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| はい皆さんこんにちは、これから始まる一連の世界史講義を担当するしぃ助教授です。
| 本スレでもめっきり出番が少ないですが、ここでは私だけを見ていて下さい。
| では人類の始まりから終わりまで、じっくり講義していきましょうか。
| 今回は、世界史を学ぶ上で最も退屈と言われているサルの講義です。
| サルが、いかにして人となったか――そこには、一筋縄ではいかない歩みがありました。
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| 人類の始まりから終わりまで、って……
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| 世界史を学ぼうとする人の多くが、ここで挫折してしまう。
| 面白くないのに加え、連発される難解なサルの名前にやられてしまうんだよな。
| これから、少しでも面白く講義するつもりでいるが……
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| ……とまあ、便宜上「サルがヒトになる」という言葉を用いましたが、むしろヒトは今でもサルの一種。
| ニホンザル、テナガザル、ゴリラなどに並んでヒト(ホモ・サピエンス)が存在するんです。
| 生物学的には、サルが進化してヒトという別種族になったわけではないんですよ。
| 進化によってより洗練されたサルになったのであり、それをヒトと呼ぶだけの話。
| そしてゴリラ、チンパンジーなどは、進化の過程で我々と枝分かれした存在なんです。
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| 人は、サルの種類に過ぎなかったのか。
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| まあ、それも定義の問題なんだがな。
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| そして、ヒト(ホモ・サピエンス)が進化の到達点というわけでは決してありません。
| 地球上には様々な人類が生まれ、そして全て滅びました――たった一種類のみを残して。
| その唯一生き残っている人類が、我々ホモ・サピエンスというわけなんです。
| つまりホモ・サピエンスという究極の存在に向かって、一直線に進化していったわけにあらず。
| 人類が進化していく過程で幾つも枝分かれし、そしてことごとくが滅んでいきました。
| それについて、講義していこうじゃないかというわけですよ。
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| でも……俺達って、ホモ・サピエンスなのか?
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| そこは、まあ気にしないことにしよう。
| なおこの講義は、2007年9月に作成されたもの。
| 近年において新発見がめざましい分野だけに、覆る学説やデータがあるかもしれない。
| まだ仮説段階の話も多いため、あやふやな事も多いってことを意識しつつ講義を受けて貰いたい。
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| なお原生動物の中で、人間に一番近縁なのはチンパンジー。
| つまり人類とチンパンジーには共通の祖先がおり、そこからヒトとチンパンジーに分岐したと言うことになります。
| では、何をもってホモ・サピエンスとチンパンジーが別物と定義しているかというと――
| 今のところ、「直立二足歩行」と「犬歯の縮小」なんです。なお犬歯とは、前歯の脇にある尖った歯。
| 縮小しつつも独特の形状を持つので、ちょっと舌で確認してみて下さい。
| なぜ犬歯の縮小が、そんなに大きなファクターとみなされるのか疑問に思ったかもしれませんね。
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ヒトとチンパンジーを隔てるポイント
・直立二足歩行
・犬歯の縮小
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| 脳の大型化とか、言語や道具の使用とかは定義に入らないんだな。
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| それは、ホモ・サピエンスがしばらく進化した後に獲得していった特徴なんだ。
| チンパンジーから分化して、いきなり人類は賢くなったわけじゃない。
| また道具の使用なんかは、チンパンジーなどもやっているしな。
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| 犬歯というのは、食べ物を砕くという本来の役割もありますが、むしろ戦いの手段としての色彩が強いです。
| この鋭く尖った歯で相手に噛みつき、その皮膚を裂いてダメージを与えているんですね。
| これは主に、同類の群れの中でメスを巡っての争いで用いられたと考えられています。
| そんな犬歯が退化したと言うことは、手に武器を持つようになったから不要になったということ――
| という推理が成り立つんですが、実際は想像の域をほとんど出ていません。
| つまりこれ、「直立二足歩行」とセットだとも考えられるんですが……どうなんですかね?
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ヒトとチンパンジーを隔てるポイント
・直立二足歩行
・犬歯の縮小
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| まだまだ曖昧な点が多いってことか。
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| 実際のところ、「直立二足歩行」と「犬歯の縮小」のどっちが先かは分かっていないんだ。
| しかし最近は、犬歯が縮小しているものの直立二足歩行には達していない化石も発見されている。
| ここからして、「直立二足歩行」という人類定義も怪しくなっているんだが――
| 詳しくは、今後の研究を待つしかないな。
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| ではここで、人類で最も古いとされる化石を見てみましょう。
| それが2002年、アフリカのチャドで見付かった頭骨の化石で、体はありません。
| サヘラントロプス・チャデンシスと言いますが、そんな面倒な名前は覚えなくてもいいです。
| これは700万年前のもので、現在知られている人類の化石の中では最古。
| すなわち、700万年から人類は独自の進化コースを辿り始めたという解釈で結構です。
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・サヘラントロプス・チャデンシス
2002年にチャドで見つかった頭骨の化石であり、「トゥーマイ」という愛称で呼ばれている。
700万年前の人類化石であることが判明し、最古の化石人骨となった。
犬歯はやや縮小し、直立歩行が可能だったという説もある。
ほぼ完全な形で見つかった頭骨の化石としても、非常に珍しい。
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| ここから人類は、チンパンジーとは別の道を進み始めたんだな。
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| なおこの化石が発見される以前――2002年より前は、人類の歴史は500万年と思われていた。
| それがこの発見で、一挙に700万年まで伸びるということに。
| 今後も新たな発見があれば、この数字は更新されるだろうな。
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| その脳の大きさはチンパンジーとほぼ同じで、推定身長も140cmとチンパンジーと変わりません。
| そして頭骨の形状もサルそのものなんですが――しかし犬歯が退化しているので、人類とみなされます。
| 二足歩行については、頭蓋骨しかないのではっきりとは言えないのですが……
| 頭骨に残る首の骨の位置から姿勢を推測し、歩行形態を割り出そうとする試みが続けられています。
| しかし個体差もからむので、かなり推測が難しいというのが現状ですね。
| 四足歩行の類人猿よりも首骨が前方に付いており、二足歩行してたんじゃないかとも言われていますが……
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| やっぱ、断定はできないのか。
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| まだまだ研究段階だからな。
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| ではここで、「猿人」と「原人」の区別について解説しておきましょう。
| 「猿人」とは、人類原初の750万年から、脳の大型化が始まる250万年前までの人類。
| さっき紹介したサヘラントロプス・チャデンシスは、最初期の猿人にあたりますね。
| 「原人」とは250万年前あたりからの人類であり、現代の人類により近く進化したもの。
| しかしこれらの区分は便宜的なもので、猿人と原人の決定的な差異というのを見付けるのは難しいです。
| 他にも色々な理由があり、「猿人」と「原人」、さらに「旧人」や「新人」といった分類は廃れていますね。
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猿人:750万年前〜250万年前の人類
原人:250万年以降の人類だが、定義はかなり適当
旧人:慣習的にネアンデルタール人を指す
新人:現生人類
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| 「猿人」とか「原人」とかいう用語は、今は使われてないのか?
