な集団を為すようになっていきます。
| 食料品の余剰が蓄積し、人々の役割分担が本格化し、複雑な都市社会を織りなし――
| こんな風に高度化した集団システムは、「文明」と呼んでも差し支えないものですね。
| その発展が特に著しかった地域は、メソポタミア、エジプト、インド、中国――いずれも大河の流域ですね。
| 先程も言った通り、大量の水と豊かな土がなければ農耕はできません。
| その条件が整っている地域が、凄まじい発展を遂げる――これは当然の成り行きでしょう。
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    | 世界四大文明だな!!
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         | しかし、今では「世界四大文明」という言葉はほとんど使われていない。
         | 学習書である『詳説世界史研究』にさえ、「いわゆる世界四大文明」と記されているしな。
         | かつては、そう言われていた――って程度の死語になったんだよ。
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| ミギー君の言った通り、「四大文明」という歴史用語の意義はめっきり薄れてしまいました。
| メソポタミア、エジプト、インド、中国の四箇所で文明が発祥し、それが世界中に拡散していった――
| ――っていう学説が、アジアにおいてはしばらく主流だったんです。
| しかしこれは欧米で一般に受け入れられた考え方ではなく、また考古学的調査で反証が次々に出て来ました。
| メソアメリカなど、四大文明から隔絶された地域でも文明は芽生えていること。
| さらに中国においては、四大文明に数えられた黄河文明よりも古い長江文明なんてのが見つかったんです。
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    | 長江文明? なにそれ、おいしいの……?
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         | 紀元前1万4千年あたりから栄え始めた文明で、現在も調査中。
         | 黄河文明どころか四大文明のどれよりも古く、古代文明の定説を覆してしまうかも……
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| つまり……世界のあちこちで、文明は芽生えていたんです。起源を四箇所に限定などできません。
| しかしメソポタミア、エジプト、インド、中国の四箇所の発展は非常にめざましく、最も目立った――
| そんな、古代文明の代表格四箇所みたいな認識で構わないでしょう。
| この四箇所が大繁栄した理由は、言うまでもなく大河流域という好条件があったからです。
| 良い場所だからこそ人が集まり、人が集まるから文明が発展し、文明が発展すると人が集まる――
| そんな、良い意味でのスパイラルが著しかった地域と言えるでしょうね。
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    | 四文明こそが世界文明の源流、っていう考え方はもはや古くなってしまったんだな……
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         | 古代文明ってのは、現在かなり研究が進みつつあるジャンルだ。
         | 長江文明などのさらなる調査・研究などにより、今後もますます変革が続くだろう。
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| さて、文明誕生の講義はこれで終わりです。
| あんまり面白くない話が続きましたが、以降に繋がる重要な講義であることに注意しましょう。
| 世界全体の流れをまとめて解説するのもここまで、以降は各地域を別々に講義していきますね。
| メソポタミア、エジプト、インド、中国などで、人々はどのように暮らしていたか――
| そして、どんな連中がトップに立っていたのか、いよいよ『歴史』のスタートです!!
| では以降の講義でも、もっともっと私だけを見て下さい。
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    | なんなの、その変なキャラ……
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         | あんまり長い間出番がなかったから、スネたんじゃないか?
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