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| あんまり意義のある言葉じゃなくなったんで、使われない傾向にあるな。
| 猿人から原人、原人から旧人、旧人から新人と、一本道に進化していったという考えは間違い。
| 様々な人類種が現れては滅びていくという感じで、細分化して枝分かれしていったんだ。
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| 猿人の代表的な存在は、約420万年前に現れ始めたアウストラロピテクスでしょう。
| これは南アフリカで最初に発見され、発見当初の1942年は人類とサルの中間と思われてきましたが――
| 現在は、れっきとした人類の仲間として扱われています。
| エチオピアのハダール村付近で発見された350万年前の人類、愛称「ルーシー」が特に有名ですね。
| 体の40%に相当する量の骨が発掘され、まさに驚異的な復元率。
| その大腿骨を見るに、この頃はもう完全に二足歩行を達成しているのが分かります。
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・アウストラロピテクス
約420万年〜150万年前までに存在した最初期の人類。
アフリカに生息し、二足歩行を達成していたのはほぼ間違いない。
エチオピアで1974年に発見された「ルーシー」が非常に有名。
石器は基本的に使用しなかったようだが、最後期には原始的なものを使っていたという説もある。
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| この難解極まる名前で、世界史を投げ出したものが数知れず……
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| このアウストラロピテクスの中にも様々な分類があるが、ここでは省略する。
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| 進化論を提唱したダーウィンは、人類と近種と思われるゴリラなど類人猿がアフリカに生息していることに着目。
| 「人類が発祥したのは、アフリカではないか?」という仮説を打ち立てました。
| そして二十世紀には、彼の仮説を裏付けるかのように初期人類の化石がアフリカから次々と出土します。
| その結果、人類がアフリカを出たのが約180万年前であり、誕生以来500万年はアフリカにいたことが判明。
| 人類はアフリカで生まれ、その2/3近くをアフリカで過ごしたんです。
| では、ここで問題。なぜ、アフリカで二足歩行を行う人類が生まれたのでしょうか?
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| サルの仲間ってのは世界中にいるよな。
| 確かに、なぜアフリカのサルだけが直立歩行を始めたんだ?
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| アジアでもヨーロッパでもなくアフリカだった――そこに、人類誕生のキーがある。
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| フランスの人類学者イプ・コパン博士は、直立歩行の起源について以下のような説を唱えました。
| 人類の祖先は元々アフリカの東部で、樹上生活を送っていたんです。
| しかし気候の変化でアフリカ東部は乾燥化し、森林も消滅して草原化。
| しかたなく人類の祖先は樹から大地へと降り立ち、二本の足で歩き始めた――という説です。
| この「イーストサイド・ストーリー」と呼ばれる仮説は1980年代に提唱され、大いに受け入れられました。
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| アフリカの西部はそのまま森林が残り、そっちの方の類人猿はチンパンジーに進化した――ってわけか。
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| なかなか良く出来ているな。
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| しかしこの1980年代に唱えられたこの説は、現代において幾つか穴があることが分かっています。
| この説が出た当時はアフリカ東部からの化石発見が多かったんですが、西側からも発見され始めたんですよ。
| 先に解説した最も古い人類の化石も、チャドから発掘――つまり中央アフリカやや西寄りです。
| さらに東側の森林を草原化させたという気候変動ですが、これは後の研究で時期が合わないことが発覚。
| そうした自然の変化が起きたのは約300万年前と判明し、この頃はとっくに二足歩行を始めています。
| つまりアフリカ東側に森林が広がっていた時から、人類は二足歩行を始めていたということになるんですよ。
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| 熱帯雨林が残ってたのに、草原生活を選ぶようになったっていうのか? なんで?
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| 君は一つ、大きな固定観念に囚われているな。
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| 樹上生活をしていた類人猿が草原に降り立ち、そして二足歩行をすることになった――
| そもそも、そういう常識が近年になって揺らぎ始めてきたんですよ。
| 1994年に発見されたアルディピテクス・ラミダスの化石は、他の動物の化石と一緒に見付かっています。
| それは原始的なサルやウシの仲間であり、草原ではなく森林で暮らす生物ばかりでした。
| つまりアルディピテクス・ラミダスも、森林で生活していた可能性が極めて高いんです。
| それでいてアルディピテクス・ラミダスは、二足歩行を達成していたんですよ。
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・アルディピテクス
先に紹介されたアウストラロピテクスのさらなる先祖。
最近になって発見され、アウストラロピテクスとそれ以前の猿人の間を埋めるものとして注目を浴びた。
550万年前から450万年前と極めて原初の人類に近く、その存在は注目されている。
また一部は樹上生活をしていた痕跡もあり、以後の研究で二足歩行の起源を探れる……かも。
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| つまり、草原で暮らしていたんじゃないと?
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| どうも森林と草原の中間みたいな環境で暮らしていたようだ。
| ハイブリッドだな、こいつら。
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| そもそも、なぜ人類は二足歩行を始めたのか、という疑問がここで大きくのしかかってきます。
| その答えは――現代に至っても、全くの謎。
| いくつか仮説はあるものの、まだ結論に至る段階ではないんですよ。
| この謎に迫ることのできそうな化石も近年は発掘されてますので、研究を待ちましょう。
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・食料提供仮説
食料を口に咥えて四足歩行するより、二足で立って両手一杯に抱えた方が運ぶ量が大きい。
←次に詳しく解説。
・エネルギー効率説
四本足で歩くより、二足歩行の方がエネルギーの消費は少ない。
(反論:四足歩行と二足歩行の比較実験が曖昧で、エネルギー消費が少ないとは言い切れない)
・日射病回避説
直立することで日光が照射される体表面積を狭くし、直射日光による弊害を避ける。
(反論:実際のところ、直立によって直射日光を受ける面積はそう少なくない)
・威嚇説
姿勢を高くすることによって体を大きく見せ、天敵の肉食獣の襲撃を防ぐ。
(反論:常に直立していなければならない必要はない)
・視野拡大説
姿勢を高くすることによって、視野の広さももたらす。
(反論:常に直立していなければならない必要はない)
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| 当然だけど、これらが複合要因になっている可能性もあるよな?
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| むしろ、その可能性の方が高いような気もするが……
| 無理に要因を一つに絞ろうとするのは、真実を遠ざけてしまうかもしれない。
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| この中で、食料提供仮説は色々と面白い示唆をもたらしてくれますね。
| かつて原初人類のメスだけが子育てをしていた時期、赤子を抱えながら食料探しをしていたと推測されます。
| そうした中、メスに食料を運んでくれるオスが交尾の相手として大人気に。
| オスは争うように、メスに大量の食料を運ぶようになります。それこそ、両手一杯に抱えて――
| なんか出来過ぎた話ですが、この仮説には実際に判明している事象に合致したポイントがあります。
| それは、「子育ての効率化」と「犬歯の縮小」なんですよ。
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子育ての効率化:原初人類においてメスの出産間隔が短くなり、子供の生存率も上がったと思われる。
←オスが食料を貢ぐことに専念することによって、メスの栄養状態が良くなった。
犬歯の縮小:同族同士の決闘に使われていた犬歯が、退化とも取れる縮小を見せた。
←オス同士でメスの奪い合いをする際、噛み合いの決闘をする必要がなくなった。
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| なんと! こんなところに繋がってるのか!
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| しかしこの食料提供仮説も、状況証拠が多いだけで証明されたわけではない。
| やっぱり研究待ちなのには変わりないな。
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| まあとにかく、人類は二足歩行をも含む進化を始めたんですが――
| 誕生してから400万年もの間、行動様式も脳の容量もほとんど変化は見られませんでした。
| つまり人類の歴史は700万年として、その半分以上の時期は原初から停滞していたとも言えるんです。
| その停滞を打ち破った原因は気候の変化、アフリカで進んだ乾燥化でした。
| 森林が減少し、草原が広がり始めるにおよんで、人類の生態に変化がいよいよ現れ始めたんです。
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| 300万年前あたりから、人類は草原で暮らすことを余儀なくされたんだな。
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| 生物は環境に適応する。適応できなければ滅びるだけだ。
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| まず、石器を本格的に扱うようになりました。
| この際の石器は、小石を割って先端を尖らせたもの。礫石器と呼ばれていますね。
| 道具を使う動物はそれなりにいますが、造り出すのは人間のみです。
| この時期の人類は、道具の使用によってホモ・ハビリス(器用な人)と呼ばれることになりました。
| ホモ・ハビリスはアウストラロピテクスから枝分かれした人類で、かなり猿に近い姿をしています。
| 約250万年〜200万年前の時期に生息していたと思われる、人類種の一つですね。
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・ホモ・ハビリス
1964年、タンザニアにて発見されたヒト属の一種。
約250万年〜200万年前の時期に生息していたと見られ、アウストラロピテクスから枝分かれしたと思われる。
身長は130cmほどで非常に腕が長く、現生人類からかけ離れていた外見をしていたようだ。
脳の容量は650ccとアウストラロピテクスよりも増大し、現生人類の半分に達している。
道具を器用に用いた形跡があり、その名の由来となった。
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| でも、後期のアウストラロピテクスも石器を使っていたって板書がなかった?
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| ホモ・ハビリスになると、本格的に石器を使用するようになったって感じだ。
| そもそもアウストラロピテクスとホモ・ハビリスの明確な線引き自体が難しい。
| そこら辺、あまり厳密に考えない方がいいぞ。
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| そして240万年ぐらい前からは、人類の脳が顕著に大きくなっていきます。
| 180万年前のホモ・エレクトスにもなると、脳の容量が800ccを超えてしまいました。
| このホモ・エレクトスはかつて原人に区分されていましたが、現在ではあまり意味を持ちませんね。
| 「猿人」やら「原人」やらという区別は、人類が一本道で進化していたと思われていた時代の産物。
| 数々の人類が生まれ、滅んでいったことが判明している現在では、ほとんど使われない表記でもあります。
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・ホモ・エレクトス
約180万年前に存在したヒト属で、脳の増大がより顕著になっている。
それに従って石器も高度化し、その外見も現生人類に似ていたようだ。
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| 原人とか猿人って、使われなくなった分類なんだな。
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| とはいえ学者が一般人に優しく解説する時などは、「猿人」や「原人」などの用語も用いるけどな。
| まあ、学術的には死語となったと考えて問題ない。
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| さて、なぜ脳が大きくなったのか――それは、食糧事情の変化が主要因の一つとされています。
| 脳という精密情報処理器官は、莫大なエネルギーを消費して作動するもの。
| 現生人類の場合、脳の重さは体重の2%なのにもかかわらず、そのエネルギー消費は全体の25%。
| また脳が大型化を遂げた時期は、石器が本格的に現れ始めた時代にも合致しています。
| この石器を用いて獣の屍肉を効率的に解体、カロリーたっぷりの肉をたっぷり食べることができました。
| それにより栄養状態が格段に増し、脳の発達に及んだっていうわけですね。
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脳の顕著な発達:約240万年前
人類最古の石器:約250万年前
※新たな発見によって、覆される可能性は十分にある
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| 脳が発達したから、石器が使えるようになった――ってわけじゃないのか?
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| そのあたりはややこしいが、どうも石器の方が先行していたみたいだな。
| 石器の使い方や作り方を模索することによって、脳の発展が加速されたという要因も大きいだろう。
| 実際のところは、相互干渉的に発展していったってところだろうが。
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| どうも、「脳が大きくなった→色々なことができるようになった」ってのは因果が逆のようなんです。
| 最近は「色々とやり出した→脳が大きくなった」という流れの方が支持者は多いですね。
| 脳の大型化を導いたのは、栄養の良質化と試行錯誤の精神ではなかったか――
| 最近の学説では、そういう説が支配的なんですよ。
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| なんと。
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| なおこの時期の人類は、従来の草食に加えて肉食も始めたようだ。
| と言っても、まだまだ狩りを始めるには早い。死んだ動物の肉を拾っていたのが実情だな。
| また、食料をその場で食べずに、住処に持ち帰って食べていたことも分かっている。
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| さらにこの時期、人類の体格も大幅に変化していました。
| 身長や足はすらりと伸び、樹上生活に適していた長い腕はコンパクト化。
| それを確認できる化石が、ケニアで発見された「ナリオコトメ・ボーイ」と呼ばれる180万年前の個体。
| これは全身がほとんど揃った状態で見付かり、現生人類と酷似した体格をしていたことが分かります。
| この時代の原人は、すでに現生人類のごとく走ることもできたんですよ。
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| なんで走ってたんだ?
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| そりゃ、敵から逃げるためとか色々あるだろ。
| 屍肉を漁る際、ハイエナと競争してたという説もあるな。
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| また人類がドタバタと走り回るようになると、体温調整が大変になってきます。
| この時期に全身を覆う毛を消失し、汗によって体温調整を行うようになった可能性が高いですね。
| ……とはいえ、「毛」はかなり化石に残りにくい箇所。それを示す証拠はありません。
| こうした一連の体格変化は、人類が本格的に草原での暮らしをすることになってからの変化と言われています。
| すなわち乾燥化が始まり、森林が草原に変わってきたからということで説明されていますが――
| しかしこれらの相関関係は想像に過ぎず、否定的な説があるのもまた事実ですね。
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| 結局のところ、断言できる証拠はないってことか。
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| 状況証拠を積み上げて類推するしかないんだよな。
| さらなる物証の発見と研究を待て!
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| またこの頃になると、人類の幼児期はかなり長期化し始めます。
| その要因は、脳の発達が顕著になったからだとされていますね。
| 脳の発展に伴い頭蓋が大きくなると、出産の際に産道を通るのが不可能になってしまうんです。
| だからメスは、胎児の頭が十分に発達しない内に産んでしまう必要に駆られました。
| そうして人類は、他の生物に比べて親に面倒を見て貰う期間が非常に長くなってしまったんです。
| これはひ弱な時期が続くということであり、自然界においては非常に危険なことでした。
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| なんと! そんな因果関係が!
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| しつこいようだが、状況証拠で押し通すスタンスだ。
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| よってメスは子供から片時も目を離さず、ひたすら子育てに専念。
| オスは、メスと子供に食料を運んでいく――こうして性差での分業化に拍車が掛かっていったと推測されます。
| それがさらに集団効率化し、メス集団がそれぞれの子供を世話、オス集団がまとまって狩りに出掛ける――
| そういったスタイルが定着していったんではないか?という説が主流ですね。
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| すごい!
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| また幼児期の長期化は、親が子にいろいろ教える期間が長くなるということでもある。
| これは学習量の増加に繋がり、さらに脳を大型化させる要因になったのかもしれない。
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| そして幼児期の長期化というのは、人類のメスに重大な変化をもたらしました。
| それが、発情期の喪失――意外かもしれませんが、発情期を持たない動物は人間のみです。
| 育児にかなり長い期間の手間が掛かるということは、メスにとって発情している暇はないということ。
| 母親が発情してしまえば子供は放ったらかしになって、その命は無いも同然ですからね。
| この発情期の喪失により生殖期間に幅が出来た結果、オスもメスも相手を選り好みするようになりました。
| これは社会性の高度化をもたらし、「家族」のきっかけにもなったのではないかと言われています。
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| なんと!
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| 結局のところ、全部推測なんだけどな。
| 化石から推測できる行動様式が合致してるだけで。
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| そして180万年前、いよいよ人類はアフリカの外へ足を踏み出したようです。
| この時期はサハラはまだ砂漠化しておらず、北上はそう難しくはありませんでした。
| 500万年アフリカにとどまっていた人類が、なぜ住み慣れた地を出たのか――
| 石器の使用で食糧確保が効率的になったので、アフリカに比べて寒冷な地でも生きられるようになっていました。
| 他にも様々な発展があり、人類はアフリカ脱出を可能にしたわけですね。
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| いよいよ、世界探求に旅立ったわけだな。
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| 実際のところ、当時の人間がアフリカを出ることを目的としていたわけではないだろう。
| 石器の発達で、北西にも住めるようになり――生活圏を広げているうちに、アフリカを出ていた。
| そういう感じだろうな。
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| 中東の北部に位置するグルジアまで到達した人類は、次に東アジアに向かったようですね。
| 北京から西に百数十キロ、166万年前の地層から数多くの石器が発見されています。
| なお発見されたのはあくまで石器のみで、166万年前の人類化石が発見されたわけではありませんが。
| かの有名な北京原人の化石は約55万年〜25万年前のものと、もっと時代が下った後のものです。
| しかし石器が残っている以上、166万年前からこの地に原人が生息していたことは確実ですね。
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グルジア:180万年前
ジャワ:180万年前
北京:166万年前
イタリア:90万年前
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| グルジアに着いたのが180万年前、北京が166万年前――
| けっこう短期間に、アジア大陸を横断したんだな。
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| グルジアで見付かった原人の化石が180万年前のものというだけだ。
| 人類がグルジアに到達したのがちょうど180万年前だと決まった訳じゃない。
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| そして東南アジアから陸続きのインドネシアに進出したのですが――ここでジャワ原人について見てみましょう。
| 19世紀の後半、ダーウィンの進化論に多大なる感銘を受けたオランダの医学者がいました。
| 彼の名は、ユージン・デュポア。彼は進化論に従い、人間とサルの間の生物が存在するはずと類推します。
| さらに彼は、人類の祖先のサルはかなり暑いところに住んでいたはずだと推測。
| 当時のオランダ人にとって足を運べる熱帯は、オランダ植民地であるインドネシアでした。
| しかし一般人が安易に旅行できる場所でもないので、デュポアはエリート医師でありながら軍医を志願。
| こうして彼はインドネシアに渡り、駐留兵に医療を施すかたわら、化石発掘をも手掛けます。
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| オランダ人が簡単に行ける熱帯だから、インドネシア……かなり短絡的な理由なんだな。
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| しかしそれが、世紀の大発見をもたらしてしまう。
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| インドネシアに到着して4年後の1891年、デュポアはなんと頭骨と大腿骨からなる化石を発掘します。
| その頭骨はサルに近いものでしたが、大腿骨は二足歩行の特徴を示していました。
| 彼は喜び勇んで、掘り出したジャワ原人の発見を公表するのですが――
| 学会の反応は賛否両論、人類とサルの間の二足歩行生物など認めようとしないヒトも多かったんですよ。
| さらに頭骨と大腿骨の発見場所が少々離れており、捏造疑惑や誤認疑惑まで生じてしまいました。
| 同じくジャワ原人のものとして発表した歯が別の動物だったというミスも重なり、論争は激化します。
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| 人類とサルの間の生物など認めなかったって……なんで?
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| その解説は、後のネアンデルタール人の時にやるよ。
| なおネアンデルタール人は、ジャワ原人より後に登場した人類。
| しかしネアンデルタール人の化石の発見は、1856年と早かった。
| この種の騒動は、ジャワ原人発見に先立つ35年前にも起きていたんだよ。
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| 相当ひどく叩かれたデュポアは、可哀想にすっかりヘコんでしまいます。
| こうして彼は金庫にジャワ原人の化石をしまい込み、誰にも見せないようになってしまいました。
| 彼の発見より約20年後には北京原人の化石が発見され、それはジャワ原人にそっくりだったことが判明。
| こうしてデュボアの発見はようやく認められたんですが、その頃の彼はすっかり人間不信になっていました。
| ともかく先駆者の悲哀を体現した彼ですが、ジャワ原人の発掘者として歴史に名を残すことになったんです。
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| 可哀想な話だな。
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| 先駆者とはそういうものだ。
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| さて、このジャワ原人の化石ですが……現在のところ、約180万年前のものと判明しています。
| そして約10万年前に至るまでの170万年間、ジャワ原人はこの島で生きていたことが分かっていますね。
| その石器にはほとんど変わらず、生活スタイルや体格にも全く変化が見られなかったようです。
| ジャワ島の環境は人類が誕生した氷期アフリカにそっくりですから、非常に暮らしやすかったのでしょう。
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・ジャワ原人
オランダ人のデュポアが1891年にインドネシアのジャワ島で発見した、原人の一種。
非常に暮らしやすい環境だったためか、この地に来てからはほとんど進歩が見られなかった。
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| 北京で発見された石器は、166万年前のものなんだろ?
| 東アジアルートでやってきたはずなのに、先にジャワ島に着いてるなんておかしくないか?
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| だから、北京にはもっと以前から原人がいた(あるいは通過した)んだろ。
| それを証明する化石が、まだ発見されていないだけで。
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| さて、デュポアがジャワ原人を発見してから30年後の1921年。
| 北京近郊の周口店にある地層の前に、ヨハン・アンダーソンという地質学者が立ちました。
| 彼は地質調査のために中国政府から招かれたスウェーデン人学者。
| 周口店では龍の骨が多く見つかると評判で、アンダーソンは大いに興味を抱いていたんです。
| 彼は喜び勇んで発掘を開始し、絶滅したハイエナの骨やサイの牙などを次々と発見。
| そんな化石に混じって、不自然に尖った石が幾つか発見されたんですよ。
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| 周口店……? どんな店?
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| お店屋さんじゃなく、地名だよ。
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| その尖った石を見たアンダーソンの頭に、「これは人為的なものではないか?」という考えが閃きます。
| 原始時代にここに住んでいた人類が、ものを切るために使った道具ではないか――
| それはほとんど直感に近いものでしたが、アンダーソンには帰国の時が迫っていました。
| 彼は帰国の際、この地に残る同僚に「この地には人類の祖先が眠っている気がしてならない」と言い残します。
| そして2年後の1923年にアンダーソンは再び周口店に帰還。
| その際の発掘で、彼は人ともサルともとれない2本の歯を発見したんです。
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| なんと! ……って、歯だけ?
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| 正直、原人存在の証拠としてはかなり厳しい。
| 発見物はたった2本の歯に過ぎず、他の動物の歯を間違えたという疑いも払拭されなかったんだ。
| 中国人はこの発見に大喜びしたが、フランスを初めとした考古学会は懐疑的だった。
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| こうして周口店では本格的な調査が行われ、次々に化石が発掘されます。
| かなりの量の骨が出土し、もはや北京原人の存在に異論は挟む者はいなくなりました。
| 1929年には、中国人考古学者の裴文中が完全な状態での頭骨を発見。
| その後も続けられた調査で、39人分にも及ぶ北京原人の化石が発掘されたんです。
| 調査の結果、この北京原人はジャワ原人とかなり近縁の関係であることも分かってきました。
| 当時すでに発見されていたネアンデルタール人よりも、遙かにサルに近いものだったんです。
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| ネアンデルタール人の解説は?
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| それは、もう少し後。
| 発掘されたのはネアンデルタール人が先だが、北京原人の方がご先祖様にあたるからな。
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| しかしこの一連の北京原人の化石、かなりしょっぱい末路を辿ります。
| そのまま時代は風雲急を告げ、日中戦争が勃発。北京は日本軍によって制圧されてしまいます。
| 北京原人の化石をまとめて保存してある協和医学校は、中立国であるアメリカの資本で運営されていました。
| ですので一応は安全だったのですが、日本とアメリカの関係が険悪化して先行きが不透明に。
| そこで協和医学校は、人類共通の財産である北京原人の化石をアメリカに避難させることを決意。
| こうして北京原人の化石は、北京の米大使館へと運び込まれました――ここまでの足取りは確かなんです。
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| ここまで足取りは確かって……ま、まさか!
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| 悲しい話だ。
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| それを最後に、北京原人の化石はどこに行っちゃったかさっぱり分からなくなってしまいました。
| 運搬船が日本軍に沈められた説、アメリカで隠匿されている説、日本軍押収説――
| 諸説含めて様々な話がありますが、結局のところ北京原人の行方は不明。
| どうも木箱に入れられて、アメリカ海兵隊の管理する倉庫に運ばれたのは確実なようです。
| そしてタイミングの悪いことに、その倉庫は同時期に日本軍によって接収されているんですよ。
| その際の憲兵による報告書がごく最近発見されたんですが、「そんな物はなかった」とか……
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・アメリカへの運搬船が日本軍に沈められた説
←化石を運搬する予定だった船が日本軍に沈められたのは事実。
しかし沈没したのは積み込む以前であることが確実であるため、信憑性は皆無。
・アメリカで隠匿されている説
←アメリカに運ぶのは一時的なもので、平和が来たら中国に返還される取り決めとなっていた。
しかし、それを行方不明ということにしてしまえば……
実際のところアメリカ本土まで運搬できた時間的余裕はなく、信憑性は非常に低い。
・日本軍押収説
←日本軍部の一部は、北京原人化石の重要性を認識。
協和医学校に出向き、大事にしまってあった人骨化石を接収している。
しかしそれは、仔細に造られた研究用のレプリカだと判明。
あらためて本物の場所を問い質すが、協和医学校は渡そうとしない――
そんな中で、アメリカへの移送計画が動いている。
つまり日本軍は実際に北京原人化石を押収しようとしたものの、見事に失敗。
北京原人化石を押収できなかったというのは確かなようである。
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| ど、どこへ行ったんだ……?
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| また日本軍が押収したという噂に基づいた亜説として、
| 1945年に台湾海峡で米潜水艦に撃沈された阿波丸に積まれていたという話がある。
| それにより、2004年に引き上げ作業が始まったという事だが……続報は聞かないな。
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| 幸いなことに、紛失に至るまでに北京原人の化石は徹底的に調査されていました。
| 非常に緻密な研究用レプリカも造られており、学問的にはそう支障はなかったということです。
| またこの事件以後も、北京原人の化石はいくつか発見されていますしね。
| とはいえ、やはり重大な損失にあったというのも事実なわけで――日本軍が絡んでいる分、悲しさもひとしお。
| 中国とアメリカが、勝手になくしたんじゃないかと居直るのも簡単ですが――
| そんななすり合いはおいといて、「戦時における文化財保護」っていうのに思いを馳せてみるのはどうでしょうか。
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| どこの責任なのか、難しいところがあるな。
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| この一件が、醜い罵り合いに発展しているのもまた事実。
| 重要なのは、これをいかに教訓にするかだと思うんだけどなぁ。
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| ではここで、55万年前から25万年前のものとされる北京原人について詳しく見てみましょう。
| ショッキングなことに、この北京原人の間では食人の風習があったと言われています。
| 頭蓋から脳を掻き出したり、骨自体を粉々にして骨髄を取り出した形跡が見られるんですね。
| しかし儀式的なものなのか、食糧難の際のやむなき処置なのかは分かりません。
| さらに見つかるのは頭骨ばかりで、不自然なまでに四肢や体の骨が少ないという謎もあります。
| 年齢分布を調べてみると、70%以上が14歳以下の子供。当時の短命さを考慮に入れても、これは異常です。
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・北京原人
スウェーデン人のアンダーソンが1921年に北京の周口店で発見した、原人の一種。
後に多くの化石が発見されており、住処からは火を使用した後も伺える。
食人の風習もあったらしく、化石の紛失など逸話が非常に多い。
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| まだまだ謎は多いってわけか……
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| この洞窟は墓場のようなもので、子供の頭部のみを埋葬していたのかもしれない。
| 当時の風習に関することかもしれないので、今となっては分からないことだがな。
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| 何よりショッキングな発見は、北京原人が火を使っていたのではないかという証拠が発見されたこと。
| 北京原人が住処にしていたと思われる洞窟に、灰のような堆積物があったんですね。
| また洞窟の中から発見された動物の骨にも、焦げたような形跡がありました。
| しかし北京原人が火を使用していたという説には、色々と異論もある状態です。
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| 異論? どんな?
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| 堆積物の灰は植物の炭素か、細かい砂の可能性がある――そんな最近の研究があるんだ。
| また火を用いた以上、洞窟の中に炉があるはずなんだが、それも見つかっていない。
| 落雷を食らって死んだ動物を拾い、住処で食べたというだけではないかってことだな。
| これも議論は分かれており、まだ結論は出ていない。
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| 人類がいつ頃から火を使っていたか……これ、結構難しい問題なんです。
| とりあえずケニアでは、約150万年前に焼け焦げた鉱物が見付かっています。
| しかしこれ、人類がやったのか、雷などで起こった自然現象なのか区別がつかないんですよ。
| 学者同士でも意見が分かれ、現代でも結論は出ていません。
| さらに79万年前、イスラエルの洞窟から焼けた石器や木の実が発見されています。
| ここら辺になると、人類は火を使っていたことが確実視されていますね。
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| いつ頃から火を使ったのか……意外に分からないもんなんだな。
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| 英雄や怪物が火を人間にもたらしたという伝説は、世界各地に伝わっている。
| そして面白いことに、それによって神々が怒ったというタブー論もほとんどセットなんだ。
| 当時、火は人間の域を超える力だったと認識していたことが伺えるな。
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| 確実に火を使っていたと断言できるケースは、フランスのテラ・アマタ遺跡。
| これは40万年前〜35万年前のもので、炉の形跡が見付かっているんです。
| こうして火を使うことが可能になったからこそ、寒冷なヨーロッパに進出できたという説もありますね。
| 火は、暖を取ったり調理に用いたりする以外にも、人類に様々な変革をもたらしました。
| 暗い夜間でも明かりとして火を用いることで活動できるようになります。野生生物を追い払う武器にもなります。
| また火というのは危険で、管理の必要も生じます。それにより、さらに社会性が増したという説もあります。
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| 考えてみれば、火の使用ってのは人類史における大革命だったんだよな。
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| 意外かもしれないが、人類が火を使えるようになるまで洞窟を住処にできなかった可能性が高い。
| 洞窟ってのは、野生動物が巣食う危険な場所だからな。
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| また40万年前には、人類が狩りを始めていたことが確実視されています。
| ドイツの遺跡から、木を削って作った槍が見付かったんですね。
| 当然ながらそれより以前から狩りをしていた可能性も十分にありますが、まだ証拠は見付かっていません。
| そして生活を狩りに依存するようになると、動物の群れを追って頻繁に住処を変えるケースも出てきます。
| さらに、狩りの知識を自分の息子などに伝える、ということも行われてきたでしょう。
| そういう「記憶」や「経験」を伝達するという新たなコミュニケーションによって、脳の発達は促進されていきます。
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| すごい!
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| こうして、人類の発展のペースは加速度的に進んでいく。
| 様々な要因が相互依存的に作用し、発展がさらなる発展をもたらすんだろうな。
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| さて、そんな「原人」の次にあたるのが「旧人」ですが――
| この「旧人」は、「原人」の領域を抜け出したものの現生人類でる「新人」にはなっていないというカテゴリー。
| 正確な定義があるわけではなく、あくまで便宜的な呼称にすぎません。
| この「旧人」の代表格が、ネアンデルタール人。約20万年前から、中東やヨーロッパに広く分布した人類。
| そして、人類種の中で初めて化石として発見されたのもネアンデルタール人だったんです。
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・ネアンデルタール人
ヨーロッパから中東、アジアにまで広範囲に分布するヒト属の一種。
20万年前から出現し始め、世界各地に様々な痕跡を残している。
火や石器を用い、喉部の形状からして言語を用いることが出来た可能性もある。
1830年にベルギーで第一号が発見されるものの、進化論発表前であるために事実上の無視。
1856年、ドイツのネアンデル渓谷で発見された化石が、物議を醸すことになる。
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| 最初の発見は、無視されたのか?
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| 無視というか、発見された骨が何なのかよく分からなかった。
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| 時は1856年、ドイツのネアンデル渓谷にある洞窟にてあまりにも異様な骨が発見されました。
| その頭骨は人間に酷似しているんですが、様々なところがどこか異なっています。
| 当時の人々は、その化石からどこか悪魔的な印象を感じたようですね。
| それから3年後の1859年、ダーウィンが進化論を発表。大センセーショナルが巻き起こります。
| それに従い、この化石ももしかしたら人間の前段階ではないかという説が興ったのですが――
| 当時の人間の大部分にとって、それは信じられない、信じたくない説でした。
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| なんで信じたくないの?
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| 聖書によれば、人間(男性)というのは神様が自分の御姿を似せて造ったものだ。
| それなのに、こんな人間の出来損ないみたいなのがいるなんて――受け入れられるはずがない。
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| この化石はクル病や関節炎を患った現代人のものではないか、という意見が大勢を占めることに。
| しかし、神の造物という地位を守り通したい当時の人達にとって、目も覆いたくなる事実が発生します。
| これらの奇怪な化石が、次々にあちこちから発見され始めたんですよ。
| どうやら過去には、現代の人類とは異なる人類もどきがいたことを認めなくてはならなくなってしまうんです。
| 当時の人達にとっては、おぞましい以外の何物でもなかったでしょうね。
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| やっぱ、キリスト教の影響が強かったんだな。
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| しかしこうなってくると、逆にネアンデルタール人は人類に近過ぎる。
| もっと決定的な、人とサルの中間みたいな生物の化石は発見されないものか――
| 一部の学者はそう考え、そしてデュボアのジャワ原人発見に繋がっていくんだ。
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| そしてネアンデルタール人の研究も始まり、1910年頃には生きていた頃の想像図も描かれましたが――
| それは「我々とこの連中は違う」という意識が発露し、悪意を凝縮したようなイラストとなっていました。
| 猫背で膝を曲げ、サル同然によろよろ歩く姿――それがネアンデルタール人の想像図だったんです。
| 彼らは知能も非常に低く、どうしようもない野蛮な生物とされました。
| そんな悪意ある認識は、長らく人類学界の常識となってしまったんです。
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| 近親憎悪……?
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| 実はネアンデルタール人の脳の容積、現生人類より大きかったりする。
| まあそれは体格に由来するもので、知性には関係ないという説もあるが。
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| しかし1950年になると、イラクのシャニダール洞窟にて従来の野蛮人像を覆すような発見がなされます。
| そこで発見されたネアンデルタール人の化石には、生まれつき右腕が不自由である形跡があったんですよ。
| しかし自然界においては致命的な先天的障害を抱えていたにも関わらず、その化石の主は老人でした。
| つまり仲間達が、障害を持つ彼を年老いるまで介護していたことが明らかとなったんです。
| 助け合い、共に支え合っていく過去の人類の姿――それは、知性の低い野蛮人のイメージを破壊しました。
| こうして1950年代になってようやく、ネアンデルタール人への憎悪は払拭され始めたんですよ。
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| なんと!
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| これはまさに、センセーショナルな発見だった。
| ネアンデルタール人の醜悪なイメージを、一気に覆してしまったんだ。
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| さらにこのシャニダール洞窟からは、他にも驚くべき発見がありました。
| その化石となった人物の周辺から、大量の花粉が発見されたんですよ。
| つまりネアンデルタール人は、死者に花を手向けていた――そんな事実が明らかになったんです。
| そんな驚くべき発見をきっかけにネアンデルタール人への見直しが始まり、色々と客観的な研究も進みました。
| その結果、猫背でふらふら歩いていた想像図もすっかり破棄され、改められています。
| 肌の色は白、体格はがっちり、衣服代わりになめし皮を着用、その姿は現生人類に極めて近いものでした。
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「ネアンデルタール人が風呂に入り、ひげを剃り、スーツを着てニューヨークの地下鉄に乗ったとしても、
ちょっと風変わりな移民の一人として以上の関心を引くことはないだろう」
1950年代から囁かれたネアンデルタール人観
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| ネアンデルタール人の人権も尊重されるようになったんだな。
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| しかしごく近年になって、ネアンデルタール人が死者に花を手向けていたという説に疑問符が。
| ネアンデルタール人の化石は数多く発見されてるのに、花粉が発見されたのは一例のみ。
| ネズミが巣を作るため、草花を洞窟内に運び込んでいた結果ではないか――そういう解釈もある。
| ただ副葬品が発見されるケースもあるため、埋葬を行っていたのは間違いないんだが。
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| さて、ネアンデルタール人が中東からヨーロッパ、またアジアにまで足を伸ばしていた頃――
| 約20万年〜15万年前、アフリカの地において新たな人類が出現していました。
| ネアンデルタール人に比べて全体的に丸みを帯びた体格で、その知能はさらに発展。
| 高度な石器を使いこなし、さらに装飾品を身につけ、音楽や絵画を楽しむ人類。
| それは後のホモ・サピエンス・サピエンス――我々、現生人類が、アフリカにとうとう出現したんです。
| っていう風に次回へのヒキをいやらしく残し、今回の講義はここで終わりましょう。
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・ホモ・サピエンス
「知恵のある人」という意味で、現在の地球にいる人類は全てこの種。
正確な学名はホモ・サピエンス・サピエンス。
20万年前のアフリカに現れ始め、世界中に広がっている。
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| すると……ジャワ原人や北京原人、ネアンデルタール人はどうなったんだ?
| 20万年〜15万年前にアフリカで誕生した人類が現生人類の直接の祖先なら、
| それより以前にアフリカを出た人類は? あいつら、関係ないってことにならないか?
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| まさに、驚くべき大どんでん返し。
| 次回は、かなり最近(21世紀に入ってから)の研究成果をも踏まえた講義だ。
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